『BLUE NOTES~The Best of Tateki Kobayashi』 2002年10月16日発売 UMCK-1116 3,059(tax in)
M1:REPLAY M2:イノセント M3:SpooN M4:ヘキサムーン M5:満月 M6:斜陽 M7:Boo Doo Loo M8:Nervous Colors M9:コスモス M10:Sweet Rendez-Vous M11:それは愛ではありません M12:トリガー M13:祈り M14:歳ヲとること M15:青空 M16:最初のメロディー
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「REPLAY」 2002年9月25日発売 UMCK-5072 1,260(tax in)
M1:REPLAY M2:ノバラ M3:REPLAY (Instrumental)
| インタビュー映像が見られます | <BooDooLoo5♯ -REPLAY- TOUR>
■11月21日(木)原宿アストロホール (18:30/19:30) ■11月28日(木)名古屋アポロシアター (19:00/19:30) ■12月3日(火)大阪BIG CAT (18:30/19:30)
【問】小林建樹official fan club "cube" 03-5411-4808(平日15:00~19:00) | | ――デビュー3年半で登場したベスト盤のタイトルは『BLUE NOTES』ですが、これはどこから? 小林: まず色のイメージがあって、それが青だったんです。まだ(自分はこうです!と)言い切ってないところで、“青”。青って悲しみの色とか、沈殿している……扉が開く前ってイメージがあって。ま、基本は音階のブルーノートなんですけどね。 ――音階のブルーノートを簡単に教えていただけますか? 小林: いろいろ解釈はあるんですけど、普通のドレミファソラシドの音階に、シのフラット、ミのフラット、ソのフラットの3つを加えて合計10個、これで好きなときに好きな音を加えてメロディを作るという。ちょっと奇妙なんですけど、異色ってほどではないところが魅力的な音階です。 ――なるほど。では、ベスト盤の選曲基準、コンセプトは? 小林: ベストを出すって決まって、僕やスタッフがあらかじめ選び出したものがほとんど一緒だったんです。だから迷わなかったですね。気持ち的にはこのベストを聴いてオリジナルのほうも聴いてくれたらいいなって。そのためには明確な色を持った曲を選んでました。 ――シングルは全8曲収録されていますね。小林さんの曲はシングルであろうとなかろうと、どれもメロディの立った上質作ばかりだと思うんですが、それでもシングルは外せないと。 小林: うん、そうですね。シングルだからってそれだけに力入れることは絶対してないんだけど、シングル作ってるときって脳の状態がいいっていうかな。何事にも敏感で情報処理能力が素早い。そういうとき作った曲ってきらめきがあるから。 ――今、3年半前のデビュー曲「Sweet Rendez-Vous」を聴いてみてどうですか? 小林: なかなか理解されへんかったなって思い出はありますね。じゃあ今理解されてるかっていうとそうでもないんですけど(笑)。でも、理解されるかされへんか、ってのはデビュー前から悩んでましたね。理解されるためにそういうもの作るべきなのか、理解されなくても自分がいいと思うものを作っていくべきなのか、とかね。そこらへんはいまだなんも解決してないですけどね。 ――理解されない具体的な点はどこだと思いましたか? 小林: 誰もしてないことしてないことっていうか。ん……濃密やなって思うんですよ。ヴォーカル力もいるし、楽曲能力もいるし、言葉を使う力もいるから、どこも誤魔化せられない。普通ポップスって、歌だったら歌を特化して、あとは力抜いてあるものだったり、それで整理すする曲だったりすると思うんですね。でもこの曲はとにかく力入ってる。 ――なるほど。他にも改めて自分の作品たちを聴いてみてどうでしたか? 今聴いて恥ずかしい、とかは? 小林: ん~音に関してはないですね。歌詞ではちょっと時代を感じるというか。「歳ヲとること」とかは考えが甘いなぁって思いましたね。あ、今聴いても本当素晴らしいなぁって思うのは「Nervous Colors」。R&B聴いてて作ったんで跳ねたリズムになってるんですけど、僕が作るとR&Bにはならないなと(笑)。あと「満月」のときはサンプラー買って作ったんですよね。で、「音の“貧乏感”を全面に出すと金になる」って考えのもとに作ったんです。僕、音に関しては生バンド使ったり、細かにこだわったりって派手なんで、この曲は“貧乏感”だ!と。でも、僕は音に関しては貧乏になれませんでしたね。もうバブリー(笑)。これは今でも。 ――新曲2曲「REPLAY」(先行シングル)と「最初のメロディー」(書き下ろし)が入ってますね。私は小林建樹というミュージシャンはメロディ重視型と思っていたんですが、特に「REPLAY」はこの上なくストレートに悲しみを表現した歌詞で、それで聴かせる部分も大きいですよね。 小林: 僕、今でもメロディ重視ですよ! でも、これは……ホンマにもうアカンなってことがあって、そのとき作って。直接的な表現って恥ずかしいなって思って避けていたんだけど……。 ――赤裸々に表現して恥ずかしいという気持ちを通り越すほどの、アカンなってことがあったと? 小林: うん。で、もうどうでもいいやって思ったんですよ。今まで“恥ずかしい”とか、“こういう表現はやめておこう”とか思ってたことがしょうもないことに思えて。なんでもアリやって。 ――そういう辛いことを歌として作ることで思い返したり、形に残すのは、さらに辛い行為ではないですか? 小林: いや、楽しいですよ。どんな題材でも人間って楽しいことしか作らないと思うんですよ。辛いっていいながら作る人は、辛いのが好きなんだろうし。……だから僕も心のどこかで楽しんでたと思いますよ。確かにこの辛いことがあったとき、人に相談もしたんですけど……完治しないっていうかな、最終的には自分でどうにかしないと。それが恥ずかしい表現でも歌を作る人間としては歌で表現するべきだろうと。やっぱりそこに戻るんですよね。「最初のメロディー」も同時期に書き上げたんですけど、「REPLAY」が僕自身のことだとしたら、「最初の~」は僕以外の周りの人が聴く最初の、って意味合いで、そこに僕が参加できればって感じで対象が見えてる曲ですね。遠回りするのは面倒くさいって思ったんです。スカーンと分かってほしいし、スカーンと自分でも歌いたいってところで作ったんです。 この他にも、自分の今の状況を、冷静に咀嚼するように語ってくれた小林建樹。プライベートで“ホンマにもうアカンなってこと”があった様子を隠すことなく、素の状態でインタヴューに応えてくれた。最近はインナーな状態で本もよく読んだけれど、このベストで扉を開ける準備は整った……そんな佇まいのある彼は、また会いたいと思わせる愛すべき人間であり、良質なメロディを生み出す音楽家として興味深い人物なのだ。 取材・文●星野まり子 | |