【ライヴレポート】<V系って知ってる?>、7時間越え全47曲の熱狂と尊いセッションの数々「後世につなげていく」
新イベント<V系って知ってる? powered by MAVERICK DC GROUP>が12月27日、日本武道館にて開催された。毎年12月27日は、MAVERICK DC GROUP主催年末恒例イベント<JACK IN THE BOX>が日本武道館で実施されているが、2022年は<V系って知ってる?>というタイトルのもと、ヴィジュアルロックに敬意を込めて、“V系の再興”をテーマにしたもとして立ち上げられたイベントだ。同公演のオフィシャルレポートをお届けしたい。
◆<V系って知ってる?> 画像
敬愛に篤愛、信愛と慈愛、あるいは盲愛や偏愛。さまざまなかたちの愛が、その空間の中には繚乱としながら交錯し、ひたすらに満ち溢れていたのだった。“Visual Rockに敬意を込めた大型イベント”として、このたび日本武道館にて7時間以上にもわたるスケール感で開催されたのは、その名も<V系って知ってる? powered by MAVERICK DC GROUP>。
オーガナイザーをつとめたのはDEZERTのSORA (Dr)で、彼としては名だたる先輩アーティストたちからこれまでに受けた多大なる恩や愛を、このイベントを通して返していくことを目指したのと同時に、自らがヴィジュアル系バンドを10年以上も長く続けて来ていることに対しての誇りと矜持を持つからこその訴求点として、この“V系って知ってる?”という言葉を世に投げ掛けたかったのだという。
数ある音楽カテゴリーの中でも、日本発のサブカルチャーとしての特異な独自性を持ち、今やその歴史も30年以上となってきたVisual Rock/ヴィジュアル系/V系の世界はなかなかどうして奥深い。その証左として、今回このタイミングで行われた<V系って知ってる?powered by MAVERICK DC GROUP>は、ここまでの時代変遷なども踏まえながら実に多角的なかたちでシーンの過去と今現在、そしてここからの未来をも予兆させるような興味深い内容となっていたうえ、公演前にはチケットも見事ソールドアウト。ある意味、この<V系って知ってる?>は大きな転換点になっていく可能性が高そうだ。
▲アルルカン
感情過多で愛情過多。これはいずれも褒め言葉となるが、今回<V系って知ってる?>の一番手として登場するやいなや、ヒリつくような鬼気迫るパフォーマンスで昼下がりの武道館に集った観客たちの心を掌握することになったアルルカンは、ポエトリーリーディングを主体とした楽曲「PICTURES」で即興的な歌詞を場内に響かせ、「たくさんの期待を持って今日、君たちはここに来た。僕たちもたくさんの想いを持ってここに来ました。そこにあるのは敬意と野心!」と、まずは自分たちの本音を赤裸々なかたちでさらけ出してみせることに。
そして、その後にはMUCCの25周年、D'ERLANGERの再始動15周年、girugameshの限定復活を祝しながら「先輩たちがくれたものの上に僕たちは今いることが出来てます」とも言葉にし、そのうえで「気に入らない。シーンに元気がないとか言われてんだろ。今のバンドはたいしたことないとか思われてるのも全部気に入らない。でも一番気に入らないのはそれをひっくり返せない自分自身で。これを憧れと呼んでいいのなら、ただの憧れでは終わりたくない!」とフロントマン・暁は激しく叫んだのだった。
「ヴィジュアル系に俺はいっぱい照らしてもらったから、次は俺が光になりたいと思っています」との言葉を添えてから歌い出し、曲の最後には「そう遠くないうちに僕はここにワンマンで立ちたいと思っています!」とも宣言することになった「世界の終わりと夜明け前」から感じられた、確かな希望を滲ませた力強い歌と説得力をはらんだ音像。いよいよ2023年には10周年のタームへと突入するアルルカンにとって、そんな感情過多で愛情過多な音楽は何よりも強い武器となっていくに違いない。
▲NoGoD・団長
いわゆるレーベルや事務所の枠なども超えた大規模イベントとなった<V系って知ってる?>において、オーガナイザーとしての重責を果たしてくれたのはSORA(DEZERT)だったが、ことステージ進行の面で今回かなりの尽力ぶりをみせてくれたのはNoGoDのヴォーカリスト・団長であったと言えよう。機材転換のために必要な幕間において、軽妙なトークとカラオケ歌唱にて場を盛り上げてくれていたのに加え、この日は楽屋裏でも並行してニコ生配信『V系って知ってる?powered by MAVERICK DC GROUP“裏の裏” 』の放送までこなしていたのだ。団長は本当に器用過ぎる。
また、事前にSNSにてアンケートをとったうえで決めたというカラオケの選曲センスもすこぶる素晴らしく、マイクを片手にちょっとした舞をしながら高らかに歌いあげたMALICE MIZERの「月下の夜想曲」といい、往時のJanne Da Arc・yasuがファンに対する超接近パフォーマンスを繰り広げていたことをオマージュしたような動きを見せながらの「ヴァンパイア」、色褪せない名曲を間違いのない歌唱力で聴かせてくれたSIAM SHADEの「1/3の純情な感情」、さすがはX SUGINAMIのメンバーだけあってもはや普通に持ち曲のひとつとなっているX JAPANの「紅」と、幕間ごとに観衆を飽きさせることなく楽しませてくれた団長のエンターティナー魂には最大級の拍手を送りたい。
なお、最後にNoGoDの「神風」を歌う前には「次はひとりじゃなく、バンドでここに歌いに帰ってきます!」との言葉が彼からあったこともここに付記しておこう。
▲girugamesh
まさか、このような日がやって来ることになろうとは。2016年に行われた<girugamesh ONEMAN TOUR 2016 “鵺-period-”>をもって解散をしてから早いもので6年の月日が経った今年、girugameshは2022年2月に新曲として「engrave」を配信リリースし、MAVERICK DCオフィシャルYouTubeチャンネルではそのMVも公開されることになったのだが、このたび<V系って知ってる?>の出演バンドとしてその名が連ねられた際には、おそらく喜びと同時に驚きを感じた方たちも多かったことと思う。
現在の各メンバーはトラックメイカーとしてlynch.など多くのアーティストを手掛けているЯyo 、2021年に行われたMUCCのツアーに仙台でゲスト参加するなど時折ステージに立つこともある左迅、映像制作や自らのアパレルブランドを展開している愁、基本的には音楽的な表立った活動のない弐と、いずれも自分のバンドで日々ライヴ活動をしているようなスタイルではないため、今回の復活もこの日のためだけの限定復活になるそうだ。
ただ、それでも「girugameshが復活するなら」と今回のイベントに参戦することを決めたファンは相当数いたそうであるし、実際に彼らが「Break Down」を当時と変わらぬ爆音で放ってみせると場内は一気に沸き立ち、そこから3曲目の「evolution」まではまさに駆け抜けるかのようなステージングの連続となったのである。ひとまずはこれにて手仕舞いだとしても、我々としてはまたそのうちgirugameshならではの刺激的でラウドな音をおかわり出来る日がやってくることをぜひ望みたい。
▲ムック
ムックとMUCC。それは単なる表記の違いのようにも思えるが、概念としてはよりバンドの根に近い部分に在るのが“ムック的なそれ”であり、その根から派生していった多くの枝葉をつけているのが今現在のMUCCというものだとも考えられそうだ。
「ムックです。めっちゃいいイベントじゃない。素敵な後輩とカッコいい先輩、そしてヴィジュアル系ってカッコいいよねって思って集まってくれてるフロアのみんなと、こうしてライヴがやれてるって凄く幸せだなと思います。ありとがうございます」──逹瑯
つい先般まで、各地にて<MUCC 25th Anniversary TOUR 『Timeless』~是空・朽木の灯>という25周年だからこその過去をたどるツアーにいそしんでいた彼らは、この夜その際の衣装を身に纏い、セトリの面でもアルバム『是空』『朽木の灯』から厳選した楽曲たちを軸としながらのライヴを繰り広げてくれたのだが、この<V系って知ってる?>におけるバンド名表記はムックであり、そのステージングから感じられたのは彼らの持つ三つ子の魂と言ってもいいような真髄であり、彼らのこのイベントに対する真意であったと言えるような気がしてならなかった。
一方で、2023年の2月からの彼らは次なるツアーとして<MUCC 25th Anniversary Special Live ムック試験導入公演その5.暴れて、感じて、声出しOK。『咆哮』>を敢行し、いよいよここで取り戻すべきものを取り戻すための試みに着手するというではないか。25年の時を経てなおライヴバンドとしての凄みを増し続けていく彼らのここからも、つぶさに追って行きたいものである。
▲キズ
黒地に白で“VISUAL”と染め抜かれた旗を肩にかけ、おもむろにステージ上へと現れた来夢が最初に歌い出したのはキズにとっての代表曲となる「ストロベリー・ブルー」 だった。
彼らは2022年1月にLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂) で<VISUAL>と題したライヴを行っているほか、2023年3月26日に予定しているNHKホールでの単独公演には<残党>というタイトルをつけているのだが、これは来夢いわく「俺らもファンもVisual Rockの残党だから」という意味で冠したものであるとのこと。と同時に、来夢としてはヴィジュアル系という言葉に対しては、どこか曖昧としていて釈然としないものを感じているところがあり、個人的にはVisual Rockという単語のほうを使いたいのだそう。ゆえに、今宵のライヴにおいても彼は「さぁ、やろう。俺とおまえらのVisual Rock!」というMCをしていたわけだ。
ちなみに、今回のライヴでは【一撃】(自身のYouTube投稿企画)のリアル版のごとく「銃声」で逹瑯がゲスト参加する一幕があり、ここでは武道館のステージ上で丁々発止の渡り合いをみせたキズと逹瑯の勇姿を堪能することが出来たのだった。そこからも鉄板曲や訴求力の高い楽曲を連打したうえで、ラストにはシビアな現実をシュールな歌詞とインパクトの強いサウンドで仕立て上げた「リトルガールは病んでいる。」をブチあげ、そのバンド名のとおりにくっきりとした傷跡を残していった彼らの不敵ぶりは、もはや痛快でさえあったほど。堂々と反旗を翻し、邁進していくキズのこれからが実に楽しみだ。
▲D'ERLANGER
攻撃的なサウンドではあるけれども、ステレオタイプのメタルやパンクとは違うモダンさを持ち、フロントマン・kyoの描き出す妖しくドラマティックな歌詞世界が特徴的でもあるD'ERLANGERは、1989年にインディーズでの1stアルバム『LA VIE EN ROSE』を発表した際、自ら“SADISTICAL PUNK”という言葉を提唱することにより、その希有な存在感を確立したバンドだ。当時の世の中にはまだヴィジュアル系という言葉はなかっただけに、今この時代にD'ERLANGERが<V系って知ってる?>と銘打たれたイベントへリビングレジェンドとして出演してくれることは極めて意義深い。
かくして、2022年で遂に活動再開から15周年を迎えたD'ERLANGERは、今宵まずCIPHERの弾くイントロのキラーフレーズが流麗な「DARLIN’」と、Tetsuの叩き出すキレのあるビートにSEELAの生み出すグルーヴが重なることでいっそうの躍動感が際立つ「LULLABY」を武道館へとおしみなく投下。
「楽しんでますか? では、お嬢ちゃんたち。少し暴れましょうか?」──kyo
ジェントルにしてエレガントなkyoの煽りは本日もブレることなく絶好調で、このあとにはニューウェイヴの風情を含んだ「INCARNATION OF EROTICISM」や、再始動後に生まれた楽曲である「LOVE/HATE 」や「Love me to DEATH」で成熟したオトナのロックバンドだからこそ醸し出せる濃厚な色香というものを存分に発揮してくれたD'ERLANGER。2023年5月から7月にかけて予定されている全国ツアーでも、きっとその勇姿を拝むことが出来るだろう。
▲DEZERT
千秋はいつだって、空気など読まずに平気で核心をついてしまう。今回の<V系って知ってる?>でセッションパートに入る前のトリとして、オーガナイザーであるSORAを擁するバンド・DEZERTがイベント前半戦を締めくくることになったのは自然なことであり、まずは最新シングル曲「The Walker」を演奏した後にSORAがこのイベントに対する真摯な気持ちを率直に述べてくれたのだが。その後、DEZERTにとっての大切な意思表明を託した「TODAY」を歌い出す前にヴォーカリスト・千秋はこう切り出したのだ。
「僕にとってのヴィジュアル系は青春そのもので、恩人でもあります。(中略)でも、昔と今じゃ時代は変わったよね。もはやヴィジュアル系とかロックっていうのは世の中的にダサいわけでしょ。でもさ、俺は残念なことにまだヴィジュアル系っていうものに憧れを持っちゃってるんですよ。ロックに憧れ持ってるんです。音楽に憧れ持ってるんです。だからさ、このイベントの主旨も“ヴィジュアル系復興”とか? もう一回流行らそうとか、そういうのやめません?上の人たち。「まだヴィジュアル系なんて聴いてんの?」みたいなこと言うヤツらのことは知らんし。そいつらにかけてる時間なんてないんです。俺たちがやるべきことは、過去の栄光をもう一回掲げることじゃなく、大好きだった音楽を後世につなげていける力を持つことです。俺たちはもっと力をつけて、もう一度この武道館に帰ってきて単独公演をいつか近いうちやります。その時は、ヴィジュアル系バンド・DEZERTのことをよろしくお願いします!」──千秋
この清々しいくらいの直截さに反して、音楽性や歌詞世界については一筋縄では行かないところも持つDEZERTの奥深さをより知りたい方は、年明けに東名阪にて行われる<DEZERT LIVE TOUR 2023 「てくてくツアー」>へどうぞお越しあれ。
▼V系Respect Super Session▼
▲蜉蝣 Respect Session
半ば憑依していた、とでも言うべきか。今は亡き大佑の率いていた蜉蝣の曲をカバーするのにあたり、千秋は歌い方から曲の合間のしゃべり方まで彼の面影を滲ませていた。
「今日は1曲しか出来ないんだけど、さっきも言ったように後世につなげていくことを考えた時、神聖な武道館でどの曲をやろうかなと思ってね。蜉蝣の歌詞って、いっぱいキタナイ言葉も出てくるから(笑)。悩んでこの曲を選びました!」──千秋
と、千秋が歌い出したのはよりによって「アイドル狂いの心裏学」。大佑がアレなワードを観衆に言わせるステージングが定番であった曲を、発声NG規制があるのをいいことにブッ込んできたのだ。
「今日は敢えてこう呼ばせてもらいます。蜉蝣・kazu!」と紹介したkazu(the god and death stars / gibkiy gibkiy gibkiy)、結生(メリー)、海(vistlip)、きょうのすけ(キズ)に、かつてkazuのローディだった愁(girugamesh)までが帯同して生み出した懐かしき幻影は、生々しくも刹那的過ぎたが…今はひとまず「僕が生きてるうちはまたkazuさん呼んで蜉蝣するから待っててね!」という千秋の言葉を信じていたいと思う。
▲シド Respect Session
「シドは来年20周年ですね。おめでとうございます。生意気ではありますが、後輩のひとりとして前祝いをさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします」──暁
暁(アルルカン)がフロントに立ち、Miyako(DEZERT)、ユエ(キズ)、そして先日まさにこの武道館で単独禊を成功させたばかりの影丸(-真天地開闢集団-ジグザグ)を交えた彼ら4人がここで奏でてみせたのは、「御手紙」でも「妄想日記」でもない「必要悪」。やや意外なこの選曲は暁の声質とのマッチングが素晴らしく、メジャー進出して以降のライトテイストな音楽性が軸となったシドとは一線を画する、ディープでアンダーなシドの味わい深い世界にどっぷりと浸ることが出来た。
なお、シド本体は新春を迎えた2023年1月21日と22日にLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂) で久々となるライヴを行い、そこから結成20周年を祝う記念すべき日々を送っていくことになるそうなので、ファンの方々におかれましてはそちらの動きにもしっかりとご注目を。
▲ZI:KILL Respect Session feat. deadman
かのエクスタシーレコードに所属していたZI:KILLは、その昔にL'Arc-en-Cielのyukihiro、さらに現D'ERLANGERのTetsuが在籍していたことでも知られる4人組バンドで、過去には2度の武道館公演を果たしたことがあり、音楽的にはUKロック寄りな雰囲気が強かったバンドだ。
今回は眞呼(deadman/LOA-ROAR)、aie (deadman/the god and death stars / gibkiy gibkiy gibkiy)と、kazu (the god and death stars / gibkiy gibkiy gibkiy)、晁直(lynch.)、さらにミヤ(ムック)がこのカバーセッションに臨むこととなった。
ただ、ZI:KILLのメジャーデビューアルバム『DESERTT TOWN』の冒頭を飾るパンキッシュな「DEAR JUNK」と、それに続くトリッキーで小気味の良いリズムが映える「ROUND AND FATE」の2曲が終わると、ミヤはステージからいなくなり、aieが「初めまして。MAVERICK DC GROUPの新人バンド・deadmanです」(aie)と挨拶。いきなり deadmanの楽曲「lunch box」を4人でプレイするというサプライズ的事態が発生した。ある意味、最もセッションらしくない一体感は当然のことだったと言えよう。
▲DIR EN GREY Respect Session
リスペクトするからこそのこだわりが、そこには詰まっていた。ガラ(メリー)、來堵(アルルカン)、reiki(キズ)、ユエ(キズ)、 SORA (DEZERT)の5人によってカバーされたDIR EN GREYの「-I'll- ~ 残-ZAN- 」は、何も普通のメドレーというわけではなく、シチュエーション自体をまるごとカバーしたものとなっていたようだ。
どうやらこれは1999年12月に大阪城ホールにて開催された“Dir en grey”時代のライヴの再現だったらしく、アンコールの際に一旦は「-I'll-」を演奏するかのようなフェイントをしかけた後、京が客席に対し「バーカ!」と叫んでから「残-ZAN-」を演奏し、そこに居合わせた人々が唖然とした、という今も伝説として語り継がれているエピソードを今の時代に再現したということだった模様。
おまけに、ステージ上にはガラのトレードマークである学習机が置かれており、曲の最後には必殺技の三点倒立と足拍手にてフィニッシュ。分かる人にしか分からない代わりに、分かる人には最高なネタでもてなしてくれた彼らの心意気にここは乾杯したい。
▲GLAY Respect Session
HAPPY FARM再び…ではなく、よりグレードアップしたバンドがここに誕生したようだ。もともとはYUKKEのバースデーライヴでmaya (LM.C)、悠介(lynch.)、YUKKE (ムック)が中心となり組まれていたセッションバンドが、ここでは新たに酒井参輝(己龍)とアレン(ムックサポート)を迎えての初お披露目となり、GLAYの楽曲をメドレー化した「誘惑 ~ 彼女の“Modern…” ~ 生きてく強さ」で彼らは会場内をおおいに湧かせることとなったのだった。
本家・TERUとはかなり異なるスタイルながら、卓越した盛り上げ技術と伸びのある声で場内の耳目を惹きつけたmayaのフロントマンぶりや、参輝が己龍での和装とはほど遠いHISASHIコスをみせつけていたのも新鮮だったが、何より大きなトピックスだったのはYUKKEの「このベース、JIROさんが貸してくれた♡」という一言に尽きた気がする。
当然、このあとSNS上にはファンからのお約束的な“#ゆっけ許さない”のやっかみ投稿が増加することになったが(笑)、YUKKEは「生きてく強さ」を楽しそうに弾いていただけに所詮はどこ吹く風だろう。そう、人生とはとことん楽しんだもの勝ちなのだ。
▲ムック Respect Session
来夢は今回の<V系って知ってる?>開催を前にしたインタビューにおいて、はっきりと明言していた。「昔ちょっと精神的に不安定だった時期に、ムックの「ココロノナイマチ」には気持ちを救われたところが凄くありました。そして、あれを聴いて「俺もこうなりたい」「こうなって音楽で飯食いたい!」って思ったんです」と。
そんな彼が、この場でreiki(キズ)、奈緒(アルルカン)、Sacchan (DEZERT)、Яyo (girugamesh) と共に歌ってみせたのは他ならぬ「ココロノナイマチ」で、それを1節ずつ大事に噛みしめるかのように歌っていた時の彼の胸中はきっと並々ならぬ熱い感情で溢れていたのではないかと思われる。曲の中盤で聴かせてくれたブルースハープの音色も含めて、ここで聴けた全てがエモかった。
むろん、そのあとにデュオスタイルで暁(アルルカン)と共に歌った「絶望」 も極めて絶品で、楽器隊のおりなす手堅くもダイナミックなプレイとあいまって痛快なライヴ感をそこに生み出していたと言える。好きだったものを好きなように歌い、それをたくさんの聴衆に楽しんでもらうことで、かつての病んでいた自分への弔いはきっと果たせたことだろう。
▲LUNA SEA Respect Session
ここまで隙のない完璧な「ROSIER」のカバーが、これまで他にあっただろうか。
いわゆるセッションの場でこの曲を聴いたこと自体は幾度となくあるが、しょっぱなの葉月(lynch.)による「日本武道館、おまえら全員でかかってこい。ネックスソーング…「ROSIER」!!」という煽り加減や歌いこなし加減といい、ヒロト(アリス九號.)がほぼSUGIZO化してHIROZOになっていた様子、ミヤ(ムック)はミヤでこれまでの「ROSIER」カバーでは弾いていなかったフレーズを体現することでミヤRANしていたうえ、真矢ばりの手数で攻めていた堕門(アルルカン)の頼もしさ、はたまた明希(シド)はJが何時も間奏で発する例の長尺セリフを全ギメしたかと思うと、そのまま目前にあったマイクスタンドをJと同じフォームで綺麗に後ろ投げしてみせるという、最高のオマケ付。
正調「ROSIER」の醍醐味をLUNA SEAのライヴ以外で体験することが出来ることになるとは、ちょっと想像していなかったくらいだ。ヴィジュアル系やLUNA SEAに対する深い愛のなせる業、つくづく恐るべし。
▲BUCK-TICK Respect Session
いよいよ激愛ダダ漏れ合戦となってきたこのセッション大会おいて、登場SEに「ICONOCLASM」を選曲としていた彼らも、やはり生粋のBUCK-TICK好きだということになるだろう。
櫻井敦司のイメージを意識してなのかフーディータイプの黒装束で顔を隠しながら低音と色気をブーストさせながら歌う逹瑯(ムック)、顔の左頬にはきっちりとB-Tロゴをペイントした柩(NIGHTMARE)、樋口豊に迫る堅実なプレイで曲の持つ雰囲気を最大限に尊重していた祥平(アルルカン)、ヤガミトールのプレイを考慮してかシドの時とは異なるスタイルでのドラミングをみせたゆうや(シド)、体調不良にて出演不能となったShinji(シド)のピンチヒッターとして急遽この場に駆けつけてくれた玲央(lynch./kein)。今年で35周年を迎えたBUCK-TICKの功績を讚えるかのように彼ら5人が一丸となって発してくれた「悪の華」は、この<V系って知ってる?>の空間にバクチク現象を勃発させることになったのだ。
歌い終えると同時に「年末にBUCK-TICKを武道館で歌える幸せよ!」と逹瑯が嬉しさのあまり吠えたのも無理はない。
▲hide Respect Session
愛の力は霊をも呼ぶ、ということだろうか。それとも、この派手なお祭り騒ぎを宇宙の暇人がちょいとばかり覗きに来たということだったのだろうか。
「今日はなんか知らんけど、俺はめっちゃhideさんが来てそうな気がする! この会場のどこかにhideさんがいるような気がするから、みんなでこの気持ちをちゃんと伝えてやろうぜ! 届くように!」──来夢
オレンジのケミカル素材を用いた衣装に、hideがしていたのと同タイプのサングラスをした来夢がまず「DICE」を歌い終えて叫んだのはこの言葉。なにしろ、舞台上には当時hideのソロツアーに参加していたPATA(X JAPAN/Ra:IN)が加勢しに来てくれていたうえ、hideモデルのペイズリー柄MGを持ったミヤ(ムック)に、心底からhideを敬愛するSORA(DEZERT)、世代的にも多くの影響をhideから受けたはずの明希(シド)が揃っていて、それだけでなく映像モニターにはhide本人の動画も流されていたため、どこか不思議な感覚が漂っていたのは確かだ。肉体としての実体はなかったとしても、魂と音楽は何時までも生き続けるというのはひとつの真実かもしれない。
▲D'ERLANGER Respect Session
このたびの数あるセッションの中でも、SORAの熱意と地道な努力がなければ絶対に実現しなかったカードがあるとしたらそれはこのD'ERLANGER Respect Sessionだろう。詳しくはSNS上に残されているHYDEとSORAのやりとりをご覧いただきたいのだが、SORAの男気と根性と誠実な姿勢があってこそ全ては叶ったと言えるのである。
HYDE (L'Arc-en-Ciel / THE LAST ROCK STARS)、Die (DIR EN GREY)、テツ(メリー)、ネロ(メリー)というこの鉄壁の布陣でのD'ERLANGERカバーは相当レアであり、本家とはまた異なる華やかさをたたえた彼らのパフォーマンスを現場で観ることが出来た人はせっかくなので誰かに自慢したほうがいい。中でも、1980年代末期あたりのkyoとCIPHERがよくみせていた艶っぽいカラみをHYDEとDieで今に再現したかのような「an aphrodisiac」は、 だんだんと視線をどこに合わせていいいのかわからなくなってくるほどのキワどさがあって興味深かった。
名曲「LULLABY」 も、HYDEの存在感とD'ERLANGERの世界観が融合することによって唯一無二なものになっていたと断言したい。とにもかくにも、このようなセッションは尊いの一言に尽きる。
▲SADISTICAL PUNKERS
フィナーレはもちろん出来るだけ輝かしくあるべきだ。今回の<V系って知ってる?>の最後を締めくくってくれることになったのは、これまたこの日だけにしか観ることが出来ないそうそうたるメンツの揃った“SADISTICAL PUNKERS”で、ここではD'ERLANGERの「LA VIE EN ROSE」がHYDE(L'Arc-en-Ciel / THE LAST ROCK STARS)、kyo (D'ERLANGER)、逹瑯(ムック)、千秋(DEZERT)、CIPHER (D'ERLANGER)、Die (DIR ENGREY)、Miyako (DEZERT)、SEELA (D'ERLANGER)、Tetsu (D'ERLANGER)、SORA (DEZERT)という大編成にて演奏されることになった。
それぞれな個性とクセの強いヴォーカリストが世代別に4人揃っている点も秀逸で、CIPHERにDieにMiyakoという全く違うタイプのギタリストが3人で音を鳴らし、それらの轟音を低域でSEELAが一手にまとめあげるさばきぶりも鮮やかなことしきり。
また、演奏終了後には本日の出演者が舞台に集合しての記念撮影や、HYDEがオーガナイザー・SORAをねぎらってのご褒美チューをしたり、千秋が事前の宣言どおりにSORAを「よくやった」と抱きしめたり、といった人間ドラマも垣間みることが出来たのだった。なおかつ、そこにいた誰もが笑顔になっていたという事実が何より<V系って知ってる?>を開催した成果を物語っていたと思う。
▲SADISTICAL PUNKERS
多様性という言葉がそれなりにもてはやされる現世を思うと、本来ヴィジュアル系こそ多様性上等なフィールドであると言えはしないだろうか。事実、このたび日本武道館にて7時間以上にもわたるスケール感で開催された<V系って知ってる? Powered by MAVERICK DC GROUP>においても、そこに集ったアーティストたちの多彩さたるや選り取り見取りの絢爛豪華さであったと言っていい。
敬愛に篤愛、信愛と慈愛、あるいは盲愛や偏愛。さまざまなかたちの愛が交錯しながら、シーンの過去から現在を経ての未来をも予兆させるような“Visual Rockに敬意を込めた大型イベント”がここに大成功を収めたことは、必ずや発展的な次のフェーズへつながっていく。“V系って知ってる?”という言葉をもって投じられた一石は、この先きっと波紋を拡げていくはずだ。
取材・文◎杉江由紀
撮影◎TAKAHIRO TAKINAMI/冨田味我
■<V系って知ってる? powered by MAVERICK DC GROUP>2022年12月27日@日本武道館 SET LIST
01. PICTURES
02. MONSTER
03. omit
04. ダメ人間
05. ラズルダズル
06. 世界の終わりと夜明け前
【girugamesh】
01. Break Down
02. Drain
03. evolution
【ムック】
01. 蘭鋳
02. 茫然自失
03. 空 -ku-
04. モノクロの景色
05. 名も無き夢
06. 9月3日の刻印
【キズ】
01. ストロベリー・ブルー
02. 傷痕
03. 地獄
04. 銃声(with 逹瑯)
05. 平成
06. リトルガールは病んでいる。
【D'ERLANGER】
01. DARLIN'
02. LULLABY
03. INCARNATION OF EROTICISM
04. LOVE/HATE
05. Love me to DEATH
【DEZERT】
01. The Walker
02. 「殺意」
03. あの風の向こうへ
04. 「君の子宮を触る」
05. TODAY
▼V系Respect Super Session▼
【蜉蝣 Respect Session】
01. アイドル狂いの心裏学
【シド Respect Session】
01. 必要悪
【ZI:KILL Respect Session feat,deadman】
01. DEAR JUNK
02. ROUND AND FATE
03. lunch box (deadman)
【DIR EN GREY Respect Session】
01. -I'll- 〜 残-ZAN-
【GLAY Respect Session】
01. 誘惑 〜 彼女の“Modern…”〜 生きてく強さ
【ムック Respect Session】
01. ココロノナイマチ
02. 絶望
【LUNA SEA Respect Session】
01. ROSIER
【BUCK-TICK Respect Session】
01. 悪の華
【hide Respect Session】
01. DICE
02. TELL ME
【D'ERLANGER Respect Session】
01. an aphrodisiac
02. LULLABY
【SADISTICAL PUNKERS】
01. LA VIE EN ROSE
■出演アーティスト (出演順)■
1. アルルカン
2. girugamesh
3. ムック
4. キズ
5. D'ERLANGER
6. DEZERT
7. V系Respect Super Session
(01). 蜉蝣 Respect Session
Vo 千秋(DEZERT) / Gt 結生(メリー) / Gt 海(vistlip) / Ba kazu(the god and death stars/gibkiy gibkiy gibkiy) / Dr きょうのすけ(キズ)
(02). シド Respect Session
Vo 暁(アルルカン) / Gt Miyako(DEZERT) / Ba ユエ(キズ) / Dr 影丸(-真天地開闢集団-ジグザグ)
(03). ZI:KILL Respect Session feat,deadman
Vo 眞呼(deadman/LOA-ROAR) / Gt ミヤ(ムック) / Gt aie(deadman/the god and death stars/gibkiy gibkiy gibkiy) / Ba kazu(the god and death stars/gibkiy gibkiy gibkiy) / Dr 晁直(lynch.)
(04). DIR EN GREY Respect Session
Vo ガラ(メリー) / Gt reiki(キズ) / Gt 來堵(アルルカン) / Ba ユエ(キズ) / Dr SORA(DEZERT)
(05). GLAY Respect Session
Vo maya(LM.C) / Gt 酒井参輝(己龍) / Gt 悠介(lynch.) / Ba YUKKE(ムック) / Dr アレン
(06). ムック Respect Session
Vo 来夢(キズ) / Vo 暁(アルルカン) / Gt 奈緒(アルルカン) / Gt reiki(キズ) / Ba Sacchan(DEZERT) / Dr Яyo(girugamesh)
(07). LUNA SEA Respect Session
Vo 葉月(lynch.) / Gt ミヤ(ムック) / Gt ヒロト(アリス九號.) / Ba 明希(シド) / Dr 堕門(アルルカン)
(08). BUCK-TICK Respect Session
Vo 逹瑯(ムック) / Gt 玲央(lynch./kein) / Gt 柩(NIGHTMARE) / Ba 祥平(アルルカン) / Dr ゆうや(シド)
(09). hide Respect Session
Vo 来夢(キズ) / Gt PATA(X JAPAN) / Gt ミヤ(ムック) / Ba 明希(シド) / Dr SORA(DEZERT)
(10). D'ERLANGER Respect Session
Vo HYDE(L'Arc-en-Ciel/THE LAST ROCKSTARS) / Gt Die(DIR EN GREY) / Ba テツ(メリー) / Dr ネロ(メリー)
(11). SADISTICAL PUNKERS
Vo kyo(D'ERLANGER) / Vo HYDE(L'Arc-en-Ciel/THE LAST ROCKSTARS) / Vo逹瑯(ムック) / Vo 千秋(DEZERT)
Gt CIPHER(D'ERLANGER) / Gt Die(DIR EN GREY) / Gt Miyako(DEZERT)
Ba SEELA(D'ERLANGER) / Ba Sacchan(DEZERT)
Dr Tetsu(D'ERLANGER) / Dr SORA(DEZERT)
この記事の関連情報
MAVERICK DC GROUP / DANGER CRUE RECORDS
DEZERT
キズ
ΛrlequiΩ / アルルカン
MUCC
D'ERLANGER
girugamesh
JACK IN THE BOX
deadman
邦楽
V-ROCK
ライブ・イベントレポート
【ライヴレポート】Waive × MUCC、対バンシリーズ<VS GIGS>第三弾に睦まじいバトル「武道館行こうぜ!」
MUCC、自身初のデジタルEP『invader ep』を12月4日リリース決定
DEZERT、武道館ワンマン目前に過去のライヴ映像作品4本をYouTubeプレミア公開
ラジオ番組『#V系って知ってる?』、第27回のゲストはDEZERTメンバー全員
DEZERT、初の日本武道館ワンマンに向けて赤を基調とした最新写真公開
DEZERT、日本武道館にまつわるエピソードのすべてを語る
逹瑯、田澤孝介、ガラ、玲央、aie、seek出演、トークイベント<昭和の残党大新年会>開催決定
【ライヴレポート】DEZERT×MUCC、<This Is The “FACT”>「今日ここで出逢ったあなたに、幸せになってほしい」
キズ、SHIBUYA109前ゲリラライブの映像を公開