【インタビュー】「メジャーとは何か?」終活クラブが問い続けた先に生まれた『メジャーな音楽』

2025.10.06 19:00

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キャッチー&マニアックな音楽性や等身大の心情を巧みな手法を活かして鮮やかに描き出す歌詞、勢いとエモさを併せ持ったライブアクトなどが大きな話題を呼び、結成から3年半を経て2024年にメジャー・フィールドへ活動の場を移した終活クラブ。

そんな彼らがメジャー1stアルバム『メジャーな音楽』を完成させた。自身の持ち味を継承しつつあらゆる面にさらなる磨きをかけた同作は、キラーチューンがズラリと並んだ好盤に仕上がっている。本作のリリースを機に終活クラブの評価がより高まることを予感させるが、ここに至るまでには多くの葛藤や苦悩などもあったという。そんな『メジャーな音楽』について、メンバー全員にじっくりと話を聞いた。

──『メジャーな音楽』は、どんなテーマのもとに作られたアルバムでしょう?

少年あああああ:今回のアルバムは終活クラブのメジャー1枚目のアルバムで、僕らは今メジャーの2年目に入ったところなんですね。メジャーで1年間活動してきた中での悩みや苦悩、葛藤といったものを、わりと詰め込んだアルバムになったなと思っています。なんて言うんだろう……メジャーというのは元々すごくボンヤリしているもので、メジャーっぽさというものは定義されてはいないじゃないですか。なので、今回はメジャーについて考えることに1番重きをおいて曲を書きました。より多くの人に聴いてもらえる音楽ということを考えた時に、自分達の強みを少しは削ぎ落さないといけないよなと思う瞬間もありますし、そのほうがシンプルで聴きやすいよなと思う瞬間もありますし。なので、楽曲の制作はだいぶ大変で、もう納期のギリギリまで曲を書いていました。

少年あああああ

──その結果、よりキャッチーな音楽性と“生きづらさ”を綴った歌詞が組み合わさることで独自の魅力が生まれています。『メジャーな音楽』は楽曲の幅広さもポイントと言えますが、それぞれ今作の中でも特に印象の強い曲をあげるとしたら?

石栗:ギタリストの観点になりますが、僕は「ビトビト」です。今回はギタリストとして、アルバム全体を通して“メジャーな音楽のギター”ということを意識したというのがあって。今まではわりと好きなフレーズを好きなようにガンガン詰め込んで、より終活クラブらしさみたいなものをギターで表現しようというところが大きかったのですが、今回はどう引き算するかということを考えました。ピアノに譲る部分はピアノに譲ったり、ボーカルに寄り添うところは一層寄り添うにしたりといったバランス感覚みたいなところをすごく意識していて、「ビトビト」はそれをすごくいい形に昇華できたなと思いますね。自分の中では、このアルバムのギター像として1個ピースがはまった作品にはなったかなという感覚があります。

──的を得たフレージングに加えて、モジュレーション・サウンドやスライサー・トーンといった音色の選択も絶妙です。

石栗

石栗:スライサーみたいなニュアンスになっていますが、トレモロを使いました。この曲を初めて聴いた時に、なんとなく何かに焦っている、焦燥がある、なにか息苦しい…みたいなニュアンスを感じて、それをどうギターのフレーズだったり、音色だったりに置き換えようかなと思って。それで、もう最初からスライサーのような音をトレモロで出そうと決めました。

──やりますね。全体的に引き算されたようですが今作も石栗さんならではの多彩かつインパクトの強いギター・ワークは健在で、そこも大きな聴きどころになっています。

石栗:ありがとうございます。自分のギターについて言うと、僕は少年あああああが作ったデモを終活クラブたりえるものに持っていくための要因としてリード・ギターがかなり大きなものになっていると思っているんです。たとえば、ある種ポップ寄りな楽曲だったり、ポップなギター・フレーズだったとしても音色で変化をつければ、なんとなく終活クラブっぽくなるだろうな…というのがある。そこは、すごく大事にしています。

──たしかに、ギターの在り方は終活クラブの個性の大きな要素の1つになっています。では、自身のパートは、いつもどんなふうに作られているのでしょう?

石栗:基本的には、頭の中で鳴ったものを1回起こしてみて。で、そこからレコーディングするにあたって少年あああああと「こういう解釈で、こういうフレーズを入れたんだけど」という話をして、それを踏まえて足し算、引き算をして…という感じです。

──ギターを弾きながらフレーズを考えると手癖などに引っ張られることが多いので、頭の中でフレーズが鳴るというのは強みといえますね。話を「ビトビト」に戻しますが、この曲を書かれた時のことを話していただけますか。

少年あああああ:「ビトビト」はすごくザックリしたイメージですが、繁華街とかで座り込んでいる人達がいるじゃないですか。“そういう人達は、なにを思っているんだろう?”みたいなことをふと思ったんです。彼らは“世界、終われ”と思っているんじゃないか…みたいなところから書き始めました。座り込んでいる時間も過ぎ去っていって、いつか大人になりますよね。そして、それを僕はただ俯瞰で見ているというか。だから、この曲はテーマを絞って書いたというよりは、彼らはどういうことを考えているんだろう? それを見ている自分は、どういう気持ちでいるんだろう?…というようなことを、そのまま言葉にしたという感じです。

──深い思いなどを入れないことで、“なんとなく虚ろ”という捉えどころのない心情が伝わる歌詞になっています。それに、アウトロの何度も転調するアレンジもいいですね。

少年あああああ:そこは、もう“ビトビト!”という感じ(笑)。この曲は歌詞に“ビトビト”という言葉は出てきませんが、雰囲気がもうビトビトしているわけですよ。だから、タイトルを「ビトビト」にして、アウトロは気持ちの浮き沈みみたいなものを転調で表現したいなと思ったんです。それは、上手くいったかなと思いますね。

ファイヤー・バード:僕は特に印象の強い曲をあげるとしたら、5曲目の「足りない」です。歌詞に“ビトビト”という言葉が出てこない「ビトビト」とは真逆で、もうタイトルそのままという感じの歌詞ですけど、これは「なにが足りないんだ?」とまず考えますよね。で、少年あああああは最後に“ことばが足りない”というところにたどり着いている。僕はこの歌詞を見た時に、「あっ、俺の曲だ、これ」と思ったんです。

ファイヤー・バード

少年あああああ:アハハッ!(笑)

ファイヤー・バード:違う? 違う?

少年あああああ:お前の曲ではない(笑)。

ファイヤー・バード:そうか…。でも、この曲は歌詞を読みながらメロを聴いていくと、“スーッ”と入ってくる。それで、最後にだんだん静かになっていって、“ことばが足りない”というのが出てきた時に、「あっ、みんなには言わないけど、俺へのメッセージだな」と思ったんです。僕らは学校が一緒で、もう長いつき合いなので、サビの「だってぼくらは足りないから/いつでも少し足りないから」というのは俺らじゃんと思ったし、「どこまでだってさ/二人でいよう」とか「へたくそだってさ/一緒にいよう」といった言葉もあって、「ああ、そういうこと?」みたいな(笑)。

──ですが、少年あああああさんは、ファイヤー・バードさんのことを思って書かれたわけでは……。

少年あああああ:違います(笑)。「足りない」を書いたのは“ずっと足りないよな”と思ったんです、単純に。自分は別に頭もよくないし、お金もそんなに持っていないし、満たされているはずなのに、ずっとなにかが足りないんだよなと。それで、これはみんなそうなんだろうかと思って書き始めました。ファイヤー・バードが言ってくれたように、最後の“ことばが足りない”まで足りないことの中身を書かないようにしていて、でもお金で買えるものではないから、最初に「胸ポケットの小銭じゃ買えない」というくだりだけ入れて。その足りないものが何なのかというのを探す歌になっていて、最後のサビでやっと“君”に会える。これは夢の中かもしれないし、どこで会ったのかは分からないけれど、会った時に本当は「ありがとう。もう大丈夫だよ」と言いたいのに、実際に会ったら「寂しかった」とか「会いたかった」しか出てこない…という。そういう物語みたいなものを空想して書いた感じです。

──“なにか足りない”ということは誰しもが感じていて、この曲に共感を覚えるリスナーは多いと思います。音楽面では、「足りない」はサンバ感のあるグルーブが心地いいですね。

少年あああああ:リズム・パターンは自然と出てきました。ただ、この曲はそれこそファイヤー・バードと話して、1番最初の4行のところは元々のリズム・パターンから1個スネアを減らしているんです。足りなくさせている。そして、その後の夢を見て満たされているところから普通のパターンになるという。

──細かい詰めをされていることが分かります。この曲もそうですが、ファイヤー・バードさんはただ単にビートを刻むだけではなくて、楽曲の世界観を深めるドラムが多いことは注目といえます。

ファイヤー・バード:自分的には、そういう自覚はないですね。

──本当に?パターン系のアプローチなどが多いですが、それは少年あああああさんが指定されているのでしょうか?

少年あああああ:たしかに、デモを起こした段階でドラムはある程度打ち込んであります。それを詰めていく過程で、より楽曲に合うドラムに変える。「足りない」も元々のドラムから変わったよね?

ファイヤー・バード:変わった、変わった。

少年あああああ:手数をめちゃくちゃ減らして、結果それがよかったというか。

ファイヤー・バード:シックリきた。

少年あああああ:だから、ドラムのフレーズとかも一緒に考えて解釈している感じです。

ファイヤー・バード:僕は世界観ということよりも、少年あああああの歌に寄り添うことを意識しています。少年あああああは日によって声の出し方とか、感情の入れ方が違っていて、それに比例したドラムを叩く。“今日の少年あああああはMCとか、めっちゃ気持ちが入っているな”という時は自分も自然と感情が乗るし、リハとかで流して歌っているような時はドラムも淡々とした感じになる。そういうふうに、歌とシンクロしたドラムを叩きたいというのはありますね。

少年あああああ:ありがとう(笑)。

羽茂さん

羽茂さん:僕の中で1番印象が強いのはアルバムに先行して出した曲ですが、まだ「インターネットやめたい」が頂点にいるなという感じです。すごく勢いのある曲で、ライブで演奏していても楽しいし、歌詞も分かりやすいように見えて遠回しに殴っているところもあったりするのがいいなと思うし(笑)。僕はプライベートで聴いている終活クラブの曲というのは本当に少ないんですけど、「インターネットやめたい」は聴いています。仕事をしている時に聴いているくらいで、やっぱり僕の中ではまだこれが頂点ですね。

──それは、よく分かります。ただ、「インターネットやめたい」のお話はリリース時に少年あああああさんにお聞きしましたので、よければ他の曲もあげていただければと思います。

羽茂さん:なるほど。どうだろう……。

少年あああああ:「地球破壊のマーチ」じゃない? これ、羽茂曲だから。羽茂がライブで踊る曲なんです(笑)。

羽茂さん:そう(笑)。それに、「インターネットやめたい」と系統が似ていますよね。ライブでお客さんとコミュニケーションが取れるし、なおかつ歌詞も絶妙に「インターネットやめたい」に似ているといえば似ているし。分かりやすいように見えて、“うーん……”みたいなところもあって、やっぱり遠回しに殴っている(笑)。そういうふうに、「インターネットやめたい」と同じような感じはあって、たしかにこの曲も好きです。

少年あああああ:「地球破壊のマーチ」は、今の自分はまだ夢の最中にいるというか。たとえば、これからQUATTROワンマンに挑戦したりとか、バンドが仕事になりつつあるような状況なんですね。そういう中で、昔はこんなこと絶対に思わなかったけど、夢というのは叶うのかもしれない…みたいに思う時があって。ということは、みんなで地球を破壊することを願えば叶うんじゃないかなと思ったんです。もし叶ったとしたら、こういう時だけギャーギャー言うヤツとか、死にたくないというヤツとかが現れるだろうな…という。だから、実質的には「地球破壊のマーチ」は、“生きていようぜ”という曲です。それに、この曲の歌詞は超語感を重視して書いていて、それを書いていることにだんだんムカツいてきて、だから途中で、「もはや歌詞とか/なんでもいいんじゃない?/語呂さえ合えば/評価されんじゃない?」と歌っています(笑)。

──突然“素の自分”が出てくる辺りは、少年あああああさんらしいですね。それに、少年あああああさんは柔らかく歌う方という印象を持っていましたが、今作では「地球破壊のマーチ」や「〇〇〇〇」などで、シニカルなボーカルも披露されています。

少年あああああ:歌の表情がより広がったことは、自分でも感じています。というか、曲を作るレベルが1つ上がったなという感覚がある。それは、伝わりやすいということをすごく考えたからで、それもメジャーな音楽を書くという悩みの中で生まれた産物の1つだな…みたいな。それが、この曲は特に上手くいったかなと思います。歌詞にしても、歌い方にしても、今までの自分にはなかったところにいくことができましたね。

──シンガーとしても、さらなる磨きがかかりましたね。ところで、先ほど“羽茂曲”という言葉が出ましたが、終活クラブのライブは羽茂さんの派手なパフォーマンスも観どころになっています。

羽茂さん:結構、驚かれることが多いです(笑)。

少年あああああ:結構好き勝手に、やりたい放題やっていますね(笑)。

羽茂さん:やらせてもらっています(笑)。ただ、さっき石栗も話していましたが、譲るべきところは譲っています。石栗が前に出る場所では、自分は引いたりとか。元々はステージの立ち位置が違っていて、以前は僕の横に石栗がいたんですよ。そこで、譲り合うということを学びました。

──ただ好きなようにパフォームしているわけではないと。そして、キーボードに関しては、それぞれの楽曲はもちろん曲中でも細やかに音色を変えるアプローチが光っています。

羽茂さん:1曲の中で3音色くらい切り替える曲もあったりします。切り替えが大変ですけど、そこはこだわっていますね。あと、パフォーマンスと同じく、楽曲の中でのそれぞれの見せ方ということも大事にしています。リード・ギターとかドラムとかが前に出る場所は、自分は譲る。それを、はっきりできるようになったというのはありますね。

少年あああああ:僕は1曲だけあげることは、できません。強いて言えばですが、僕の中でこのアルバムを、このアルバムたらしめているのは11曲目の「メジャーな音楽」と12曲目の「無名芸術」、それに1曲目の「劇伴」です。この3曲が『メジャーな音楽』というアルバムの大部分を占めている。「メジャーな音楽」も「無名芸術」も葛藤を歌っていて、「メジャーな音楽」はメジャーというものと向き合って自分はどういう曲が書きたいんだろうと考える中で派生した悩みとか、いら立ちみたいなものを曲にしました。それでも、やっぱり目の前にいるお客さんに僕は歌いたいし、その人の人生たりえるものを書きたいと思ったんです。終活クラブを聴いてくれる人が悩んでいる時に手を引けるような、そんな曲を書きたいなというところにいき着いた。それで、「メジャーな音楽」という曲を書いたんですけど、その後に「無名芸術」という曲で終わるのが、すごく自分らしいというか。音楽を生み出している間というのは、すごく孤独なんですよ。僕の孤独は誰が救ってくれるんだと思いながら書いている。だけど、書くのはもうやめられないと思うんですよね。自分の好きなことだし、これが自分の人生だから。昔から歌詞を書いていて、曲を作って、そこで自分の本音を歌うということをずっとやってきたから、僕はどんなに苦しくても書くことをやめられないんだなと分かって、それを紙に書く描写で終わるという。それが終活クラブなりのメジャーな音楽だなと思って、「メジャーな音楽」の後にあえて「無名芸術」を入れてアルバムを終わらせるという構成にしました。今回のアルバムの中で1番最後に書いたのも「無名芸術」だったんです。

──この2曲は衝撃を受けました。まず、「メジャーな音楽」は、メジャー・フィールドにきて音楽を作ることに思い悩んでいるということを赤裸々に書く人はあまりいないと思います。

少年あああああ:そうかもしれない。僕は本心を、もうそのまま書きました。

──そこに驚きましたし、そんな「メジャーな音楽」から“苦しくても音楽を創っていくんだ”と歌う「無名芸術」への流れや「無名芸術」の後半の響き方は素晴らしいです。

少年あああああ:ありがとうございます。アルバムの最後のピースを探していたんですけど、結局こういうことだろう…というか。自分は部屋でずっと曲を書いていて、その時にいろんな人の顔が浮かんだり、いろんな売れている音楽を妬んだり、もうやめたいと思ったりするわけですよ。でも、やめないんだよなと思って。「無名芸術」は、そのある種の意思表明みたいな曲になっていると思います。

──等身大であることが、いい方向に出ましたね。そして、「無名芸術」のアウトロのブルージーなギター・ソロも本当に魅力的です。ずっとトリッキーだったり、エフェクティブなギターで来て、最後にブルージーな泣きソロというのが最高にカッコいいです。

石栗:結局音楽というのは、ギターというのは、そこに終着していくんだろうなというのが自分の中にはあるんです。最終的にはシンプルなものに落ち着いて、それが1番カッコいいというものになるんだろうなと。それを頭では分かっているということを伝えたかった。このアルバム全体のギターを纏めるのはそこだろうなと思って、この曲は王道的なソロを弾きました。

──センスのよさを感じます。もう1曲の「劇伴」についても話していただけますか。

少年あああああ:「劇伴」は、僕は自分が好きなマンガが、ことごとく打ち切りになっていくんです(笑)。でも、作品は半端で終わってしまったかもしれないけど、主人公達の人生は続いていきますよね。主人公達はこの先どういう生活を送るんだろうと考えた時に、これは終活クラブを応援していたけど応援するのをやめた人とか、いろいろな理由があってライブに来なくなったり、音楽が聴けなくなったという人の人生にも通じるんじゃないかと思って。僕がマンガの主人公の今後の生活とか、お客さんのこととかを思った時に、自分はなにを言いたいんだろう、どういうことを伝えたいんだろうと考えたら、「僕はずっと味方でいる」と言いたいだけなんです。僕は絶対にその人の敵にはならないから、“僕はずっと味方でいるよ”という曲を書きたい、それがその人の人生のBGMになったらなによりいい。だから、これから終活クラブとしていろいろな楽曲に挑戦していく中で、それが1つ1つBGMになって人生に散りばめられていくようになりたいと思って「劇伴」という曲を書きました。

──自身が作った音楽がリスナーの人生と共にあるというのは、アーティスト冥利に尽きますよね。そして、『メジャーな音楽』は皆さんがあげてくださった楽曲以外にも良質なものが揃っていまして、たとえば「もうすぐゆうれい」は全員が“オバケ感”を表現していて、バンドとしての表現力の高さが十分に発揮されています。

石栗:バンド全体でオバケ感というのは、自分がギターをつけるうえで少年あああああと特に話したところではあって。不穏感みたいなものを出すというのは自分の中でも結構挑戦だったので、それが伝わっているなら嬉しいです。あとは、これを話すとちょっと野暮かなという気もしますが、この曲のギター・ソロは最後の音までいっていなくて、最後の音を鳴らすタイミングで主人公が飛び降りて、いなくなってしまっているんです。自分の中でそういう解釈をして、最後の音を鳴らさずに“ピーッ”という音で終わるという。本当だったらもう1音で弾ききりたいけど、無理やりぶっちぎって、余韻までも総てぶち切りました。

ファイヤー・バード:ちょっとビックリしましたけど、僕も石栗と一緒で、主人公が自ら命を絶つ曲だと解釈したんです。デモの段階で少年あああああが作った打ち込みのドラムを聴いて、そのまんまやんと思ったし。なんて言うんだろう……ドラムで言うと、もう嫌なんだろうなという。BPM的にすごく遅い4つ打ちとかで、最後の最後にライド(・シンバル)でどんどんまくし立てていく感じになっていたから。少年あああああに「これ、そういう曲だよね?」と言って「違うよ」と言われるのが嫌だから聞かなかったけど、絶対にそうだよなと思っていた。だから、いま石栗の話を聞いたら解釈が一緒で、すごく嬉しかったです。

少年あああああ:あと、この曲のキーボードは僕が考えさせてもらったんですけど、歌詞で中央線という言葉が出てきて、中央線の駅で電車が発車する時に鳴るメロディーを抽象化したものをキーボードとして入れています。「♪ テッテッテッテ…」みたいなヤツは荻窪辺りの発車メロディーを抽象化したもので、この曲は基本的にハネている感じのリズムですが、2番の途中で8分音符の「デデデデ・デデデデ」という音が入っていて、それも駅のホームの音を抽象化したものです。そういうことも含めて、全体的に陰鬱な感じが出せたなということは感じますね。

──サブリミナル的な音も入っているんですね。それに、歌詞が全部ひらがなというのも、いいフックになっています。

少年あああああ:歌詞は思考が追いついていない感じというか、変換が間に合っていない感じを出したかったんです。それで、全部ひらがなにしました。

──いつもながら発想の豊かさに頭が下がります。そして、EDMが香る「エキチカダンスフロア」も注目の1曲です。

少年あああああ:「エキチカダンスフロア」は編曲をNamitapeさんにお願いしていて、自分のメロディーをお渡しして、それを編曲していただいて、ギターだけ入れて完成した曲です。これは本当に歌詞のとおりで、“クラブも行ったことがないけど、君さえいれば踊りたいから行きます”という曲で、だから歌詞自体はめちゃめちゃ情けないんですよ。どっちかという日の当たらないところにいるヤツがめちゃめちゃキラキラなダンス・フロアに行くという。だから、音楽自体はめちゃめちゃキラキラだけど、言っていることは日陰者というか(笑)。そこのアンバランスさが、すごくきれいだなと思います。

──クラブなどに行ったことがないのは“バンドマンあるある”で、妙なリアリティーがありますね(笑)。それに、こういった打ち込みを押し出した楽曲もメンバー全員OKということも終活クラブの強みといえます。さて、『メジャーな音楽』はさらに魅力を増した終活クラブを堪能できる必聴の一作に仕上がりました。同作が完成したことで、今後のライブもより充実したものになる予感がします。

ファイヤー・バード:僕らも無事5周年を迎えまして、これから6周年目に入っていくんですけど、11月から12月にかけて東名阪QUATTROツアーが決まっているんですね。QUATTROという結構夢の舞台に立てるので、まず自分達がめちゃくちゃ楽しまないとダメだと思っています。それに、来てくれるお客さんに損をさせたくないので、終活クラブが日本のトップだなと思わせるライブをしたいと思います!!

羽茂さん:『メジャーな音楽』というアルバムを作ったことで、いろんなことが終活クラブの中でも変わるし、お客さんの中でも変わると思うんですよ。「もうすぐゆうれい」とか「エキチカダンスフロア」とかを、ライブではどういうふうに演奏するんだろうと思うところもあるし。ライブ・アレンジをすることによって自分達も変わっていくだろうし、ライブのパフォーマンスとかも変わっていくんじゃないかなという、まだ想像できない未知のところを、このアルバムは秘めているんですよね。どう変わるのかが自分達も楽しみだし、お客さんもまた新たな終活クラブを見れることになると思う。なので、期待していてほしいです。

石栗:QUATTROワンマン・ツアーというところに向けて、今回『メジャーな音楽』というアルバムを出して。このアルバムはめちゃくちゃ挑戦した1枚だと思うので、ライブに関しても今までの枠みたいなところに捉われないで、どんどん挑戦していきたいですね。挑戦しないとアルバムの先にあるQUATTROワンマン・ツアーだったり、来年以降目指していく大きなステージに向けて成長していけないから。『メジャーな音楽』の収録曲は成長するきっかけを与えてくれる楽曲達だと思うので、今後のライブはパフォーマンスも含めた表現方法をしっかり考えながらやっていこうと思っています。

少年あああああ:QUATTROのワンマン・ツアーを決めたタイミングではQUATTROというのは自分達にとって無理なことで、だいぶ挑戦ですし、無茶しているなという意識もあった。それを成功させるためには簡単に言えば、人にすごく聴いてもらえる曲を書かなきゃいけないなと思ったんです。僕らの武器は、音楽しかないので、自分が生き残ったり、いろんな人の恩に報いるにはいい曲を書くしかない。そういう思考のもとに『メジャーな音楽』を作って、今までの終活クラブの丸をより広げられるものになったなと思っていて、このアルバムを自信を持って出せるということがシンプルにめちゃめちゃ嬉しいです。だから、届け方も含めて考えて、いろんな人にいっぱい聴いてもらえるアルバムにしたい。今後の活動は、そういう意識で臨んでいきます。

取材・文◎村上孝之

Major 1st Full Album『メジャーな音楽』

2025年10月1日発売
初回盤(CD+DVD) VPCC-80705 4,950円(税込)
通常盤(CD Only) VPCC-87287 3,300円(税込)
1.劇伴
2.インターネットやめたい
3.〇〇〇〇
4.ビトビト
5.足りない
6.幽霊
7.もうすぐゆうれい
8.地球破壊のマーチ
9.エキチカダンスフロア
10.恋
11.メジャーな音楽
12.無名芸術

◆終活クラブ・オフィシャルサイト