【音踊人 47】DEATH I AMが壊したもの(影井公彦)
『デスメタル』という物に、私はどうしても偏見があった。聴き辛いんじゃないかだとか、メロディがないのはどうなんだろうか、録音状況が良くない物が多いと聞いているがどうなんだろうかだとか……。簡単に言えば頭でっかちになっていた。聴きもせずに決めつけるのは愚の骨頂である。しかし、デスメタルで何から聴いていいのかわからなかった。有名どころを押さえればいいのだろうが、その「有名どころ」がわからない。うんうんと唸っている時に、あるバンドが思い浮かんだ。
「DEATH I AM」
過去に一度だけ観た彼らのライブ。ヴォーカルだけはアメリカ人でその他は日本人、日本に来ている間だけ活動が可能になるという特殊なスタイルだった。それが故に覚えていたのもあり、早速彼らのホームページを探すと、その当時は活動がゆっくりであり、新譜も出ていない状況だった。しかし、「Nanite Swarm」「Stone Fingers」の2曲は無料で聴けるのだという。早速ダウンロードをして、その曲を聴いた。
「なるほど、これがデスメタル……」
新しい世界に触れたのだが、私はそのまま他のバンドを探すこともせずにいつも聴いている音楽ジャンルへと帰って行ってしまった。しかし「DEATH I AM」の名前は自分の心に刻まれており、Twitterでフォローをして時が動くのを待った。
そして、2016年。彼らはセルフタイトルの2ndアルバム『DEATH I AM』を完成させた。現在のメンバーは以下の通り。
Jacob Wilcox(Vo)
Shogo Tsuruda(Gt)
Kaz Niita(Dr)
ベースに関してはサポートでの活動を基本としており、この3人が固定となっている。
「これを聴いたら、何か変わるような気がするんだよな……」
なんでそう思ったのかはわからない。
皮膚の下で何かを感じていた私は、彼らのCDが出るのを待ち、ついにその日が来た。1曲目の「Genetic Scum」を聴いて、感じていた『何か』は皮膚の下から勢いよく飛び出して私を飲み込んだ。隙間なく叩かれるドラムの連打とそこについていくベース、ナイフで突き刺してくるような音を奏でるギター、そして、声の使い分けで色々な表現をするヴォーカル。言葉だけを見れば、情報量の多さにパニックを起こしそうになるが、そんなことは微塵もおこらない。確かに情報量は多く、音はデスメタルなのに、聴きやすいのだ。
ドラムの手数の多さにビックリするが、その一つ一つが聴きやすい。むしろポップにさえ思えてくるから不思議だ。そして、刺激的なメロディを随所に盛り込んでくるギターが楽曲にいい起伏を作っている。トドメに殺傷能力の高いヴォーカルが乗る。聴く者の内に秘めている怒りや悲しみ、負の衝動を全て引きずりだして、音へと昇華して発散させてくれる良質の音楽がこのアルバムには詰まっている。
デスメタル初心者だった私はこのアルバムのおかげで、デスメタルを聴けるようになった。そう、彼らが私の世界を広げてくれたのだ。いいや、むしろ「なんでウダウダ考えているんだ?聴いて、感じて、震えろ」そう言って私の狭い世界をぶち壊してくれたのだ!
彼らは今夏、アメリカでのツアーを企画してるようだ。詳細は明らかになっていないが、楽しみに待とう。人々を震撼させる夏が、やってくるのを。
◆DEATH I AM オフィシャルサイト
◆DEATH I AM オフィシャルTwitter
◆ ◆ ◆
■音踊人(Odoru-Beat)とは?
音踊人は、みなさんの「音楽体験」を募集しています。
ライブレポートやディスクレビュー、お気に入りアーティストの紹介や、お勧めライヴハウスの紹介など、音楽にまつわるモノならなんでも構いません。
あなたの「音楽体験」で新たな音踊人が増えるかもしれません。BARKSと一緒に音楽を盛り上げましょう。
◆ ◆ ◆
この記事の関連情報
【音踊人 56】アクメ、1stワンマンで完全燃焼(めろりずむ♡)
【音踊人 55】「今までとこれから」すべてが繋がり円になる!オメでたい頭でなにより〜ザ・ベストライブ〜(つかさ かなで)
【音踊人 54】<千歌繚乱vol.13>レポート:初めてのV系イベント参戦!(平岡絹&篠田ひかる)
【音踊人 53】<xsprout. #1>レポート:アナタに巡り合うために。(坂井彩花)
【音踊人 52】<xsprout. #1>レポート:若手バンドの渾身の演奏劇(藤井 廉)
【音踊人 51】<xsprout. #1>レポート:8月15日、下北沢にて。(クドウアカネ)
【音踊人 50】魅惑の新エリア登場<JOIN ALIVE 2017>レポート(フェスお姉さん)
【音踊人 48】<夏びらき MUSIC FESTIVAL'17>所沢レポート(マーゴ)
【音踊人 49】<夏びらき MUSIC FESTIVAL'17>福岡レポート(福岡ハナコ)