【インタビュー】中島卓偉、全16曲収録アルバム『GLITTER』と革新的リリース形態に理想像「たったひとりの人生を狂わせられたほうが光栄」

■客観的にものを見られる人が勝者だという時代もあった
■今は個が強い人のほうが勝ち取る時代な気がしています
──自立して他に頼らないという意味でのインディペンデント精神もひしひしと感じます。《鎖を引きちぎれ 異端の羊》と歌う10曲目の「SHEEP」は、そのような心意気をストレートに描いた曲と言えますか?
卓偉:これも結構突っ込んだ歌詞で、“メジャーレコード会社だったら絶対シングルにさせてくれない。カップリングすら無理”みたいな(笑)。“独立するとこういうことができる”という曲ではあります。僕は高校受験もせずひとりで上京して、事務所に所属していたことを就職と捉えなかったとしたら、いわゆる会社に就職した人生を一度も送ったことがないんです。でも、キャリアの中で20数年、やっぱり大きなレコード会社や音楽事務所に所属していたりすると、どうしても団体行動になるし、個ではないんですね。そういったところに所属できない人からすると、”守られている”という意味ではすごくありがたい環境だったとは思うんですが。
──個であるためには、孤独を恐れない勇気、強さも必要になってきます。
卓偉:たとえば世の中を切り拓くような、起業している人、株主もそうですし、権利を持っている人たちはやっぱり個が強くて、自分ひとりで築き上げた人がほとんどじゃないですか。偉人だとか異端児だとか言われる人は、最初は絶対にひとりで踏み出すことから始まっているわけなので。そういうことを可能性として秘めている“羊たち”はたくさんいると思うんです。 もしかしたら自分もその羊の中のひとりだったのが、この歌詞のように“やっぱり、違うな”と違和感を抱いて独立を選んだのかもしれないし。そのことを絵で、ストーリーで説明できていると思います。
──社会情勢的にも、これから生きる道を模索する人が多いでしょうし、響くメッセージではないでしょうか?
卓偉:僕と同じように“あれ? どうやらこの場所じゃないな” “どうやらこの仕事じゃないな”という違和感に気付いて、この曲をきっかけにして変わり続けて走り出せる人がいたならば、先ほどお話しした“たったひとりの人生を狂わす”にも行き着くんですけど。そういう人がひとりでもいたら僕はこの曲を書いた意味があったなと、そう思いたいですね。

──11曲目「相談なんてしない」も《主観で突き進めばいい》と力強く歌われています。
卓偉:いろいろな大人と仕事してきて、プロデューサーとかディレクターとかがいて、言うことを聞かなきゃいけない環境の中に自分もいたんですね。でも、“本当にやりたいことがある人間は、相談なんてしてる場合じゃないぞ”と30代ぐらいに思ったりもして。客観的にものを見られる人が勝者だという時代もあったんでしょうが、今はもう完全に主観で見られる人、個が強い人のほうが勝ち取る時代な気がしています。外面を気にして客観的に自分を見ている以上、個は強くはならない。個のマグマは熱しないんです。
──個のマグマ。内なるものが重要なんですね。
卓偉:主観で物を考える人は、外からどう見えようが“自分に見えたものが正しい”と思って生きるわけなので。それは、視野が狭まるとも言えるんですけど、やっぱり勝ち取った時の揺るぎなさはすごく強いんですよ。馬車馬は前しか見えないようにガード(ブリンカー / 馬の視野は約350度と広く、後ろや横の動きに驚きやすい特性があるため、余計な景色を見せないことで前方に意識を集中させ、まっすぐ走らせる)を着けるわけですけど、別に顔ごと左を向けば左は見えるわけですから。ということは、自分で探しに行けば、主観であったとしても軌道修正できるということじゃないですか? 僕はそれをメッセージにしたいんです。自分はバンドではないしソロですから、なおさら、転んでケガをしても自分の責任だし、成功も自分の責任で。“卓偉がまたケガしてるな”と思われても“やっぱりあの人は主観で物事を考えて勝ちにいってる”となりますし、僕にとっての勝ちはお金じゃなくて自由なんです。
──手綱を自分で握るということですね。
卓偉:人は自由を取れたら勝ちだと思います。何にも文句を言われない場所にいき、そこで笑顔になれるか。自由になっても鬱になったらダメだし、“自由になったら寂しいです”とか言うんだとしたら、それは矛盾しているし、自由ではないです。「自由になって、たとえひとりでもめっちゃ毎日楽しいです」と言えたら、年齢もお金も関係なく“勝者だ”と思うんですよ。 “そこにいきたいです”というテーマは常に、このアルバムにもあるかもしれないです。

──そのテーマは、独立してご自身の道を切り開いている卓偉さんの人生と重なって聴こえるからこそ、説得力がある気がします。
卓偉:デビュー27年目ですけども、レコード会社やプロダクションに長らくいたので、やっぱりその時はそうではなかったんですね。いろいろな人の意見を汲んで、“みんながハッピーになれるように”と気を遣って。僕は揉め事が好きではない性格なので、誰かがイガイガするのも見たくなかったし。逆に納得してるかどうかを自分からみんなに聞きにいくような、心の幅の広さはあったんでしょうけど、結局“それがおかしいぞ”と。自分が全部作詞作曲してアレンジもしてるのに、“なぜ周りの人間の意見を聞いて機嫌を取り、その人たちが納得いくライヴ活動や音源活動になっていくんだろう?”というのが、だんだんクエスチョンになったのも正直ありましたから。かといって誰かを恨んでいるわけでもないんです。だけど、やっぱり“自分の人生じゃないのか?”という、自分の中から訴え掛けるもうひとりの自分の声をちゃんと聴いて、こういう行動になったんです。
──2曲目の「行動弱者」そのものですね。
卓偉:「行動弱者」は造語ですけど、行動できない人たちに対して、“そのままでいると本当にダメになっちまうぞ”というメッセージなわけで。これは、もしかしたら自分に言ってるところが強いのかもしれない。“これでいいや”と甘く考えて満足したら、“それ以上はないぞ”って。そういうところは緊張感を持ってやりたいからこそ、こういう歌詞が生まれるのかもしれないですね。

──アルバムの最後はドラマティックなバラード「歩きだそう」。この曲で締め括った背景には、どのようなお気持ちがあったんですか?
卓偉:この曲を作ったのは30代後半だったんですけれども。アルバムが“到達してしまう曲”で終わると、完成度は高くなるしトータリティでボリューム感も出せるんですけど、どうしても着地する感じがあるじゃないですか。でも、“まだまだ着地したくない”という想いがあって。だから、「歩きだそう」という”動いている曲”で終わりたいなって。そういう感覚が毎回、最後の曲に対してはどうしてもありますね。
──完結してしまわずに、次へと繋がる何かで終わりたいと。
卓偉:それが常にありますね。ビートルズの『アビイ・ロード』は「The End」で終わりますが、よくぞ勇気を振り絞ってそんな風にしたなと思います。「“ジ・エンドだ”という風にやっちまおうぜ」というイギリス人のジョークだったり、軽いノリだったのかもしれませんが、事実上、それまでレコーディングしていたアビイ・ロード・スタジオから出て行くようにジャケット写真で横断歩道を渡って、その最後の曲が「The End」だってファンは勘ぐるわけで。そうするとやっぱり、着地なんですよね。今まで飛び続けてきてここで終わったと。でも僕は“まだまだいきたい”という気持ちがあるから、歌詞は最後にひねっているところがあるかもしれないです。今改めて質問されて思い返すと、“そうだな、自然とそうしていたのかもしれないな”と気付きましたね。
──「歩きだそう」の最後もコーラスのハーモニーが心に染み渡りました。
卓偉:もうゴスペルですよね。“教会でみんなで歌っているような人数で”みたいなイメージがありました。インタビューの最初のほうで話題に出た「I’M A GLITTER」の前に付くイントロダクションのコーラスはゴスペルじゃなくて、あれは単純にボーカルを多重録音してオープニングっぽく聴こえるようにしているんですよ。でも、「歩きだそう」の最後は本当にゴスペル。アルバムが声で始まり、声で終わるようにしたかったというのはありますね。
──ゴスペルということで、やはり祈りのニュアンスも含まれますか?
卓偉:そうですね、あると思います。どんな寂し気なバラードであっても、少し希望の光がほしいから。 聴いてくれた人が歩きだせばいいなと。 今日という日は今日しかなくて、どんな風が吹いていても明日のために1mmでも2mmでも前に進むという感覚を持ちたいですから。 その感覚があればなんとかなるはずなので、それを伝えたいという気持ちはあります。

──さて、様々なライヴ活動を行なっている卓偉さんですが、8月22日からスタートする<独立&提供>ツアーは、どのような内容になりますか?
卓偉:セットリストが 2パターンありまして、<独立>は独立してこの4年半の間に出したアルバム4枚の曲縛りのセットリスト。 <提供>はアルバム『GLITTER』にも入ってるように提供曲がたくさんあるので、ハロプロファンの方にも観にきていただきたいと思いまして。そのような2パターンのセットリストで廻るショートツアーです。
──さいたま、大阪、名古屋の3都市ですね。
卓偉:はい、 1日2公演の計6公演になります。10月12日に東京国際フォーラムホールCで開催する東京公演<THE BEST REQUEST SONGS>は、タイトル通りリクエストライヴです。4〜5年に一回開催していて、その周期ということもあります。今ホームページで楽曲リクエスト募集をしているんですが、そのうちの上位30曲を全部やります。
──それは楽しみですね。メドレーにはせずフルで披露なさるんですか?
卓偉:そうですね。いざリハーサルに入ったら、“メドレーにしたほうがいい”という判断をする場合もあるかもしれないですけども、ファンの方に今どの曲が人気かを知るすごくいい機会だと思っています。そして、7月29日に発売されるアルバム 『GLITTER』を引っ提げてのツアー<GLITTER&HIPSTER>を、 11月28日から2027年2月まで開催します。こちらも1曲も被らないセットリストを3パターン用意します。


──チャレンジングで非常にカロリーの高いツアーですね。
卓偉:27年やってくるとやっぱり曲も増えてきて、ライヴがどうしても長くなってしまう時期があったんですよ。 やりたい曲、やらなきゃいけない曲があるので 2時間以上になってしまって。そうすると自分もダレる恐れがあるし、“もうちょっと聴きたい”ぐらいで終わるセットリストに戻したいなと思って。今は基本的に1時間半しかやらないんです。その代わり3パターンのセットリストを用意するから、他のライヴも観に来てねという。あと、弾き語りツアーも現在開催中で、11月にそれを終えたらアルバムツアーにシフトするという感じです。もうずっとライヴをやりっぱなしですね。
──加えて、田澤孝介さんとのツーマンライヴも7月21日に開催なさいましたよね。同じボーカリスト同士として、刺激を受ける部分もあるのでしょうか?
卓偉:田澤くんからは常に刺激を受けますし、同い歳で同じシンガーで、共通することもいっぱいあって。彼の曲も書かせてもらったりしていますし、昔から知っていたんですけど、最近より一層距離が近くなって、もう戦友のような感じです。 声の出し方もシンガーとしてのタイプも全然違うんですよ、彼はロジック型で全部データで説明できるシンガーなんです。その辺が天才的だと思ってます。僕は感覚でしかやってきていないので…“ロックは叫べばロックです”みたいな(笑)、そういう持論でしかないというか。知恵は付けてますが全然学ばないシンガーなので、田澤くんに楽屋でいろいろなアドバイスをもらいます。たとえば「どうやって声を出すんですか?」という話をすると、惜しみなく何でも教えてくれるので、すごくいい関係です。







