ヒット・ナンバーのオンパレードだったエコー&ザ・バニーメンのライヴの感激も覚めないまま、あわててグリーン・ステージに戻る。いよいよニール・ヤングが暴れ馬を従え、フジのステージに登場するのだ。思えば、12年ぶり(クレイジー・ホースと一緒となると、なんと25年ぶり)の来日公演だ。なかにはロック・シーンの生きる伝説を、この目で確かめようという人も多かったはずだ。 そして、午後9時30分。カウボーイハット、ネルシャツ、ジーパンというラフな姿のニール・ヤングがステージに現れる。ふと、入国するときも、この人はこのかっっこうだったんだろうか? と、どうでもいいことが頭をよぎる……。その後、ニール・ヤングはアンコールを含めて、なんと2時間半、長尺ナンバーを演奏した。 とにかく1回始めると、終わるまでが長い長い。その間、クレイジー・ホースのダイナミックと言えば聞こえはいいけれど、無骨で大雑把な演奏をバックにニール・ヤングはギターを弾きまくる弾きまくる。そして、その唯一無二のギター・プレイの向こうにダイナソーJr.、ピクシーズ、ソニック・ユースらの姿が浮かび上がる。 ▲Neil Young & Crazy Horse とにかく1音聴けば分かる、この人のライヴのもの凄さ。 嵐のように弾き、そよ風のように歌う。クレイジー・ホースの手堅い演奏も忘れがたい | かん高い歌声も意外にしっかり聞こえる。それほど轟音、爆音というわけではないけれど、力業で、しかも時間をたっぷりかけてなぎ倒すような演奏は、有無を言わさない迫力に満ちていた。「ヘイ・ヘイ、マイ・マイ」「ライク・ア・ハリケーン」「ロッキン・イン・ザ・フリー・ワールド」といった名曲の数々を聴けたことももちろん嬉しかったけれど、聴く者を蹂躪するような音の渦に飲みこまれたことが快感だった。 演奏が終わり、一度、ひっこんだのが11時20分過ぎ。そしてアンコールにこたえ、再びステージに現れてからが、また長かった(笑)。そしてラストはニール・ヤングがピアノを弾きながら歌った「今宵その夜」。ドラッグ禍で死んだクレイジー・ホースの元メンバーに捧げられた、この暗く重い曲をラストに持ってくるとは……。 演奏終了時刻深夜0時。正直、燃え尽きました。今年のフジ・ロックはニール・ヤングの一人勝ち。と言うか、ニール・ヤングのためにあったと言っても過言ではない。 見る前は、ニール・ヤングを見られるなんて、きっとこれで最後だろうなぁと思っていたけれど、なんとなく今回のフジ・ロックに味を占めて(?)、これからもちょくちょく来るんじゃないかって思ったりもするんだけれど。 文●山口智男 |