【音踊人 53】<xsprout. #1>レポート:アナタに巡り合うために。(坂井彩花)
HIP LAND MUSICが主催する新人発掘プロジェクトのライブイベントである<xsprout. #1>が、8月15日に下北沢BASEMENT BARにて開催された。
xsrpout.(エクスプラウト)とは“未知”や“乗算記号(x)”を意味する「x」と、“新芽”や“成長”を意味する「sprout」に由来した造語。その名の通り未知なる可能性を秘めた新芽たちが下北沢に集結する一夜を、一目見ようとチケットはSOLD OUT。当日の会場は、自分の見るスペースを確保するのがやっとなほど人で溢れていた。
▲かたこと
トップバッターを飾ったのは、爽やかな海の風が香る3ピースバンドかたことだ。その伸びやかで力強い歌声を「さよなら十二星座」から届けていく。静と動の濃淡が強く表現され、透明感のなかに強さはここまで共存できるのだということを誇示していた。'80ロックのような懐かしさのある「欠陥品」、セッション力の高さが際立つ「Wonder Trip」と披露していく。「夜の歌を送ります」と告げ始まったのは「夜になる」。メロディックなベースのイントロと晴れた日の水面のようなギターのアルペジオが、艶っぽいロックンロールを鳴らすのに一躍をかっていたのは間違いないだろう。毎回ライブでやっているという「5時20分の帰り道」でロックンロールをかき鳴らし、彼らはステージを去った。
▲The Lump of Sugar
The Lump of Sugarは「ロールプレイングライフ」から、花火が弾けたような明るい音を鳴らした。その明るさとは対照的なほどにアンニュイなボーカルの声が、より一層彼らの世界に引きずりこんでいく。続く「アオリズム」はボーカルエフェクターを効果的に用いた1曲。ピロピロとしたテクニカルなギターソロを弾きこなす姿を見ていると、彼らが未成年だということを忘れてしまいそうになる。「夏の曲をやります」という宣言により導かれたのは、代表曲と言っても過言ではない「Remenber Summer」。青空に向日葵が揺れるような爽やかな楽曲はグルーブ感もバッチリで、太田(Vo/Gt)がいつかの夏を思い出すように歌う姿に胸が締め付けられた。スイング調の「Re-Girl」、今を大事にするというコンセプトで作られた「Nowplaying」を演奏し舞台から姿を消した。
▲SUNNY CAR WASH
続いて登場したのは、特徴的な声と考えつくされたようなリリックにより注目度をあげているSUNNY CAR WASHだ。「それだけ」を演奏し始めた途端、ステージ上の空気がガラッと変える。表情をクルクル変えながら歌う岩崎(Vo/Gt)の姿にのっけから魅了された人も多かったのではないだろうか。息つく間もなく「ハッピーエンド」「サニー」「ワンルーム」「カーステレオ」と熱い演奏を繰り広げていく。この日一番、色っぽい表情を見せたのは「夢で逢えたら」だ。岩崎が届ける甘酸っぱい歌声と虚ろな目線の先には“夢でしか会えないあの子”が立っているようだった。しかし、彼らはセンチメンタルな気分になど浸らせてはくれない。「ティーンエイジブルース」で空気を一気に覆したかと思うと、キラーチューンである「キルミー」へと繋いでいく。いま持っている感情を全て吐き出すようなステージングは、なによりもメンバー自身が楽しそうだった。世界で一番キャッチーに「僕を殺せ」と叫ぶバンドは怒涛の8曲を演奏し、ステージを締めくくった。
▲ユアネス
雨音で導入される「雨の通り道」で、観客を一気に惹きつけたのは福岡のユアネスだ。優しく深い声で紡がれる王道J-ロックは体を揺らしているだけでも気持ちいい。「虹の形」はギターのアルペジオの絡み合いで始まる魅惑的な1曲。中間部ではギターのタッピングとベースのスラップの絡みもあり、王道でありながら個性を意識した曲たちに魅せられていく。美しいファルセットを「cinema」で聴く頃には、どれだけの人が彼らに落ちていたかわからない。「みんなが聴きたかった曲をやります」というアナウンスで始まったのは、RO JACKで優勝を掴み取った「あの子が横に座る」だ。胸を打つ切ない歌詞が、いくつもの瞳が潤ませる。真っすぐな歌声で「pop」、「Bathroom」と歌い上げると彼らは闇に溶けていった。
▲Saucy Dog
甘く優しい弾き語りで幕開けしたのはSaucy Dogだ。1曲目の「煙」から、そのセンチメンタルな世界は展開されていく。石原(Vo/Gt)に促され掲げられた手が、彼らの音楽を求めるように宙を舞っていた。その後も「wake」「ナイトクロージング」と渾身の演奏を披露していく。「別れの曲を」と告げ始まったのは「グッバイ」。石原が拳を掲げ声高らかにイントロを歌い上げる姿は、ミュージカル映画の主役さながら。彼のエモさに後押しされ、会場には「Good bye bey」の大合唱が起こった。ラストを飾ったのは彼らの代表曲である「いつか」。家族への想いをMCで語ったあとに披露されたのもあり、出だしのバスドラから密度の高い音が鳴る。一人一人に語り掛けるように歌う姿は、さらに会場の涙を誘った。映画「耳を澄ませば」のように若い輝きを散りばめたステージで、<xsprout.>の記念すべき第1回を締めくくったのだ。
どのバンドも各々の葉を精一杯ゆらし、大輪をもっと広いステージで咲かせることを誓うような覚悟のあるステージングだった。大反響となった<xsprout.>だが早くも次の開催が決定している。HIPLAND MUSICがオススメする新時代のアーティスト。今見ずして、いつ見るというのだろうか。
写真◎Viola Kam (V'z Twinkle)
<xsprout. #2>
会場:下北沢 ERA
出演:Calmine / STEPHENSMITH / yeti let you notice ...and more
チケット:前売り 2,000円(+1drink) / 当日 2,300円(+1drink)
◆HIP LAND MUSIC 新人発掘プロジェクト「xsprout.」オフィシャルサイト
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