ヴェルヴェット・リヴォルヴァー『リベルタド』への道(4)
6月27日、ついにその全貌を現した『リベルタド』。欧米でのリリースよりも1週間早い日本先行発売ということで、この国の音楽ファンが誰よりも早くこの作品を手にとることになった。すでに多くの人たちにとってのヘヴィ・ローテーション盤となっていることだろう。
僕自身がこの作品に触れたときにまず感じたのは、楽曲面での充実ぶり。もっと素直に“向上”とか言ってしまうと、『コントラバンド』の楽曲たちを貶めるかのような意味合いが伴うことになってしまうかもしれないが、実際、前作よりも格段に楽曲そのものがいい。もちろん具体的な差異を指摘することは難しくもあるのだが、やはりここで最初に着目すべきはスコット・ウェイランド(vo)の存在と特質ということになるだろう。
スラッシュはこの『リベルタド』に関する初期段階の公式資料のなかで、「俺たちが前回できなかったことが実現された作品」と語っている。経験不足の若手バンドでもあるまいし、この言葉が具体的なスキルやレコーディング手法といったものを指しているわけではないことは疑うまでもない。前回できなかったこと、それは“スコットという看板をあとから掲げるのではなく、あらかじめ想定しながらアルバムを作る”ということではないか、と僕は解釈している。
すでに『コントラバンド』当時のインタビューや最近の雑誌記事などでも語られている通り、ヴェルヴェット・リヴォルヴァーというパズルにとっての“最後の運命的な1ピース”がスコットだった。
自分たちに相応しいヴォーカリスト探しが難航するなかで、4人は当然のごとく曲作りを先行させていたわけだが、そうした実情からも推察できる通り、『コントラバンド』の収録曲のなかには“すでにおおむね完成していた楽曲にスコットが歌詞とヴォーカルを載せて着地した”という成り立ちのものも少なからず含まれている。たとえて言うなら、すでにモノクロの状態で焼きあがっていた何枚もの写真に、スコットが1枚ずつ着色するかのようなプロセスがあったわけである。
もちろん、なかにはスコットとの合流後に大胆な変容を遂げることになった曲も存在したし、そこにケミストリーとかマジックと呼ぶに相応しいものが発生したからこそ『コントラバンド』が誕生し得たというのも事実である。が、誤解を恐れずに言えば、当時の彼らには、まだスコット・ウェイランドという稀有な表現者を使い切れていなかった。彼自身すらも、である。 こんなことを断言してしまえるのは、『リベルタド』における彼の輝き方がまるで違っているからである。明らかにこの差異は、“スコットがあらかじめそこに居たか、否か”という違いに起因するものだと僕は解釈する。
もちろんそれはメンバー間の相互理解の深まりとも無関係ではないだろうし、世界規模で長期間にわたって続けられてきたロードの日常のなかで『コントラバンド』の楽曲たちが“どのように化けてきたか”を彼ら自身が理解し、咀嚼してきたからでもあるだろう。単純な言い方をすれば、メンバー個々が、より強い音楽的信頼関係で結ばれるようになったということである。スコット側に立った言い方をすれば、彼自身がこのバンドに最適な引き出しを選ぶべきなのではなく、すべてを吐き出すことでヴェルヴェット・リヴォルヴァーが成立するのだということを認識した、ということでもある。それがこの進化にとっての最大の要因ではないか、と僕は見ている。
…と、『リベルタド』の充実ぶりに興奮を抑えきれずにいたら、想定していた文字量をすでに超えてしまっていた。次回は、より具体的な分析をしてみようと思う。また、すでに8月にはアリス・イン・チェインズとの合同全米ツアーも決定しているが、そういった『リベルタド』の先へと続いている道の行方についても考えてみたいところだ。
文●増田勇一
僕自身がこの作品に触れたときにまず感じたのは、楽曲面での充実ぶり。もっと素直に“向上”とか言ってしまうと、『コントラバンド』の楽曲たちを貶めるかのような意味合いが伴うことになってしまうかもしれないが、実際、前作よりも格段に楽曲そのものがいい。もちろん具体的な差異を指摘することは難しくもあるのだが、やはりここで最初に着目すべきはスコット・ウェイランド(vo)の存在と特質ということになるだろう。
スラッシュはこの『リベルタド』に関する初期段階の公式資料のなかで、「俺たちが前回できなかったことが実現された作品」と語っている。経験不足の若手バンドでもあるまいし、この言葉が具体的なスキルやレコーディング手法といったものを指しているわけではないことは疑うまでもない。前回できなかったこと、それは“スコットという看板をあとから掲げるのではなく、あらかじめ想定しながらアルバムを作る”ということではないか、と僕は解釈している。
すでに『コントラバンド』当時のインタビューや最近の雑誌記事などでも語られている通り、ヴェルヴェット・リヴォルヴァーというパズルにとっての“最後の運命的な1ピース”がスコットだった。
自分たちに相応しいヴォーカリスト探しが難航するなかで、4人は当然のごとく曲作りを先行させていたわけだが、そうした実情からも推察できる通り、『コントラバンド』の収録曲のなかには“すでにおおむね完成していた楽曲にスコットが歌詞とヴォーカルを載せて着地した”という成り立ちのものも少なからず含まれている。たとえて言うなら、すでにモノクロの状態で焼きあがっていた何枚もの写真に、スコットが1枚ずつ着色するかのようなプロセスがあったわけである。
もちろん、なかにはスコットとの合流後に大胆な変容を遂げることになった曲も存在したし、そこにケミストリーとかマジックと呼ぶに相応しいものが発生したからこそ『コントラバンド』が誕生し得たというのも事実である。が、誤解を恐れずに言えば、当時の彼らには、まだスコット・ウェイランドという稀有な表現者を使い切れていなかった。彼自身すらも、である。 こんなことを断言してしまえるのは、『リベルタド』における彼の輝き方がまるで違っているからである。明らかにこの差異は、“スコットがあらかじめそこに居たか、否か”という違いに起因するものだと僕は解釈する。
もちろんそれはメンバー間の相互理解の深まりとも無関係ではないだろうし、世界規模で長期間にわたって続けられてきたロードの日常のなかで『コントラバンド』の楽曲たちが“どのように化けてきたか”を彼ら自身が理解し、咀嚼してきたからでもあるだろう。単純な言い方をすれば、メンバー個々が、より強い音楽的信頼関係で結ばれるようになったということである。スコット側に立った言い方をすれば、彼自身がこのバンドに最適な引き出しを選ぶべきなのではなく、すべてを吐き出すことでヴェルヴェット・リヴォルヴァーが成立するのだということを認識した、ということでもある。それがこの進化にとっての最大の要因ではないか、と僕は見ている。
…と、『リベルタド』の充実ぶりに興奮を抑えきれずにいたら、想定していた文字量をすでに超えてしまっていた。次回は、より具体的な分析をしてみようと思う。また、すでに8月にはアリス・イン・チェインズとの合同全米ツアーも決定しているが、そういった『リベルタド』の先へと続いている道の行方についても考えてみたいところだ。
文●増田勇一
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