【インタビュー】探査機ボイジャーに重ねた『Voyager 2』で、Ryu Matsuyamaが射程に入れた新たな地平

2025.12.03 18:00

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待った甲斐はあった。Ryu Matsuyamaが3年3か月振りにリリースするフルアルバム『Voyager 2』は、まぎれもなくバンドの最高到達点だ。その間にメンバーはRyu(Vo, Key)とJackson(Dr)の二人体制へ移行し、精力的なライブ活動と楽曲提供で腕を磨き、今年の夏には「ATOMS」(日本テレビ「ぶらり途中下車の旅」テーマ曲)のヒットでさらに知名度を上げた。イタリア育ちのRyuとバークリー音楽大学で学んだJacksonによる洋楽志向のニュータイプJ-POPアーティストとして、ブレイクスルーを遂げる瞬間はもう射程距離だ。

ニューアルバム『Voyager 2』は、宇宙探査機ボイジャー2号の旅にロマンを託したSF的ストーリーを軸に、アレンジャー・森山公稀(odol)、エンジニア・葛西俊彦らと共に作り上げた多彩な音像を聴かせる飛躍の一枚。二人はいかにしてこの高みへと到達したのか、RyuとJacksonに語ってもらおう。

Ryu Matsuyama 左からJackson(Dr)、Ryu(Vo, Key)

――これが4枚目のフルアルバム。過去を振り返って、どんな思いがありますか?

Ryu:最初からずっと「Ryu Matsuyamaとは何か?」ということを自分たちに問いただしてきたというか、「Ryu Matsuyamaとは何ですか?」と聞かれた時に、最初は「J-ROCKです、アンビエントロックです、アンビエントポップです」とか答えていたんですけど、最近は答えがなくて、「さあ…?」みたいな感じでインタビューが終わっちゃったりするんですけど(笑)。その旅が始まったのがファースト『Between Night and Day』(2018年)ですね。その前にインディー盤が3枚あるんですけど、自分たちが何をしたいのか?というよりは、やりたい音楽を常に出していたので、言い方は悪いんですけど「このアルバムでよくメジャーデビューできたな」と今でも思います。リード曲の「Footsteps」はメジャーっぽかったんですけど、他の曲たちは結構暗いというか、テクニック系が多かったり、いろんな要素を盛り込みに盛り込んだので。そうやって迷走しつつも、答えを探す旅が僕らのジャンルというか、答えられないのが正解だなとずっと思っています。

――それは今も変わらない。

Ryu:はい。プロフィールにジャンルが書かれているんですけど、よくわかんないじゃないですか。「R&B、ネオソウル、シティポップ、チル、ヒップホップ」とか、たくさん並んでいますけど。

Jackson:どれも違うけどね。

Ryu:どれでもそうで、どれも違う(笑)。でもそれが面白くて、僕は全然それでいいんです。ただ、僕はずっとJ-POPを書いているつもりなんですよ。けど、できてないっていうだけで(笑)。

Jackson:だから、こうなっちゃう。

Ryu:「すごいポップな曲できたな」と思って聴かせたら、「めっちゃオルタナですね」とか言われたりするので。でもそれが、僕は良い答えだなと思うんですよね。今回のアルバムのタイトルが『Voyager 2』であるように、ボイジャー=旅人という、ずっと模索している感じが二人になってより出たというか、以前より面白いことができちゃうんで、「ジャンルは?」と聞かれると、「もっとわからなくなった」というのが正解かもしれない。

――過去3作は、チャレンジの軌跡でもありますよね。セカンド『Borderland』(2020年)ではmabanua(Ovall)さんをプロデューサーに迎えたり、塩塚モエカ(羊文学)さんをボーカルに迎えたり。サード『from here to there』ではラッパーのBIMさん、シンガーソングライターの優河さんをゲストに迎えたり。この2枚はカラフルですよね。

Ryu:そうなんです。僕の凝り固まった頭をほぐしてもらう作業というか、mabanuaさんはそれができる人で、おかげでシティポップに近いサウンドを作れたんですけど、それに対して僕は「自分だったらどういうメロディを乗せるだろう?」という挑戦をして、すごく勉強になりました。ちなみにOvallは3人ともご一緒させていただきました。mabanuaさん、Shingo Suzukiさん、関口シンゴさんと、Ovallコンプリートです(笑)。

――ゲームみたいな(笑)。でもそれができるバンドって、ほかにいないですよ。

Ryu:それをできたことによって、自分たちがどういう形でやっていけばいいのかがわかったし、ラッパーのBIMくんやDaichi Yamamotoさん、モエカちゃんもそうだし、色々試せたのがすごく今に活かされていると思います。今回はコラボ1曲ですけど(「絶景 feat. KUDANZ」)、KUDANZという結構ディープな方と一緒にやれて嬉しかったし、10何年やってきた経験値として、面白いことをどんどんやっていくスタンスがまだ続けられているんだと思います。

――いい歩み方をしてきていますよね、Jacksonさん。

Jackson:とにかく続けることでこんなに(作品を)出せたという結果があるので、こうしたいああしたいというよりも、Ryuくんと一緒にずっと音楽を続けることで自分も成長しているし、そのたびに新しいものが生まれているんだと思います。無理して頑張ったことはあんまりないですね。苦労したことはいっぱいあるけど。

Ryu:手つき的なこととかね。

Jackson:今までは自分で考えたりしていたけど、最近はRyuくんのデモの難解なドラムを、どうやって自分の生ドラムに落とし込むか?みたいなことが面白いと思っていて。

Ryu:ドラマーじゃない人が考えたドラムなので。

Jackson:これ、音が三つ鳴ってるでしょ?みたいな。そういうのも含めて、面白い経験をずっとしています。

Jackson

――Jacksonさんのルーツって何でしたっけ。

Jackson:僕のルーツはスティーリー・ダンです。ポップの中にジャズをどれだけ入れられるかとか、イントロがあってAメロがあってサビがあってソロがあって、というフォーマットの中でどれだけ遊べるか?という面白さが彼らにはあるので。バークリーで勉強して日本に帰ってきた時に、「洋楽みたいなことをやっている日本のバンドがある」と友達に聞かされて、オーディションに参加したんですけど、最初はジャムバンドだと思ってたんですよ。フィッシュみたいな。でもそうじゃなくて「リハーサルと違うことしないでください」とか言われて「これはスティーリー・ダンだ」と思いました。だから、RyuくんがOKと言ってくれるギリギリのラインを押さえて、あとは遊ぼうみたいな感じですね。

Ryu:だから、全部のアルバムにスティーリー・ダンの手つきが散りばめられている。

――前作に入っている「blue blur feat. mabanua」(ドラマ『オールドファッションカップケーキ』主題歌)もそんなふうに聴こえますね。

Jackson:あれはドゥービー・ブラザースの「What a fool believers」と、アース・ウィンド・アンド・ファイヤーの「September」ですね。mabanuaさんはアースを好きだと思いますし、僕も好きなんですけど…。

Ryu:僕はゼロですね(笑)。ブラックミュージックをまったく聴いてこなかったので。

Jackson:「これでようやく自分のフィールドのドラムで叩ける」と思った最初のきっかけが「blue blur」ですね。その前に「Blackout feat. mabanua」(『Borderland』)があったけど。それまでずっと「跳ねるなよ」って言われてたから。

Ryu:僕は正確な16ビートで生きてきた人間なので。特にUKの音楽が好きなので「跳ねてちゃダメでしょ」って。

Jackson:僕はリヴィング・カラーを聴いて「ロックは跳ねていいでしょ」と思っていた(笑)。その闘いが、ようやくこのへんで「跳ねてもいいよ」と言ってくれるようになって、そこから自由になった。

Ryu:それはmabanuaさんという中和剤がいてくれたおかげですね。どっちも大好きな人なので。

Jackson:そこで方向性が固まりました。

Ryu:しかも昔は3人だったので、僕はUKで、彼はブラックミュージックで、3人目はJ-POPしか聴いてこなかったジャズ野郎だったので、価値観は合わないですよね。だからこそ伝言ゲームのように、僕が思っているものがどんどん薄まって、それはそれで面白かったんですよ。でも今は二人なので、薄くなりつつも二人の中で完結できていて、それをodolの森山くんがアレンジャーとして理解してくれて。

Jackson:解像度が高くなった。

――一人抜けて二人になった、ポジティヴな面ですね。

Ryu:もともと3~4年前から、彼がベースも弾くようになったんですよ。今回のアルバムにも2曲入っています。

――それは、ドラムとベースが同じ人だから、同じグルーヴを作れるということですか。

Jackson:いや、「ヘタクソだな。誰だこのドラマーは」と思いながらベースを弾きます(笑)。ベースはばっちりグリッドに沿っていても、ドラムはダン!と叩いたあとの波形がベースと違うから。…ということを発見したので、すごくいい経験でした。

Ryu:フォデラっていう、いいベースを持ってるんですよ。「だったら弾いてよ」みたいな感じです。

――そういう意味でも、かつてない大きなターニングポイントですね。今回のアルバムは。

Jackson:そうですね。二人になったのはマジでかいです。

Ryu:それと、森山くんが参加してくれたのがでかい。

――森山公稀さんは、どういうタイプのアレンジャーですか?

Ryu:僕はもともと、Ryu Matsuyamaとodolとは近しいサウンド感があるというか、風景観が近いなと思っていたんですけど、実際一緒にやってみると、そこもありつつ、彼は新しいことをどんどんやろうとしている人なので、僕が作るものの延長線上でさらに面白くすることをやってくれました。mabanuaさんは自分のサウンドをしっかりと持っている方なんですけど、森山くんはよりフレキシブルですね。アンビエントをベースにしつつ、その上で色々できることが多いので、僕がああだこうだ言ってもすぐに再現してくれたりして、僕も勉強になりますし、彼もそう思ってくれているらしいので、そこが面白いなと思っています。最近、CMの音楽も僕と森山くんでやらせてもらったりとか、仕事面でも付き合いがどんどん濃くなってきていますね。

――odolの持っているアンビエントな要素も、Ryuさんの中で今回のキーワードだった?

Ryu:それは、そこまで考えてはいなくて、今あるサウンドを森山くんと一緒に育てていきたいというのが一番大事だったかもしれないですね。「これっぽくしてください」というよりは、「面白いものにしましょう」みたいなお誘いの仕方だったので、面白いものができたなとあらためて思います。

――最初に森山さんと共同作業したのは、どの曲ですか。

Ryu:去年出した「To get there」ですね。それがすごく面白かったんです。ただ、ベースがいないところから始まったので、とりあえず何も考えずめちゃくちゃ入れてみよう、面白くしてやろうという思いがあって、気張りすぎた面もあったんですよ、「To get there」は。

Ryu

――すごく好きな曲ですけどね。アンビエントの要素、ヒップホップっぽい強いビート、幽玄なコーラスワーク、いろいろ詰め込まれていて。

Ryu:最初にお話ししたみたいに「Ryu Matsuyamaとは何か?」を考えながら一緒にアレンジしていったんですけど、そこからだんだんとほぐれていって、「High Hopes」「絶景」「ATOMS」と続いていくんですけど、「High Hopes」で解き放たれた感じですね。とことん面白いことをしてやろうって、吹っ切れた。今回初めてタッグを組んだエンジニアの葛西(俊彦)さんも、面白いことをやりたがる人で、ミックスも攻めまくるし、新しいものを求めている人たちとばかりできたのが良かったですね。LAにいるマスタリング・エンジニアのDave Cooleyさんもそうですけど、彼もすごいノリが良くて、全部1回目でOKテイクだったんですよ。一個しか送ってこないんですけど、全部一発OKでした。そこからみんなの共通認識が一緒になって、「進む方向はここだな」みたいな感じで、すんなりと行きました。

――チーム感ができてますね。二人になったことで、逆に結束が増すのが面白い。

Ryu:前はチーム感がなかったというわけじゃないですけど、3人とも違う考えを持っていたので。

Jackson:それを一生懸命合わせていた。

Ryu:それはそれで面白い化学反応があるんですけど、今回はそれが洗練されたというか、より面白いことが起こっていると思います。

――「ATOMS」はどうですか?この曲をテレビで聴いて、Ryu Matsuyamaを知った人も多いと思います。

Ryu:これは僕の中では新しいドアが開けたというか、そもそもすごい暗い曲だったんですよ。悲しくなるような、空間が見えるような感じにしようかなと思っていた時に、森山くんが「ダンサブルにしてみますか」と言って、それはちょっと聴いてみたいかもと思って、できたのがこのバージョンです。今までになかったダンサブル感があって、自分でも新しいと思ったし、だいたいここらへんから…今回のアルバムの裏テーマはSFなんですけど、ここらへんからSFのほうに向かっていこうというのが決まりましたね。「High Hopes」もそうですけど、「ATOMS」を録っている時にはもう完全にそっちの方向になりました。

――アルバムの方向性を決定づけた曲。

Ryu:この曲、サビがないんです。サビみたいに聴こえるところも、なんかBメロっぽいんですよね。そういう曲をどこまで面白いと思わせるか。しかも一番と二番でAメロも違うし、自分でもどういう曲なんだろう?と思っていたら、こうなったので、「森山くんはさすがだな」という思いがありつつも、この曲を作って良かったなとあらためて思いました。僕がずっとやろうとしていた日本語と英語のブレンディングの仕方も、インディーズ2枚目に入っていた「太陽」という曲が、僕の中でひとつの答えだったんですけど、英語で歌っているから英語の曲かな?と思わせて、急に日本語になって一言でグッと来させるというものがうまくできたので、「ATOMS」は僕にとってかなり大きな存在になった曲ですね。

――それでアルバムの1曲目になったと。

Ryu:そうです。あとはやっぱりこの曲、ドラムがすごい。Jacksonもすごいですけど、葛西さんのミックスがすごい。

――スタジアムに響き渡るような音だと思いました。音も存在感も、とにかくでかい。

Ryu:でかいんですよ。メロディに邪魔じゃんと思うぐらいでかいんです。「High Hopes」もそうですけど、それがうまくブレンドしているのがすごい。

Jackson:これ、どこで録ったっけ。aLIVEスタジオ?

Ryu:かな。今回はスタジオがバラバラで、葛西さんのスケジュールに合わせて、1年かけてゆっくり作ったんですけど、それでも統一感があっていいなと思います。今回は本当にドラムのアルバムだなと僕は思っていて、まず(打ち込みで作った)僕の手付きをよく再現できたなという、そこがすごいと思うんですよ。リード曲の「Reflections」なんて人力では再現が無理なぐらいで、最後は11拍子になるんですけど、それを生で、しかも一発のテイクで録っているんですよ。

Jackson:1曲全部、つるっと録りました。

Ryu:分けて録るかな?と思ったら全部一発で「すごいな」と。だから流れが綺麗だし、テンション感もすごくよく出ていますね。この曲だけじゃなくて、「ATOMS」も「High Hopes」も結構細かいことをしていて、ちょっとレイドバックしたりとか、面白い試みをドラムでやっているので、このアルバムは本当にドラムに注目してほしいです。「Anemoi」もミニマルなセットで叩いてみて、タムがないから響きがすごく良かったりとか、そういう新しい発見もあったので。

Jackson:「Anemoi」はブラシで録ってます。

Ryu:結構アナログなやり方で、いろんな手法が組み込まれています。

Jackson:「Anemoi」は、僕がバンドに入る前からあった曲なんです。

Ryu:「Anemoi」はたぶん14~15年前の曲。僕が日本に来て5年ぐらいの曲ですね。

――それが今になって浮上した理由は?

Ryu:埋もれていたわけじゃないんですけれど、歌詞の日本語感に疑問を持っていたのと、あとは、ちょっと悲しすぎる曲だなと思っていたのと。ただ森山くんがオルタナ的なアレンジにしれくれて、前のアルバムの「hands」とか「kid」を継承してくれている感じもあって、その流れがあったおかげでこの曲をもう一回呼び戻そうと思って入れました。ただ歌詞は15年前に書いたそのままで、今見るとすごいストレートで、ここまでストレートにできるのは勇気がいると思うんですよ。ただ、僕はストレートに「愛してる」と言いたい人で、そこは海外育ちのおかげもあるのかな?と思います。

――そうかもしれないです。

Ryu:「Anemoi」って、ちょっと中二病感があるじゃないですか。ギリシャ神話の風の名前をタイトルにして、ボレアスとゼビュロスの名前が出てくると、「ファイナル・ファンタジー」が始まるのかっていう感じがあるじゃないですか(笑)。

Jackson:今は書きづらいよね。

Ryu:でも当時の僕を振り返りながら聴くと「いい曲だな」と思って、こういう歌詞はもう書けないから、今入れるべきかなと思いました。「汚れた僕の目を洗い流して」とかクサイなと思うんですけど。

Jackson:3人でバンドでやってたら、なかなか出せない曲だよね。ベースとドラムとキーボードでやると、普通のバラードみたいになっちゃう可能性があるから。今は二人で自由にやろうと思っているし、曲が生きるベストの形でできるから。

Ryu:森山くんのアイディアもあって、オルタナSFみたいな指針ができたので「これだ!」と思いました。「Anemoi」は林響太朗監督がソニーPCLの技術を駆使して制作した映像の音楽でも使われているので、ぜひご覧いただきたいです。

Jackson:「Reflections」の対照にある曲だよね、「Anemoi」は。

Ryu:一番古い曲と一番新しい曲。タイムライン的に前後していて、それもあってSF的な要素があると思ったんですね。そして今回初めてアナログ盤を作らせてもらって、(サンプルを取り出して)これがLPのジャケットなんですけど、9曲のイメージをデザイナーの岩本実里さんにイラストにしてもらっています。

――あ、これって、ボイジャー2号に積まれたレコードの…。

Ryu:そうです。まさに「ゴールデンレコード」のように、わからなくてもいいし、わかってもいいしという感覚で、メッセージをイラストに込めています。ちなみに、どのイラストがどの曲か、答えはいただいているんですけど、僕らは全員間違ってました(笑)。

――この、下のほうに書いてある謎の数字も…?

Ryu:それも、ナゾナゾみたいなものですね。そういう面白い仕掛けを入れてみて、ゴールデンレコードとVoyager 2というSFちっくなストーリー感を出したいというのがあったので。そして、アナログの試聴会にて当日レコードを買ってくれた方に、僕がAIと共に書いた短編小説をお渡しするんですけど、それは9曲の歌詞が一個のストーリーに繋がっているんですね。Voyager的なSFストーリーです。それを見てからデザイナーの岩本さんにデザインをしてもらっているし、エンジニアの葛西さんにも短編小説をお渡ししたら、「これはミックスの指標になる」と言ってくれました。彼は写真とか色のイメージを伝えると、ミックスに活かしてくれる人なんですよ。

――みんな面白がってますね。アルバムのコンセプトを楽しんでいる。

Ryu:こういうナゾナゾみたいなことって、やり方がVoyagerと一緒なんですよね。ゴールデンレコードを受け取った宇宙人が、「この数字って年号じゃね?」って考えたりして(笑)。

Jackson:宇宙人に届いてほしいなという思いを込めて…。

Ryu:『Voyager 2』と名付けました。1じゃなくて2が先に旅立って、でも今はもう追い越されちゃった。1のほうが遠くまで行っている。

Jackson:ロマンがありますよね。先に行かれちゃった…みたいな。

Ryu:その悲しさがいいんですよ。僕が想像するシーンは、「一緒に旅立とうね」と言っていたのに、先に2だけ飛ばされて「ええー?…」みたいな感じ。Voyager 2ってそういう悲しみを感じるんですよ。本当は一緒にバイバイって言いながら行くはずが、ひとりで行っちゃったみたいな、すごいメランコリックになっちゃうんです。Voyager 2が先に行かされて、不安で不安でしょうがない…みたいな。ちょっと擬人化してますけど。

――擬人化したくなる気持ちはわかる気がします。はやぶさもそうでしたけど。

Ryu:今はもう太陽圏を抜けて、データ収集するのが難しくなってきているので。そのロマンって、クリストファー・ノーランの映画『インターステラー』みたいな、自分たちの想像でしかないんですけど、僕的にはやっぱり宇宙人はいる派なので。僕らのこの曲たちも、時間と場所を超えた長い旅をしてほしいなという思いで『Voyager 2』にしました。

――ライブも楽しみです。リリースツアー<WHALE SONGS>は、12月6日に東京、1月31日に大阪、2月1日に名古屋。二人体制でどうなるのか?と思いましたけど、むしろ自由度が増えたみたいですね。

Ryu:そうなんです。二人で演奏することが増えたんですけど、すごい気軽というか、イントロが長くできるとか、僕は雰囲気で入ればいいとか、正直やりやすくなったんですよね。より一層プリミティブにはなりましたけれども、「(生で)こんなに音を出してるんだ」という驚きとか、リズムがよれてるのに合っているとか、そういうものをもっと感じられるようになったので、ライブをより楽しんでいます。ぜひ観に来てほしいです。

取材・文◎宮本英夫

『Voyager 2』

2025年12月10日(水)CD & LP発売
2025年12月3日(水)全曲先行配信
CD VPCC-87305 3,850円(税込)
LP VPJC-31031 5,500円(税込)
1.ATOMS
2.High Hopes
3.In my head
4.me to me
5.Anemoi
6.To get there
7.Reflections
8.絶景 feat. KUDANZ
9.Kaze
音楽配信・CD購入:https://vap.lnk.to/Voyager2

『Voyager 2』 全曲トレイラー
https://youtu.be/M1YefxdU0pw?si=xPUXY-1_9Gj5ZhTq

<ワンマンライブ「WHALE SONGS」>

2025年12月6日(土)
東京・ワンマンライブ「WHALE SONGS」
@下北沢ADRIFT OPEN 16:30 / START 17:00

2026年1月31日(土)
大阪・ワンマンライブ「WHALE SONGS」
@Live House Pangea

2026年2月1日(日)
名古屋・ワンマンライブ「WHALE SONGS」
@Music Bar Perch

http://ryumatsuyama.com/