【インタビュー】kyo [D'ERLANGER]、「デビュー前みたいな時間を4人でシェアした」

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■経験という財産もたくさんあるし、強さも持ってる
■それでもまだ4人で初めて経験することがあると、より強くなれる

──でも、本当に偶然と必然が常に背中合わせになってますよね。25周年がこのタイミングで訪れたこともそうだし、そこで再録されたあの2曲がまったく浮き上がっていない。これってある意味、異常なことでもあると思うんです。

kyo:僕もそう思います。それもまたバンドの持つ懐の深さなのかなって思うんですよね。なんか、セルフ・カヴァーとかって、リアレンジするのが当然のようになってしまってる。でも、CIPHERが言うのは、そんなのは自分たちのエゴでしかないってことで。こんなこともできるんですよ、というのを見せつけることでしかないというか。でも「LULLABY」とか「DARLIN’」というのは、やっぱりみんな昔のままのアレを聴きたいんだし、アレがいちばんカッコいいと思うんだから、それを録ればいいんだって彼は言うんです。まさにその通りだと思うし、楽曲を作る人、アレンジをする人、バンドをプロデュースする人がそれを言い切れるっていうのは、まさに懐の深さだと思うんですよ。

──リアレンジがめんどくさいわけではなく?(笑)

kyo:そうか。そういう理由がある可能性は考えつかなかった(笑)。

──冗談はともかく、要するにどちらの曲も最初から究極形だったわけですよ。

kyo:ホントにね、「あの時のアレにかなうわけがないんだから」って言い切れるのが潔いでしょ? それは自信があるからこそ言えることだし。しかも、その2曲が主役であとは脇役というアルバムにしたいわけじゃないから。結果、時間軸が違ったものが入った時に1枚のアルバムになるっていう強さみたいなものが出たと思うんです。

──ええ。ある意味、ベスト・アルバムみたいな匂いも感じたんです。これまでのベスト選曲と混ぜた時に馴染みの良さそうな曲たち、ということでもあるんですけど。

kyo:ああ、なるほど。そこがまた偶然の必然というか、無意識の強さなんですよね。狙わない強さというか。やっぱりその時その時にカッコいいと思うもの、やりたいもの、自分たちのなかで旬なものをパッケージするっていう作り方のままだし、そういった向き合い方はこれまでのどの作品とも変わらないわけで。ただ、やっぱり今回の場合は、今までと違う環境で録った経験というのがある。その作用がすごく大きかったと思うんですね。それがなかったら、さっきも言ったように、“愛”を“愛”としてストレートに歌うっていう勇気が出たかどうかはわからないし。

──本当にそこに尽きるところがあるんですね。実際、今作のデラックス・エディションに付いてくるDVDにはL.A.での様子も収められていますけど、確かにあの場の空気感というのがすごく伝わってきます。

kyo:それは良かった。結局、まず何が嬉しいかって、初めて経験することが多いっていうのがとにかく嬉しいんですよ。若い時に経験する感じとは明らかに違うんだろうなというのがすごくあって。

──この期に及んでこんなことを新たに経験できるなんて、みたいな?

kyo:そうそう、まさにそういう感じ。

──しかもその新しいことというのは、かつてのD’ERLANGERがやり残したことというのとも違うはずだと思うんです。

kyo:そうなんですよね。だから……ホントにもうベテランですから(笑)、いろんな経験もしてきてるし、そういう意味ではすごく財産もたくさんあるし、強さも持ってる。だけど、それでもまだ、4人で初めて経験することがあったりすると、よりいっそう強くなれるっていうか。なんかね、そういう高揚感みたいなもの、“躍った気持ち”みたいなものが、このアルバムが完成へと向かう過程にすごく大きな作用を果たした気がするんです。

▲@L.A.レコーディング

──改めて整理をしておくと、まず2曲ほどこれまでライヴで演奏してきた新曲もあったうえで、L.A.で3曲を録り、帰国後に他の曲のプリプロが始まっているわけですよね。アルバムのトーンみたいなものが、L.A.での作業を通じて見えてきたというところがあったわけですか?

kyo:どうなんだろう? 変な話ですけど、僕らって相変わらず「次のアルバムはどうする?」みたいな話はあんまりしないんですよ。本当に、しないんです(笑)。でも、やっぱり向こうで見たこと、経験したことによって生まれ得たものというのがあるはずだし、たとえばアルバムの曲で言うと、「CRAZY4YOU」とかもきっとそうだろうなと思う。なんか、無言のうちに何かを共有しながら作っていった感じではありますね。

──共有するものがあったからこそ、特に話し合いや意見のすり合わせがないまま、全員が同じ方向を向いていたというか。

kyo:そう。結果、いつも同じ方向を向いてるんですよね。

──面白いですよね。統制がとれている、というのとは違う気がしますし。

kyo:そうなんですよ。バラバラのようでいて結果、同じところを見てるというか。もちろん漠然としたイメージについてCIPHERと話したりすることはあるんです。たとえばL.A.に飛び立つ直前、空港で「実は“狂おしい夜について”というワードがあってさ」という話が彼からあったり。「これを投げといたら何かいじくるだろうと思ったから言ってみたんだけどさ」みたいなふうに言われて(笑)。そうやって言われた瞬間に広がるんですよね。のちにプリプロに取り掛かった時に、「あっ、この曲にはあの時の言葉を乗せられるな」と思わされるものがあったり。そういう閃きと嵌まりの良さっていうのは、今までよりも多かったかもしれない。

──ちなみに古い曲を再録するにあたってこの2曲を選ぶことについては、話し合いは持たれたんですか?

kyo:ぶっちゃければ、レコード会社からのアイデアでありリクエストですね。そこはやっぱり25周年ということで、プロモーションの材料にもなり得るわけで。でも同時に、これは25周年の年に出るアルバムだからこそできることだし、今しかできないことでもある。言葉に出して確認することはしなかったけど、みんなそういう感覚はあったはずだと思うんですよね。あと、通常盤のほうに入ってる「Candy In The Shape Of You-2015-」(原曲は『#Sixx』に収録)について言うと、当初の予定ではあの曲を再録するつもりではなかったんです。そもそもは「SWEET EMOTION」を録ろうと思ってた。でも、先に2曲録った時の空気感だったりとかを踏まえたうえで、Tetsuのほうから「こっちで、バラードをパッケージしてみたい」という提案があって。「無茶ぶりなんだけど、どういうふうに響くのか聴いてみたいんだ」と。で、「いいんじゃない? じゃあそうしようよ」ということになったんです。だから、後先考えてなかったんですよ。その場の空気で、思ったことを行動に移しただけなんです、あの曲については。録ってきたけどどうすんのよ、みたいな(笑)。

──25年前に生まれた2曲については「DARLIN’-2015-」、「LULLABY-2015」としてここに収められているわけですけど、実際、こうして改めて音源にしてみて、どう感じましたか?

kyo:何だろうな。昔の曲っていう感覚がないというか。まあ「DARLIN’」は、2010年にもセルフ・カヴァーを録ってるんで、そのせいもあるのかもしれないけど。ただ、やっぱり20数年前とかの曲を新たに録るとなると、大概の場合はエッジが削れて落ち着いた感じになるもんだけど、そうじゃないのがすげえなって自分でも思いますね(笑)。過去と比較する感覚というのはあんまりないんです。まあ「LULLABY」はホントにあの当時以来の録音ということになるんで……。当時はもう、レコーディングで苦しんだ思い出しかないですからね。だから「ああ、俺も成長したのね」みたいな感慨深さもあるにはありますけど(笑)。でもやっぱ、この曲もライヴでやってきてるわけだし、普通にセットリストに入ってたりするわけですからね。しかも違和感なくやっているわけで。ホントにそういう感じなんです。

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