【ライブレポート】SKY-HI、初のホールツアーが終了。「せっかくだから、最後まで最高に生きてやろうぜ、なあ!」

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SKY-HIの、初めてのホールツアー<SKY-HI HALL TOUR 2016 ~Ms. Libertyを探せ~>ファイナル公演が、3月13日にTOKYO DOME CITY HALLにて開催された。

◆<SKY-HI HALL TOUR 2016 ~Ms. Libertyを探せ~>ファイナル画像

最新曲「Ms.Liberty」のミュージックビデオの世界観を踏襲したように、松田優作演じる工藤俊作(『探偵物語』より)の声が流れる開演前。「ライバルは映画」と語り、各方面から絶賛されたアルバム『カタルシス』を引っさげて行なわれるツアーとあって、今回はどんなステージを見せてくれるのか。各地で観客から持ち込まれたそんな総動員1万3000人分の大きな期待に対して、SKY-HIはことごとくそれを上回る公演を展開してきた(もっとも、3000人分の期待に対しては、この日のファイナル公演で、SKY-HIがその上を行くステージを披露してみせた。また同公演にはニコニコ生放送の配信が入っており、それを合わせるとさらに約4万人分の期待が上乗せされることになるが、もちろんこれをも上回るライブを披露したことは言うまでもない)。

そしてファイナルが開演。紗幕に“眠らぬ街 TOKYO”の摩天楼がスクリーンに投影されて、その向こう側にSKY-HIが浮かび上がる。光と影を効果的に用いたライブは、「フリージア ~Prologue~」を経て、大きく両手を広げる。そして「さあ、はじめようか、東京。君を、君を、君の人生をひっくり返しに来たぜ。」の一言で、いよいよその幕が上がっていった。

稀代のトリックスター、東京の街へと再び降臨。


今回のセットはというと、スーパーフライヤーズ(SKY-HIバンド)をステージの中央に配置するのみ。バンドが生み出すグルーヴとダンサーズのパフォーマンス、そして自分さえいれば、もうそれだけで集まった約3000人のオーディエンスの人生をひっくり返す瞬間を演出するのに要素は十分。そんな自信に満ちた、惚れ惚れするほどに堂々たる佇まいだ。

「今日のライブは俺たち何千人だけのものじゃない。その向こうに何万人がいて、その次のツアー、次のツアーとかのどんどんとつながっていく大事な一歩だと思うから、一緒に、そうだな……一緒に、時代でも創るか。」

「愛ブルーム」「スマイルドロップ」と軽やかに、しなやかにステージを舞ったSKY-HIからは、こんな言葉も飛び出して、会場の大歓声を誘う。ともすれば“ビッグマウス”とも取られかねない発言。しかしSKY-HIは、これまでも数多くの大胆不敵を繰り返しては、しっかりとした着地点を我々に提示してきた。言うなれば、未来にしっかりと照準を合わせているからこその言葉。だから、我々はこの男にワクワクさせられっぱなしである。


「Limo」から始まる“Party Night Zone”、略して“PNZ”では、これまで封印していた“指示をする形での観客煽り”を解禁(ライブでは、自分自身が一番楽しめる楽しみ方で楽しんでほしい、というのがSKY-HIの基本的な考え)。「飛び跳ねろ!」という声で、ぎっしりと埋め尽くされたフロアは、その興奮度合いを表現するかのようにビートに合わせて激しく脈打つ。一方で、SKY-HIは、4人のダンサーと息のあったダンスを見せながら言葉を放っていく。まさに、歌って踊れるラッパーの面目躍如といったところ。

しかしながら、SKY-HIは黒のスーツが実によく似合う。まあこれは余談だが。

そんな熱狂ゾーンのラストは、下手後方に陣取るSKY-HIバンドのブラス隊“タイガーホーンズ”が前に出てきての、テッパンチューン「Tumbler」。これでもかと引き上げられた会場の熱量をタオル回しで巨大な渦へと変化させてみせた。

「すげー、いい顔してたよ君たち。ものすごいエネルギーを感じ取れたこと、とても嬉しいです。」

「みんなでそれぞれの楽しいを作れたらなって思います。楽しいって感情はすごい尊いし、すごい大切にしたいし、そうありたいと思うものだと思うんだよな。だってそれは……いつ消えてなくなっちゃうかわかんないから。」

空気をガラリと変えて、実体験をもとに死について綴った「Luce」では、紗幕に映像を投影して、水の中、気泡に包まれながら歌っているような幻想的な演出でも魅せていく。“久しぶりに君に手紙を書いてる”シーンから始まる「Young, Gifted and Yellow」では、線画で描かれた渋谷らしき街並みが流れ、SKY-HIはストーリーテラーに徹している。

思えばSKY-HIは、これまでもミュージックビデオで様々な手法を用いて世界観を構築してきた。そのスタンスはライブでも変わることなく、ここでは映画のような情景でオーディエンスの視線を釘付けにしていった。

高速ラップが火を噴く「Tyrant Island」から「F-3」、そして「Enter The Dungeon」で再び言葉の銃弾と気迫をマシンガンのように四方八方にばら撒き、「かかってこい!! 東京!」と、客席の興奮を次々に撃ち抜いていく。そうかと思えば、壮大なメッセージチューン「RULE」では、「今、生きてるって奴、どんだけいる? 自分の人生を生きてるって奴、手のひら見せてくれよ!」とシャウトし、SKY-HIは逆光の中で、ただひたすらに、生きること、生きることの矛盾、生への執念をアジテートし続ける。

「一個だけ言い切れることがあるよ。君が、君の人生を生きて、今日、君の足でここにきてくれた。俺は、俺の人生を生きて俺の音楽を鳴らし続けてきた結果、今日、君の人生に触れることができた。これより尊いものってないって言い切れるぜ。最高の気分だって言えるよ。なあ、どんな形かわかんないけど、ここまで生きてきたんだろ。せっかくだから、最後まで最高に生きてやろうぜ、なあ!」

強烈な叫びが会場を揺るがして、そして我々は思わず息を飲む。どこまでも直球勝負。自身の言葉、強い信念で、人生を、運命を殴り倒してでも進まんとするSKY-HIの覚悟が投影された、その圧倒的なまでの姿。

かつて掲載したライブレポートに、<SKY-HIの後ろには、何かもっと大きな存在があった>と記したことがあった。それはSKY-HIの体を借りて語る何が大きな存在だったのかもしれないし、大きな存在をも飲み込んだSKY-HIだったのかもしれない。そんな哲学のような、宗教のような、はたまた人の願いや想いの類のような思考が頭をよぎる。

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