【ライブレポート】『Voyager 2』が照らす新世界、Ryu Matsuyamaが描いた壮麗なサウンドスケープ

12月6日、下北沢ADRIFTで<Ryu Matsuyama ONE MAN LIVE「WHALE SONGS」>ツアー初日の幕が開いた。12月3日に先行配信リリースされた『Voyager 2』は、Ryu(Vo, Key)とJackson(Dr)の二人体制となって初のアルバムで、森山公稀(odol)をアレンジに迎えた革新の一作だった。東京のライブには森山を始め、ホーンセクションを含む精鋭メンバーが参加する。今日が新たな世界を拓くライブにきっとなる。かつてない期待を胸に、人でぎっしり埋まったフロアに滑り込む。

キーボードとホーンによる静かな波のうねりが次第に高まり、JacksonのリズムとRyuのスキャットが荘厳なムードを作り出す、オーバーチュアの演奏からいきなりかっこいい。1曲目はアルバムと同じ「ATOMS」だ。心臓のパルスを刻むJacksonのドラムに乗せた、Ryuの艶やかなファルセットがまるで讃美歌のように吹き抜けの天井に響き渡る。森山公稀(Key/Synth)、Zak Croxall(Bass)、竹内悠馬(Trumpet)、大田垣正信(Trombone)の奏でる音は、低音はクラブミュージック並みのド迫力で、それでいて繊細なニュアンスを大事にした彩り豊かなもの。一言でいえば、強くて優しい。
「『WHALE SONGS』にお越しいただき、本当にありがとうございます。最後の最後まで、楽しんでいってください」──Ryu
序盤から『Voyager 2』の曲を次々と繰り出し、新たなバンドサウンドを強烈にアピールする。心地よいチルアウトのムードをたたえた「High Hopes」は、Ryuのオートチューン・ボーカルでより幻想的に、明るい広がりのあるダンスロック的グルーヴを持つ「In my head」は、生のホーンセクションを得てより生き生きと。前作アルバム『from here to there』収録の「blue blur feat.mabanua」も、ゴキゲンなホーンのおかげでJacksonのドラムがよりはずんで聴こえる。フロアを埋めたファンも心地よく揺れている。いい雰囲気だ。


「今日は“良いお年を”と“来年もよろしくお願いします”というライブになるので。集大成と言いますか、今までやってきた曲と新しいアルバムの曲を織り交ぜてやりたいと思います」──Ryu
中盤からはスロー&メロウな曲がぐっと増え、さらにディープなRyu Matsuyamaの世界へと入り込んでゆく。Ryuのピアノの爪弾き、Jacksonのスネアのひと叩き、ミニマムな音の重なりが作る音の波の中をトロンボーンのソロが泳ぐ「me to me」、Ryuがアコースティックギターに持ち替えて、ハイトーンの美声を響かせて朗々と弾き語る「Kaze」。極めつけは幽玄なシンセサイザー、どこか異国のトラッドを思わせる素朴なメロディ、RyuとJacksonのハーモニーが溶け合い、宇宙的と呼びたい広大な音空間が目の前に広がる「絶景 feat.KUDANZ」だ。深海を思わせる深いブルーなど、曲に合わせた照明の演出も美しい。ライブ中盤はスロー/ミディアムの曲が並び、ノンストップで多幸感が持続する至福の時だ。


「クジラは遠い海の中で、コミュニケーションをとっているそうです。“ここに集まろう”と声を出し合って、1年に一回集まるんですが、それはまさに僕らのワンマンライブと一緒です」──Ryu
『Voyager 2』はSFをテーマにしたアルバムで、クジラはRyuにとって地球上で最もSFを感じる動物だという。『WHALE SONGS』というタイトルについて語り、メンバーとファンに感謝を告げて「来年も一緒に楽しいことをやりましょう」と笑顔のRyu。昨年5月にメンバー脱退、今年10月にはRyuの喉の不調を経験したRyu Matsuyamaにとって、皆が笑顔で集まるワンマンライブへの思いはより強まったのだろう。ゆったりとした曲調に太く力強いリズムの芯を通しながら、堂々としかし繊細で優雅に海中を泳ぐクジラのような音楽。
「最近のライブで、音楽を始めた時の楽しさをまた味わえています。僕らの声に集まってくれたみなさんの前で演奏できることは、これ以上ない幸せです。また僕らの、楽しんでいる音の中でお会いできたら嬉しいなと思います。」──Ryu
Ryuがハンドマイクを握ってセンターで歌う「Anemoi」の、ギリシャ神話をモチーフにした幻想的な歌詞とワルツのリズム、郷愁を誘うメロディと朗々と響く歌声が胸に沁みる。歌詞のないスキャットにさえ意味を感じる、Ryuの歌声は唯一無二だ。


アンコールでは嬉しいお知らせがいくつもあって、まず『Voyager 2』のCDとアナログ盤は今日から会場で先行発売、ショップに並ぶのは10日から。そしてなんと、2026年にはもう1枚のアルバムを出す計画があり、さらにodol×Ryu Matsuyamaとして新たな活動予定もあるとのこと。1月31日に大阪・Live House Pangea(*Ryu、Jackson、森山のトリオ)、2月1日に名古屋・Music Bar Perch(*Ryu、Jacksonのデュオ)と、残りのツアー2本を終えた後もRyu Matsuyamaの活発な活動は続く。さらに2月後半には札幌も追加になりそうとのこと。まさに今日が、新たな世界を拓くはじまりの日だ。飽くなき音楽の探究者、Voyager=旅人としての二人の旅はさらに続いてゆく。

文◎宮本英夫
撮影◎丸山剛由
<Ryu Matsuyama 2025.12.06 ONE MAN LIVE “WHALE SONGS” SETLIST>
2025年12月6日@下北沢ADRIFT
1.ATOMS
2.Sane Pure Eyes
3.High Hopes
4.In my head
5.blue blur feat.mabanua
6.Go Through, Grow Through
7.kepler-452b
8.To get there
9.me to me
10.reckless child
11.Kaze
12.絶景 feat.KUDANZ
13.hands
14.tones(ドラマ 「ケの日のケケケ」 メインテーマ)
15.kid feat.優河
16.That Mad Rad Tale
17.yet
18.Anemoi
19.Reflections
SET LISTプレイリスト:https://vap.lnk.to/ryumatsulive_251206
『Voyager 2』

2025年12月10日(水)CD & LP発売
2025年12月3日(水)全曲先行配信
1.ATOMS
2.High Hopes
3.In my head
4.me to me
5.Anemoi
6.To get there
7.Reflections
8.絶景 feat.KUDANZ
9.Kaze
音楽配信・CD購入:https://vap.lnk.to/Voyager2
<ワンマンライブ「WHALE SONGS」>
2026年1月31日(土)
大阪・ワンマンライブ「WHALE SONGS」
@Live House Pangea
2026年2月1日(日)
名古屋・ワンマンライブ「WHALE SONGS」
@Music Bar Perch
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