増田勇一の『今月のヘヴィロテ(10月篇)』
10月に聴きまくった10枚。というか、もうちょっと正確に言うと「10月に聴きまくったアルバムのうち、10月に発売されたもののなかから選んだ10枚」だったりするわけだが、例によって節操も脈絡もないラインナップになってしまった。
●ステインド『ザ・イリュージョン・オヴ・プログレス』
●レイチェル・ヤマガタ『エレファンツ/ティース・シンキング・イントゥ・ハート』
●AC/DC『悪魔の氷』
●ジャックス・マネキン『グラス・パッセンジャー』
●9mm Parabellum Bullet『VAMPIRE』
●クレイドル・オブ・フォルス『ゴッドスピード・オン・ザ・デヴィルズ・サンダー』
●ザ・ラスマス『ブラック・ローゼズ』
●クイーンアドリーナ『ジン』
●オアシス『ディグ・アウト・ユア・ソウル』
●ダンディ・ウォーホルズ『…アース・トゥ・ザ・ダンディ・ウォーホルズ』
ステインドはここ数年の間、全米アルバム・チャート首位が指定席になっていた4人組。この新作は残念ながら初登場3位ということで、残念ながら連続首位獲得記録は3作品で途絶えてしまいそうだが(もちろん今後再浮上の可能性はあるけども)、ロードランナーへの移籍後第1弾となったこのアルバムは、これまで以上に普遍的な感触。“歌ものヘヴィ・ロック”などと形容されることの多い彼らの音楽は、もっと広くここ日本でも支持を集めていいはずのものだと思う。筆者なんか、風呂に浸かりながら鼻歌でこのバンドの曲が出てきたりすることもあるくらい。余談ながら、過去に「増田さん、ステインドのヴォーカルに似てますよね?」と言われたことは一度や二度ではないのだが、残念なことにこれまでご本人と対峙したことは一度もない。
レイチェル・ヤマガタの新作は、そもそも2つの作品が合体した2枚組としてアメリカではリリースされているのだが、日本ではそれを、曲順なども変えて再構成された1枚もののアルバムとしてリリース。そこでコンセプト性が薄れてしまうのではないかとも心配していたが、逆に“静”と“動”をはじめとするさまざまなコントラストが強調された気もする。まったりしたくて聴き始めたはずなのに、いつのまにか興奮している自分がいる、なんて感覚が味わえる濃厚な作品だ。
ジャックス・マネキンの新作はまさに心に染みる1枚だし、ダンディ・ウォーホルズのサイケな浮遊感は、余裕のなくなったアタマにいつでもスキマを作ってくれる。往年の名プロデューサー/ソングライター、デズモンド・チャイルドと手を組んで作られたフィンランドのザ・ラスマスの新作は、随所に新境地を感じさせつつも、歌声とメロディが良い意味での“相変わらず”な魅力を伝えてくれる1枚。そんなメランコリアに癒されたあとはクレイドル・オヴ・フィルスの描く激烈かつ荘厳な暗黒物語の世界に浸り、クイーンアドリーナの混沌に酔い、その勢いで「だけどオアシスの新譜も実はけっこう好きなんだよな」とか素直な本音を吐いてしまったりするわけである。
国産アーティストのなかからは唯一、9mm Parabellum Bulletの新作を選出。この飛躍ぶりは素晴らしい。ついでに言うと、彼らが参加していたトリビュート・アルバム、『メタル一家(METAL-IKKA)』も実に興味深かった。9mmが演奏しているのは「Motorbreath」なんだけども、まさに初期のメタリカに通ずる向こう見ずなギリギリ感のあるトラックに仕上がっていたし、この作品の首謀者であるらしい10-FEETによる「Sad But True」も敢闘賞という感じ。そんななか、この場に提供するたった1曲の音源のためにわざわざアメリカに飛んでレコーディングしてしまったアウトレイジの計り知れない“メタリカ愛”には呆れてしまうぐらい心を打たれた。彼らの手による「Fight Fire With Fire」は必聴だ。
しかし10月を代表する作品といえば、やっぱりAC/DCの『悪魔の氷』だったように思う。ろくに作品を聴いていない人にかぎって「どうせいつも同じ」とか、「ボン・スコット時代のほうが好き」とか、「認めはするけど、『バック・イン・ブラック』は超えられない」などど、わかったようなことを言うのだけども、このアルバムの強力さは単なる“不変さ”にばかり起因するものではない。ポップ・アートと呼びたくなるくらいの機能美は本当にキャッチーだし、実はゴリ押し一辺倒なわけじゃなく、年輪を重ねてきたバンドならではの色気にあふれている。しかも全然、とっつきにくさがない。これまで彼らの作品を聴いたことのなかった世代の音楽ファンにも、是非、手を伸ばして欲しいアルバムだ。これが“初めて聴くAC/DC”だったとしても、全然OKだと僕は思う。
さて、これら10作品以外に先月よく聴いた“10月発売新譜”は、ローディとか、シャーラタンズとか、泉谷しげるの『すべて時代のせいにして』とか。ドートリーのデラックス・エディションも良かったし、日本盤の発売は9月末だったけどもヒューマン・アブストラクトもよく聴いていた。そうこうしているうちに11月が始まってしまったわけだが、来月のこの欄に確実に登場するのがDIR EN GREYの『UROBOROS』とガンズ・アンド・ローゼズの『チャイニーズ・デモクラシー』ということになるだろう。DIR EN GREYは11月12日、そしてガンズは11月22日のリリース。両アルバムの全貌については、是非また近いうちに改めて。
増田勇一
●ステインド『ザ・イリュージョン・オヴ・プログレス』
●レイチェル・ヤマガタ『エレファンツ/ティース・シンキング・イントゥ・ハート』
●AC/DC『悪魔の氷』
●ジャックス・マネキン『グラス・パッセンジャー』
●9mm Parabellum Bullet『VAMPIRE』
●クレイドル・オブ・フォルス『ゴッドスピード・オン・ザ・デヴィルズ・サンダー』
●ザ・ラスマス『ブラック・ローゼズ』
●クイーンアドリーナ『ジン』
●オアシス『ディグ・アウト・ユア・ソウル』
●ダンディ・ウォーホルズ『…アース・トゥ・ザ・ダンディ・ウォーホルズ』
ステインドはここ数年の間、全米アルバム・チャート首位が指定席になっていた4人組。この新作は残念ながら初登場3位ということで、残念ながら連続首位獲得記録は3作品で途絶えてしまいそうだが(もちろん今後再浮上の可能性はあるけども)、ロードランナーへの移籍後第1弾となったこのアルバムは、これまで以上に普遍的な感触。“歌ものヘヴィ・ロック”などと形容されることの多い彼らの音楽は、もっと広くここ日本でも支持を集めていいはずのものだと思う。筆者なんか、風呂に浸かりながら鼻歌でこのバンドの曲が出てきたりすることもあるくらい。余談ながら、過去に「増田さん、ステインドのヴォーカルに似てますよね?」と言われたことは一度や二度ではないのだが、残念なことにこれまでご本人と対峙したことは一度もない。
レイチェル・ヤマガタの新作は、そもそも2つの作品が合体した2枚組としてアメリカではリリースされているのだが、日本ではそれを、曲順なども変えて再構成された1枚もののアルバムとしてリリース。そこでコンセプト性が薄れてしまうのではないかとも心配していたが、逆に“静”と“動”をはじめとするさまざまなコントラストが強調された気もする。まったりしたくて聴き始めたはずなのに、いつのまにか興奮している自分がいる、なんて感覚が味わえる濃厚な作品だ。
ジャックス・マネキンの新作はまさに心に染みる1枚だし、ダンディ・ウォーホルズのサイケな浮遊感は、余裕のなくなったアタマにいつでもスキマを作ってくれる。往年の名プロデューサー/ソングライター、デズモンド・チャイルドと手を組んで作られたフィンランドのザ・ラスマスの新作は、随所に新境地を感じさせつつも、歌声とメロディが良い意味での“相変わらず”な魅力を伝えてくれる1枚。そんなメランコリアに癒されたあとはクレイドル・オヴ・フィルスの描く激烈かつ荘厳な暗黒物語の世界に浸り、クイーンアドリーナの混沌に酔い、その勢いで「だけどオアシスの新譜も実はけっこう好きなんだよな」とか素直な本音を吐いてしまったりするわけである。
国産アーティストのなかからは唯一、9mm Parabellum Bulletの新作を選出。この飛躍ぶりは素晴らしい。ついでに言うと、彼らが参加していたトリビュート・アルバム、『メタル一家(METAL-IKKA)』も実に興味深かった。9mmが演奏しているのは「Motorbreath」なんだけども、まさに初期のメタリカに通ずる向こう見ずなギリギリ感のあるトラックに仕上がっていたし、この作品の首謀者であるらしい10-FEETによる「Sad But True」も敢闘賞という感じ。そんななか、この場に提供するたった1曲の音源のためにわざわざアメリカに飛んでレコーディングしてしまったアウトレイジの計り知れない“メタリカ愛”には呆れてしまうぐらい心を打たれた。彼らの手による「Fight Fire With Fire」は必聴だ。
しかし10月を代表する作品といえば、やっぱりAC/DCの『悪魔の氷』だったように思う。ろくに作品を聴いていない人にかぎって「どうせいつも同じ」とか、「ボン・スコット時代のほうが好き」とか、「認めはするけど、『バック・イン・ブラック』は超えられない」などど、わかったようなことを言うのだけども、このアルバムの強力さは単なる“不変さ”にばかり起因するものではない。ポップ・アートと呼びたくなるくらいの機能美は本当にキャッチーだし、実はゴリ押し一辺倒なわけじゃなく、年輪を重ねてきたバンドならではの色気にあふれている。しかも全然、とっつきにくさがない。これまで彼らの作品を聴いたことのなかった世代の音楽ファンにも、是非、手を伸ばして欲しいアルバムだ。これが“初めて聴くAC/DC”だったとしても、全然OKだと僕は思う。
さて、これら10作品以外に先月よく聴いた“10月発売新譜”は、ローディとか、シャーラタンズとか、泉谷しげるの『すべて時代のせいにして』とか。ドートリーのデラックス・エディションも良かったし、日本盤の発売は9月末だったけどもヒューマン・アブストラクトもよく聴いていた。そうこうしているうちに11月が始まってしまったわけだが、来月のこの欄に確実に登場するのがDIR EN GREYの『UROBOROS』とガンズ・アンド・ローゼズの『チャイニーズ・デモクラシー』ということになるだろう。DIR EN GREYは11月12日、そしてガンズは11月22日のリリース。両アルバムの全貌については、是非また近いうちに改めて。
増田勇一
この記事の関連情報
増田勇一
Staind
Rachael Yamagata
AC/DC
Jack's Mannequin
9mm Parabellum Bullet
The Rasmus
Queenadreena
Oasis
THE DANDY WARHOLS
Lordi
The Charlatans
泉谷しげる
DAUGHTRY
THE HUMAN ABSTRACT
DIR EN GREY
Guns N' Roses
邦楽
洋楽
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