ビヨンセ、ケリー、ミッシェルの3人がステージに登場すると、それまで何か月かたまっていたマグマが一挙に噴火するかのように、観客は熱狂し、彼女たちを迎えた。
熱気あふれる1階のフロアの中にいると、その大歓声にバック・トラックの音もかき消されるかと錯覚しそうなほどだ。
今回のライヴが正式なライヴというよりも、むしろ、お披露め/ショウケース的な色彩が強いのは、バックにバンドをつけず、テープで彼女たちが歌っているためでもある。
だが、彼女たちほどのオーラがあれば、バックがバンドであろうと、テープであろうとまったく関係がないと言わせしめるだけの力があった。
・Intro 01.So Good 02.No,No,No Part 2 03.Say My Name 04.Survivor 05.Bootylicious ・Dance Break 1 06.Sail On 07.Emotion 08.Gospel Medley ・Dance Break 2 09.Bug A Boo 10.Bills, Bills, Bills 11.Jumpin, Jumpin 12.Independent Women Part 1 (Brit Award Version)
再来日公演
■10月18日(木) 大阪城ホール 【問】大阪ウドー音楽事務所 06(6341)4506
■10月19日(金)、20日(土) 横浜アリーナ 【問】ウドー音楽事務所 03(3402)5999
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2作目『ライティングス・オン・ザ・ウォール』からの「ソー・グッド」で始まったショウは、1stからの「ノー、ノー、ノー」、さらに、大ヒット「セイ・マイ・ネイム」、「サヴァイヴァー」、最新ヒット「ブーティリシャス」まで怒涛の勢いで観客をつかんでいく。
2作目まで4人組だったデスティニーズ・チャイルドは、3作目でビヨンセを中心に3人組となった。そして、このメンバー変更がグループに新たなマジックを与えたことは疑う余地がない。
通常、メンバーを減らせばパワーは落ちるものだが、彼女たちの場合、さらに強力なメンバーに差し替え、その変更によってエネルギーがアップしたと言える。少々厳しい言い方をすれば、少しばかり力のないふたりをカットし、やる気のある新メンバー(ミッシェル)を加え、スリムにしながらも、力を凝縮して爆発させる構成にしたというわけだ。
メンバーを減らして、力をアップさせたグループなど、ロック・エラが始まって以来、見たことがない。
ダンス・ブレイクのあと、ライオネル・リッチーの大ヒット曲「セイル・オン」、さらにビージーズの作品「エモーション」、「ゴスペル・メドレー」などを歌い彼女たちの別の魅力も垣間見せた。ゴスペル・メドレーは、彼女たちのシンガーとしての力量をみせつけるに充分なものだった。
歌って、振りつけられた激しいダンスを踊り、彼女たちはステージ狭しと動き回った。
それにしても、リーダーであり、リード・シンガーのビヨンセの魅力にはおそれいった。CDの音から、また、プロモーション用のビデオ・クリップからではわからない強烈なスーパースターのオーラが感じられた。
それは、存在感なのか、ほとばしる音楽的才能なのか、人間的魅力なのか。おそらくは、そのすべてなのだろう。
ライヴのステージで、間近に観て初めてわかるもの、あるいは感じられるもの、それが、ビヨンセにはあった。そういったものを感じさせるアーティストは滅多にいない。彼女は、その点で非常にたぐいまれな才能の持ち主ということになる。
デスティニーズ・チャイルドとは、疑うことなく、ビヨンセそのものだ。かつて、マイケル・ジャクソンがジャクソンズそのものであったように、ライオネル・リッチーがコモドアーズのほとんどすべてであったように、ビヨンセは、デスティニーズ・チャイルドのすべてだ。
ということは、いつか、彼女は必ずソロ・シンガーになり、スポットライトを浴びることになる。
「デスティニーズ・チャイルド」は、「運命の子供」と訳す。チルドレン(複数形の子供たち)ではないところに注目してみよう。つまり「運命の子供」とは、ビヨンセそのものを表しているのだ。