【対談】FANTASTIC◇CIRCUS 石月努 × Waive 杉本善徳、<CROSS ROAD Fest>実現の奇跡を立役者が語る「ただただ僕らが信じてきたものを見せたい」

2025.07.11 20:00

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■<SWEET TRANCE>を
■Waive解散までにもう一回やりたい

──そして、11月15日および16日に千葉・幕張イベントホールで開催される<CROSS ROAD Fest>は、石月さんと杉本さんが影のキーパーソンだとか。両日のヘッドライナーであるLa’cryma Christiの12年ぶりの復活劇に深く関わったそうですね?

石月:数十年ぶりにTAKA(Vo / La’cryma Christi)さんとお会いして食事する機会があったんです。完全に音楽から離れて実業家をされていると聞いていたので、その食事の時にTAKAさんが「最近、すごく歌いたいんだよね」とおっしゃったことに驚きまして。「だったら、やりたいことをやったほうが絶対にいいですよ」と言ったんです。僕もずっと後悔を抱えていましたが、転生したことによって、ようやくそれを昇華させることができたので。「昨今、先輩たちだけではなく同世代も亡くなっていっている状況を考えたら、やれるうちにやったほうがいいですよ」とお話して。TAKAさんもブランクがあるから、「いきなりワンマンというよりは、対バンとかがあったらありがたいな」という感じだったんです。

──なるほど。

石月:もちろん私からは「分かりました」とお返事して。ただ、「まずはリーダーのTAKAさんが、他のメンバーの皆さんの意向をまとめてください」とお願いしたんです。「その上で皆さんが、La’cryma Christiをやるということであれば、ぜひ一緒にやらせていただきたい」とお伝えして。

──La’cryma Christi再始動はTAKAさんの発案だったということですね。

石月:そうなりますね。「でも、今の時代は箱(ライヴ会場)がなかなか押さえられないので。もしかしたら実現は2年後になるかもしれませんよ」みたいな話をしたら、音楽から長く離れていたTAKAさんはびっくりされて。「え? そんな感じなの!?」と。

杉本:土日に大きな会場はなかなか取れないですよね。2年後という話は決して大げさではない。

石月:そう。でも、ただ待っているわけにはいかないので、La’cryma Christiメンバー全員の“やる”という意思を確認していただいてから、先ほどから話が出ている“共通の知人”にTAKAさんを紹介して。彼にいろいろと当たってもらっている中で、幕張イベントホール2DAYSの話が浮上したんです。内情を話すと、急遽空きが出たというか。

──タイミング的にベストだったと。

石月:ただ、空きが出たとはいえ、1日だけではなく、2日間の枠で押さえなければならないという条件があったようで。幕張イベントホール2DAYSとなると、La’cryma ChristiとFANTASTIC◇CIRCUSのツーマンではちょっと厳しいかもなと。そこからはその“共通の知人”に託したんですよ。で、おそらくその同時期に杉本さんも動いていたということですよね?

▲FANTASTIC♢CIRCUS

杉本:はい。2024年6月末にWaive主催のツーマン2DAYS<浅草コンプレックスルート>を開催したんですけど、メリーとのツーマンの日にPsycho le Cémuのseekが観に来てくれて。その時、「Waiveの解散までに<MUD FRIENDS>(MUCCを含めたスリーマン)をやりましょうよ」と言われたんです。僕はMUCCとツーマン、Psycho le Cémuとツーマンをそれぞれやればいいと思ってたから、<MUD FRIENDS>である必要はないと考えていて。「それよりも俺、解散までに<SWEET TRANCE>をやりたい」と言ったんですよ。

──1990年代後半から2000年代に掛けて定期開催されていた音楽事務所SWEET HEART主催イベントですね。ちなみにWaiveもPsycho le Cémuも同グループ所属 (WaiveはSWEET CHILD / Psycho le CémeはSWEET HEART)アーティストでした。

杉本:そうです。自分で口に出した話だから“もうやるしかない”となってしまって。それが2024年6月末のことで、解散まで残り1年半しかないわけだから、すぐに動き出さないとって思って、7月頭には、当時SWEET HEARTに所属していたPlastic Treeの(有村)竜太朗さんに「会ってください」と連絡したんです。そうしたら忙しい中、すぐに時間をつくってくださって。

石月:ちなみに、当時<SWEET TRANCE>に出演してたバンドは?

杉本:僕らが<SWEET TRANCE>と銘打たれたイベントに出演したのは2001年と2002年で、そのときはLa’cryma Christi、PIERROT、Plastic Tree、Psyco le Cému、FAIRY FORE、Waiveといった6バンドが出演しました。

石月:その6バンドと再び共演したいと。

杉本:そうです。PIERROTは独自のタイミングで再集結があったから、難しいことは最初からわかっていたので、他の4バンド+αを考えていました。それでまず、これまで一度もバンドの活動を止めていないPlastic Treeの竜太朗さんに「Waive解散までに、<SWEET TRANCE>をもう一回やりたいんです。先輩方ともう一度共演させていただきたいんです」とお願いしたんです。

──竜太朗さんにとっては寝耳に水のような話ですよね。

杉本:「気持ちは伝わったし、もし実現するなら素敵なことだけど、そもそもラクリマは活動してないし、無理でしょ」という話をされて。ただそれでも「もし、ラクリマが出演してくれるなら、プラも出てくれますか?」と聞いたら、「出るし、実現できるように協力もするよ」と言ってくださったので、「頑張ってみます」と。

▲Waive

──具体的には、La’cryma Christiにどのようにアプローチしたのですか?

杉本:TAKAさんが実業家に転身していることは当然知ってましたし、僕は何年もお会いしていなかったんですね。たとえば、誰かから連絡先を伺って「ご無沙汰してます」というのはできるだろうし、僕は昔、めちゃくちゃかわいがっていただいたから、ハナからの拒絶はされないだろうなとも思っていて。ただ、僕の立場から「ラクリマをやってください」という話をしても、TAKAさんが即決できるわけがないってのは容易に想像がついたんです。

──なるほど。

杉本:それに、いざとなると“かなりデリケートなこと” だと思ったんです。他のメンバーの方々がどう思うか?という問題もあるし、言葉にしづらいですが、様々な背景があるのは重々承知の上なので。こういうのって一つ手順を間違えたら僕のせいで、“La’cryma Christiは二度と見られない”ことにしまう恐れもあるわけじゃないですか。

──責任重大ですよね。解散と再結成を経て今に至るWaiveのリーダー杉本さんだからこそ、分かる心の機微がありそうです。

杉本:周りに相談した中で、まず「HIROさんと話せ」という意見があったんですよ。HIROさんとも久しくお会いしていなかったから、コンタクトを取るにしても、XのDMで連絡する距離感だから、これは正しいのか?とか考えてしまって。でも、HIROさんのLINEを知人からうかがって、「ご無沙汰してます。ご相談したいことがありまして」と連絡をしたら、すぐにお会いすることができたんです。

──どんなお話を?

杉本:「無茶苦茶なことを言っているのは分かるんですけど、La’cryma Christiをやってもらえないですか?」とお願いしたら、「無理に決まってるやろ。お前アホか(笑)」みたいなことを言われて。「ですよね。ごめんなさい。アホなんです」と。HIROさんは、「でも、後輩がこうやって求めてくれることはうれしい。それを頭から否定したくはない」と言ってくださって。「可能性は限りなくゼロに等しい、ということを大前提で聞いてほしいんだけど、一度メンバーとスタッフには連絡を取ってみるよ」とおっしゃっていただけたんですよ。

──後輩としての愚直な愛が伝わったんですね。

杉本:1年前くらいにHIROさんとKOJIさんの息子さんが出演されたジョイントライヴ(KOJI & HIRO Joint Live 2024)にシークレットゲストとしてTAKAさんが出演されていたんです。HIROさん曰く、「最近、もしかしたらTAKAは歌いたいのかも…という空気を感じてるんだよね。ちょっと話してみる」みたいなことを言ってくださって。そこから随分音沙汰無かったんですけど、先ほど石月さんがお話された…TAKAさんが「歌いたい、対バンしたい」とおっしゃっていたというタイミングと重なって。偶然にも。

石月:たしか、“共通の知人”を通じて「善徳くんがLa’cryma Christi復活の件で動いている」という連絡が来たんですけど、僕のほうも「え、マジで!?」って。晴天の霹靂でした。

杉本:その頃僕は、La’cryma Christiを口説き落とせない可能性を感じつつも…。

石月:もう箱を押さえてたの?

杉本:いや、まだでした。そろそろ押さえないと、というターンには入っていましたけど、実はここにも問題があったんですよ。

▲La’cryma Christi

──と言いますと?

杉本:<SWEET TRANCE>の実現が決まってから箱を押さえる、という進行では間に合わないから、「絶対に口説き落とすから」と自分のマネージメントやライヴ制作には言っていたんです。だけど、いっこうに箱もスケジュールも出てこない。それは彼らが、“口説き落とせない”と思っていたからであって、「ラクリマの再結成は確定じゃないですよね? だったら、当時の<SWEET TRANCE>の規模ではできない」ということだったと思うんです。そもそも、La’cryma Christiが出なかったらPlastic Treeだって出ないかもしれない。Waiveのスタッフとしては武道館直前にそんなギャンブルに出られないので、足踏みしてしまう状況になっていて……“これはダメだな”と僕は半ば諦めかけていたんです。

──ビジネスとして現実的に考えると難しいと。

杉本:リスクを取るというか、一か八かに踏み込む力がある人……というと、僕の頭に“共通の知人”のことが浮かんで。彼に連絡を取って事情を説明して、「箱探しを一緒にやってくれないですか?」と相談したら、「善徳くんがそれだけ言うんやったら、探すわ」と。それから彼が動き始めてくれたんですけど、そんな中で石月さんとTAKAさんの話を彼からうかがって。

石月:本当に偶然のタイミングだよね。杉本さんも僕も箱を探していた。それもLa’cryma Christi復活に関することで。そして幕張イベントホールの2日間が空いたという。

杉本:その結果、「それぞれを実現させる形で、複数日程でやれば?」という“共通の知人”の提案に繋がっていったんです。こんな奇跡あるんだなと思いましたね。

──DAY2のラインナップは、当時の<BREAK OUT祭>を彷彿とさせるものだとか。あの頃、ヴィジュアル系四天王と呼ばれていた4組のうち、FANATIC◇CRISIS、La’cryma Christi、SHAZNAの3組が揃うわけですから。

石月:そこに関しては、“共通の知人”が動いたところが大きいんですけどね。

杉本:僕もDAY2のラインナップに関しては、まさに青天の霹靂で。“そんなことできます!?”って思いましたよ。

石月:でもやっぱり、杉本さんの想いがあったから実現するんでしょうね、この2日間は。杉本さんもその域に達していると思うんですけど、願えばだいたい叶うんですよ。みんな途中で諦めてしまうから叶わないだけで。僕はその力もすごく大きかったんじゃないのかなと思いますね。TAKAさんは逆に、<SWEET TRANCE>実現に動いているという話は、なにも知らなかったわけだし。

──2DAYS開催という形で結実する道筋が二つ、引き寄せ合っていったんですね。

石月:そもそも僕自身、La’cryma Christiに復活してほしいからTAKAさんにお会いしたわけではなくて。もしそうだとしたら、FANTASTIC◇CIRCUSのサポートドラマーはLEVINさんですし、お付き合いも13年とかになるので、LEVINさんを通すという話の持って行き方もありましたから。でも、そうではなくて、本当に純粋な気持ちでTAKAさんにお会いしたので。