【音踊人 10】また来年のユートピアを目指して<RISING SUN ROCK FESTIVAL>(音踊人蝦夷支部長)
今年もライジングサンが終わってしまった。お盆時期の石狩湾新港に現れる、唯一無二のユートピア。広大な土地でなり響く音楽が、そこに足を運ぶ者たちの心を開放へと導く。それがライジングサンだ。
今年は例年にない晴天に恵まれた。だが、その晴天が憎いほどに気温が上がり道産子には堪え、みんなちょっとした我慢をしながら行動したのが今年のライジングサンのように見えた。私も今年は動き回るというよりは、平穏にすごしていた。必ず見たいアーティストを押さえて行動範囲を決めていくことが、この歳でもまだまだライジングサンを楽しむ秘訣だということにも気づいた。
さらに今年は例年になく友人たちと過ごす時間が多かった。例年はマイタイムテーブルを基に、サンステからボヘミアンまで縦横無尽に駆け回っていたが、今年はゆるく行動しようと決めていたこともあり、多くの友達といろいろなステージを回りつつお酒を飲むことができた。ライジングサンで音楽好きな友達と一緒にライブを観て、お酒を飲めることでとても幸福感を得ることができた。
さあ、前置きはここまでにして、数多く見たライブの中で特に印象深く素晴らしかった3アクトをご紹介します。
まず全てが完璧だった「cero×VIDEO TAPE MUSIC」。
昨年は『Obscure Ride』をリリース後、ツアーで札幌を回ってからのライジングサンへの参戦だったが、今年は新作のリリースすらないままでのライジングサンだ。ただ、昨年との絶対的な違いがあり、その違いこそが今年のライジングで彼らが完璧だったことを物語っていたかもしれない。昨年のceroのパフォーマンスも素晴らしかったのだけれど、今年はVIDEO TAPE MUSICと言うレーベルメイトを引き連れてのライブだった。VIDEO TAPE MUSICは映像を駆使しピアニカ等を使ってライブを行うミュージシャンである。cero×VIDEO TAPE MUSICがライブを行ったステージはライジングサンで唯一、映像を駆使しながらライブを行えるレインボーシャングリラだ。そう、ceroの極上なサウンドに、視覚的にも楽しませてくれるVIDEO TAPE MUSICの嗜好を凝らした素晴らしい映像が、相乗効果となりその場に集まったオーディエンスの心を鷲掴みにしていたのだ。
心地よい風が吹き始める時間帯でありながらも、映像をきれいに映すため、サイドの壁はいつもより多く下ろされており、すこし熱気が充満する会場となっていた。それでも、「Summer Soul」のイントロが流れ出した瞬間に、レインボーシャングリラ周辺は清涼感に満ち溢れていた。きっと、ceroだけでの参戦でも去年を凌駕するライブが行われたと思うが、ライジングサンにおいて映像を使い視覚でも感性を揺さぶった今年のステージは完璧というほかなく、またこのコラボを観たいと強く願わずにはいられないライブとなった。
続いては期待度が高かった「Ykiki Beat」。
二日目の深夜、観客に疲労度が見え始めて睡魔が襲ってくる、一番の我慢の時間帯での登場。彼らに音楽の新時代を期待をする若いオーディエンスと、洋楽に通ずるインディーロックの音楽性そのものに期待する年齢層高めのオーディエンスが交じり合っていて、会場全体が「Ykiki Beat」を見定めてみたい。と、いった雰囲気を僕は感じていた。その期待を良い意味で裏切る、クールでありながらもYkiki Beatのセンスや才能を痛感させられるライブを披露した。ライブ序盤で、ギターの弦が切れるハプニングがありつつも、その若さとはかけ離れた圧倒的に凄まじい音を終始響かせていた。
そして、MCで語った言葉を僕は忘れられない。「新しいことをやるだけではなく、古くて良しとされていないものを僕たちは壊していきたい。」というような言葉を残した。この決意のように強い言葉に僕は感動した。そして、その決意を反映していたように感じるのが代表曲「Forever」を外してのセットリストだ。意見は多数あると思うが、この選択が評価を得る時が必ずくる。そして、Ykiki Beatは必ず現状の何倍も大きくなった姿をライジングサンで証明するだろう。
そして、最後は初日、まさかの深夜For Campersでの出演だった、「SPECIAL OTHERS」。
For Campersでの出演が発表された時、スペアザは陽が昇っている時間帯に演奏しているイメージが強かっただけに、深夜のステージを想像することがなかなかできなかった。実際のステージでは、深夜ならでは雰囲気が醸し出されていた。普段の乗りやすいメロディー重視の選曲とは異なり、一曲が長くメンバーがJAMを楽しんでいるようなセットリストになっていた。また、それは、深夜での彼らの登場を待っていたファンには格好の選曲であり、ディープに音楽を楽しめる曲ばかりだった。
じっくりと時間をかけオーディエンスを温め、曲数を重ねるごとに場内の熱量が増していく。それに比例して演奏しているメンバーのテンションも上がっていく。そんな、場内が一つになれるライブをスペアザは作り上げていた。MCでは当日起きた時事ネタを交えなが笑いを取っている様子があり、いつも通りのアットホームな空気を感じることができたのも素晴らしかった。本編が終わり、アンコールで演奏されたのが「AIMS」。この曲に関してもう何も言うことはないだろう。そう、そこにいたすべての人が残された体力をすべて使い切るかのように、体を揺らし踊った。
以上、特に素晴らしかった3バンドの感想です。
他にもSuchmosやPUFFY、Caravan等々、観たアーティストのライブはどれも素晴らしく、心揺さぶられるライブばかりだった。ライジングサン2017に向けて、また新しい一年のスタートが切られた。毎年音楽を楽しむ気持ちが良い方向へと変化しているの感じている。来年は唯一無二のユートピアでどのようにして音楽を聴いているのだろうか。
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