【対談】FANTASTIC◇CIRCUS 石月努 × Waive 杉本善徳、<CROSS ROAD Fest>実現の奇跡を立役者が語る「ただただ僕らが信じてきたものを見せたい」

■ひとつひとつが影響して実現した
■バタフライエフェクトなんですよ
──その時、TAKAさんとお会いした経緯を改めてうかがってもいいですか?
石月:もともとFANTASTIC◇CRISISをすごく応援してくださっている方がいて、その方のオフィスとTAKAさんのオフィスが近いんです。その方から、「2週間に1回ぐらいはTAKAさんとランチしてますよ」と聞いていたことをふと思い出して。当時、僕とTAKAさんは音楽雑誌『ARENA37℃』『SHOXX』『VICIOUS』とかの表紙を二人でやることがあったし、久しぶりに会ってみたいなと思ったんですね。その方に「次にTAKAさんと会ったら、石月が“ご飯しませんか”と言ってたと伝えておいて」と。そうしたら、オフィスが近いといえ、たまたま道端でTAKAさんに会ったらしいんですよ。
──すごい偶然ですね!
杉本:いや、運命に引き寄せられたというか…そういうことですよね。
石月:その時に、「そういえば、石月さんが」と伝えてくれて、TAKAさんも「ぜひ」と言ってくださったそうで。会食も場もその方がセッティングしてくれたんです。
杉本:食事されたその日にTAKAさんが、「歌いたい、対バンしたい」とおっしゃられたということですよね。
石月:そう。食事した後にTAKAさんがオフィスを案内してくださって。そこに小さなショーステージみたいなものがあるんですよ。僕が少し席を外している間に、そこから歌声が聴こえてきたんです…ショーステージでTAKAさんが弾き語っていて。「入っていいのかな?」と躊躇するほどの歌声だったんですよ、素晴らしかった。食事のときにTAKAさんが「歌いたい」と言っていたのは本当なんだなと思いまして。
杉本:なるほど。
石月:ただ、やるからにはやっぱり現役感はすごく大事だと思うんです、ファンの方に対しても。“劣化した”なんて心無い言葉に、ハートは脆くも傷付くわけですから。だから頑張るんですけどね。でも、TAKAさんの歌声を聴いたら、まるで劣化してない。それで「絶対やるべきですよ」と言って。僕が好きな「未来航路」を歌ってもらって。僕も下ハモで参加、みたいな謎の会だったんです(笑)。

杉本:おこがましいですが、TAKAさんもきっかけがほしかったのかもしれないですよね、深層心理で。昨日、偶然SHUSE(B / La’cryma Christi)さんにお会いしたんですよ、東海林のり子さんのお誕生日会で。僕は別件があったから少し遅刻していったんですけど、皆さんある程度もう出来上がっていて。ステージがあるお店で、SHUSEさんがギターでLa’cryma Christiを弾き語ったんです。
石月:ベーシストやけどな(笑)。
杉本:ははは。その時、「善徳、久々やな。お前のおかげで11月、またみんなでライヴができるようになったわ」と言ってくれて。それが言葉通りなのか、“お前のせいでまたやらなあかんねやんけ!”って意味なのか、それが分からないキャラクターじゃないですか、まさに大阪の兄貴って感じの人だから。僕は特に元事務所の後輩でもあるし、どっちの意味での“かわいがり”にも取れてしまって(笑)。
──言葉の真意が分からなかったんですね。
杉本:だから「僕のせいですいません!」みたいに、感謝していただきながらも、なぜか謝るみたいな感じになっちゃいました(笑)。閉会後、seekを車で送ったんですけど、「ほんまに感謝されたんか、怒られたのか分からへんかった」という話を冗談半分でしたら、seekは「SHUSEさん、マジでうれしそうに見えましたよ」と言ってくれて。このタイミングでそういうことが起きた、ということでしかないですから、真実は知らなくてもいいんですけど、SHUSEさんにそう言ってもらえたのは後輩冥利に尽きるなと。DAY1とDAY2に対して、僕らが0から1にしたというところは、もしかしたらあるのかもしれないですけど、たぶんDAY1だけでもDAY2だけでも、成立しなかったんだろうなとは思っているから。
石月:そうかもしれないですね。最初はお互い別軸で動いていたけど、結果、交わって良い方向に働いたというか。
杉本:そうですね。もともと別のプロジェクトが押さえていた日程だったので、1日だけだったら幕張イベントホールは取れなかったということも含めて、やっぱり必然でも偶然でもあるんだろうし。
──1日だけというわけにはいかなかったんですね。
石月:そうです。そもそも2日間のライヴをやるのに、前後の仕込みとバラシを含めて、4日間押さえなきゃいけないですから。
杉本:そういう物理的なことも込みで、なかなか大変だったから、僕らが“<SWEET TRANCE>をやりたい”という気持ちだけでは絶対に実現しなかった。前にWaiveでもツーマンの計画があったんですけど、2DAYSじゃないとダメだったという経緯があって、そこには会場とか予算の都合も関係するんですよ。今回も、0から1なのか、0を0.1にしただけなのか分からないけど、最終的には掛け算みたいなことが起きて、100になったんだなと思います。
石月:そうですね。偶然といえば偶然なんですけど、人生ってその偶然の積み重なりじゃないですか。それを奇跡と呼ぶのかもしれないし、必然と呼ぶのかもしれなくて。だって、FANTASTIC◇CIRCUSの会社に、もし“共通の知人”が関わっていなかったらとか、“共通の知人”と杉本さんがお知り合いじゃなかったらとか考えると、やっぱり自然に導かれたんですよね。

杉本:本当に説明がつきづらいですよね。タイミングが違ったら「やらない」と言った人もいたんだろうし。DAY1で言えば、ここでD’espairsRayが初めて復活するのもそういうことなんだろうな。なかなかこんなことって起きない気もするし。
石月:僕、SWEET HEARTというと、La’cryma ChristiとかSHAZNAの印象だったんですけど。
杉本:Eins:VierとかPIERROTとか。
石月:そうそう。あとはLUNA SEA (SWEET CHILD)とか。D’espairsRayはWaiveの後輩にあたるんですか?
杉本:そうです。
石月:同い年のTSUKASA(Dr)くんを僕は推してるんですよ。演歌が上手くてマジで面白い。Luv PARADE (D’espairsRay活動中にセッションバンドとして誕生)を観たことがありますし、二人とは普通に仲良しです。
杉本:D’espairsRayが所属したのは僕らより後で、イベント自体がなくなってたので、<SWEET TRANCE>には出たことなかったんですよね。だから、最初に「ラインナップをどうしよう?」という話が出た段階では、僕のイメージの中には正直なかったんです。同じようにSHAZNAも離籍後だったので、僕らが出た<SWEET TRANCE>にはいなくて。「Waive解散前に、最後にやりたい」と僕が当初思っていた<SWEET TRANCE>には、必然的にSHAZNAもEins:Vierもいなくて、La’cryma ChristiとPlastic Tree、そしてPIERROTが僕の思う<SWEET TRANCE>だったんです。
──SHAZNAは2日間に出演されますね。
杉本:そうなんです。HIROさんは「SHAZNAが出ないんだったら、自分の思っている<SWEET TRANCE>と違う」とおっしゃっていて。HIROさんがそうおっしゃるんだったらそうなんだと思うし。<SWEET TRANCE>という1996年から2002年まであったイベントのイメージは、今、石月さんがおっしゃったようなメンツなんだろうなと思うんです。
石月:そうかもしれないですね。
杉本:ただ、そこにはけっこう複雑なこともあって。たとえば、La’cryma ChristiにはKOJIさんのことがあって、本当は僕が軽々しく「ラクリマをやってください」なんて言っていいことじゃない。La’cryma Christiのメンバーの気持ちを思えば、TAKAさん自身歌いたかったとしてもそれを簡単に言えなかったかもしれない。ただ、語弊があるかもしれないけど、他人だから言えることってある気がするんですよ。
石月:分かります。
杉本:HIROさんに相談したときも、「KOJIさんのこともありますしね」と話したら、「そうやねんな。ただ、KOJIの身内の方からは“やってほしい”と言われてんねんけど」という言葉を聞いて。であれば、やるべきなんじゃないかなと思ったんです。ビジネス的なことで言っているわけではなくて、もっと言えば「僕らの解散後でも全然構わないから、もう一回La’cryma Christiを観たいという純粋な気持ちがある。そのきっかけになったらいいなと思ってます」ということはHIROさんにお伝えして。

──タイミングとしても、KOJIさんの息子さんが出演されたHIROさんとのジョイントライヴにシークレットゲストとしてTAKAさんが出演されて、数年ぶりに歌声を披露したということもあったし。
杉本:そうなんです。一つの力では引けなかった引き金が、いろんなものが合わさって動いた可能性はありますよね。石月さんが先ほどおっしゃっていたように、願ったから、信じたからかもしれない。“こうなる”という未来の景色へ向けて動いていった気がするので。まぁ、言うだけならタダというのがちょっとあったし。
石月:大儲けしたら、僕らキックバックをもらいましょう(笑)。
杉本:あはは!
石月:でもありがたいことに、チケットの一次販売で定員を上回る応募があったそうで。これってこのご時世、本当にないことですよ。
杉本:ないですね。
石月:この間、TAKAさんとは対談をしたんですけど、そこでも「やれるうちにやったほうがいい」というお話をさせていただいたんです。「今回は期限付きで」みたいなことはおっしゃっていましたが、やっぱり待っていたファンの方もたくさんいらっしゃるでしょうし、実際、あれだけ歌えるTAKAさんを間近で観たら、もっと観たいって僕自身思いましたから。「FANTASTIC◇CIRCUSで転生して思ったことがたくさんあるので、ファンの方たちの想いに応えてあげてほしい」という話もしました。
──その対談ではTAKAさんが、夢に出てきたKOJIさんから「体を持ってるなら、何の曲でもいいから歌って、みんなを喜ばせてあげて」と言われたということをお話されてましたね。
石月:そうなんです。久しぶりにお会いした時に、“TAKAさんって昔からそうだったな”ってことを改めて思い出しましたね。フワフワッとしているというか。これは誉め言葉としてですけど、地球人っぽくなくて、違う星の魂なんだろうなって。つまり、アーティスティックなんです。
杉本:分かります。
石月:そもそも、そんなつもりでお会いしたわけではなかったけど、結果としてLa’cryma Christiが期間限定復活することが、僕は純粋にうれしいです。同じ世代を生き抜いた戦友のような気持ちがあったので。そういう想いって磁石のように惹かれ合うというか。
──本当にそうですね。
石月:LEVINさんにも、昨年末のFANTASTIC◇CIRCUSのリハのときに「久しぶりにTAKAさんと食事します」ということはお伝えしてたんですね、水面下で動いているような感じに思われると嫌なので。そうしたら「あ、そうですか」って普通に。それに、もちろんKOJIさんのこともあるので、再びっていうのは難しいんだろうなとは思っていたので、僕からはそういう話題に触れることはなかったんです。それが逆に、TAKAさんから言って来られたから、こちらが驚いたくらいで。「じゃあやりましょうよ」と言いつつも、バンドですから、他のメンバーさんのそれぞれの想いもありますよね。そこはTAKAさん自身が動いてくれて。そういうことのひとつひとつが影響して実現した…バタフライエフェクトなんですよね。
杉本:ああ、まさに。そういうことですね。







