【インタビュー】Rayflower短期連載最終回、田澤孝介が語る「究極は童話みたいなこと」
■Rayflowerにおいては
■ヴォーカルらしくあろうと
──歌や歌詞を伝えることが一番大事だという意識がありつつ、要所要所に超絶プレイを盛り込むRayflowerのスタイルは本当に魅力的です。特にライヴではSakuraさんとIKUOさんは、その場のフィーリングを活かした演奏をされることが多いみたいですね。
田澤:おおむね音源とは違います(笑)。ライヴでフィルを変えて叩くどころの話じゃなくて、キメ以外は毎回違うんちゃうかな。なんなら、キメでさえ変えてくることがあるし。“ダダダダッ!”というキメなのにドラムだけロールしていたりするんです。でも、それがすごくいい。それにSakuraさんとIKUOさんはお互いが違うことをした時に対する反応がめっちゃ速いんですよ。でね、Sakuraさんは常に歌も聴いているんですね。Sakuraさんのテンションに煽られて僕の歌がブワッと上がると、それを聴いてSakuraさんのドラムもまた上がるんですよ。しかも、これ以上いってはいけないというラインもちゃんとわきまえている、さすがですよね。歌だけじゃなくて僕のMCもめっちゃ聴いているし。僕がファンに向けて感謝の言葉を言う時、彼は必ず立ち上がってお礼をしていますからね。つまり、歌の邪魔をしないようにおとなしいドラムを叩くんじゃなくて、常にヴォーカルを意識しているんです。
──いいドラマーはみなさんそうみたいですね。
田澤:Sakuraさんは多分僕と同じ系統の人間だと思うんですよ。良しとするところが同じというか。だから、Sakuraさんが考えることや、感じることは説明されなくても分かることが多い。イメージ的に怖そうとか、不愛想だとか思われているかもしれないけど、実は繊細なんですよ。大人な部分もありつつ、少年な部分もある(笑)。『TOUR 2015~Color & Play~@品川ステラボール』で言うと、「Shining Garden」みたいなわりと大きめのバラードにSakuraさんの真骨頂が発揮されている気がしますね。ドラムで人を泣かすというのはなかなか出来ることじゃないじゃないですか。Sakuraさんはそれが出来る。本当に尊敬しています。
田澤:最近は抜くほうに意識を置いているかもしれない。それまではどちらかというと常に全力でいきたいタイプだったんですけど、ずっと120%だったら、それって結局ゼロみたいなことになってしまう。40%のところだったり、70%のところがあることで120%が活きるんですよね。そのために歌の抑揚だったり、細かいニュアンスだったりを地味に意識しています。僕はライヴで音源の再現する気はなくて、ステージ上では思ったように感じたままに歌っているんですね。崩すというのとはちょっと違うけど、ライヴでは音源にはないテイストを聴けるようにしたいから。
──音源でもライヴでもエモーショナルな歌を歌われていますが、歌の抑揚やニュアンスなどは感覚でつけるタイプでしょうか? それともレコーディングするにあたって細かく決め込むタイプ?
田澤:録る時は決め込むほうだと思います。歌というのは自分が伝えたいように聴こえないと意味がないと思っていて。たとえば、悲しい気持ちを持って歌うことはすごく簡単ですよね。だけど、それを客観的な耳で聴いた時に悲しい歌になっているとは限らないんですね。それでは意味がない。だから、まず悲しく聴こえるテイクを作るんです。そのうえで、そこに悲しいという気持ちを後から乗せて歌うと、それは本当の歌になる。僕はいつもそういう風にしています。
──感情を伝えるためにはテクニックが必要で、そのうえでさらに気持ちを乗せることがポイントといえますね。
田澤:“こうやったら悲しく聴こえるでしょう?”というだけの歌は嘘じゃないですか。そこにちゃんと悲しいという感情を乗せる。どれだけテクニックがあったとしても感情が入っていなければ、リスナーは気づきますよ。
──さすがです。高いレベルで歌っていますね。
田澤:どうなんでしょうねぇ……自分では……そう思っていますけど(笑)。
田澤:それはやっぱり都さんの存在が大きいですね。たとえば、レコーディングの時もみんなが考えてきたものが合わさって曲の形になった時に、客観的な目で見て、足りないものを加えたり、要らないものを削ったりして、整えているのは都さんなんですよ。都さんが一番客観的にRayflowerというものを見ているんです。
──都さんはRayflowerを俯瞰しているんですね。それにライヴを観て、彼が本当にこのバンドを楽しんでいることを実感しました。
田澤:一緒に演奏したり、作品を作ったりするたびに、凄い熱量を感じるんですよ。都さん自身がどう言っているか分からないけど、彼にとってRayflowerは全てなんじゃないかなという気がしますね。僕は歌詞を書いた時に必ず都さんに見せるし、ヴォーカルレコーディングのディレクションもお願いしているので、多分やり取りしている時間がメンバーの中で一番多いと思う。そういう中でRayflowerへの想いが見えて、僕自身もその想いに応えたいんです。……僕はあまり意識したことがなかったけど、ヴォーカルはリスナーに対して一番大きな入り口なんでしょう?
──えっ? もちろんそうですよ。
田澤:ずっとその辺の意識が希薄だったんです。でも、Rayflowerにおいては、もう少しヴォーカルらしくあろうと思うようになったんですよ。ステージの真ん中に立っているんだという自覚を持たないといけないとか、歌詞ももう少しポピュラリティーのある表現にしないといけないなとか。
──センターに立って歌うだけでは済まされないですし。
田澤:そういうことを意識するようになったのは……「U-TOPIA」を作った時かな。ここらで一皮剥けないとイカンと感じながら歌詞を書いていた時期だったんです。それまでは、歌詞カードを読んだ人に“どういう意味だろう?”と考えてもらうようなものをよしとしていて……それは今もそう思っているけど、もうちょっと言いたいことが分かりやすい歌詞にすべきだなと思ったんです。究極は童話みたいなことなのかな。子供が読んでも面白いし、大人が読むと奥にあるメッセージや想いが分かるという。それが究極のポップなんじゃないかな。
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