【インタビュー】和楽器バンド、1stシングル発売「この8人なら伝説残していけるよね」

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――それぞれの分野で主役級の才能を持った人たちが集結しているのも、和楽器バンドの魅力ですよね。

鈴華ゆう子:そもそもこのバンドメンバーに声をかけたのは、人としても好きだし、奏者のファンとしても好きだし、「この人たちと一緒にやりたい」って惚れ込んだからなんです。

――7月21日(金)に東京国際フォーラム ホールAで行った<和楽器バンド HALL TOUR 2017 四季ノ彩>ファイナル公演で、鈴華さんが「ツアーを周ってきてメンバーのことがさらに好きになった」と言っていたのが印象に残っています。

鈴華ゆう子:そうですね、ツアーを周ってよりメンバーの素敵なところが見つかったんですよ。例えば黒流さんは頼りがいがあって、常に「こういうことがあったら俺がこうするからね」とか気を配ってくださるところとか。

黒流:おぉ、これは照れるな。

鈴華ゆう子:べには一緒にいてとても楽。私はこれまで女子高、音大って女だらけの中で生きてきて女性ならではの嫌なところもたくさん見てきましたが、べににはそれを感じたことがない。このメンバーにいた女子がべにで良かったって思っています。

蜷川べに:2人とも何でも言い合えるし、さっぱりした付き合いだよね。

鈴華ゆう子:町屋さんは音楽の面ですごく頼りにしています。彼はギターの技術もすごいですけど、エンジニアのお仕事もできる人なんで、今は和楽器バンドの音作りの中心人物ですね。大さん(神永大輔)は男脳と女脳の違いを理解してくれるし、女子の心がわかってる。一番の男友達かもしれない。



神永大輔:和楽器バンドが正式に始動する前から絡んでたから、こういう風に音楽をやっていきたいねとか人生についてもよく話してるよね。

鈴華ゆう子:亜沙さんは安心感。落ち込んでいるときや悩んでいるとき話すと、びっくりするくらい気持ちが軽くなるんです。楽にしてくれる相手かな? 聖志は常に客観的で冷静なので、感情に流されそうになったときとかに正しい方へ導いてくれる人。一番相談しているかもしれません。で、山葵は人懐っこいところが好き!

山葵:…俺だけひとこと(笑)!

鈴華ゆう子:いやいや、山葵はプライベートでもよく遊ぶし、一緒にいてほんとに楽しい存在だよ。みんなそれぞれ違ったいいところがあるんですよね。

――やっぱり素敵なメンバーさんですね。鈴華さんは国際フォーラムのステージで、「素敵なメンバーに支えられてステージに立たせてもらっている」ともおっしゃっていましたね。

鈴華ゆう子:このメンバーの中には私以外にも個人の活動で歌を歌っている人もいますし、奏者としてもみんな真ん中に立てる華をもった人たちばかりなんです。そんな中、私が真ん中で歌わせてもらうって言うのは、みんなの想いを全部持っていかなきゃって思いが常にある。歌わせてもらってるという感覚かな。

――鈴華さんはそういう意識でステージに立っているんですね。

鈴華ゆう子:和楽器バンドが始動する前は、みんな素敵なのにデビューもしていないし一般的にはまだ全然知られていなかった。でも、ひとりじゃ無理でもみんなで一緒になったら“雨のち晴れ”になれるんじゃないかな、なんて思ってたんです。

――その思いが今回のシングル「雨のち感情論」に繋がっているのでしょうか。

鈴華ゆう子:そうです。そういったメンバーと出会ったころのことや、歌手になりたいと夢見ていた昔の自分のことを振り返りながら、“この8人なら伝説残していけるよね”という思いでこの曲を作りました。歌詞も最初は「神話と信じていた」から最後は「信じている」っていう現在進行形に変わっていたりして。特にDメロの「標的未定だって 雨のちに流れ星」というところに思いを込めていて、メンバーとの出会いから今に至るまでの気持ちが現れています。

――今この時期にこの曲をシングルで出そうと思ったきっかけは?

黒流:これまでなぜシングルを出さなかったのかというと、僕たちのパフォーマンスを目で見て楽しんで欲しかったからなんです。古臭いと思われがちな和楽器ですが、俺たちはこんなにもかっこいいんだぞ、と魅せつけたかった。だからミュージックビデオにすごくこだわってきて、映像シングルという形をとってきていたんです。

鈴華ゆう子:私たちは運よく出会ってすぐにメジャーデビューをしたので、インディーズでバンド活動をしていないんです。デビューと同時に普通のバンドよりもスピード感がある中で、海外公演まで経験させていただいたりして…。そういった意味で、この三年余りの活動は“和楽器バンドとは”というのをお互いに理解しあってきた期間だったと思っています。バンドの活動としては2016年に武道館公演、2017年に東京体育館2DAYS公演、全国ホールツアーも終えて、ここからまたリスタートを切ってさらに多くの人に知っていただかなくてはならないという段階に入っていて、お互いの“和楽器バンドとは”がわかったところで今度は映像メインではなく、音をメインに挑戦してみようということから今回シングルで「雨のち感情論」をリリースすることになりました。



――なるほど。毎回ライブで背中に“ひとこと”を書で描いている山葵さん、この曲について背中に書くなら何て書きますか?

山葵:おおっと、予想外のキラーパスきた! うーん…ミュージックビデオでも背中に描いて見せているんですけど、このシングルをひとことで表すならやっぱり“一番星”ですかね。今回1stシングルということで、ある意味リスタートでもあるし気を引き締めなおすというか、一番星になれるように頑張ろうって思いが込められた曲なので。

――作詞作曲は鈴華さんですが、どのような点にこだわって曲を作りましたか。

鈴華ゆう子:今回は“初めて和楽器バンドを聴く人たちにも届いて欲しい”という目標があったので、和楽器バンドらしさも入れつつすごく耳なじみのいい曲にしようと思って作曲しました。難しすぎず聴きやすく、そして絶対メンバーが目立つソロを入れようっていうのは最初から決めていましたね。この曲で和楽器バンドを知った人が他の楽曲も聴いてくれたらいいなと思っています。

――8種の楽器、しかも生楽器の和楽器があると楽曲のアレンジが大変そうなイメージです。

蜷川べに:和楽器隊は「ここでこんなフレーズどうですか」みたいな感じで、自分の楽器の中でいいなと思うアイディアを作曲者に持っていきます。

鈴華ゆう子:そういう意見を聞いたうえで、作曲者と町屋さんが一緒になってアレンジを進めます。和楽器バンドの曲ってすごく転調が多いんですが、本当は和楽器には転調があってなかったりするとか。このバンドの音だけだとコード感が薄くなっちゃうとか。そういうことは町屋さんに相談しています。

町屋:多分ね、僕、このバンドでの役割はライブラリなんです。



――ライブラリとは。

町屋:和楽器バンド図鑑、かな(笑)。こういうアンサンブルのパターンだと音がこう聴こえたとか、この曲はこういうマイクの立て方でこういう風に距離を取ったとか、だいたい全部覚えてるんです。で、レコーディングの現場で思い出してぱっと正解に近い形に持っていけるんで、アドバイスができる。黒流さんの太鼓の掛け声のパターンなんかも全部頭に入ってる。

――そんな町屋さんから見て、「雨のち感情論」はどんな曲でしたか。

町屋:これまでの経験を持ってしても、結構難しい曲でした。アプローチには目新しさはないんですけど、今までの作品で培ってきたいい部分と悪い部分、それをどう補助してアンサンブルを埋めていくかってところに悩みましたね。なので実はぱっと聴きではわからないけど、あるとないのとでは聴こえ方が全然違うっていうアプローチを随所に入れています。和楽器って鳴りやすいキーと鳴りにくいキーがあるとか制限が多いので、その条件を鑑みるとこの曲には苦労させられました。全部の楽器が入って混ざったときにどう綺麗に聴かせるか、というのが和楽器バンドのアレンジのポイントかな。

――そんな苦労があったとはわからないくらい、すべてがしっくり馴染んでいます。

山葵:この曲に限ったことではないんですが、和楽器バンドはドラムと和太鼓という打楽器2つで土台を支えているのも特徴で。ドラムひとりだったら叩くべきところをあえて叩かず、手数を減らして和太鼓のためにスペースを空けたりとか。8人のテクニックを重ねていくというより、上手く引き算しなければいけないんです。ここは和太鼓が生きてる、ここはドラムでなくちゃ、という風に聴きこんでもらえるとおもしろいかもしれません。

いぶくろ聖志:僕は和楽器バンド始まって以来初めて、ソロでギターと絡みました。ギターと箏がどう音色を絡ませてどう抜けていくか、というのは今までの作品にはない聴きどころだと思います。

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