コンピに見るフジロックマジック【検証】フジロックが20年愛され続ける理由 ~レコード会社編~
■ 納得いくものが完成するか心配で寝れなかったです(笑)
──フジロックが作ってきた日本の洋楽シーンを、スポットライト的に切り取ったのがこのコンピ作品なんですね。
関口:であればありがたいですね。我々もけっこうドキドキしながら作ったんで。これで大丈夫かな?とか
──そもそも正解もありませんけど。
関口:入らない曲がいっぱいあって…ワーナー盤には20曲入っているんですけど、これでも相当外したので。でもこれを聴いて「行ったことないけど、フジロックにちょっと行ってみようかな」って思ってくれるとハッピーですね。
竹野:我々からのフジロックへの最大限のリスペクトであることには変わりないです。ユニバーサル盤にザ・キラーズの「Mr. Brightside」が入っているんですけど、あの時のキラーズはそれが初来日でまだ日本盤CDも出てなかった。でも彼らが出てきたらお客さんがぶわーっと増えて、すっごい盛り上がったんです。だから、ああいう瞬間が観れるフジロックの魅力をラインアップで伝えたかった。ザ・ミュージックもレッドマーキーの割と早い時間だったけど入場規制ですごかったなあ。
関口:曲はどうやって決めました? 死ぬほど悩みませんでした…?
竹野:曲選びは死ぬほど悩んだんですけど、曲順は直感。ただジョー・ストラマーだけは最後に入れたかった。1曲目フー・ファイターズだな、とか。
関口:僕もザ・ポーグスだけは最後に入れたいっていうのがあった。
──年代順ではないんですね。
竹野:はい。自分が新幹線で苗場に向かっているところとか、車で向かってるときに聴いてるイメージとか、そんなことを考えながら作りました。
──個人の思いが意外と入っちゃってる(笑)。
竹野:あんまり大きな声で言えないですけど…入ってますね(笑)。
関口:入ってますよねぇ。見る人が見れば趣味や志向が分かりますから、ちょっと恥ずかしいです(笑)。
竹野:ここだけの話ですけど、自分で選曲しておいて、ちょっとアッパーな曲ばっかりにしすぎたかなと(笑)。
関口:ソニック・ユース「Sunday」とかは、性格出てると思いますよ。
竹野:そうそう(笑)。でも本当はその次にクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ「No One Knows」を入れてたんですよ。
関口:最高じゃないですか!
竹野:アメリカン・オルタナティブ枠で入れたかったけど、どうしてもCDには入らなくて。だって、フーファイがいて、ソニック・ユースがいて、イギー・ポップがいればクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジは入れなきゃいけないでしょ。その流れがあったらやっぱりプライムスだろうみたいな…完全に趣味ですよね。デジタルではここが活かせたのでよかったな、と(笑)。
──これまでもたくさんのコンピを作ってきたおふたりですが、今回の思い入れは随分深いもののようですね。
竹野:責任も重大でしたね。
関口:やるって言ってから一週間後くらいに「これはヤバイ」と。納得いくものが完成するか心配で寝れなかったです(笑)。
竹野:結局これで良かったのか?…とかありましたよね。でも、「フジロックすげぇな」という僕らのリスペクトがあって、それが素直に出て、素直に出過ぎた部分がちょっと主観として出てるみたいな(笑)、そういう感じじゃないですかね。
──SMASH側のチェックってあったんですか?
竹野:もちろんトラックリストは見せましたけど、特にそこに関してはお任せしますみたいな感じで、とても信頼してくださっていた。
関口:そこは本当に嬉しかった。
竹野:アートワークも「素晴らしい、ありがとうございます」みたいな感じで、一発OK。
──信頼関係ですね。
関口:あとね、ライナーノーツとして日高さんが解説している文はぐっときました。
竹野:日高さんが最初10年、後10年を解説してるんです。
関口:そこにはアーティストにまつわるエピソードも出てくるんですけど、それが選曲に反映されたりもしています。中に歴代のポスターのデザインが入ってるんですけど、それも見てて飽きないですよ。思い出すなあ。
──許諾の問題で収録できないものもあるわけで、収録曲を見て「もう、わかってねぇなあ」って言う人もいるでしょうね。
関口:それはしょうがないですよ。
竹野:逆に訊きたいです。それを募集、試作してもいいかもしれない(笑)。じゃあ貴方のフジロックを教えてください、って。このコンピ、“フジロックの20年、僕らの20年”というキャッチにしたんですけど、「あの時こうだったんだよね」みたいな話を思い出して、みんながフジロック談義をできる機会になればいいなと思います。
──プレイリスト作るのは勝手ですからね。
竹野:俺のフジロック・コンピみたいな(笑)。みんながラインナップを挙げたら面白いかもしれないですね。
関口:実際、僕、作ってますからね(笑)。
竹野:みんなで自慢しあいませんか?みたいな企画、今度やりましょうか。「我々が審査します」とか言いながら「負けました」ってなったりして(笑)。
──2017年の出演ラインナップの妄想もいいですね。「俺がSMASHだ」企画。
関口:それ最高だなあ。
竹野:とにかくこの2枚があれば、居酒屋で何時間でも話できますよ。是非楽しんでください。
◆ ◆ ◆
BARKSでこのフジロック特集を始動した当初、「フジロックの敷居は高い」と言われているのであれば、その要因のひとつになっているのがフェスの主役である“洋楽”なのかもしれないという仮定がよぎった。もはや当たり前になっている豪華かつ時代性に富んだ海外アーティストのラインナップは、フジロック最大の魅力である。だが、若者の洋楽離れが唱えられて久しい今、普段洋楽を聴かない人々にとっては、その重要性を理解するのはなかなか難しいことなのではないだろうか……そんな難題を胸に、取材に向かったのである。
だがこのインタビューから、洋楽を生業にしている人々であっても、フジロックの前ではいかに無邪気な音楽ファンに戻ってしまうかがお分かりいただけたのではないだろうか。そんなマジカルな空間こそがフジロックだ。そのフジロックの20年を理解するバイブルとして、今回のコンピは是非手にとってみて欲しい。日本を代表するレコード会社の洋楽部が、自分の趣味性を入れてしまうほど熱心に作り上げた本作が、必ずや新たな音楽の扉を叩いてくれることだろう。そして二人が提案したように、ラインナップに異を唱えるフジロッカーはオリジナル版を構想し、自分とフジロックの濃密な関係性を楽しんではいかがだろうか。
取材・文:BARKS編集長 烏丸哲也
◆ ◆ ◆
『FUJI ROCK FESTIVAL 20TH ANNIVERSARY COLLECTION (1997-2006)』
2016年6月29日発売
UICO-4051 ¥2,500+税
CD及びデジタル・アルバムとして発売(収録楽曲はCD、デジタルによって異なります)
発売元:ユニバーサル ミュージック合同会社
【TRACK LIST】
1.Foo Fighters / Everlong
2.Beck / Where It's At
3.The Chemical Brothers / Hey Boy Hey Girl
4.Jack Johnson / The Horizon Has Been Defeated
5.Primal Scream / Rocks
6.The Killers / Mr. Brightside
7.Sonic Youth / Sunday
8.Elvis Costello / Alison
9.Scissor Sisters / I Don't Feel Like Dancin'
10.Weezer / El Scorcho
11.Elliott Smith / Happiness / The Gondola Man
12.Iggy Pop / Lust For Life
13.Kula Shaker / Hey Dude
14.Massive Attack / Special Cases
15.Underworld / Born Slippy (NUXX) (Short)
16.Ocean Colour Scene / Hundred Mile High City
17.The Music / The People
18.Joe Strummer & The Mescaleros / Tony Adams
■HP www.universal-music.co.jp/international
『FUJI ROCK FESTIVAL 20TH ANNIVERSARY COLLECTION (2007-2016)』
2016年6月29日発売
WPCR-17388 ¥2,500+税
CD及びデジタル・アルバムとして発売(収録楽曲はCD、デジタルによって異なります)
発売元:株式会社ワーナーミュージック ジャパン
【TRACK LIST】
1.Red Hot Chili Peppers / Dani California
2.JET / Are You Gonna Be My Girl
3.Fun. / We Are Young (feat. Janelle Monáe)
4.Jason Mraz / I'm Yours
5.Coldplay / Yellow
6.Twenty One Pilots / Guns For Hands
7.The John Butler Trio / Better Than
8.Lily Allen / Smile
9.Mutemath / Blood Pressure
10.Foals / Balloons
11.The Stone Roses / She Bangs The Drums
12.Ride / Chelsea Girl
13.Ash / Shining Light
14.Primal Scream / Can't Go Back
15.My Bloody Valentine / Only Shallow
16.JUSTICE / D.A.N.C.E.
17.Skrillex / Bangarang (feat. Sirah)
18.MGMT / Kids
19.The Flaming Lips / Do You Realize??
20.The Pogues / Fiesta
■HP wmg.jp/artist/fujirock20th/
@新潟県 湯沢町 苗場スキー場
※各券種、受付などの詳細はオフィシャルサイトへ http://www.fujirockfestival.co
──フジロックが作ってきた日本の洋楽シーンを、スポットライト的に切り取ったのがこのコンピ作品なんですね。
関口:であればありがたいですね。我々もけっこうドキドキしながら作ったんで。これで大丈夫かな?とか
──そもそも正解もありませんけど。
関口:入らない曲がいっぱいあって…ワーナー盤には20曲入っているんですけど、これでも相当外したので。でもこれを聴いて「行ったことないけど、フジロックにちょっと行ってみようかな」って思ってくれるとハッピーですね。
竹野:我々からのフジロックへの最大限のリスペクトであることには変わりないです。ユニバーサル盤にザ・キラーズの「Mr. Brightside」が入っているんですけど、あの時のキラーズはそれが初来日でまだ日本盤CDも出てなかった。でも彼らが出てきたらお客さんがぶわーっと増えて、すっごい盛り上がったんです。だから、ああいう瞬間が観れるフジロックの魅力をラインアップで伝えたかった。ザ・ミュージックもレッドマーキーの割と早い時間だったけど入場規制ですごかったなあ。
関口:曲はどうやって決めました? 死ぬほど悩みませんでした…?
竹野:曲選びは死ぬほど悩んだんですけど、曲順は直感。ただジョー・ストラマーだけは最後に入れたかった。1曲目フー・ファイターズだな、とか。
関口:僕もザ・ポーグスだけは最後に入れたいっていうのがあった。
──年代順ではないんですね。
竹野:はい。自分が新幹線で苗場に向かっているところとか、車で向かってるときに聴いてるイメージとか、そんなことを考えながら作りました。
──個人の思いが意外と入っちゃってる(笑)。
竹野:あんまり大きな声で言えないですけど…入ってますね(笑)。
関口:入ってますよねぇ。見る人が見れば趣味や志向が分かりますから、ちょっと恥ずかしいです(笑)。
竹野:ここだけの話ですけど、自分で選曲しておいて、ちょっとアッパーな曲ばっかりにしすぎたかなと(笑)。
関口:ソニック・ユース「Sunday」とかは、性格出てると思いますよ。
竹野:そうそう(笑)。でも本当はその次にクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ「No One Knows」を入れてたんですよ。
関口:最高じゃないですか!
▲ユニバーサル竹野竜治氏 |
──これまでもたくさんのコンピを作ってきたおふたりですが、今回の思い入れは随分深いもののようですね。
竹野:責任も重大でしたね。
関口:やるって言ってから一週間後くらいに「これはヤバイ」と。納得いくものが完成するか心配で寝れなかったです(笑)。
竹野:結局これで良かったのか?…とかありましたよね。でも、「フジロックすげぇな」という僕らのリスペクトがあって、それが素直に出て、素直に出過ぎた部分がちょっと主観として出てるみたいな(笑)、そういう感じじゃないですかね。
──SMASH側のチェックってあったんですか?
竹野:もちろんトラックリストは見せましたけど、特にそこに関してはお任せしますみたいな感じで、とても信頼してくださっていた。
関口:そこは本当に嬉しかった。
竹野:アートワークも「素晴らしい、ありがとうございます」みたいな感じで、一発OK。
──信頼関係ですね。
関口:あとね、ライナーノーツとして日高さんが解説している文はぐっときました。
竹野:日高さんが最初10年、後10年を解説してるんです。
▲ワーナー関口裕之氏 |
──許諾の問題で収録できないものもあるわけで、収録曲を見て「もう、わかってねぇなあ」って言う人もいるでしょうね。
関口:それはしょうがないですよ。
竹野:逆に訊きたいです。それを募集、試作してもいいかもしれない(笑)。じゃあ貴方のフジロックを教えてください、って。このコンピ、“フジロックの20年、僕らの20年”というキャッチにしたんですけど、「あの時こうだったんだよね」みたいな話を思い出して、みんながフジロック談義をできる機会になればいいなと思います。
──プレイリスト作るのは勝手ですからね。
竹野:俺のフジロック・コンピみたいな(笑)。みんながラインナップを挙げたら面白いかもしれないですね。
関口:実際、僕、作ってますからね(笑)。
竹野:みんなで自慢しあいませんか?みたいな企画、今度やりましょうか。「我々が審査します」とか言いながら「負けました」ってなったりして(笑)。
──2017年の出演ラインナップの妄想もいいですね。「俺がSMASHだ」企画。
関口:それ最高だなあ。
竹野:とにかくこの2枚があれば、居酒屋で何時間でも話できますよ。是非楽しんでください。
◆ ◆ ◆
BARKSでこのフジロック特集を始動した当初、「フジロックの敷居は高い」と言われているのであれば、その要因のひとつになっているのがフェスの主役である“洋楽”なのかもしれないという仮定がよぎった。もはや当たり前になっている豪華かつ時代性に富んだ海外アーティストのラインナップは、フジロック最大の魅力である。だが、若者の洋楽離れが唱えられて久しい今、普段洋楽を聴かない人々にとっては、その重要性を理解するのはなかなか難しいことなのではないだろうか……そんな難題を胸に、取材に向かったのである。
だがこのインタビューから、洋楽を生業にしている人々であっても、フジロックの前ではいかに無邪気な音楽ファンに戻ってしまうかがお分かりいただけたのではないだろうか。そんなマジカルな空間こそがフジロックだ。そのフジロックの20年を理解するバイブルとして、今回のコンピは是非手にとってみて欲しい。日本を代表するレコード会社の洋楽部が、自分の趣味性を入れてしまうほど熱心に作り上げた本作が、必ずや新たな音楽の扉を叩いてくれることだろう。そして二人が提案したように、ラインナップに異を唱えるフジロッカーはオリジナル版を構想し、自分とフジロックの濃密な関係性を楽しんではいかがだろうか。
取材・文:BARKS編集長 烏丸哲也
◆ ◆ ◆
2016年6月29日発売
UICO-4051 ¥2,500+税
CD及びデジタル・アルバムとして発売(収録楽曲はCD、デジタルによって異なります)
発売元:ユニバーサル ミュージック合同会社
【TRACK LIST】
1.Foo Fighters / Everlong
2.Beck / Where It's At
3.The Chemical Brothers / Hey Boy Hey Girl
4.Jack Johnson / The Horizon Has Been Defeated
5.Primal Scream / Rocks
6.The Killers / Mr. Brightside
7.Sonic Youth / Sunday
8.Elvis Costello / Alison
9.Scissor Sisters / I Don't Feel Like Dancin'
10.Weezer / El Scorcho
11.Elliott Smith / Happiness / The Gondola Man
12.Iggy Pop / Lust For Life
13.Kula Shaker / Hey Dude
14.Massive Attack / Special Cases
15.Underworld / Born Slippy (NUXX) (Short)
16.Ocean Colour Scene / Hundred Mile High City
17.The Music / The People
18.Joe Strummer & The Mescaleros / Tony Adams
■HP www.universal-music.co.jp/international
2016年6月29日発売
WPCR-17388 ¥2,500+税
CD及びデジタル・アルバムとして発売(収録楽曲はCD、デジタルによって異なります)
発売元:株式会社ワーナーミュージック ジャパン
【TRACK LIST】
1.Red Hot Chili Peppers / Dani California
2.JET / Are You Gonna Be My Girl
3.Fun. / We Are Young (feat. Janelle Monáe)
4.Jason Mraz / I'm Yours
5.Coldplay / Yellow
6.Twenty One Pilots / Guns For Hands
7.The John Butler Trio / Better Than
8.Lily Allen / Smile
9.Mutemath / Blood Pressure
10.Foals / Balloons
11.The Stone Roses / She Bangs The Drums
12.Ride / Chelsea Girl
13.Ash / Shining Light
14.Primal Scream / Can't Go Back
15.My Bloody Valentine / Only Shallow
16.JUSTICE / D.A.N.C.E.
17.Skrillex / Bangarang (feat. Sirah)
18.MGMT / Kids
19.The Flaming Lips / Do You Realize??
20.The Pogues / Fiesta
■HP wmg.jp/artist/fujirock20th/
<FUJI ROCK FESTIVAL'16>
@新潟県 湯沢町 苗場スキー場
※各券種、受付などの詳細はオフィシャルサイトへ http://www.fujirockfestival.co
この記事の関連情報
【ライブレポート】フェスの改革と変化。音楽フェス文化を次世代へつなぐ<フジロック>の現在地
【ライブレポート】感嘆のようなどよめきと「キラーズすごい…」という呟き
【インタビュー】Amazon Music、<フジロック'24>を完全無料で独占生配信するワケ
<FUJI ROCK FESTIVAL’24>、前日7月25日(木)は入場無料の前夜祭
【インタビュー】進化し続ける<フジロック フェスティバル>、変わらないのは「無駄」なこと
<FUJI ROCK FESTIVAL’24>、Prime VideoとTwitchで無料独占生配信
<フジロック'24>、最終ラインナップとタイムテーブル発表
<フジロック'24>ラインナップT-shirt5種類、加えてゴンちゃんロンパースも登場
<フジロック'24>第4弾でくるり、KING KRULE、Awich、syrup16g、渋さ知らズオーケストラ