「M-SPOT」Vol.026「M-SPOTは未来を夢見て活動するアーティストの力になりたい」

2025.07.15 20:00

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TuneCore JapanとBARKSのスタッフが集うこのM-SPOTという企画特集は、素敵な音楽・かっこいい音楽・魅力溢れる音楽・是非チェックしておいて欲しいアーティストをひとりでも多くのリスナーに届けたいという、ミュージシャンとオディーエンスの間を紡ぐ架け橋企画である。と同時に、エネルギーが高まって今にも才能が爆発してしまいそうなアーティストを、音楽事務所やレコードレーベル、あるいはアーティストとともに様々なビジネスを展開したいと思っている様々なパートナーとの出会いを創出するきっかけにもなってほしいと願っているものだ。

今回は、音楽好きのリスナーに焦点をあてながらも、アーティストの活動を大きく加速させてくれるであろうまだ見ぬ未来のパートナーに向けて、気になるアーティストを紹介していこう。今回のナビゲーターはTuneCore Japanの野邊拓実、進行役は烏丸哲也(BARKS)である。

  ◆   ◆   ◆

──この「M-SPOT」という企画が、ミュージシャンにとって良質な宣伝場所にもなればいいなという思いも込めて、優良証券というアーティストを紹介しますね。各自ソロやグループで活動中のシンガー4人が集まって2024年に結成したというグループなんですが、2025年版GREEEENって感じでしょうか。

野邊拓実(TuneCore Japan):アーティスト写真もイラストでそれっぽいですね。顔出しはされているみたいですが。


──面白いなと思ったポイントに、彼らのプロフィールに「優しい株主を探しております」と書いてあるところなんです。こういう主張、いいですよね。要するにパートナーが欲しいということだと思うんですが、でも本気か冗談なのか、切実なのかどうかも情報が少なすぎて読み取れないんですよ。

野邊拓実(TuneCore Japan):ベンチャー企業でいうところのベンチャーキャピタルに対するピッチ(簡素なプレゼン)みたいなものは、ミュージシャンにも不可欠なものと思います。ものすごく膨大な数のアーティストがいる市場の中で自分たちをいかに訴求させるかですから、レーベルの枠も、年間でバイラルするアーティストの数も当然限りがあるし、リスナーの可処分時間っていう観点で見ても枠っていうのは決まっているので、その中で、どうして自分たちを選んでくれるのか、どうして自分たちを好きになってくれて、どうして自分たちのファンになってくれるのかっていうところは、最低限言語化できてなくても、まずその自覚があるべきだなと思います。そこはちゃんと自分たちの中で整理をしておくべきだなと思いますし、次のステップとして言語化して発信していかないと、聞いてもらうという土壌にも乗れないんですよ。

──そのとおりですね。

野邊拓実(TuneCore Japan):そういう意味では、もうちょっとプロフィール部分を詰めてもいいかなと思いますし、SNSのリンクもないので、そういった活動も見えなくてちょっともったいないなって感じます。ただ面白いなって思ったのは、インディペンデントでこういうボーカルグループのスタイルを演るところですね。そもそも平成初期とかに大手事務所がアーティストを募って育成して、この手の作曲家とともにプロジェクトが組まれるのが主流だったじゃないですか。

──コーラスグループのビジネススキームの上に乗ってムーブメントが作られていくという、ヒットの方程式があったものですね。

野邊拓実(TuneCore Japan):そうだと思っているんですけど、それをインディペンデントから発信してっていう、昔とは逆のルートというか、逆算された道筋で辿っていっていこうとしているんだなっていうのが面白いなと思いました。バンドマンの場合は、今もなおバンドを組んでライブハウスでやっていくのが王道のルートとしてありますけど、こういうコーラスグループって王道と言われる活動スキームが決まっていないと思うんですよ。だからこそフロンティア・スピリッツが必要で、活動の仕方をめちゃくちゃ考えながらやらなきゃいけないと思うんですね。

──確かに。

野邊拓実(TuneCore Japan):ということはですよ、もしかしたらめちゃくちゃ水面下で動いているのかもしれない。外部に発信する前に、まず株主を見つけることが欠かせない通過ポイントで、ベンチャーキャピタルに対してベンチャー企業が水面下でアプローチを掛けていくように、もしかしたらそういうフェーズにいるのかも、って思いました。SNSもきちんとブランディングされてからバーンと出てくるのかもしれない。

──「プロフィールが少ないのも戦略なんだよ、うるせえな」ってことか。余計なこと言ってすいません(笑)って感じ。

野邊拓実(TuneCore Japan):そう、「おじさんたちうるせえな」みたいな話になってるかもしれない(笑)。今は個人のバイラルの力が強い時代ですから、事務所やレーベルも、ある程度の実績と訴求力をすでに持っているアーティストをピックアップしたいっていう気持ちが当然あって、だからインディーズ界隈もある程度のところまでは自分たちで持っていかなきゃいけないという意識がありますよね。でも優良証券の方々は、もしかしたら、逆に自分たちをちゃんとプロデュースしてくれるところを味方につけてから大々的に打っていくという逆手を考えているのかもしれない。それも面白いですよね。水面化活動をインデペンデントで行うのは面白い活動の仕方かもって思いました。

優良証券

──単なる深読みかもしれませんが(笑)、でも、いろんな活動の仕方を思案する有益なヒントをもらった気がします。

野邊拓実(TuneCore Japan):この「M-SPOT」企画に応募してきたわけですから、ここで取り上げてもらおうという意思はあったわけで、その目的が新規のリスナーの獲得なのか、誰かしら株主に届いてほしいという意思なのか…。

──いずれにしろ、我々はまんまと引っかかってしまったと(笑)?

野邊拓実(TuneCore Japan):そうですね、引っかかってますね(笑)。この時点で、シャレを効かせるのが好きなんだなというところは伝わるので、ポップな内面をされているのかなっていうところも想像できますよね。活動エリアも札幌みたいで、北海道って面白いことが起こっている地域ですね。

──古くは安全地帯、GLAY、サカナクション、最近ではChevonも札幌ですし、いいバンドが生まれていますよね。

野邊拓実(TuneCore Japan):良くも悪くも東京の影響がないエリアだなと思います。北海道って意外と独自な音楽文化圏があるのか、インディペンデント精神の強いエリアというか、東京の空気感とは違うアーティストって結構いっぱいいますよね。

──沖縄もそうですけど、「北海道」というブランドがありますよね。

野邊拓実(TuneCore Japan):沖縄もそうですね。

──まさにこれからが楽しみですね。これからが楽しみという意味では、mikazukiというシンガーソングライターにも注目したいんです。中学2年生の女の子なんですが、同時にいいなと思ったのが、ジャケットイラストが中学1年の妹さんが手掛けているというところ。

野邊拓実(TuneCore Japan):それはいいですね。


野邊拓実(TuneCore Japan):声が素敵ですね。

──純粋さがストレートに伝わる歌ですが、きっとmikazukiさんはある男子に恋をしていて、でもその気持ちをストレートに歌うのではなく、その男子の目線から自分の思いや経験を綴っているように聴こえるんです。で、そういう会話を妹さんとしたのだろうか、とか、そのあたりがとても気になる。妹さんが手掛けたジャケットには、男の子が描かれているでしょ? きっと姉妹で交わされた会話が、アートワークを含めて作品全体に影響を与えるであろうことを考えると、姉妹というのもまたバンドとも違うケミストリーが生まれる素敵な世界だなと思って。

野邊拓実(TuneCore Japan):兄弟でバンドやってますっていうのは昔から多くあって、世界で1番有名なところにオアシスがありますけど、音楽活動っていう枠組みに捉われてない人たちってたくさんいて、バンドメンバーにVJがいて映像まで含めてバンドなんですとか、PAまでメンバーに含まれていたりしますよね。そこに、姉妹っていう要素が加わるのは新鮮ですね。

──語らずとも通じ合うって姉妹兄弟ってあるじゃないですか。そこが作品の余白を埋めたりするんじゃないかなって思います。

野邊拓実(TuneCore Japan):「ジャケットのイラストは妹が手掛けています」とクレジットしている時点で、歌詞の内容とかその意図みたいなのものを妹さんと共有しているでしょうから、すげえ仲のいい姉妹なんだろうなっていうのも見て取れて、すごく応援したくなるポイントですね。

──こういうパートナーって、ビリー・アイリッシュと兄のフィニアスのように、お互いに欠かせぬ存在になるとステキですね。理解者がすぐ横にいるって何よりも強みでしょう?励みにもなるし加速も付く。

mikazuki.

野邊拓実(TuneCore Japan):いやぁ、すごい素敵ですね。音楽的にも面白いなって思った点があるんですけど、サビのスネアが2拍目と4拍目と交互で音が変わっているんです。リムショットとオープンショットが交互に出てくるんですね。多分、実際のドラムを叩いたことがなかったり、ドラマーと一緒にやった経験がないのかもしれない。じゃないとこういうアレンジってできないと思うんです。ひとつのサビの中で毎回スネアの音が変わるってあまり聴いたことがない。制限がある環境とか知識がない環境って、意外と今までないものが生まれやすかったりもして、特に若いアーティストにたまに見られることで、自由でいいなって思います。

──リズム楽器としてベードラやスネアの役割やその意味を考えれば、一番の盛り上がりを見せるサビでは、そういったスネアのブレの要素は持ち込みたくないのが普通ですし、そもそもそういうものだという既成概念・固定観念がありますね。

野邊拓実(TuneCore Japan):僕は最初聞いた時、そのスネアにすごい違和感を感じたんですけど、でも冷静に考えたら、それって別にやっちゃダメなことでもないわけで「ありか」みたいな。

──おそらく「恋が下手くそな僕は (Rimix Ver.)」という曲が、テンポがゆったりで疾走感とかビート感、グルーブを求めていないので、元来のスネアとは意味の違う楽器として使われているんですね。

野邊拓実(TuneCore Japan):元来のドラムの一般的なフレーズみたいなものを認識してしまっていたら、逆に絶対に作れないフレーズだなって思います。今回はこの曲でドラムに表れていますけど、多分これからもいろんなところに表れてくるんだと思います。僕も初めて自分の曲でピアノを入れた時は、ピアノを知ってるやつに「これ、手3本あるよ」って言われたりしましたし(笑)。でも別にそれが悪いわけでもなく、結果それが良かったらいいわけですし、そういうものをすごく大事にしてほしいなって思いましたね。

──ほんとそう。

野邊拓実(TuneCore Japan):どんどん学んでいって、どんどん無くなっていってしまうものでもあるんですけど、知らないことにでもとりあえずやってみるチャレンジングなものは絶対根底にあるはずなので、きっとすごくクリエイティブなことを色々できるようになっていくんだろうなって感じますね。

協力◎TuneCore Japan
取材・文◎烏丸哲也(BARKS)
Special thanks to all independent artists using TuneCore Japan.

優良証券

2024年。札幌在住のシンガー4人が集まり結成。 Quartet vocal group. 『優良証券』 新人グループながら過去に、そして現在も 各自ソロやグループで活動中。 優しい株主を探しております。
https://www.tunecore.co.jp/artists/YuRoyShowKen

mikazuki.

中学2年生のシンガーソングライターmikazuki. ギター1本で作曲を手掛けたメロディーに、自身で書いた歌詞をのせて、自身で奏でるギターと自身の歌声で歌っています。 ジャケットイラストは中学校1年の妹が手掛けています。 現在リリースしているのは3曲、4月中旬には4曲目もリリース予定です。
活動エリア: 愛知県
https://www.tunecore.co.jp/artists?id=920316

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