テロについて何も口にしなかったが、U2の歌詞は彼らの心情を充分に表していた

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テロについて何も口にしなかったが、
U2の歌詞は彼らの心情を充分に表していた
 
“それでも歩き続けよう”と歌うBono。目が潤んでいない者は誰一人としていない

最新 DVD

Elevation 2001: U2 Live From Boston
ユニバーサル インターヴァショナル UIBI-1001/2
2001年12月8日発売 5,985(tax in)

【Disc-1】
1 エレヴェイション
2 ビューティフル・デイ
3 夢の涯てまでも
4 スタック・イン・ア・モーメント
5 カイト
6 ゴーン
7 ニューヨーク
8 アイ・ウィル・フォロー
9 サンデイ・ブラッディ・サンデイ
10 イン・ア・リトル・ワイル
11 ディザイアー
12 ステイ(ファラウェイ、ソー・クロース!)
13 バッド
14 ホエア・ザ・ストリーツ・ハヴ・ノー・ネイム
15 ブレット・ザ・ブルー・スカイ
16 ウィズ・オア・ウィズアウト・ユー
17 ザ・フライ
18 ウェイク・アップ・デッド・マン
19 ウォーク・オン
●メイキング・オブ「エレヴェイション2001:U2ライヴ・フロム・ボストン」(24分)

【Disc-2】
1 Another Perspective:
ディスク1のライヴからハイライト・シーンのマルチ・アングル映像(メイン映像/ファン・カメラ/ディレクター・カメラ)(各67分)

2 Road Movie:
ステージ・セット・アップの様子(6分)

3 Additional Tracks:
ビデオ・クリップ別ヴァージョン(15分)
 「ビューティフル・デイ」
  ダブリン、2000年9月(クラレンス・ホテル)
 「エレヴェイション」
  マイアミ、2001年3月24日(ツアー初日)
 「スタック・イン・ア・モーメント」
  ダブリンHQスタジオ&フランス、2000年7月

4 Trailers:
予告編Zoo TVツアー/ポップマート・ツアー(4分)

5 Web Links (u2.com, Jubilee 2000, Greenpeace, Amnesty International)

6 DVD Rom Screensavers

7 DVD Credits

最新 Album

ALL THAT YOU CAN'T LEAVE BEHIND
ユニバーサル インターヴァショナル UICI-1002

2000年10月25日発売 2,548(tax in)

1 BEAUTIFUL DAY
2 STUCK IN A MOMENT YOU CAN'T GET OUT OF
3 ELEVATION
4 WALK ON
5 KITE
6 IN A LITTLE WHIL
7 WILD HONEY
8 PEACE ON EARTH
9 WHEN I LOOK AT THE WORLD
10 NEW YORK
11 GRACE
12 THE GROUND BENEATH HER FEET(Bonus Track)

美しい秋の夕べ、同時多発テロに見舞われた街のMadison Square Gardenに入る。なんだか、スリル満点。ニューヨークの宝クジじゃないが、「よお、次はアンタかも」ってね。なにしろここは未だに瓦礫がくすぶり、妙な匂いが鼻をつく。誰しもに何らかの辛い話があるという街。アリーナロックはU2のお得意、政治的見解もBonoのお得意とくれば、今夜はテロについて一席ぶつぞ、と観客が期待するのも当然だ。

ところがショウのオープニングアクトは、シリアスとは程遠いGarbage。出来の良いアルバム『beautifulgarbage』の曲など、新旧織り混ぜてプレイする。サウンドはテクノでも、ニューアルバムにみられるPhil Spector風でもない。タフで荒々しい、ほとんどパンク。Steve MarkerとDuke Erickson、それにイカレたButch Vigの3人が、ラウドでざらついたリズムを素早く叩き出すと、ヴォーカリストのShirley Mansonが、欲情を抑えられないブロードウェイの歌姫みたいにステージ狭しと徘徊する。プラチナブロンドを丸坊主に刈り上げ、白いTシャツにブラックジーンズ、ピエロのようなサスペンダーというすごくキッチュなスタイル。男とも女とも見える中性的な雰囲気だ。ただ、ヴォーカルだけは豊かでパワフル。意外にも1曲目は、1stシングル“Garbage”ではなく“Paranoid”。続いてぐっとメロウな“Drive You Home”に過激な“Stupid Girl”、レコードそのままの“Till The Day I Die”、そしてRamones風でぞっとするような“Happy When It Rains”と“Cherry Lips”。最後にShirleyはU2に礼を述べ、特にドラマーのLarry Mullen Jr.には「わざわざ声をかけてくれてありがとう」と言った。

さて、U2は自分たちの音楽をBGMにしてGardenのステージに登場した。ゆっくり堂々と歩いてくるさまはロック界の全能の神だ。大きなハート形のステージ上には、200人ほどのファンの特別席が設けられている。Bonoはすぐさま狂信的な観客に声をかける。 「やっぱり見逃せないだろう?

Bonoは胸元に赤い星をあしらったブラックレザーのコートをはおり、EdgeはヤンキースのTシャツ。バンドのプレイが始まった。

“Beautiful Day”で「ソウルはあるか? ゴールこそソウル。ニューヨーク・シティはソウル・シティだ」と煽るBono。U2はメロドラマチックどころか、過剰演技でさえある。“End Of The World”でハート形のステージの周りをゆっくりと歩きながら歌うBonoは、まるで田舎サーカスの呼び込み屋だ。ニューシングルも披露されたが、“Big ideas/Out of control”という歌詞にしても、ブーガルー・ビートにしても、まるでPoliceのよう。

ドラムス、Debbie Harry……」などとメンバー紹介をしながら、BonoはU2のこれまでの活動をかいつまんで話した。それが終わるとMullenの強力なビートが“Sunday Bloody Sunday”を叩き出し、Gardenがはじけた。今度はファンが差し出したアメリカ国旗をそっと抱きしめて佇むBono。テロについて何も口にはしなかったが、U2の歌詞は彼らの心情を充分に表していた。

コンサートのハイライトは、「ニューヨークのルース」という観客がステージに上がり、“Knocking On Heaven's Door”をギターで弾き始めた時のこと。サクラっぽく見えたが、そうではなかった。“この戦争にはうんざり/ニューヨークは最高の町/天国の扉をノックしている気分”と替え歌で歌った彼女に、Bonoでさえびっくり。ぎゅっと抱きしめてもらってから、彼女はステージを降りた。続いてU2は“Staring At The Sun”“Where The Streets Have No Name”“Surrender”と立て続けにプレイ。“Still Haven't Found What I'm Looking For”では巨大なビデオスクリーンを持ち出し、マーティン・ルーサー・キング牧師の演説「約束の地」の一部を流した。これはちょっとヘン。

アンコール1曲目はHendrix風の“Bullet The Blue Sky”。そして“What's Goin' On”と“One”。Bonoはこう言って締めくくった。「ニューヨークってとこは、強盗もロックスターも誇大妄想狂もピーナツ売りも、みんなが折り合いをつけて暮らしてる街なんだ

最後にまたビデオスクリーンが出てきて、「世界に平和を」とメッセージがあり、世界貿易センタービルの犠牲者の名前がゆっくりと流れていった。名前は観客の上にも映写され、生存者と死者が一体化する。“Walk on、それでも歩き続けよう”と歌うBono。目が潤んでいない者は誰一人としていない。「Madison Square Gardenの聖なる心よ」と呼びかけたように、Bonoは今夜、U2という教会を提供したのだった。

By Ken Micallef/LAUNCH.com

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