「M-SPOT」Vol.020「“AIっぽさ”の罠に気をつけろ──埋もれさせてはならない真の才能」

アーティストが持つ天賦の才、その才能の泉は枯れることなくクリエイティブを生み続ける。生成AIのちからは圧倒的だが、AIが生み出す脅威のコンテンツだって、すべて先人のアーティストたちがゼロから生み出し育まれてきたクリエイティブを雛形にしているだけのこと。
意思を持って生み出される人間のクリエイティブは、いつだって発明だ。そんな価値のある発明をお粗末なAIで飾り付けるのは、才能をスポイルする愚行だと思ったほうがいい。
あらゆることが簡易的に可能となってきた現代において、取捨選択と正しい判断はクリエイターの自己表現を活かすか殺すかの諸刃の剣となる。そんな現代を生きるミュージシャンたちの作品を紹介していこう。いつものように、ナビゲーターはTuneCore Japanの堀巧馬と野邊拓実、そしてDJ DRAGON(BARKS)に進行役の烏丸哲也(BARKS)である。
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堀巧馬(TuneCore Japan):前回Vol.019で「AIと勘違いされてしまう令和のリスク」という話が出ましたけど、まさに、ものすごくいいアーティストなのに、ジャケットのアートワークがAIもしれないと思わせるものなので、これはもったいないなというアーティストがいまして、Un(アン)という茨城県出身のシンガーソングライターなんですが。
──めっちゃいいじゃないですか。
堀巧馬(TuneCore Japan):かっこいいですよね。しかもね、まだ15歳らしいんですよ。2025年に活動開始したばかりなんですが、まだ15歳という若さにして独特のワードセンスとメロディーで。
DJ DRAGON(BARKS):うまいね。15歳でこのセンス、いいね。
堀巧馬(TuneCore Japan):結構すごくないですか?
──これはすごい。
DJ DRAGON(BARKS):茨城県出身なら「Battle to LuckyFes’25」に出てくれれば良かったのに。

堀巧馬(TuneCore Japan):でも最初にジャケットを見ると「AIなのかな」みたいに勘違いしちゃうという。このアートワークからは、この音楽が想像できないんですよね。
野邊拓実(TuneCore Japan):それはそうですよね。
堀巧馬(TuneCore Japan):すごいもったいないなって思った一例なんです。
──極論を言えば、ミュージシャンは「音楽にしか興味ない」でいいと私は思うんです。音楽だけに全精力を費やして他のことには無頓着でOK、と。でもだからこそ、音楽以外の側面からあなたを知った時「あなたの魅力は伝わらない可能性、危険性がある」ってことだけは知っておいてもらいたい。良い悪いではなく、そういう現実があるということで。
堀巧馬(TuneCore Japan):特に今の時代はそうですね。
野邊拓実(TuneCore Japan):うん、全然それでもいいんだって言うんだったら、いいと思います。
堀巧馬(TuneCore Japan):アートワークも誰かに頼んだりして、時間もお金もかかったりするからね。
DJ DRAGON(BARKS):でも、このアートワークもプロに頼んで作ってもらったものだったら、なんかヤダね(笑)。でもありえるから怖いんだよね。
野邊拓実(TuneCore Japan):AIの学習元になっているようなクリエーターもいるわけですし。
堀巧馬(TuneCore Japan):今調べたら、このアートワークにきちんとクレジットがありました。生成AIじゃないですね。イラストとともに映像も担当している方みたいです。
野邊拓実(TuneCore Japan):でも、イラストレーションとムービーを同時にやっているってことは、この人がプロンプトを書いてAIに作らせている可能性もありますよね。わかんないけど。判断するのはむずいですけどね。
DJ DRAGON(BARKS):いや、これはAIっぽいね。生成AI画像に加筆していると思うけど、ところどころにあっちゃいけないノイズや色が出ている点がね…。
堀巧馬(TuneCore Japan):なるほど。だから逆に、そういうところがありなのかなしなのかという世界観もありますよね。
──音楽にしろ画像にしろ映像にしろ、私のような素人の目から見て「AIっぽいね」「AIかもね」と思われるようなクリエイティブは、クリエイターとして「なんか損するよね」って話に帰結する気がします。
堀巧馬(TuneCore Japan):だから結局、楽曲がすごくいいと、尚更もったいないって思っちゃう。
DJ DRAGON(BARKS):この子はライブを観たいですね。
堀巧馬(TuneCore Japan):観たい。普通にめっちゃ気になるもん。ほんとに15歳なの?って。
DJ DRAGON(BARKS):ギターを弾きながら歌ってるね。いいね。
堀巧馬(TuneCore Japan):東京で活動しているって書いてあるから、どこかで観てみたいですね。
──才能続きで、もうひとり優れたミュージシャンを紹介したいんですけど、奈良ひよりというアーティストです。こちらは秋田県出身のシンガーソングライターなんですが、とにかく多才な人で、作家として活動しながら様々なアーティストのコーラスでも活躍しているという人なんですね。右利きなのに、レフティーのギターを左で弾くというネタもお持ちです。
DJ DRAGON(BARKS):めっちゃおもろい。
堀巧馬(TuneCore Japan):いいですね。僕はK-POPの音源のプロダクションってすごい好きで、ボーカルの処理がすごい上手だなって思うんです。よくよく聞くとボーカルが3本ぐらい重なっていたり、いろんなコーラスが薄く行ったり来たりしていて相当レイヤーしているんですよね。そういう綺麗なコーラスを感じたんですけど、プロフィールを見るとJY(元KARA 知英)のコーラスをやっていたり、ZEROBASEONEやJO1、MISOMO、ME:I、IS:SUE、Kep1er…というアーティストへ楽曲提供している方なので、そういうスキルもあるのかなって思いましたね。
──よくできていますね。気持ちいい。
堀巧馬(TuneCore Japan):こういうボーカル/コーラスの凝ったプロダクションって、日本ではあまり聴かなくないですか??
野邊拓実(TuneCore Japan):単純にプロダクションのレベルがめちゃくちゃ高いですね。

堀巧馬(TuneCore Japan):シンガーソングライターって言われると、アコギの弾き語りのようなイメージを浮かべるんですけど、そういうテンションで聴いたらめっちゃクオリティの高いK-POP系だったからびっくりした(笑)。
野邊拓実(TuneCore Japan):「シンガーソングライター」って言葉、本当に広くなりましたよね。ちょっと前までは基本弾き語りの子かなっていう印象だったのに、今はゴリゴリのアレンジまで込みで作っている人までシンガーソングライターだからね。
──おまけに踊ったりもする。
野邊拓実(TuneCore Japan):そうですよね。
DJ DRAGON(BARKS):それはDTMの発展ですよね。アコースティック・ギターの時代じゃなくなった。
野邊拓実(TuneCore Japan):そうですね、最もシンプルなシンガーソングライターから、本当に音数まで超入れるシンガーソングライターまで出てきて、「シンガーソングライター」って言われても分からないなって思いますね。ライブやるときには、サポートメンバーでバンド形式でなんなら同期もあって…みたいな方とかも結構いますから、そういうスタイルをあらわす新しい言葉が欲しいですね。
──「弾き語り」じゃないタイプ(笑)。
堀巧馬(TuneCore Japan):ジャンルでもないからね。このプロダクションの感じはなんと言えばいいんだろ。「本当にこれ、ひとりでやったの?」みたいな。本当に?みたいなレベルですもんね。
──多才な人・才能溢れた人はまだまだたくさんいますね。今後もまだまだたくさんのアーティストを紹介していきましょう。
協力◎TuneCore Japan
取材・文◎烏丸哲也(BARKS)
Special thanks to all independent artists using TuneCore Japan.
Un
Un(アン)/ 茨城県出身 SNSを中心に活動行いまだ15才という若さにして独特のワードセンスとメロディー展開が同年代に支持され、2024年に投稿した『醜い姿のシンデレラ』のデモは100万回再生を突破した。そして待望の1stシングル『醜いシンデレラ』を2025年4月30日(水)にリリースすることが決定。 本作は、Unが14歳の頃にSNSを中心に結成・活動したバンド「Hyper Sensitivity」解散後、ソロとしての新たな第一歩となる楽曲。投稿された『醜いシンデレラ』のデモ音源はTikTokを中心に話題となり、100万回再生を突破。リスナーからは「等身大の感情が刺さる」「歌詞が鋭くて泣ける」といった声が相次ぎ、Z世代を中心に熱い支持を集めた。 タイトル『醜い姿のシンデレラ』が示すのは、“綺麗ごとだけじゃない10代の心”。恋、自己嫌悪、承認欲求、揺れる感情を鮮烈に描いたリリックと、耳に残るメロディ展開が、聴く者の心を深く揺さぶる。繊細でリアルな言葉選びと、年齢を超えた音楽センスを武器に、今まさに始動するUnの音楽世界に注目が集まる。
https://www.tunecore.co.jp/artists/un__
奈良ひより
秋田県鹿角市出身シンガーソングライター。 自身は右利きながらも左のレフティーギターを演奏する。 透明感のある天性の歌声とその歌唱力で2013年雑誌「ゼクシィ」の公式シンガーでデビュー。 これまでにUruやJY(元KARA 知英),佐々木彩夏(ももいろクローバーZ),富士葵,遊助など数々のアーティストのコーラスを担当。 又、ZEROBASEONE,JO1,MISOMO,ME:I, IS:SUE, Kep1er, triple, SSECRET NUMBER,私立恵比寿中学,GENIC など数々のアーティストへの楽曲提供など作詞作曲家としても活躍の場を広げ、実の姉妹ユニット”奈良姉妹”としても活動中。
https://www.tunecore.co.jp/artists?id=858479







