まったくもってアヤしい街、新大久保駅周辺(韓国語や、意味のわかない言葉しか聞こえてこない)を抜けて、住宅街の真ん中に位置するグローヴ座へ向かう。中は小ぎれいで、ワインレッドの椅子が厳かな雰囲気をかもし出している。ここで、謎の公演<目を閉ぢる>が行なわれるのだ。 (C)三浦麻旅子 | 客電が落ちると、ステージ中央に置かれたアコースティック・ギターにスポットライトが当たる。そこへ中尾が登場。「かわいい女」を弾き語りする。曲の中盤にさしかかると、In the Soupの他の3人も登場。舞台後方、一段高くなったステージに上がると、大音量のバンドサウンドへと切り替わった。そんな中、スーツ姿の男(濱田龍司)が現われ、ステージ中央に腰掛けると、深い眠りに落ちていく……。 そう、この内容は、ひとりの男の夢の数々(過去なのか、願望なのか、妄想なのか……?)を“演劇”と“歌”で表現したもの。簡単に言ってしまえば、そうなのだけど、ペテカンとIn the Soupが起こした化学反応は、「夢」を表現しつつも、「現実」を見据えていた。厳しい世の中で、どう生きていくか……。過去を表現し、感傷に浸りながらも、今を生きなければというスパイスが常に効いたパフォーマンスだったのだ。 | ストーリーは、ある男の夢の断片を表現した、というところだが、改めて“生で表現することの迫力”を感じたステージだった。いわゆる音楽を演奏するライヴなら多種多様なステージを観てきたし、歌うことに関しても(鼻歌、カラオケを含め)身近に感じていた。けれど、こと芝居となると、テレビドラマや映画を観るのがせいぜい。そんな私にも、演劇の生の迫力と緊迫感……これが、空間として楽しい。 そんな、いつもとは違った空間の中で、見慣れたIn the Soupのライヴはどうだろう……と思ったが、彼らも思いっきり、飛び越えてきてくれた。In the Soupというバンドは常にライヴにおいて、えも言われぬ緊張感を漂わせていたのだが、ペテカンの演劇に触発されたのか、緊張感が気迫となって観客に迫ってきた。その気迫でもって、In the Soupひとりが突っ走っているのではなく、観客を含むグローヴ座全体を包んで持ち上げている、そんな鬼気迫る感覚。特に「グリーン グリーン」がすばらしく、ペテカン・ファンであろう観客も完全クギ付け。曲が終わったときには、劇中にもかかわらず、拍手が巻き起こっていた。 公演終了後、ロビーには興奮を引きずって声高らかに雑談するペテカンのメンバーと、同じ興奮を引きずりながら、逆にまだ眉間にシワをよせているかのようなIn the Soupのメンバーたち。私が観たこの日は公演初日で、彼らはまだ明日の公演(2回廻し!)も控えている。けれど、初日を無事、成功で終えたと実感しているメンバーたちの姿がみられた、公演、その後だった。 | | <目を閉ぢる>のシーンを抜粋! 夢の場面を 6つのストリーミングで楽しめます! | 「グリーン グリーン」 日本コロムビア 2002年5月29日発売 COCA-50683 1,260(tax in) 1. グリーン グリーン 2. 光った汗を僕は信じてる 3. コーヒー | |