【インタビュー】BAND-MAID、「まだまだ止まらない私たちの成長過程を観て欲しい」

2025.07.18 19:00

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アニメの物語との色濃いリンク感が注目を集めた「Ready to Rock」に続き、BAND-MAIDからまたしても新たなキラーチューンが到着した。

◆撮り下ろし写真

「What is justice?」と題されたこの楽曲は、やはりアニメと関わりの深いもので、7月11日から放送開始されているTVアニメ『桃源暗鬼』のエンディング主題歌となっている。誰でも子供の頃から知っている物語をモチーフにしながら「正義とは何か?」を問うこの作品に対して、果たしてBAND-MAIDはどのように自らの正義を貫いたのか? 

<BAND-MAID TOUR 2025>のFIRST ROUNDとSECOND ROUNDの狭間にあたる7月のある日、5人全員に話を聞いた。

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◾︎バトル感という意味で、強いリフで押し切っていく曲に

──<BAND-MAID TOUR 2025>のFIRST ROUNDが6月28日をもって終了しました。さまざまな驚きがありましたが、セットリスト的に「Ready to Rock」がクロージングの定番になっていたこともそのひとつでした。ツアー全体を通じてあの曲自体も成長してきたはずですよね?

SAIKI(Vo):そうですね。今にして思えばツアー開幕当時はまだ赤ん坊のような状態だったかなと思います。今ではグルーヴもより深まっていますし、何よりもあのギターリフにAKANEのドラムが絡んでくる始まり方には高揚感しかないという感じで。やっぱりいちばん最後に相応しい曲だなと思いますし、こうしてツアーを一周してきたことで、いっそうそういう曲になってきているのを実感できています。すごく正確さが要求される曲でもあるので、その意味でも今のBAND-MAIDだからこそできる曲だとも思いますね。

小鳩ミク(G, Vo):正直に言うと、最初にSAIKIから「これで行こうと思うんだけど」とセットリストを提案された時には、ちょっとビックリしましたっぽ。ツアーで「Ready to Rock」を披露すること自体は決めていましたけど、まさかいちばん最後だとは思ってもみなかったですっぽね。

KANAMI(G):私も当初は「最後にやるのはちょっとキツいかも」と言ってました。

AKANE(Dr):最初はやっぱり驚きました。でも、あの曲がセットリストの最後にあることによって「しっかりしないと」という意識が働いて、集中力とテンションが持続するようなところもあるんです。実際、ツアー初日は結構緊張しましたし、その後のお給仕でもいい意味での緊張感をもって演奏することができましたね。

KANAMI:私の場合はもう、最後はアドレナリンにまかせて無意識のうちに弾いている感じです(笑)。

小鳩ミク:でもそれがカッコ良さというか、KANAMIの勢いにも繋がっているっぽね。

KANAMI:そうだといいんですけど、私自身は「死ぬ~!」って思いながら弾いてるんです(笑)。

MISA(B):でも、あの曲自体が成長してきたことは間違いないですね。ツアーが始まった当初は、かなり激しめのセットリストだったこともあって「果たしてこのまま駆け抜けられるのか?」と不安を感じるくらいのところがありましたけど、意外と体力的にもついていけてる自分がいて、ツアーの過程の中でもちょっとずつ成長できているんだな、と感じさせられもしました。

──知らず知らずのうちに体力も向上しているわけですね。そして今回は、早くもその「Ready to Rock」に続く新曲が登場。この「What is justice?」はTVアニメ『桃源暗鬼』のエンディング主題歌でもあるそうですけど、曲自体はいつ頃作られていたものなんでしょうか?

KANAMI:月日が流れるのがあまりに早くて、正直、自分の中でもあれがいつ頃のことだったのか記憶が定かじゃないんです。

小鳩ミク:作っていたのは2024年のことでしたっぽ。いろいろな制作を進めていたさなかにいただいたお話でもあり、「これも一緒に取り掛かろう」というふうに着手した感じだったので、KANAMIが混乱するのは無理もないですっぽ。

──つまり「最新リリースではあるけれど、最新曲ではない」ということになるわけですね。楽曲自体については、やはりアニメ制作サイドからの要望を踏まえながら作られたんでしょうか?

KANAMI:そうですね。こういったケースでは「これまでのBAND-MAIDの曲で言うとこんな感じ」とか「こんな始まり方がいい」というような希望を提示されることもあるんですけど、今回の場合、『桃源暗鬼』側からは特に具体的な要望はなかったんです。とはいえエンディング主題歌ということなので、しっとり締め括る感じなのか、ガンガン行くべきなのか、どっちがいいんだろうかというところで2パターンほど用意させていただいて、結果的にガンガン行くほうになったんです。私自身、今回のことが決まってから原作の漫画を読み始めたんですけど、その物語自体がすごく面白くて!

小鳩ミク:面白いっぽね、本当に。

KANAMI:バトル系というか、戦いの場面がかなりあるんですが、登場人物ひとりひとりのキャラクターにもすごく興味深いものがあって、素敵な作品だなって思えたんです。だから楽曲としては、バトル的なイメージに見合うものにしつつ、サビはボーカルが全部持っていくようなものにしたいな、と考えながら作りました。

──なるほど。作品にちゃんと寄り添えるように原作に目を通すというのは大事なプロセスですよね。でも、あまりに物語に没入してしまうと曲作りのことを忘れてしまいそうになったりしませんか?(笑)

KANAMI:確かに結構夢中になって読んでましたね。一度読み始めてしまうと……

小鳩ミク:止まらなくなるっぽね(笑)。

KANAMI:「これはしょうがない、仕事なんだから」って自分に言い訳しながら読みふけっちゃいますね(笑)。

小鳩ミク:バトルの多さは確かに印象的なんですけどっぽ、テーマとして「正義と悪」というのがあるんですっぽね。今回、歌詞を書かせていただいた小鳩としては、そこについて強く意識しましたっぽ。桃太郎と鬼の間で繰り広げられていく闘いなのですが、一方にとっての正義はもう一方にとっては悪だったりもするわけで、そういった精神的な部分でのせめぎあい、人間的な感情の動きというのがすごく感じられる物語になっていて、そういう部分も伝わる歌詞にしたいなと強く思いながら書いていきましたっぽ。

──僕自身、この作品については知らずにいたんですが、資料によれば桃太郎と鬼、双方の末裔たちが繰り広げていく物語のようですね。最初は「えっ、昔話?」と思いましたが。

SAIKI:そうなんですよ。だけど読み始めてみると、すごく引き込まれるものがあるんです。

AKANE:第一話の段階から本当に引き込まれました。物語の中に足を踏み入れた途端、「ここからどうなるんだろう?」っていうワクワクが止まらなくなって。しかも展開がものすごく速いので、読んでいてどんどん深みに嵌まっていくんです。

SAIKI:まさしく。「ここからどう進んで行くの?」と思いながら読んでいると「えっ、そっちなの?」と思うような裏切りも次々に出てきて……まだアニメ自体の放送も始まったばかりなのであんまり詳しくは言わずにおきますけど(笑)、子供の頃から知っている桃太郎の話がこんなふうに展開していくというのが面白いし、私自身、もうだいぶ『桃源暗鬼』のファンになってます。しかも、おそらくこういった機会をいただかなければ私がバトル系の漫画を読むことはほぼあり得ないことなので、自分の中に新しい風を吹かせてもらったという嬉しさもありました。ここから興味が湧き始めて、他の作品をいろいろ見ちゃったりもしましたし。

──物語の展開が目まぐるしそうですよね。ただ、BAND-MAIDもここのところドラマ性の高い楽曲がいくつか登場していましたけど、この曲に関してはむしろ「一定の展開の中での変化」というのがテーマになっているように感じられます。

KANAMI:そうですね。バトル感という意味で、リフものの曲というか、強いリフで押し切っていく曲にしようと考えました。だから今も実際、「BAND-MAIDの曲で、同じリフをこんなにもずっと弾いていく感じのものはこれまでなかったかも」なんて思いながら練習してたりします(笑)。

小鳩ミク:確かにずーっと同じリフが続くっぽね。

SAIKI:そこが印象的で、カッコいい。

KANAMI:このリフを推したいというのもありましたし、先ほども言ったように、サビでは本当にボーカルがすべてを持っていく感じにしたいという想いがあって、このメロディになっていて。これ、かなりのハイトーンなんです。だからSAIKIが苦しそうに歌うエモい姿をまた見られることを期待しながら……その気持ちが出すぎちゃいましたかね(笑)。

小鳩ミク:すごく出てるっぽ(笑)。

KANAMI:そのためにSAIKIは大変なことになったようです。

──確か、KANAMIさんは、SAIKIさんがギリギリの状態で歌ってるところが特に好きなんですよね? SAIKIさんにとっては困った問題かもしれませんが。

SAIKI:本当に困るんです。だからこの曲を録ったあとで「本当にやめて!」って言いました(笑)。

小鳩ミク:しかもちょっと真面目な顔で言ってましたっぽ。

SAIKI:「私を殺す気なの?」って(笑)。

KANAMI:そう言われたので「今回だけはお願い!」と。

SAIKI:どうせそれも忘れて、またキーの高い新曲が出てくるんですけどね(笑)。

──でも実際、この曲のサビ部分のキーはだいぶ高いですよね? だけど、いわゆるキンキンするようなハイトーンではないので、実際に歌ってみないとこの高さは実感できにくいのかもしれません。

SAIKI:そこは努力しましたよ、レコーディングに向けて。ただ高いキーで歌えばいいというわけではなかったので。勢いも大事だし、実は結構細かめのメロディでもあるので、滑舌にも気を付けながら……。しかも今回のレコーディングでは、いつもボーカルのディレクションをしてくださっている方が不在だったんですよ。だからもうドキドキでしたし、エンジニアの方とも「ここはこんなふうにしたいので」みたいな事前の打ち合わせをしまくったうえで実際のレコーディングに臨みました。敢えて内情を言ってしまうと、納期までのスケジュールがめちゃくちゃタイトだったんですね。しかも私たちにはその日しかなかったのに、そのボーカルディレクション担当の方の予定が空いていなくて。だからもう「頑張ります!」と言うしかなくて。ただ、その方からも「全然大丈夫だよ」と言っていただけていたし、みんなも「やってみなよ。意外とできるから」と励ましてくれて。

AKANE:大変だろうなとは思ってたんですけど、結果、こうしてカッコいいボーカルが録れましたからね。

──もはやキーの高さもディレクションの有無も関係ないという感じですね。さすがです、SAIKI先生!

SAIKI:やめてください!(笑)

KANAMI:いや、でも素晴らしいです、本当に。

──もちろんレコーディングに臨む時には不安というか「自分で自分にOKを出す」という難しさもあっただろうとは察します。

SAIKI:そうですね。だから作業中に徐々に「私、行けるかも」みたいな感覚になってきて。エンジニアの方とも「SAIKIさん、いいですね」「いいっすよね?」「もうワンテイク行っちゃいます?」なんてやり取りをしてました(笑)。しかもこの曲では、いわゆる新しいチャレンジというのを特にやらなかったんです。いつも何かしら新たなことに挑戦したがるところがあるんですけど、今回は「これまで自分が培ってきたものを出す」ということに専念しましたし、「これが私です!」という感じで取り組んでいました。

小鳩ミク:この曲の場合、サビの頭が特に高いですっぽね。

SAIKI:そこだけじゃなくてサビ全体がずっと高いの。実際のレコーディング中、小鳩が「行けてるじゃん!」みたいなことを言ってたから「あなたは黙ってて。こっちは闘ってるんだから!」みたいなことを言い返したりもして(笑)。

──そんなやりとりを含むレコーディングドキュメンタリーを、いつか見てみたいものです。

SAIKI:私、だいぶ口が悪いはずです(笑)。

──それはともかく、新しいことに挑むのではなく、これまでに培ってきたものを目いっぱい発揮するという意味では、今回の制作はいい機会になったといえそうですね?

SAIKI:本当にそう思います。それによってまた自信を掴めた気もしますね。

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