【インタビュー】植田真梨恵、1stアルバムに「信じることからはじめてほしい」

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植田真梨恵が2月25日、メジャー1stアルバム『はなしはそれからだ』をリリースする。作詞作曲はもちろん、アートワークからミュージックビデオまでを自身がディレクションした最新作は、曰く「物事が移り変わるなかでも、大切にしていたいものや変わらずにむしろ強くなっていく部分を形にできたら」というテーマのもとに制作された。結果、完成したアルバムに映し出されたのは底知れぬパワーを纏った13編のメッセージソング。言葉はリアルでストレートだ。しかし、決してポジティヴ思考のみを歌ったものではない。植田が描く楽曲世界がリスナーの心に光りを灯すように染み入る仕上がりが印象的だ。

◆「FRIDAY」ミュージックビデオ

そのサウンドアプローチはバンドアレンジからアコギ1本による弾き語り、アコーディオンによるソロやレズリースピーカーで録ったオルガン、そして踏切の音など日常のサウンドがコラージュされたものまで多彩。一方で、リアルでナチュラルな肌触りに貫かれたサウンドメイクは奥深い。植田真梨恵が前を見据えて送り出すアルバムは、2008年の1stミニアルバム『退屈なコッペリア』リリース以降、着実に音源制作とライブ活動を重ねてきた彼女の第一歩であり、新たな決意表明とも言える内容となった。その全貌を語るロングインタビューをお届けしたい。

   ◆   ◆   ◆

■音楽を作るというのは気持ちや思い出を再現するっていうことに近い
■手作りで本当に温もりがある形でリアルに作っていけたらいいな

▲アルバム『はなしはそれからだ』REC風景

──1stアルバム『はなしはそれからだ』、とても充実した作品ですね。シングルのときとはまた全然違った音の空間や世界観があって、クリエイティヴでいてひとつの世界にもまとまっている。コンセプチュアルな作品にも聞こえますが、テーマと言えるものはありましたか。

植田:メジャーデビューのタイミングからずっと言っている“歌が真ん中にあって、メロディと歌詞がよくて、カラオケでも歌えて、かっこいいもの”って思いながら作ってはいたんです。ただ、テーマ性という意味でいうと、物事の移り変わり……夜から朝になることとか、季節だったら、冬から春になっていくところとか。私自身もそうですけど、時を重ねてものが古くなっていくこと、そういうところを意識しながら作りたいなと思っていたんです。そうやって物事が移り変わるなかでも、大切にしていたいものや、変わらずにむしろ強くなっていく部分、そういうものを形にできたらいいなと思って作っていきました。

──音楽的な面白さとしては、その時その時のアイデアを大事に積み重ねていくような、偶発性を楽しんでいる感覚があるなと思ったんです。サウンド面では意識したことはありますか。

植田:たしかにそうですね。基本的にはシンプルにっていうのは変わらず、“鳴っているものを録る”というスタンスで進めていって。必要最低限でありつつ、一個一個がちゃんとかっこいいっていうのは意識していましたね。“いっせーのーせ”で、バンドでアレンジを作った曲が半分近くあるんですけども、タイム感も含めて、緻密になりすぎずに楽しんでやっていくとか、そういう雰囲気が音から伝わるようにとは思っていました。あんまり何かに捕らわれすぎずに、とにかくいい感じでできたらいいなっていうのはありましたね(笑)。

──アレンジということでは、例えば「Intro」や最後の曲「さよならのかわりに記憶を消した」での波音だったり、その他の曲でも日常にある環境音がたくさん入っていますよね?

植田:今回は、生活の中に溢れている音を入れていこうと思ってましたね。これはアートワークにも通じてくるんですけど、みなさんの部屋のなかから、宇宙までいけるところを想像してほしくて。窓をバッと開けた時に外に広がっている世界とか、身近にある素敵なものだったり。逆にないものを想像したり、今ここにないけど繋がっているって思えるようなものが、耳に入ってくるといいなと思って。

▲アルバム『はなしはそれからだ』REC風景

──アートワークもファンタジックで気になっていたんです。植田さんの大好きなミシェル・ゴンドリーの映画をモチーフに書かれたのが「さよならのかわりに記憶を消した」だそうですが、アートワークも含めてミシェル・ゴンドリーを思わせる手作り感のあるものや音、そこから生まれるファンタジーっていうものを大事にしている作品だなと。

植田:機械に頼りすぎずに、鳴っているものを入れていくというかね。最近ずっと思っているのが、音楽を作るというのは気持ちや思い出を再現するっていうことに近いなって。音楽を聴く時、“再生”って言うじゃないですか。よりリアルにそこを再現していく時に、手作りでほんとに温もりがある形でリアルに作っていけたらいいなと思っているんです。

──その再生にしても、ゼンマイを回して再生をするくらい人の手を感じますよね。音そのものはクリーンだし、現代的なサウンドではあるけれど、どこか懐かしさを感じるものになってます。

植田:うれしいです。

──では、それぞれの曲についてもお伺いしていきたいのですが、骨太なロックチューン「FRIDAY」や8ビートが疾走するシングル「彼に守ってほしい10のこと」、そしてファンクっぽい匂いのある「hanamoge」と、前半はバンド感のある曲が揃っていますね。

植田:そうですね。「FRIDAY」は私が思う、歌が強くてかっこいい曲です。肩の力が抜けてるけど、アツアツのパワーでいくみたいな感じで作った曲ですね。「hanamoge」のアレンジは何年も前にはじめているんですけど、段々とアレンジャーさんとの付き合いも長くなってきたので、思っていた感じですぐに返してくださって。年々、やりたいことがお互いに見えてきているところがあるので、嬉しいんですよね(笑)。

──言わずもがなで今やりたいことがわかる、と。

植田:そうです。すごく今いい感じなんですよね、どの曲にしても。

◆インタビュー(2)へ
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