――デビュー10周年と、移籍第1弾という区切りのタイミングでのリリースになるアルバム『Reincarnation』の手応えは?
佐藤タイジ(以降、タイジ):相当、気に入ったアルバムになりましたね。大人になったせいもあるんでしょうけど、客観的に作れました。
――今までは客観的にはできなかった?
タイジ:うん。俺の性格を自分で見ても、すーごい主観的な人間だと思いますから。何かにつけて「俺が俺が!」みたいな。だから、自分のキャラクターに対して客観的になることがあんまりなかったんですよね。でもここ2年ぐらいで、別に活動しているSunPaulo(※1)というもうひとつのバンドが固まってきたんです。実験的なところとかオルタネイティヴな部分とか、音楽的な欲求をSunPauloという蛇口から出せるようになったおかげで、逆にシアターブルックでやるべきことがおのずと決まっていった。
――スタンスというか、立ち居地がすごくクリアな状態?
タイジ:そうですね。自分の中で土台ができて、シアターブルックというバンドに対しても、一歩引いた位置で見れるようになったんです。以前だったら、自分のやりたいことを全部詰め込んでいろんなことをやっていたから、シアターブルックというバンドを一言で表現しにくかったんです。でも今は「歌もので大人の演奏をする、ファンキーで踊れるルーツロック。それがシアターブルック!」と言えます。
インディーズで出そうっていう意気込みだったんで、 本っ当に自分たちがやりたいことをちゃんとやろうって思ったんです。 |
――『Reincarnation』はすごくプリミティブだと感じるんです。というのも、シアターブルックやタイジさんのキャリアと、テクニック、スキルを持ってすれば、もっと今のJ-popの世界に伝わりやすい作品が簡単に作れるはずなのに、そういった邪心みたいなものがまったく感じられなくて。
タイジ:あ~ぁ、なるほどね。なかったもん、邪心が(笑)。このアルバムはね、前のレコード会社と契約が終わって次にフォーライフと一緒にやろうと決まるその前から作り出してるんですよ。つまり、インディーズで出そうっていう意気込みだったんで、歌詞も楽曲も、もう本っ当に自分たちがやりたいことをちゃんとやろうって思ってたんですね。だからね、その頃、新宿ロフトでマンスリー・ライヴをやってたんですけど、自分たちの好きなロックバンドをコピーしまくってました。プリンス、ジミヘン、レッド・ツェッペリン、ピンクフロイド、ニール・ヤング、フィッシュ、サンタナ、イーグルス…
――コピーするのには幅が広すぎます(笑)。
タイジ:好きなもんで、完コピするために必死に練習するわけですよ。「なんか違うんじゃない?」とか言われたくないから(笑)。それで超練習してたらだんだんおもろくなってきた。「次、何する? 何する?」みたいな感じで、本当に中学生の気分ですよね。もう、俺たちの好きな音楽を、思いっ切り手本にする感じ。もうそこには、いわゆるJ-pop的な展開はゼロでした。
――ビジネスの香りゼロですね(笑)。
タイジ:そうかもしれない(笑)。でも、大人のルーツロックという音楽として、ちゃんと落ち着いたと思う。「気持ちのいいちょっと踊れるサウンドが聴きたい」と思ったとき、シアターブルックを聴けば間違いない、っていう。ゴールデンタイムのドラマでかかっている音楽だから買う、とかいう人たちに対してやってるんではなくて、本当にロックが好きで、自分たちの周りにいるような音楽好きの人に聴いて欲しいって思ったし、そういう人たちに届けようっていうつもりでしたね。
もちろん売れたいとは思うけど、自分たちの形は変えられない。 それをやったら長く続いていかないんですよ。俺は一生これをやっていきたいし。 |
――先行シングルの「世界で一番SEXYな一日」でガット・ギターを使ってますが、ロック少年のセンスからすると、ロックの人がクラシック・ギターをかきむしるってナシじゃないですか。
タイジ:あんま分かんないだろうね。
――ロックシーンの真ん中に、ガット・ギターを持ってくるカッコ良さってあんまり無いし。
タイジ:あぁ、そうかもね。
――僕は逆に、そこに殺られちゃうわけですけど。
タイジ:シアターブルックで引っかかる人って、ちょっとひねくれ者が多いかもしれないですね。でも俺はそれでいいと思う。いわゆる杓子定規に捕らえない人たちのための音楽っていうのがあってもええと思うし。もちろん売れたいとは思うけど、でも、自分たちの形は変えられないしね。そういうことをしていくと、結局長く続いていかないんですよ。やっぱり、俺は一生これをやっていきたいし。今回ね、やっとメンバー4人正式になったんですよ。このメンバーで8年ぐらいやってきてて、シアターブルックは、俺と中條卓と沼澤尚とエマーソン北村だっていう意識はここ8年ずーっとあったんやけど、ビジネス的なサムシングで、ちょっとした境界線があったりしたわけ。でもその境界線が、今回インディーズでやろうってなった時点で「4人でやりましょう」とまとまった。そうなるとやっぱ意識が変わるんですよ、メンバー内の。それで、自分たちの好きなバンドのカヴァーとかやってたから、すごいフレッシュな気分をバンドの中にキープできたんですよね。
⇒インタヴュー続きへ (※1)Sun Paulo-----佐藤タイジ(G)、沼澤尚(Dr)、森俊之(Key)によるダンス・ミュージック・ユニット。 ■オフィシャル・サイト http://www.sunpaulo.com
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