音量調節や多音色演奏が可能でピアノがスピーカー代わりになる新時代のヤマハ・アコースティックピアノ
ヤマハが3月20日より発売するハイブリッドピアノ「トランスアコースティックピアノ」の国内第一弾商品「YU11SHTA」は、電子音を使って自由に音量調節ができ、タブレットなどの外部デバイスも接続して楽しめる新しい新時代のアコースティックピアノだ。
「トランスアコースティックピアノ」は、アコースティックピアノとしての音色や楽しみ方はそのままに、現代のテクノロジーを融合させたハイブリッドピアノ。音量が自由に調節できることから、これまで周囲への音の問題でアコースティックピアノを選ぶことができなかった人達に向けた新たな選択肢となるモデルだ。その特徴は、スピーカーをまったく内蔵せず、響板を電子音の演奏時にも利用したことにある。「トランスアコースティック=TransAcoustic」は、「trans」(英語の接頭辞“~の向こう側に”)とアコースティックピアノの「Acoustic」を組み合わせた造語で、これまでの枠を超える新しいピアノのあり方を表している。
▲ピアノは全体が響き、その共鳴音も特徴。トランスアコースティックピアノでは音量調節が自由にできるほか、ヘッドホンによる消音演奏も可能。
▲従来の電子ピアノはピアノの中にスピーカーを埋め込んでいるが、本機は響板自体がスピーカーになる。アコースティックピアノのほか、エレクトリックピアノやストリングスなど19音色を搭載し、レイヤーモードの演奏も可能。
響板は、アコースティックピアノの自然で豊かな音を作り出すのに重要な要素の1つ。「トランスアコースティックピアノ」では従来のアコースティックピアノと同様、ハンマーで弦を叩き、その振動を響板に響かせて音鳴らすほか、内蔵の消音器(サイレントピアノSHタイプと同等)とデジタル音源=電子音を使ったデジタルピアノとしての演奏も可能。この電子音の演奏の際にもトランスデューサー(加振器)を使ってアコースティックピアノと同様に響板を振動させ、自然な響きで電子音を豊かに奏でることができるのだ。
▲アコースティックピアノでは鍵盤を押す、ハンマーが弦を叩く、弦の振動が駒を介して響板や他の弦に伝わり、他の弦の振動も響板に伝わることで音響放射する。
▲一方、TransAcousticでは、ハンマーが弦を叩く代わりにMIDI信号により内蔵音源へ、さらにトランスデューサーを介して、駒や共鳴弦、響板に伝わることで、音量の調節と、ピアノならではの響板の音が鳴る。複雑な共鳴系がそのまま維持されることで、単なるスピーカーではなく、アコースティックピアノが持つ「響き・拡がり」が実現できるのだ。
▲一般的にトランスデューサーは響板におもりごと貼り付いているが、TransAcousticでは、音響放射板である響板に影響を与えないよう、トランスデューサーの重い部分を響板以外の構造体で支持、軽い振動部だけが響板に直接触れている。トランスデューサー自体も専用のものを開発。このほか、環境変化による部材の変化に追従できる連結構造、個体ごとの音響特性のばらつきを補正するシステムも開発された。
トランスデューサー本体を響板に直接取り付けないヤマハ独自の機構により、アコースティックピアノとしても、響板の自由な振動を損なうことなく演奏できるのもポイント。アコースティックピアノの響板を電子音にも利用することで、ヘッドホンを装着しなくても適切な音量でのピアノ演奏が可能。昼はアコースティックピアノの音で、夕方以降は音量をしぼって、深夜ならヘッドホンに切り替えてといった使い方ができる。音量を調節したときも、響板の振動や弦の共鳴効果によりピアノ全体から豊かで自然な音が広がるという音質的な利点のほか、ヘッドホンが苦手な子供でも安心というメリットもある。
多彩な音色も魅力の1つ。19種類の音色が搭載されており、多彩なジャンルに対応可能。また、アコースティックピアノ本来の音と電子音を同時に重ねあわせるレイヤーモードも用意。アコースティックピアノ本来の音に内蔵音源のストリングスの音を重ねあわせれば、シンセサイザーのレイヤーとはまた違った独特の魅力と迫力のあるサウンドが、ピアノ全体から響くことになる。
新たなピアノの楽しみ方を広げてくれるのが、外部デバイスとの接続。スマートフォンやオーディオ機器をつなげば、ピアノをスピーカー代わりにして、魅力的なサウンドでリスニングが楽しめる。ピアノは練習する子供の部屋に設置されることが多いが、「トランスアコースティックピアノ」ならリビングルームに設置して普段のオーディオリスニングにも使えるのだ。このほか、本体録音機能など、レッスンに役立つ便利な機能も備えている。
2月24日にヤマハ銀座スタジオで行われた発表会では、トランスアコースティックピアノのしくみや構造が紹介されたほか、THE ALFEEのサポートをはじめ、ピアノ、キーボード、作曲など多方面で活躍するアーティスト、ただすけさんが演奏を披露。アコースティックピアノ本来の音に加え、夜間でも近隣を心配しなくてもいい音量での演奏や、iPadを接続してのアンサンブル演奏、レイヤーモードを使った多彩なサウンドを聴かせた。また、スマートフォンを接続してのオーディオ機器としての再生も実演され、楽器が弾けない人でもスピーカー代わりに使うメリットが示された。
▲YU11SHTAとiPadの組み合わせで演奏するただすけさん。「ながらく鍵盤楽器の発明はなかったが、これが新しい発明の第一歩」「アナログとデジタル両方を作っているメーカーにしかできない楽器」とコメント。
レッスンをはじめる子供だけでなく、その家族、また大人の趣味層などにも幅広く新たな体験を提供する「トランスアコースティックピアノ」。ヤマハは、この「トランスアコースティックピアノ」をより多くのシーンで活用できるよう、今後シリーズ化していく予定だ。なお、今回発表された「YU11SHTA」はアップライト仕様だったが、発表会ではグランドピアノタイプのコンセプトモデルでの演奏も披露された。
「YU11SHTA」は、ヤマハ銀座ビル1階で3月より展示されるほか、3月以降全国の特約店で「トランスアコースティックピアノ新体験キャンペーン」も行われる。
▲ただすけさんは、グランドピアノタイプのコンセプトモデルの演奏も披露(左)。写真右は、ただすけさんと、ヤマハ楽器営業統括部鍵盤楽器営業部の大村寛子部長、ヤマハミュージックジャパン楽器営業本部押木正人本部長。
製品情報
価格:980,000円(税別)/1,058,400円(税込)
発売日:2015年3月20日
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