捨て曲なし! 切なくヘヴィな4thアルバム『One By One』 ―シンプルなバンド・フォーマットの中で見せる限りなく高い完成度―
3回も通しで聴けば、全曲のサビがしっかり覚えられる
■最新アルバム
『One By One』 BMGジャパン 2002年10月16日発売 BVCP-27032 2,100(tax in、2カ月限定プライス)
1 All My Life 2 Low 3 Have It All 4 Times Like These 5 Disenchanted Lullabye 6 Tired Of You 7 Halo 8 Lonley As You 9 Overdrive 10 Burn Away 11 Come Back 12 Danny Says *
“元ニルヴァーナの……”という肩書きはもはや不要! 今やデイヴ・グロール率いるフー・ファイターズは、ポップスの普遍的なメロディとロックの爽快なダイナミズムを凝縮した世界でも有数のギター・オリエンテッド・ロックバンドである。その支持の厚さは現在のポスト・グランジ系バンドはもちろんのこと、メロコアやUKギター・バンド、エモコアといったジャンルの様々な若いバンドから、ひとつの目標とされていることでもすぐにわかる。そんな彼らが、’99年度のグラミー賞ベスト・オルタナティヴ・アルバムを受賞し、バンドの最高傑作と目された3rdアルバム『There’s Nothing Left To Lose』から約3年、満を持して最新アルバムを発表する。それがこの『One By One』だ。
サウンドの傾向としては、デイヴがかねてから語っていたように、これまで以上にハードロック色の濃いものに仕上がっている。実際、シングルとなった「All My Life」、そして「Low」といったナンバーでの重厚なリフを聴くとわかるが、このあたりはデイヴが参加し、久方ぶりにドラムの腕を発揮したクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ(QOTSA)からの影響が強く出ていると思われる。QOTSAも、重厚なリフとポップなメロディを最大限に融合させる意味では今や右に出るものはないバンドだが、彼らに対するデイヴのリスペクトやライバル心は、さっそくフーの音へと還元されている。そして、今回は前作から参加したテイラー・ホーキンスの破壊力満点の手数の多いダイナミックなドラムが遂に開花! デイヴがドラムを叩かなくなったことに対し、これまでネガティヴな意見を述べるものも少なくなかったが、これでもう「デイヴが叩かないのでは……」などとは2度と言えないクオリティになっている。
そして忘れてならないのは、今作がこれまでのフー以上にポジティヴなヴァイタリティに満ちた作品となっていることだ。それは“9・11”に対するフーなりの回答とも言われている「Times Like These」の一節を見ても明らかだ。――今こそ“また生きてみよう”と思うとき。今こそ“また愛しあおうと思うとき”――。パンクロックの精神性に最期までこだわり、それに殉死したカート・コバーン亡き後、その悲劇を目の当たりにしたデイヴはこれまでのフーの活動において、ロックンロールが普遍的に人に与えることのできる夢や希望に全てをかけてきた。その屈強なポジティヴィティは、あの歴史的な悲劇の後でさらに揺るぎないものになったことが確認できる。“心・技・体”。この3つの全ての要素が全て充実した、実に見事なロックンロール・アルバムだ。
文●沢田太陽
Foo Fighters Secret Live 9/12新宿LIQUID ROOM
新作『One By One』のリリースに先駆けて急遽決定したこの日のライヴ。会場はシークレット、しかも一晩限りというスペシャルなステージだったのだが、残念ながら、この日デイヴの体調は最悪だったそうで、いつものような元気一杯のステージとはいかなかったようだ(後日出演していたTV番組の中でも“吐きそう”というジェスチャーが、オーディエンスにギャグと受け止められてしまった、と明るく話していた)。とはいえ、日本のファンを大切にしている彼らのこと。すぐにも来日して万全のパフォーマンスを観せてくれることを期待しよう。セットリストのほうは過去のアルバムからまんべんなくといったベスト的内容。新作からは5曲披露されている。
デイヴ頑張れ!
1 All My Life 2 Breakout 3 My Hero 4 Generator 5 Times Like These 6 For All The Cows 7 Stacked Actors 8 Learn To Fly
9 Disenchanted Lullaby 10 This Is A Call 11 Low 12 Monkeywrench