【インタビュー1/3】デフ・レパード「最高なアルバム、それには時間がかかるんだよ」
2015年の『デフ・レパード』は、デフ・レパードをロック界の頂点へと再び導くアルバムとなった。米ビルボード誌トップ・ロック・アルバム部門で1位を獲得、オリコン洋楽チャートでも1位となったこのアルバムは、英クラシック・ロック誌が主宰する『クラシック・ロック・アワード』でも“アルバム・オブ・ジ・イヤー”を受賞。日本を含むワールド・ツアーも大成功を収めている。
◆デフ・レパード画像
そのツアーの熱狂とマジックを捉えたのが、最新ライヴ作品『アンド・ゼア・ウィル・ビー・ア・ネクスト・タイム…ライヴ・フロム・デトロイト』だ。2016年7月15日デトロイト公演をフル収録した本作は、バンドが今もなお最強のライヴ・バンドとして君臨していることを証明している。
そんな復活劇の渦中にあるからか、ジョー・エリオットはいつも以上に雄弁だ。彼のロング・インタビューを3回に分けて公開。まず第1回では、『アンド・ゼア・ウィル・ビー・ア・ネクスト・タイム…ライヴ・フロム・デトロイト』とデフ・レパードとしての活動について語ってもらおう。
──『デフ・レパード』の“アルバム・オブ・ジ・イヤー”受賞、おめでとうございます。
ジョー・エリオット:ありがとう。クラシック・ロック・マガジンの読者が選んでくれたことを喜んでいるよ。選考委員会ではなく、ファンが選んでくれたことは俺たちにとって大きな意味があるんだ。俺たち自身、このポジションに戻ってくるために頑張ったんだよ。アルバムを作り始めてからワールド・ツアーの最終公演まで、約2年がかりのプロジェクトだ。それだけ時間と情熱を注いだプロジェクトが報われて、心が温まる思いだよ。来年数回ショーが決まっているのを除けば『デフ・レパード』に伴うツアーは一段落したから、フィナーレとして最高の気分だ。
──『デフ・レパード』は当初フルレンス・アルバムにするつもりではなかったそうですが、それが“アルバム・オブ・ジ・イヤー”となってしまったのが面白いですね。
ジョー・エリオット:そうそう(笑)。スタジオに入ったときは、とにかく何曲か書いてみるか…という感じで、フル・アルバムを作ることは考えていなかった。今から思えば、それが功を奏したんだ。俺たちが最後にアルバムを作ったのは『ソングス・フロム・ザ・スパークル・ラウンジ』(2008)だった。その後ライヴ・アルバム『ミラーボール』(2011)にスタジオ新曲3曲を収録している。どれも良い曲だったし、俺たちがまだソングライターとして死んでいないことはわかっていたんだ。それでまあ今回も3曲ぐら書けたらいいと考えていた。でも各メンバーがアイディアを持ち寄って、それを形にしていったら、1ヶ月後に12曲が出来上がっていたよ。それが2014年2月のことだった。それから2ヶ月、それぞれが別のことをやっていて5月に再び合流したんだ。そのとき残念ながらヴィヴィアン(・キャンベル/ギター、ヴォーカル)は癌の治療で参加できなかったけど、さらに2曲を書いた。その後KISSとのツアーがあったことで、それらの曲を“寝かせて”熟成させて、ツアー後に本格的にレコーディングしたんだ。そのときはヴィヴィアンがギターとヴォーカルで参加してくれた。締め切りもなかったしレコード会社の介入もない。「ヒット・シングルを書け」と言われることもない。ただ自分たちのやりたいことをやって、リラックスして曲作りができたよ。まず自分たちで満足することが最優先だった。俺たちが楽しんでいるのが、リスナーにも伝わったんじゃないかな。ここ数枚のアルバムでは、『ヒステリア』みたいなことをやるか、あるいは『ヒステリア』を意図的に避けるか…いずれにせよ『ヒステリア』が頭にあったんだ。でも今回は、一瞬たりとも『ヒステリア』のことが頭に浮かばなかった。過去を振り返ることなく、ただ5人の野郎になることができたんだ。だからナチュラルな仕上がりになった。昔のデフ・レパードみたいな曲もあるけど、そりゃそうだよ。俺たちはデフ・レパードなんだからね。AC/DCのアルバムだって毎回“AC/DCのアルバム”だろ?それに加えて、俺たちは自分たちのルーツを隠さなかったんだ。だから「マン・イナフ」がクイーンに似ていると言われても、「うん、そうだよね」と答えられる。「バトル・オブ・マイ・オウン」がレッド・ツェッペリンに似ていると言われたら「まったくその通りだよ」と同意できるんだ。昔の俺たちだったら、そんな影響を包み隠そうとしただろう。でも、元々俺たちだって音楽ファンなんだ。バンドを始めたのだって、好きなバンドを見て、「ああいう風にやりたい」と考えたからなんだよ。たいていは彼らのコピーから始まって、オリジナリティを身につけると、彼らのサウンドが自分たちのDNAにあることを消し去ろうとするんだ。俺たちはそういう時期を過ぎたんだ。さまざまなバンドから影響を受けてきて、それを少しずつ取り入れていくことで、自分たちのアイデンティティが築かれたと考えている。
──そうして作った『デフ・レパード』がアーティスティック面でもコマーシャル面でも成功を収めたことで、これからもフルレンス・アルバムを作ろうと考えましたか?
ジョー・エリオット:まあ、背中を押されたことは確かだ(笑)。今すぐ次のアルバムを作り始めるわけじゃないけどね。『デフ・レパード』の曲を一気に書くことができた理由のひとつとして、2011年から新曲を書いていなかったことがあった。だからいくつもアイディアがあって、そのアイディアを数年かけて熟成させることが可能だったんだ。今すぐアルバムを作るとしたら、まだ熟成していないアイディアを曲にしなければならなくなる。『デフ・レパード』を発表してからKISSやREOスピードワゴン、スティクスなどとツアーしてきたし、これからガスタンクを充填しなければならないんだ。とはいっても、実際やってみなければわからないけどね。もしかしたら1、2曲を書いたら、それが12曲に膨らんでいくかも知れない。まあ焦らずに、じっくりやっていくよ。1970年代にはバンドは毎年アルバムを出して、ツアーもしていたけど、当時のアルバムはデモに毛が生えたような、生煮えのものも少なくなかった。俺たちは全曲が最高なアルバムを作りたいんだ。それには時間がかかるんだよ。
──バンドがオフのとき、ライヴ映像作品『アンド・ゼア・ウィル・ビー・ア・ネクスト・タイム…ライヴ・フロム・デトロイト』がリリースされますが、何故この時期にリリースすることにしたのですか?
ジョー・エリオット:うん、2017年2月に発売になる予定だ。ツアーを始めて、俺がみんなに主張したんだ。最高に楽しんでいるし、ぜひ撮影するべきだってね。演奏もバンド始まって以来のピークだし、お客さんの盛り上がりも凄かった。それに前回ライヴを撮影したのは1988年の『ライヴ!In The Round, In Your Face』だったんだ。『ビバ!ヒステリア』(2013)もあったけど、あれはスペシャルな企画ライヴで、通常のショーとは異なるものだった。それと1993年にシェフィールドのドン・ヴァレイ・スタジアムでのライヴも撮影したけど、TV放映しただけで、市販はしてないんだ。そろそろ新しいライヴ映像作を出しても良い時期だと思った。ザ・ローリング・ストーンズなんて毎月のように何か出してるだろ?
──デトロイトでのライヴを撮影したのは何故ですか?
ジョー・エリオット:『DTEエナジー・ミュージック・シアター』は観客席の後方がオープンになっていて、夏だと夕陽が落ちるのが見えるんだ。そのセッティングが気に入ったんだよ。徐々に日が暮れていくのは妙にテンションが上がって、ショーがパワフルになる。ツアー65公演のひとつだし、完璧ではないけど、リアルなんだ。何も修正しなかった。『ミラーボール』も直さなかったけど、12公演ぐらいからベスト・テイクを選んでいた。だから俺がMCで「ハロー、ソルトレイクシティ!」とか「ニューヨーク!」とか言っているんだよ。今回はデトロイトの1公演を収録している。最近じゃライヴ作品でオーバーダビングできないんだよ。ファンがスマホで撮影してyoutubeで公開するから、発売された映像の音声が異なっていたら、オーバーダビングしたってバレてしまうだろ?もちろんオーバーダビングが必要ないぐらい良いショーだから発売するんだけどね。当日演奏したセットリストも気に入っている。ビッグ・ヒット曲はすべてプレイしているし、新しいアルバムから3曲入っているんだ。
──“アンド・ゼア・ウィル・ビー・ア・ネクスト・タイム”をタイトルにしたのは?
ジョー・エリオット:“see you next time...and there Will be a next time(また次回会おう…必ず次回はあるからね)”という挨拶は、もう30年ぐらいほとんどのショーで言っているんだ。言わなかったショーを思い出せないほどだよ。1988年の『ライヴ!In The Round, In Your Face』でも言っているんじゃないかな?デフ・レパードのファンの間ではもう浸透していて、路上でファンと会って「じゃあ、またね」と言うと、向こうから「必ず“また”はあるからね」と言ってくる。ファンとバンドの合い言葉なんだ。そういうのがあるのは面白いと思う。まあ、マイナスにはならないだろ?アイルランドにデイヴ・アレンというコメディアンがいるんだ。彼は毎回どのショーも“may your God go with you(あなたの神様が一緒に行きますように)”で締めくくっている。彼のどんなジョークよりも、それが記憶に残るんだ。彼が亡くなったとき、新聞やテレビはそのセリフを引き合いに出していたよ。
──ロックンロールの決めゼリフで気に入っているものは?ホワイトスネイクのデヴィッド・カヴァーデイルも毎回ショーの最後に“be safe, be happy, and don't let anybody make you afraid”と言っていますよね。
ジョー・エリオット:俺はデヴィッドだったら“'ere's a song for ya!”の方が印象が強いかな。イアン・ハンターの“don't forget us, we won't forget you”はパクったことがある。すごく強い印象が残っているのはデヴィッド・ボウイの“not only this is the last show of the tour, this is the last show that we'll ever do”だな。ドカーン!とインパクトがあった。毎晩そう言ったわけではなく、1回だけだけど、歴史に残るMCだよ。“一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては巨大な一歩だ”と並ぶ名言だね。ボウイのその1回のMCは、俺が1億回言うよりも強烈なものだった。
──ボウイがそのMCを言ったジギー・スターダスト引退ライヴ(1973年、ロンドン『ハマースミス・オデオン』)にはジェフ・ベックもゲスト出演しましたね。
ジョー・エリオット:そう、「ジーン・ジニー」とザ・ビートルズの「ラヴ・ミー・ドゥ」、それからチャック・ベリーの「ラウンド・アンド・ラウンド」をやった。ジェフ・ベックが許可を出さなかったから映画『ジギー・スターダスト』からカットされてしまったんだよね。今ではyoutubeでも見ることができるけど、昔は苦労してビデオを手に入れたものだよ。
第2回ではジョーが敬愛するデヴィッド・ボウイとモット・ザ・フープル、そして両アーティストに捧げたカヴァー・プロジェクトについて語る。
取材・文:山崎智之
Photo by Ross Halfin assisted by Kazuyo Horie & John Zocco
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1.レッツ・ゴー
2.アニマル
3.レット・イット・ゴー
4.デンジャラス
5.フーリン
6.ラヴ・バイツ
7.アーマゲドン
8.ロック・オン
9.マン・イナフ
10.ロケット
11.ブリンギン・オン・ザ・ハートブレイク
12.スイッチ625
13.ヒステリア
14.レッツ・ゲット・ロック
15.シュガー・オン・ミー
〈アンコール〉
16.ロック・オブ・エイジズ
17.フォトグラフ
ボーナス映像
1.レッツ・ゴー(リリック・ビデオ)
2.レッツ・ゴー(ミュージック・ビデオ)
3.デンジャラス(ミュージック・ビデオ)
4.マン・イナフ(ミュージック・ビデオ)
5.ウィ・ビロング(ミュージック・ビデオ)
【メンバー】
ジョー・エリオット(ヴォーカル)
フィル・コリン(ギター)
ヴィヴィアン・キャンベル(ギター)
リック・サヴェージ(ベース)
リック・アレン(ドラムス)
◆デフ・レパード『アンド・ゼア・ウィル・ビー・ア・ネクスト・タイム… ライヴ・フロム・デトロイト 』オフィシャルページ
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