【ライブレポート】SIAMSOPHIA、30周年ファイナルに万感の思い「今、ひとつになれたこの空間に噓はない。これがすべてです」

2025.12.03 19:00

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2025年、デビュー30周年を迎えたSOPHIAとSIAM SHADEメンバーの4人。彼らが10月13日、東京・TOYOTA ARENA TOKYOにて<2025 SIAMSOPHIA FINAL>を開催し、お互いのアニバーサリーイヤーを本公演で締め括った。

2025年2月9日、一夜限りの奇跡として彼らが大阪城ホールのステージに立ったときは、同じく30周年を向かえた芸人・ガレッジセールを迎え、<1995 SIAM SOPHIA-G>を開催。2組のライブはもちろん、メンバーシャッフルのステージ、オーケストラとの共演、ゴリエやGaphiaまで登場する華やかさをもって、デビュー30周年のスタートをお祭りのように祝い、大盛況のうちに終えた。

そして奇跡が再び。SIAMSOPHIA 30周年アニバーサリーのファイナルとなる東京公演は、<2025 SIAMSOPHIA FINAL>というタイトルからも分かるように、出演はSIAMSOPHIAのみ。ガチの対バンだ。そこで浮き彫りとなったのは、SOPHIA、SIAM SHADEメンバーの4人、SOPHIAns(SOPHIAのファンの呼称)、6人目のメンバー(SIAM SHADEのファン)の濃厚な関係性だった。

SOPHIAは9年間の活動休止期間を経て今がある。一方、SIAM SHADEは2002年の解散後、期間限定的な復活を遂げている。メンバーとファンが、互いに似た立場に置かれた状況を理解し、尊重し合い、寄り添って励まし合う。大阪公演を経て構築された両者の共感は深まり、絆へと変わり、10月にオープンしたばかりのTOYOTA ARENA TOKYOには対バンとは思えないほど、温かく優しい空気が広がっていった。

開演時間を過ぎると、大阪公演と同じようにSOPHIAの楽曲を散りばめたオーケストラの壮大なサウンドがSEとして流れた。アリーナ席の下手後方から、松岡充(Vo)、豊田和貴(G)、黒柳能生(B)、赤松芳朋(Dr)、都啓一(Key)。上手後方から、栄喜(Vo)、KAZUMA(Vo&G)、NATCHIN(B)、淳士(Dr)、サポートギターのRENO(G)が、大阪公演と同じように客席内を練り歩きながら姿を現した。

TOYOTA ARENA TOKYOにはアリーナ中央にサブステージを設置。この日は前述の大阪公演とは異なり、サブステージ上で顔を合わせた両者がにらみ合わずに、メンバー各々が熱いハグを交わす温かなムードだ。そして、再び客席内を歩きながらメインステージへと移動。松岡と栄喜が再度ステージ上でお互いを抱きしめた後に開幕宣言へ。

「それではSIAMSOPHIA、始めたいと思います。みんなよろしく!」──松岡充(Vo)

そして、まずはメンバー紹介も兼ねた楽器隊のソロセッションからライブが幕を開けた。総勢10名がステージに集まり、「SIAMSOPHIA! 来い!」という松岡のかけ声を合図に、SOPHIAの「brother & sister」、SIAM SHADEの「グレイシャルLOVE」を続けてアクト。いずれの曲も松岡と栄喜をメインヴォーカルに、ツインドラム、ツインベース、トリプルギター、そしてキーボードという楽器編成が圧巻。とりわけ「グレイシャルLOVE」はKAZUMAを交えたトリプルヴォーカルという贅沢な形で披露された。

大阪城ホール公演は両バンドのメンバーをシャッフルしての“SOPHI SHADE”と“SIAM SOPHIA”のアクトだったが、前述の2曲を10人全員が揃って演奏するというスペシャルバージョンだ。オープニングから大迫力のステージで両者のファンを魅了し、メンバーは一旦舞台をおりた。

【SIAM SHADEメンバー】

そして対バンは、SIAM SHADEメンバーのターンからスタート。先ごろ公開したSIMASOPHIAインタビューでは「ガチの対バン形式」であることが予告されていたほか、栄喜が事前インタビューで「今回は俺たちの超得意なところだけで、フルスロットルで」と語っていたように、灼熱を凝縮した濃厚な1時間が届けられた。

暗転した場内に、突如ものすごい数のレーザービームが広がり、SEをバックに栄喜、KAZUMA、NATCHIN、淳士、RENOが姿を現すと、場内が大歓声に包まれた。“HKNJ”というロゴフラッグのもと、彼らのライブは5thシングル「PASSION」で幕開け。初っぱなからスピード感溢れるリフとビートで、軽快なハードロックをパワフルな歌とともに重低音で轟かせていく。まだ1曲目なのに、場内にはバスケをはじめとする様々なエンターテイメントが行われる会場に相応しく、熱いエネルギーが充満した。そのパッションを受けて、“6人目のメンバー”たちはコブシを、SOPHIAnsは申し合わせたかのようにペンライトを赤色に灯して振り上げていく。

その勢いは、次の「CAN’T FORGET YOU」でさらにヒートアップ。“CAN’T FORGET YOU!(あなたを忘れられない)”の掛け声も客席との呼吸がピッタリだ。流れるようにキャッチーなメロディーとキメが効いたハードロック的構成はもとより、テクニカルなフレーズやブレイクをきっちりと揃える卓越した演奏力は、彼らならではのもの。栄喜とのハーモニーを聴かせたKAZUMAが、すぐさまレイヤーでコーラスを重ねるなど、ふたりのシナジーが存分に発揮される同曲のツインヴォーカルスタイルは、彼らの専売特許と言っていい。

「遂に来ちゃったね、この日が。始まったら終わっちゃうわけじゃない? 寂しい! だけど今日は30周年。ここに集ってくれたみんなで、最初から最後まで楽しもう! いけるか? いくぞ!」──栄喜

会場を煽りまくった栄喜の言葉に続いて、淳士のドラムとNATCHINのベースが熱く激しい頭打ちの8ビートを繰り出して曲は「MONKEY SCIENCE」へ。 “Break out revolution (革命を起こせ)”と歌う栄喜のリズミカルで流麗なサビフレーズも、この日の彼らの決意表明のように感じられて、たまらなくグッときた。

そして、スピーディーなハードチューン「せつなさよりも遠くへ」はフジテレビ系『フォーミュラ・ニッポン』イメージソングとして知られるキャッチーな13thシングルだ。しかし、サビ始まりのド頭から延々とタッピングを弾きまくるRENOのギタープレイからして、オーディエンスの度肝を抜く超絶テクニック。髪の毛を風になびかせながら淳士がキレキレの高速シンバルワークで疾走感を高めていくなか、栄喜はハスキーな歌声で、その対極にあるようなせつない歌詞をスピーディーに熱唱。パワー、スピード、テクニック、そして美しく流麗なメロディーが渾然一体となってオーディエンスを沸かせた。

間髪入れずに栄喜のタイトルコールから、爽快な疾走感がたまらない「Happy?」へ。“過去も未来も自分も乗り越えて行けるさ”というフレーズが、今だからこそ胸に沁みる。栄喜とKAZUMAのツインヴォーカルによる軽快な掛け合い、KAZUMAとRENOのギターのハモリ、ツービートも盛り込まれた淳士の多彩なドラムプレイ、栄喜が「NATCHIN!」と叫んで指さすとNATCHINの語り的なヴォーカルと骨太のベースが楽曲をうねらせるなど、各メンバーの見どころも盛りだくさんの1曲として会場を楽しませた。

「淳士!」と栄喜が声をかけると重厚なリズムが叩き出され、それにKAZUMAとRENOが刻みギターで応える。そしてNATCHINが加わると、ステージフロントから8本もの巨大な炎柱が勢いよく燃え盛った。その炎が放つ熱波とともに「SEXUAL SNIPER」へ。ゴリゴリなヘヴィリフに観客たちは大歓声を上げてヘッドバンギング。変拍子を交えたインターが楽曲のスリルに拍車をかける。アリーナならではのド派手な演出と地を這うサウンドが映えまくる大迫力のステージに会場のボルテージは最高潮へ。そのテンションをキープしたまま栄喜の渾身のシャウトで楽曲がフィニッシュした。

しかし彼らのステージは、ここからさらに灼熱状態を築き上げた。淳士が鳴らし続ける4つ打ちのキックに合わせて、栄喜が「来い! 来い! 来い! 来い! 来い! 来い! 来い! SAY!」と客席を煽り、それに応えて場内に「来い! 来い! 来い! 来い!〜」のコール&レスポンスが広がりを増していく。その熱い温度のまま、盛り上がり必至ハードロックチューン「PRIDE」へとなだれ込んだ。同曲のRENOによるギタープレイも秀逸。バースのオブリフレーズからしてテクニカルだが、NATCHINと背中合わせで弾いたギターソロがエモーショナル。そしてソロ後に、「ひとつになるぞ!」と叫んだ栄喜に扇動されて、6人目のメンバーとSOPHIAnsが一体となりコブシを突き上げながら“Don’t Look Back!”と力強いコーラスを叫んだシーンは、この日のハイライトのひとつ。ふたつのバンドのファンが一緒になってライブ空間を作り上げたところは実に感動的だった。

「楽しんでますか! 最高です、ありがとう! もっといくぞ!」──栄喜

という短いMCに続いて披露されたのは、12thシングル「1999」だ。栄喜とKAZUMAがBメロを一文字ずつ交互に掛け合ってトータルでひとつの歌詞を構成するという同曲のトリッキーなツインヴォーカルに、観客は歓声を上げながら釘付けになる。フルスロットルで駆け抜ける彼らは続けて、メロディックパンクチューン「Fine weather day」をドロップ。ツタツタとツービートをノンストップで連打して激走する淳士のドラムに、“Oi!Oi!”と叫びながらコブシを突き上げて、ブチ上がっていくオーディエンス。ポップなメロディは軽快にしてキャッチーで、KAZUMAのパンキッシュな熱唱が観客の熱をさらに高める。「飛ぶぞ! いくぞ! 3, 2, 1!GO!」という栄喜のかけ声に合わせて全員一丸となったジャンプを決めると、場内には爽やかなムードが一気に広がった。

「行くぞ! ひとつなるぞ! もっともっと狂わせてくれー!」──栄喜

と栄喜が叫んで「SHAKE ME DOWN」へ。ヘヴィなサウンドながら踊れる楽曲も彼らの十八番。ギターソロ前には栄喜とKAZUMAがラップの掛け合いをみせるなどアグレッシヴに歌でも攻めまくる。ラストは“ウォウウォーオ!”のシンガロングとハンドワイパーが会場の一体感をさらに高めた。

淳士のスピーディーなビートに乗って、NATCHINがピックを口に咥えてスラッピング、そこにギターリフがユニゾンするというエキサイティングなイントロが秀逸な「Outsider」へ。ラップ的な栄喜のヴォーカルが楽曲の持つ突進力をさらに増幅させる。注目は間奏にもあった。NATCHINの指弾きによるジャジーなランニングベースと淳士のフレーズがビートをスウィングさせるあたりの構成は見事。

ド派手に音玉が鳴り響いてヘヴィナンバー「JUMPING JUNKIE」へ。バンドはさらにギアを入れて、フルパワーでエネルギッシュに駆け上がる。レーザーが飛び交いライティングが激しく点滅するなか、フロアにヘドバンが広がるなど、場内はものすごい熱狂に包まれていく。前述したように、先ごろ公開されたBARKSインタビューで「セットリストは激しい曲のみで」という主旨の発言があったが、重厚でハードな楽曲が大半を占めつつ、シングル曲を巧みに織り交ぜながら、アレンジ力の多彩さでバンドとしての懐の深さを感じさせるセットリストには脱帽のひと言だ。

「こうして30周年を迎えられたこと、メンバーやスタッフ、そして皆さんに感謝しています。サポートに入ってくれたRENO、本当にありがとう。時間はアッという間に過ぎて、あと1曲です。最後、歌える人はみんなで一緒に歌ってくれたら嬉しいです。聴いてください、「Dear…」」──栄喜

彼らが最後に届けたのは、ファンとメンバーをつなぐ大切なナンバー「Dear…」だった。自身初のコンプリート・ベストアルバムとして2007年9月にリリースされた『SIAM SHADE XI COMPLETE BEST 〜HEART OF ROCK〜』はファンの人気投票によって選ばれた楽曲で構成されたものであり、そのランキング1位を獲得したのが「Dear…」でもある。30周年を祝うように、ド頭から銀テープがヒラヒラと舞い降りる。ストレートな想いを綴った歌詞が胸を締めつけ、途中まで頑張って一緒に歌っていた6人目のメンバーの中には、歌詞をかみしめ、堪えられずに感動の涙を流す人たちの姿も。30周年を締めくくるにはこの曲しかない。彼らと一緒に青春を過ごしてきたファンにとって、30周年をライブを通してお祝いできたこのイベントはかけがえのない時間となったはずだ。

こうして約1時間、ノンストップでパフォーマンスを続けたメンバーは、すべての演奏を終えると「ありがとう」と感謝を伝えて客席に手を振り、笑顔でステージを後にした。

【SOPHIA】

わずか2〜3分のセットチェンジを終えるとライブ後半戦は、SE「愛の讃歌」からSOPHIAのターンが幕開け。ペンライトが、これまでの赤から青に切り替わった。暗がりの中、メンバー登場の最後に、ド派手なカウボーイハット、ロングコートとショートパンツ(←海パンだったことが後日判明)、それに黒いブーツを合わせた奇抜な松岡のファッションに場内が一瞬ざわめいた。

そして、都のピアノをバックに松岡が歌い出したのはまさかの「青空」だった。“痛みにも似た 青い空 涙よりも青い空”を表わすように、バックにはモノクロの空の映像が広がる。その上に、次々とテロップで映し出されていく歌詞を見て、“今日のSOPHIAはライブを通して、対バン相手やそのファンと、熱いライブでひとつになりたいわけじゃない。メッセージを通して、心で繋がりたいんだ”ということに気づかされた。続けて「ビューティフル」が始まると映像は鮮やかなカラーのミュージックビデオへ。シニカルな歌詞なのに“永久未来 続くものなど あるはずはないから~”という一節が、まるでこの日はエールのように響いてくる。“ROCKは詳しいぜ”という歌詞を“ロックンロール!”に変えてシャウトした松岡が、最後は“beautiful life” ”beautiful song”と心を込めて歌い上げた瞬間は、本当に美しかった。

「いけんのか! TOYOTA ARENA TOKYO!」と松岡が叫ぶと、黒柳と豊田がロックンロールなフレーズを激しくかき鳴らして「ミサイル」へ。ステージのフロントではミサイルのような勢いで炎が立ち上がる。同曲で客席に火を点けたあとは、都がピアノで赤松のドラムのグルーヴを引き出し、「ゴキゲン鳥 ~crawler is crazy~」によるごきげんなアンサンブルを披露。松岡のノリノリなハープ演奏で場内一丸となった“Yeah!”の歌声を誘い出し、最後に「問題は俺か?」のフレーズを華麗に突き刺した。SOPHIAが持つシニカルなロックで観客を大いに楽しませた直後はMCへ。

「オフィシャルで髭を生やしてもいいバンド、SOPHIAです」と挨拶した松岡に、キョトンとする観客。この言葉の意味を説明するように、TOYOTA ARENA TOKYOのこけら落としのライブを行なったのはOffical髭男dismだったが、それは会場にバンドが呼ばれたわけであり、この会場のスケジュールを自らのライブのために押えたのは「我々が最初です!」とアピールした。そして、SIAMSOPHIA、さらにはSOPHIAとしても、これが30周年アニバーサリー最後のライブイベントであることを告げ、「スタート時間を早くしました(16時)。SIAMを観に来た方々も、噂には聞いてると思うんですが、SOPHIAはMC割合が全体の2/3(笑)。その噂を確かめて欲しいと思います」と予告。続けて、「じゃあ、久しぶりの曲を。SOPHIAnsも知らないかも…正式タイトルで言うね。「アウトロー松ちゃん!」」と曲を紹介して「アウト」を久々にパフォーマンス……だが、同曲を歌い終えた松岡が「ちょっと待ってくれる」と言ってステージ照明を明るくし、「ブーツが壊れた」ことを確認してメンバーにMCを任せ、舞台から姿を消した。

予期せぬハプニングに、ジルこと豊田が「トヨカズだよぉ~。ギターを弾いてるよ」と、ここにきて新たな呼び名で自己PRしている間に、靴を履き替えた松岡が再びステージへ。「久々にやる曲で暴れたかったのに、全然暴れられなかったんで、もう一回やっていいですか?」と伝えて、急遽「アウト」を再演。松岡は履き替えた靴で、先ほどの分までステージを縦横無尽に駆け巡り、寝転がったりしながら“自分のケツは自分で拭いてくれ”とお尻を叩いてみせる。都と黒柳が間奏を牽引して会場のテンションを上げて、最後に松岡が“駄目ならもう一度やるだけさ”と、この日届けたいメッセージをガツンと響かせるなど、ハプニングを演出に変えた機転の効かせ方がたまらない。

続く「GJ escAPE」では、豊田の軽快なロックンロールリフから、オーディエンスが高らかに“uh uh uh~”とシンガロング。モンキーダンスを踊り、“GJ, GJ”と敬礼しならビールで乾杯を唱え、楽しく大盛り上がりしていく場内。ソロパートでショルダーキーボードを背負ってステージフロントへ。会場をとり囲む帯状のLEDパネルには各メンバーのソロ演奏に合わせて、名前が次々と映し出されていく。GILLE、KURO、MIYAKOというアルファベット表記に続いて赤松のソロが始まると漢字表記で“赤松”の名前がドカーンと映し出された(笑)。メンバーやコンサートスタッフからいじられまくる赤松の愛されキャラは、30年経っても健在。また、各メンバーのソロの間に松岡はサブステージへと移動し、“へーイ ヘイヘイ ヘーイ ヘイ!”のコール&レスポンスでフロアを盛り上げながら強炭酸をガブ飲み。そして、メインステージに戻り、この楽曲では恒例のマイクを通して見事なゲップを連発して、SOPHIAならではのロックスタイルで同曲を締め括った。

「初めてSOPHIAをご覧になった方、失礼しました。ゲップも表現の一部です」と松岡がエクスキューズしたあと、メンバーのトークコーナーへ。豊田が先ほどのMCよろしく「トヨカズで~す。楽しでるか?」と陽気なトーンで挨拶し、黒柳は客席から「痩せた」と指摘されて「痩せてないよ」とお腹をチラ見せ。これに悲鳴を上げるファンに「500円」とふざけつつも、「栄喜が最初にステージに上がったときから泣いてやがって。俺ももらい泣きしそうになった」と明かした。赤松は「昨日、生バンドの生演奏でカラオケができる“バンカラ”に行って、SIAM SHADEの「グレイシャルLOVE」を叩いたら、「結構仕上がってるね」と生バンドの人に言われました。最後までよろしくお願いします」と笑いをとった。また都は、「30年音楽を続けられて本当に幸せです。でも、まだまだぶっ込んでいくけどな。みんなが「飽きた」って言うまでやるから。まだまだついてきて欲しい」と宣言。

そして松岡は「SIAMもSOPHIAも最初は目立ちたがり屋のガキンチョが集って楽器を始めたような感じだった」と振り返り、「だけど、そんな自分たちから、なにかをもらった人たちが、今も僕らの楽曲を聴いて、こうして集ってくれている。僕らは独りじゃない。こんなに仲間がたくさんいるんや、ということをみなさんが身をもって行動で教えてくれました。本当に感謝しかないです」と謝意を語った。さらに「今日は復活後のSOPHIAのなかでも、レアなメニューをやらせていただいてます」と選曲について明かし、「次もすごく久々の曲をやらせてもらいます。手前味噌ですが、いい曲です」という言葉を添えて、ライブはバラードゾーンへと展開していく。あまりにもレアな選曲にファンも驚愕したのもこのゾーンだった。

最初は、松岡の言葉どおり久々の披露となった「your side」だ。“すぐ傍で 雨が上がるまで 傘をさそう”という一節がエモーショナルに響く。今日この会場に、さまざまな思いを抱えながらSIAMSOPHIAを観に集った人たちの心に寄り添う歌詞が温かい。そして、なかなかライブでは聴けない、この季節にぴったりの「窓の外 街路樹の道」へ。淡々とした演奏にのせて、ロンドンの街並みを切り取った写真(松岡が撮影したものだった)が次々と映し出され、柔らかく語り掛けるような歌詞がじんわりと沁み込む。そして都のピアノから「in the future」へ。ステージ床に真っ白いスモークが広がり、“そう今 こぼれた涙は 戻らぬ日々ではなく お決まりの明日でもなく 長い道の途中の通り雨”だと、この先に、まだ見ぬ未来があるという希望を抱かせた。これら3曲をSIAMSOPHIAやそのファンへ、心を込めて届けられたバラードゾーンは、場内に優しく温かい空気が広がった。

「間違えて、栄喜のドリンクずっと飲んでた。間接キスやな、これ」と暴露した松岡に場内爆笑。先ほどまでの空気を突き破って、再びMCコーナーへ。SIAM SHADEメンバーと出会った当時を振り返り、「栄喜はまゆげと目の間が狭いでしょ? 怖かった~」と松岡。豊田は「俺はあんまり同期のバンドは意識してなかった」と明かし、赤松は「ジャンルも違ってたし、年上だから、ずっと先輩やと思ってる」と話した。「デビュー前から普通にファンで、デモテープも持ってる」と明かした黒柳は「俺からすると、“同期にすげぇのがいるな”と思ってて、脅威だった」と語り、都は「SIAM SHADEは米国LAのイメージ。向こうのハードロック。しかも、みんな背が高いし(笑)。一方の僕らはUK。ちょっと暗い感じで」と音楽性の違いや印象を伝えた。

そんな2組がデビューして30年。「SOPHIAのデビューシングルを、みんなとここで歌いたいと思います。ここに咲くヒマワリたちに贈ります」という松岡の言葉に続いて、「ヒマワリ」へ。ステージ後方、アリーナを囲うLEDパネルにヒマワリが咲き誇り、客席いっぱいにひまわりが揺れる。それぞれの夜を越えて、この場所に集った人の心を癒やし、幸せな気持ちにしていくのがSOPHIAのライブだ。「ここから始まる、みんなに贈るぜ!」と松岡が叫んで、都のキーボードのフレーズからバンドアンサンブルが心地よく疾走していく「エンドロール」へ。さらにメンバーそれぞれがソロ歌唱した「夢」。この2曲の連打で、僕たちは恐れない、まだまだお互い終わらないぜと、SIAMSOPHIAとしての希望をたたき込むように、全力でパフォーマンスする5人に胸が熱くなる。「SOPHIAのパート、最後の曲です」といったあと、松岡のMCへ。

「もともとSIAMSOPHIAは、僕が誘って始まったこと。SOPHIAは活動休止から、また復活できた。その喜びを味わった。活動休止中の9年間、なによりも僕たちが作った楽曲たちと一緒に生きてくれた人たちが、まだ一生懸命この世の中で現実に生きているとき、僕らの曲が響かへん、後押しできへん、背中を押すことができへん、っていうことがすごく悔しかった。復活して活動再開したことによって、またみんなの元に曲を届けることができて、それがみんなの心を動かすっていうことを目の当たりにさせていただきました。そして、同期デビューして、活動は終わってしまったものの、今もなおミュージシャンとして、それぞれが活動していることを知って、栄喜にXでメッセージを送った。それが始まりです」──松岡充

言葉を選びながら、自身の気持ちを自身の言葉で説明した松岡は、こう続けた。

「今この空間、ひとつになれた空間には、どこにも噓はないと思ってますし、これがすべてだなと思ってます。できればもっと笑える……もっと幸せやな最高やな、と思える未来がもしあるとすれば、そのときに僕らが力になれるんやったら、微力ですけど惜しむことなく、一緒に頑張りたいという気持ちもあります。とにかく、みんなの心を動かした彼らの音楽には罪はない。これからも大切に聴き続けていってほしいと思います。僕たちSOPHIAの曲もそうです。そうやって愛し続けてほしいと思います。その楽曲に心を震わせたあの頃の自分を愛していってほしいなと思います」──松岡充

この言葉のあとに演奏された楽曲が「Thank you」だ。観客は曲に託された想いを噛みしめ、温かい涙を流す姿がそこかしこに見受けられた。使い古された“ありがとう”というシンプルな言葉が、こんなにも嘘偽りなく響き、聴く者の心を優しく包んだシーンはこの日のハイライトのひとつ。最高に心温まる優しい言葉を観客ひとりひとりの胸に深く刻んで、SOPHIAのライブは終了した。

終わってみると予告通り、SIAM SHADEメンバーと同じ曲数なのに、その約2倍の時間が経過していた(笑)。ライブで定番の「街」「Believe」も外したレアな選曲で、SOPHIAらしくSIAMSOPHIAならではのメニューで、2組の30周年を感謝と未来への希望として届けた。

【SIAMSOPHIA】

そしてSOPHIAパートが終わると、松岡の呼び込みでオープニング同様、SIAMSOPHIAのメンバー全員が再びステージに大集結。ライブはエンディングへ。

「もう終わりますね」と松岡が栄喜に話しかけると「寂しいね。とにかく寂しい。栄喜寂しい」と目をウルウルさせる。「またいろいろ頑張って、こういう機会を。35(周年)目指す?」と松岡が提案すると、「31周年とかでもいいじゃん!」と栄喜。NATCHINは「俺は明日でもいけるよ!」と発言するなど、彼ららしい未来への約束が交わされた。

そんな会話に笑顔で盛り上がった後は、栄喜と松岡が向かい合い、フルメンバーでSIAM SHADEの「LOVE SICK~You Don’t Know~」をプレイし、客席が一気にブチ上がる。松岡曰く「ここにいる全員が音を出すとすごい」とのことだが、その音圧は圧巻だ。そして、栄喜が「Kissing blue memories」とタイトルコールすると淳士はドラムを離れて、なぜか都のキーボードを弾き始めるという一幕も(笑)。黒柳とNATCHINが間奏のベースソロをふたりで弾いて会場を盛り上げると、都はショルダーキーボードを抱え、RENOの隣に移動してプレイ。メンバーがあちこちで繰り広げる楽しいセッションはわちゃわちゃで、会場全体が笑顔だ。

そしてラスト1曲。「SIAMSOPHIAの絆を歌った曲です。みんなも歌ってください」という松岡の言葉に続いて、「黒いブーツ ~oh my friend~」が始まった。アリーナにはいろとりどりの巨大なバルーンが投げ込まれ、30周年の最後を華やかに彩る。その最後はステージ上で松岡と栄喜が熱いハグを交わし、全員が手を繋いで会場に挨拶、温かなムードのままライブは終わりを告げた。さらに、ステージを去ったメンバーは、舞台裏のカメラから映像を通して、会場に集ったオーディエンスにメッセージを伝えた。

   ◆   ◆   ◆

「最高の30周年をありがとうございました」──KAZUMA(Vo&G)

「素敵な会場で、素敵な仲間と、なによりも素敵なファンの方たちと楽しい時間を過ごせました」──NATCHIN(B)

「ありがとうございました」──黒柳能生(B)

「最高に楽しかったです。またいつか」──淳士(Dr)

「今日もリスペクトを込めてサポートさせていただきました。貴重な体験をありがとうございました」──RENO(G / support)

「ありがとうございました。ほんまに5年後やりたいです!」──赤松芳朋(Dr)

「イェー! 最高! また5年後、俺もやりたいです」──豊田和貴(G)

「最高の30周年、みなさんありがとうございました。また会いましょう」──都啓一(Key)

「キル!…遅い遅い。キル!(観客「バーン!」)、キル!(観客「バーン!」、キル!(観客「バーン!」)」──栄喜(Vo) ※松岡充主演ミュージカル『キルバーン』より

「僕たちも、参加していただいたSIAMの4人もRENO君も、これからいろんな戦いに立ち向かって、さらにもう一回り優しい人間になって。またこうして優しい空間をみんなと創れたらいいなと本当に思います。僕たちSOPHIAの30周年はここで終了。しばらく走り続けたので、ちょっと休ませていただきたいと思ってます。デビュー30周年を通して、みなさん本当にお世話になりました。ありがとうございます。(『キルバーン』で演じたドナテルロのトーンで)キル!遅い!、キル!(観客「バーン!」)」──松岡充(Vo)

   ◆   ◆   ◆

全員がメッセージを伝え終えると、「Thank you」のインストをバックに、スクリーンを通して、これまでのSIAMSOPHIAの活動を写真でプレイバック。感慨深い気持ちになったところに、SOPHIAからのメッセージが言葉で映し出された。

“少し早いけど merry Christmas! 良いお年を! あけましておめでとう!”

BGMが最新曲「サヨウノヨウナラ」に変わると“2026年のSOPHIAは少しお休み”というテロップが流れ、“新たな船出の為の新曲を創りたいと思います” “その後、多分全国TOUR”──というサプライズ発表で2026年のSOPHIAを予告。大興奮する観客を再び“多分…”というテロップで焦らしたあと、“SOPHIA TOUR 2026 愛知 神奈川 宮城 北海道 大阪 福岡 東京” “多分やります”と、7~8月にかけてのスケジュールが告知されて観客は絶叫。“多分な” “ほな、また”という含みを持たせた言葉で観客を笑わせて映像は終了した。

ここから再びそれぞれの道を歩んでいくSIAMSOPHIA。だが、メンバー間もファン間も、大いに絆が深まった30周年アニバーサリーとなったはずだ。その盟友同士が、いつかまたどこかで、再び交わる姿をみせてくれる、そんな期待しかない。

取材・文◎東條祥恵
撮影◎小松陽祐/上飯坂一/岡本麻衣

 

■<2025 SIAMSOPHIA FINAL>10月13日@東京・TOYOTA ARENA TOKYOセットリスト
【SIAMSOPHIA】
01 opening
02 solo session
03 brother & sister (SOPHIA)
04 グレイシャルLOVE (SIAM SHADE)
【SIAM SHADEメンバー】
05 PASSION
06 CAN’T FORGET YOU
07 MONKEY SCIENCE
08 せつなさよりも遠くへ
09 Happy?
10 SEXUAL SNIPER
11 PRIDE
12 1999
13 Fine weather day
14 SHAKE ME DOWN
15 Outsider
16 JUMPING JUNKIE
17 Dear…
【SOPHIA】
18 青空
19 ビューティフル
20 ミサイル
21 ゴキゲン鳥 ~crawler is crazy~
22 アウト
23 GJ escAPE
24 Your Side
25 窓の外 街路樹の道
26 in the future
27 ヒマワリ
28 エンドロール
29 夢
30 Thank you
【SIAMSOPHIA】
31 LOVESICK~You Don’t Know~ (SIAM SHADE)
32 Kissing blue memories (SOPHIA)
33 黒いブーツ ~oh my friend~ (SOPHIA)

 

■<2025 SIAMSOPHIA FINAL>みるハコ特別版
配信期間:11月14日(金)12:00~12月23日(火)23:59
対象機種/店舗:“JOYSOUND X1” “JOYSOUND MAX GO”導入 対象店舗
※対象店舗は、みるハコWEBサイト特設ページにて
再生時間:約3時間30分
▼チケット
2,000円(税込)/1人
※別途室料が発生します。
※チケット料金は3歳以上有料になります。
販売期間:11月7日(金)12:00~12月23日(火)23:59
※コンビニ・ペイジー決済は12月21日(日)23:59まで
▼みるハコWEBサイト特設ページ
https://miruhaco.jp/archives/item2/824247/

 

■WOWOW特番『SIAMSOPHIA「2025 SIAMSOPHIA FINAL」Special Edition』
日時:12月24日(水)20:00〜
※WOWOWライブ放送/WOWOWオンデマンド放送同時配信
※放送/放送同時配信終了後~ 1ヵ月間アーカイブ配信あり
出演:SOPHIA、栄喜(SIAM SHADE)、KAZUMA(SIAM SHADE)、NATCHIN(SIAM SHADE)、淳士(SIAM SHADE)
収録日:2025年10月13日
収録場所:東京 TOYOTA ARENA TOKYO
▼30th Anniversary「SIAMSOPHIA」3ヶ月連続 WOWOW特集ページ
https://www.wowow.co.jp/music/siamsophia/

 

関連リンク
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