【インタビュー】SIAMSOPHIA、松岡充が語る30周年FINALとSOPHIAの未来「50歳を越えたって青春できるんだよ」

2025.10.12 17:00

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■栄喜は優しくて強い
■彼に対する僕の気持ちは一生変わらない

──それらを再認識したツアーの後、松岡さんはデヴィッド・ボウイの遺作ミュージカル『LAZARUS -ラザルス-』で主演を務めました。SOPHIAのZEPPツアーとミュージカル。その関係性について、松岡さんはどのように捉えていらっしゃるのでしょうか。

松岡:ぐるっと繋がってますよね、不思議と。“誰が座組を整えたんだ?”っていうぐらいに。SOPHIAのツアーのテーマやセットリスト、演出を決めていって。そのあとでミュージカルの稽古場に行ったら『LAZARUS -ラザルス-』やデヴィッド・ボウイの世界観がそこにある。その演出や表現が、すごくシンクロしてましたよね。

──実際、SOPHIAのツアー演出とミュージカル演出が繋がっていたように思えたので、“松岡さんすごいな”と感じていたんですが。

松岡:そこは僕も全然計算してなかったんですよ。だけど、シンクロしてたと思います。

──気持ちもシンクロしていましたか?

松岡:してました。なぜかと言うと、デヴィッド・ボウイのフィロソフィーを感じてた僕の少年時代があったから。いちファンとして考えたら“影響を受けてます”で終わりなんだけど、ミュージシャン、コンポーザー、クリエイティヴを創る人間として見たときに、おこがましいですけど、“なんか僕とアンテナの種類が近いな”というのをすごく感じましたね。俳優としての活動ももう20数年やってますけど、そのなかで『LAZARUS -ラザルス-』はちょっと別格でしたね。

──デヴィッド・ボウイが憑依してるんじゃないか?と錯覚するような緊迫感ある圧巻のステージでした。

松岡:本当ですか、嬉しいです。けど、実はすっごく辛いことがいっぱいあったんですよ。役作り以外にも辛いことがいっぱい。だけど、それさえもデヴィッド・ボウイが用意してくれたことなんだなっていう風に理解して、励みました。

──この役を演じるための試練?

松岡:“苦しさがあって、それでも向かっていく。その一歩が声になり、叫びになるんだ”と大先輩のデヴィッド・ボウイから教えられた気がします。たとえば、「松岡さんに影響されて、憧れて僕は歌ってます。曲を創ってます」と言ってくれる後輩がいたとして。「今度僕、ミュージカルで松岡充を演じることになりました」って言われても「本当にお前できんの?」って言うと思うんですよ。決してハウツーだけではたどり着けない。苦難を乗り越えた者にしか歌えない。「そんな簡単に歌えるもんじゃねぇぞ、俺の歌は。使いこなせてるなんて思うなよ」って、僕だったらそういう気持ちになりますもんね。そういうことをデヴィッド・ボウイに言われた気がしました。だからこそ、無心になって稽古に没頭したし、追求し続けました。苦難や試練を乗り越えたから喜びがあって、だから優しくなれるんだということを作品を通して教えてもらいましたね。

──栄喜さんもミュージカル『LAZARUS -ラザルス-』を観て刺激を受けたようです。「ミュージシャンとしても役者としてもタレントとしても中途半端なところがないから、リスペクトを越えてヤバい男」だとおっしゃっていました。

松岡:ははは。栄喜は栄喜ですごい人ですからね。デビューから30年、酸いも甘いも経験してきてる。彼はすごく裏切られてきてるんですよ。たぶん本人はそう思ってないんだけど、端から見てて僕はそう感じてます。彼は正直だから、彼自身が傷つくことも多いと思う。嫌なものがあったらみんな避けるじゃないですか。だけど、栄喜は嫌だと思っても突入するんです。“俺が避けたら誰が?”ってタイプだから、すごくいろんな矢を受けるし、つかまなくていいものをつかまされたりするんですよ。だからこそ、なんの忖度もないし、損得関係なく、自分がいいと思うものを真っ直ぐにいいと言える。そこは彼のすごいところだと僕は評価してるんです。

──強くて優しいんですね。

松岡:そう。人生は勝たなきゃいけない、負けたくないってみんなが思うわけじゃないですか。そのバロメーターが権力とか地位とかお金というところにフォーカスされがちなのは、昔も今もあまり変わってないと思うんです。だけど、一番強いのはやっぱり優しさなんですよ。栄喜は優しくて強い。ここでは言えない話があるんですが、栄喜という男がどれだけ優しいかを示す逸話を僕はリアルに知ってる。だから、彼に対する僕の気持ちは一生変わらない。これからも、いろんな人に愛される人なんだろうなと思いますね。

──そして、栄喜さんとの繋がりから生まれたSIAMSOPHIAのTOYOTA ARENA TOKYO公演<2025 SIAMSOPHIA FINAL>がまもなく開催となります。SOPHIAにとっても30周年の最後を締めくくるライブとなるわけですか?

松岡:そうですね。その後に<LUNATIC FEST. 2025>出演がありますけど、これは先輩から“30年よく頑張ったね”というご褒美を頂いたみたいに僕は思ってますので、SOPHIAの30周年としてはTOYOTA ARENA TOKYO公演が最後になりますね。

──TOYOTA ARENA TOKYO公演はどんなものにしたいですか?

松岡:楽しみたいです。SIAM SHADEメンバーの4人とSOPHIAの5人と一緒に、30周年の打ち上げみたいな感じで。お酒を飲む打ち上げじゃなくて、僕らの一番好きな楽器を弾いて叩いて、一番好きな歌を思いっきり歌う。それを一番共感できる仲間たちと肩組んでやる。そういうライブにしたいと思ってます。そんな僕らを観ることで、ファンの人たちが感じている孤独感から解放したい。たった一人でここまで来たんじゃないって。

──はい。

松岡:たとえば、“自分の周りに今いる人たちは、なんとなくいるだけだ”と感じてる人がいるかもしれないし、“運命的だと思って一緒にいたけど、最近それを感じられなくなった”という人もいるかもしれない。そういう人たちのことを再認識できるような人との繋がり……そんなものが感じられる空間がステージ上に生まれるんじゃないかと思ってます。

──それがSIAMSOPHIA9人のステージ上に生まれると。そして観た人の心のなかにそのような変化が起こると。

松岡:僕らがあるがままを見せればね。青春は、人生の一番輝いてる時期だと言われがちですけど、そんなのは別に年齢ではなくて。実は50歳を越えたって青春できるんだよ、という話です。いつだって、やろうと思ったときが一番輝いている。そういうことを表現したいし、観て感じてもらえたら嬉しいな。それがライブ、だと思うんで。

──30周年を締めくくった後のSOPHIAについて、松岡さんが現在、考えている今後の活動ビジョンがあったら教えてください。

松岡:計画は全然考えてないんですよ。今、スタッフから提案してくれている状況なんですけど、そこで僕が言ってる答えとしては、「俺以外の4人が1人残らず“やりたい”って言うんだったら、俺もやる」ということです。活動休止前は、僕が「これやるよ!」ってメンバーに声をかけてたけど、復活してからもそれをやるつもりはまったくないし、やらなきゃいけないとも思ってないんですよ。やらなきゃいけないことなんて、人生にもうないから。

──え! そうなんですか?

松岡:はい。だから、これからは自分がやりたいことをやろうと思ってます。で、僕がやりたいことはなにかっていうと、“メンバー4人がやりたいと思うこと”なんです、SOPHIAにおいて。ここで言う”やりたいこと”というのは、“わがままとか個人の欲求で、これをやってみたい”ではなく、“SOPHIAとして覚悟をもって、これがやりたいと思う”ということ。だから“やると言ったからには腹をくくれよ”って話なんです。

──そうは言っても、4人はそういうことがとても苦手なメンバーといいますか(苦笑)。

松岡:そう。でも、それをやらなければSOPHIAは名乗れないですよ。

──ほぉ~。

松岡:だって、復活するまで9年待たせて、それぞれが個々の人生のなかで自分の時間を過ごしてきたわけで。「それでも復活するか?」って直接会って聞いたら、全員が「はい」と言ったわけですよ。今もそのときと同じなんです。僕はもともと、やりたくないやつがやらされてる状況がすごく嫌で、やりたくないなら辞めろよって思うんです。

──なるほど。

松岡:それはSOPHIAのメンバーだけじゃないですよ。「なんかやらなきゃいけない感じだから」ってやらされてるみたいな感じのことを言う人は、大嫌いなんです。そんなことは知らねぇよって話じゃないですか。当然、SOPHIAっていうバンドにおいても一緒のことで。「やりたいの?」って聞いて「やりたい」と答えたなら、苦しいときや上手くいかないときも、「でも、やりたいって言ったよね? 頑張ろうよ。やりたいと思ったんだから、やろうよ」って言い合える。でも、「俺はやりたいとは言ってないけど、なんかやる流れになったんだよね」とか言われたら、もうどうしようもないじゃないですか。

──そうですね。

松岡:そういうのはもう嫌なんですよ。だから「最低限、メンバーがやりたいかどうかは絶対に聞くようにして」とスタッフに言ってるんです。「やりたいかやりたくないか、ちょっと分からない」って言うんだったらやらない。そんな感じですね。

──ひとりひとり、そして全員の“やりたい”という意思があって始めてSOPHIAは動くと。

松岡:そう。ひとりひとりの意思があってこそ、SOPHIAと名乗れる。だから、メンバー各々がちゃんと発言してSOPHIAを進めていくということです。物理的なことだけではなく、気持ちとして誰かが不参加では進められない。