『Have A Nice Day』 V2 Records V2CI-101 2001年6月13日発売 1,260(tax in) 1 Have A Nice Day 2 Surprise 3 Piano For A Stripper(demo) 4 Heart Of Gold(live acoustic version) 5 Have A Nice Day(live acoustic version) 全英No.1アルバム『Just Enough Education To Perform』からのセカンドカットは、本作の中でもキャッチーさでは1、2を争うナンバー。また、収録されている「Heart Of Gold」はニール・ヤング'72年の名曲カヴァーだ。インタビューでも語っているようにヤングはケリーにとって駆け出し時代からの特別な存在。今年のフジロック2日目で同じGREEN STAGEに出演する彼は、ニール本人に会えるのではと、今からかなり楽しみにしているらしい 『Just Enough Education to Perform』 V2 Records V2CL100 2001年3月28日発売 2,520(tax in) 1 Vegas Two Times 2 Lying In The Sun 3 Mr. Writer 4 Step On My Old Size Nines 5 Have A Nice Day 6 Nice To Be Out 7 Watch Them Fly Sundays 8 Everyday I Think Of Money 9 Maybe 10 Caravan Holiday 11 Rooftop 12 Maritim Belle Vue In Kiel (日本盤ボーナストラック) 『Mr.Writer』 V2 Records V2CI-98 2001年3月24日発売 1,260(tax in) 1 Mr. Writer 2 Mr. Writer(Live Acoustic version) 3 Don't Let Me Down(Live Acoustic version) 4 An Audience With Mr. Nice | | 「僕らはできるだけシンプルな形で曲を書いているだけだよ」。Stereophonicsのフロントマンでギタリスト、ソングライターであるKelly Jonesは語る。「それこそが僕たちの本質で、イメージにこだわったり、アイラインやボディピアスみたいなことには興味がまったくないんだ。僕らはありのままの自分たちを表現するだけさ」 そしてStereophonicsの現実の姿とは英国で最もマッシヴなバンドのひとつであり、彼らの'97年のデビュー作『Word Gets Around』のタイトルが予言的なものであれば、おそらく、やがては大西洋のこちら側でも最大のセンセーションを巻き起こすことだろう。 StereophonicsはKelly Jones、ベーシストのRichard Jones(血縁関係はない)、ドラマーのStuart Cableからなり、タブロイドの常連であるブリットポップ仲間(Oasisとか?)の多くがやる見出しにピッタリな奇行や、ハイプを起こすような戦略とは無縁の存在である。地図上の点のようなサウスウェールズの故郷、Cwmamanに留まり(彼らはティーンズ以前から一緒に音楽を演奏している)、飾り気のない正直でエモーショナルな音楽をただただ作って演奏することに専念してきた。その結果、本来ならば絶大な力を持ち、生かすも殺すも意のままという英国音楽プレスのサポートを得ずして大勢の忠実なファンを集め、イギリス庶民の人気者となったのである。 彼らのセカンドアルバム『Performance & Cocktails』は'99年の英国におけるベストセラーのトップ5入りを果たし、最新作の『Just Enough Education To Perform』(クライスラーがクレームをつけるまではJ.E.E.Pというタイトルであった)もこれに続く成功を収めるのは間違いない。鋭い観察眼で魅力的なストーリーを器用に語るKelly JonesのRay Davies的な技術。それと彼のRod Stewart風のハスキーヴォイスとが相まって、ウィットに富んだ単語の1つひとつがよりいっそう意味をもって響く。ほろにがい「Mr. Writer」、哀しげな「Step On My Old Size Nines」、陰鬱な「Every Day I Think Of Money」、一緒に歌える楽しい「Have A Nice Day」など、『J.E.E.P』からの曲は、駆け出しのカヴァーバンドのころのStereophonicsが演奏していたNeil YoungやBob Dylanの名曲のように、時の試練に耐えうる作品になるだけの可能性を秘めている。この3人組のアメリカ進出について話を訊くには、今は絶好のタイミングだといえるだろう。 ――ウェールズのシーンについて教えてください。そもそも“ウェールズのシーン”と言えるようなものはあるのでしょうか? Catatonia、Manic Street Preachers、Super Furry Animalsといったウェールズ出身のバンドはかなり注目を集めており、シーンは形成されているように見えるのですが。 KELLY: 多くのバンドが登場し始めたのはちょっとした偶然だよ。“シーン”なんてものを作ろうとするのはメディアの連中なんだ。ウェールズについて最初に言えるのは、ひとつの町ではなくて、国全体を指すということだ。だからすべてのバンドにそれぞれの個性があって、サウンドは似ていない。マンチェスター出身の連中は同じようなルックスやファッションで、サウンドも似ているからひとつのルーツから派生したように見えるけど、ウェールズのバンドはもっとバラバラ感じなんだ。でもウェールズがどこにあるのかを知ってもらえるだけでも素晴らしいことさ。イングランドの一部じゃないってことをね! 自身のアイデンティティを持っているのは良いことだよ。そういうものの一部になれるのはハッピーだと思っている。だって、ウェールズがずっと前からいちばん大事にしてきたことだからね。ウェールズの人たちには叫びたいくらいの主張があるんだよ。 ――あなた方はみんなウェールズの小さな町、Cwmamanの出身で、今もそこで暮らしているそうですね。町では“地元の誇り”みたいな感じですか? KELLY: そうだね、町中が本当にサポートしてくれてるよ。僕らの成功のせいで地図に名前が載るようになったし、地元のフットボールチームがワールドカップで優勝するのを期待するみたいに応援してくれているんだ。何をやっても支持してくれるからうれしいよ。 ――ウェールズのカーディフにあるお城で大きなコンサートを開きましたね。大変な大仕事だったと思うのですが、どうでしたか? KELLY: 確かにカーディフ城で1万人を集めて演奏したよ。そこでショウが行なわれるのは'70年代以来のことなんだ。最後にやったのはQueenだったかな、とにかく、その類いのバンドさ。素晴らしいコンサートだったね。ウェールズで大きなショウをやれて良かったよ。だってウェールズまできてくれるバンドはあんまり多くないからさ。実際にいい会場もなくってね。だから、ウェールズに住んでいる人たちのために何かできたことに満足しているよ。 ――あなた方が参加していたというウェールズのパブ巡業バンド、Tragic Love Companyについて教えてください。 KELLY: Tragic Love Companyはおよそ5年くらい演奏していたバンドで、基本的には今の僕たちと同じグループだよ。バーみたいなところでカヴァーを演奏して、有名なカヴァー2曲の間に自分たちの作品をすべり込ませてたんだ。バンド名はTragically Hip、Mother Love Bone、Bad Companyの3つから拝借したんだけど、僕たち3人がそれぞれのグループの役割を担当していたんだよ。最初はパブサーキットの規模だったんだけど、最後には雪だるまのように膨れ上がってしまって、存在が知られるようになったんで名前を変えることに決めたのさ。つまり、何てくだらない名前なんだと気付くくらいには、僕らも成長したということだろうね。 ――例えばどんなアーティストをカヴァーしていたのですか? KELLY: Neil Young、Bob Dylan、The Black Crowes、AC/DC、Lynyrd Skynyrdなんてところだね。僕らの町にはこうしたレパートリーを好むヒッピーがいっぱいいるから。つまりとにかくハイになって、踊ったりしてエンジョイしたいっていう連中だよ。 ――お父さんもウェールズのクラブで演奏されていたそうですね? KELLY: そう、親父はクラブシンガーだった。確か僕と同じくらいの歳にはPolydorとしばらく契約していたはずだよ。本名はArwin Jonesというんだけど、当時はJack JonesだのTom Jonesだのがいたせいか、Davidsonに名字を変えさせられたんだ。Polydorでシングルも出したし、Holliesと同じマネジメント会社に所属していたよ。Holliesは売れたけど、親父はダメだった。よくある話だけどね。でも、それからもずっとクラブサーキットで活動を続け、クラブではいつでも最高のタレントのひとりだった。子供のころに親父のギグに付いていって学んだことは多いよ。スピーカーを運べば5ポンドくれたものだよ。 ――自分の息子が音楽ビジネスで成功したことを誇りに思われているでしょうね? KELLY: 家族みんなが誇りに思ってくれてるよ。親父は最初は半信半疑で見ていたし、業界全体のうさん臭さにもとっても警戒していたね。でも、みんな僕らがハードワークで達成した成功を認めてくれて、今では本当にサポートしてくれているんだ。 ――あなた方のとてもストーリー指向の歌詞は、小さな町での生活にインスパイアされたものに思えるのですが、実際の人物や出来事をベースにしたものなんですか? KELLY: 僕らが育ったところで学んだのは、パブや交通機関での人々の会話、つまり、みんなの話し方なんだ。誰もが皮肉を多用して、実際の意味とは反対の言い方をするのさ。それから小さな町での噂の広まり方だね。こっちの端から反対側に伝わるまでに針小棒大に誇張されていく。小さな町の住民は自分自身の話はめったにしない。いつでも他の人の話をしているほうがずっと楽しいんだ。僕が知っているのはそれだけで、すべて歌として書いてしまったよ。 新しい曲には今も観察っぽい部分があるけど、スモールタウン型のストーリーというよりは、もっと連想が広がったものになっている。今は最初のレコードの曲が作られたころみたいには町にいないしね。だから出かけた先で違って人たちに会って、違ったシナリオを見ることになるんだ。最近じゃ1日に百万人もの違った人たち、それも2度と会うことのないだろう人たちと出会っている。考えてみれば充分に奇妙な状況なんだろうけど、自分ではよくわからないよ。バスでツアーに出ていると、ものを考える時間はいつでも充分にあるから、すべてのことを分析して、それを歌として書いているだけなんだ。 ――他の面では成功によってバンドが変化したところはありますか? KELLY: あんまり変わってないと思うよ。多少は世間慣れしたし、ものごとに対して少し頑固になった面はあるけど、3人のお互いに対する態度という点では以前と変わらない親密さだね。クルーの連中も工場やなんかで一緒に働いたことのある親しい友人たちだから、10人の友達でバスに乗って世界中を旅して回っているようなものさ。これは良いやり方だよ。部外者はいないし、エゴもないしね。僕たちは地に足を付けてやっていこうとしているけど、まわりにいる人たちがそれを助けてくれてるんだ。 ――あなたの歌に感じられる叙述的でストーリーテリングなヴァイブに話を戻しますが……、以前は脚本家志望だったそうですね。そのバックグラウンドが詞の書き方に何か影響を与えていますか? KELLY: 確かに僕の歌の一部は脚本に変えられるし、歌になりそうな脚本だってあるから、同じような種類の作品なんだろうね。どの脚本も歌も、とてもキャラクターベースでドラマタイプの内容だよ。Robert Altman監督のような作品が好きなんだ、彼はキャラクターに凝ってるだろう。だから、詞と脚本の間で互いにボールを打ち返しあっているようなものさ。僕がまだカレッジにいたバンドの初期は、一部の曲は脚本そのものだったし、確かにそういう形では役立っているね。 ――あなたのソングライティングに影響を与えたRay DaviesとPaul Wellerの2人が、あなたの音楽を気に入っていると言ってくれたそうですね。あなたがやっていることが正しかったと証明されたと思うのですが? KELLY: 自分が尊敬している人に作品を気に入ってもらえるのは素晴らしいことだよ。人に気に入ってもらうことを期待して書くわけじゃなくて、自分のために曲を作っているんだから、誰か他の人が好きになってくれるだけでボーナスみたいなものさ。だから自分がリスペクトしてきた人物に褒められるなんて最高だよ。おそらく手に入れることのできる最良のご褒美だろうね。自分をインスパイアしてくれた誰かに作品を気に入ってもらえるというのは、チャートの順位や雑誌の好意的なレヴューよりも大きいよ。 ――良いレヴューといえば、あなたの曲作りの背景からして英国のジャーナリストの多くがすぐにあなた方の音楽を取り上げなかったのは不思議ですね。英国の音楽プレスは当初あなた方にかなり冷たかったと思うのですが。 KELLY: 最初は僕らのことをどう扱っていいかわからなかったんだろう。NMEはその時の流行や、その時点で最高の新しいバンドのことばかりだからね。僕らはそういうものに当てはまらなかったのさ。NMEってとっても奇妙な雑誌だよ。まるで音楽界のDaily MirrorかSunといったところだね。実際は何かについて書いているわけではないんだ。書かれている対象と想定されているものよりも、むしろ自身のジャーナリストについて書いているようなもんだよ! ラッキーなことに僕たちはツアーによってファンを獲得したから、“ロックジャーナリスト”が叩き始めても、すでに最初から僕らのショウを見に来てくれているファンのベースが出来ていたんだ。だからプレスの誰かがサポートしてくれなくてもギグはソールドアウトだし、レコードはチャートインしていたよ。 それで一般投票で選ばれるBrit Awardでベストニューカマーを獲得したら、プレスは突如として音楽とはソングライティングのことであり、アイラインを引いたり髪をおっ立てることではないと気付いたのさ。ようやく連中も追いついてきたということだね。 僕らがプレス抜きでたくさんのことを達成したというのは愉快なことだよ。だって英国のバンドの大半は何でもプレスを利用してやるけど、僕らはそうしなかったからね。まったく別の方法でやってのけたんだ。雑誌の表紙だって必要に迫られるまで出なかった。中にはすぐに表紙に載るバンドもいるけど、実際にライヴを見てみたらたいしたことなかった連中もいるだろう。苦労してやってきた甲斐があったよ。ときには苛立たしいこともあったけど、振り返ってみると自分たちのやり方を通してうまくいったと思うね。 ――それであなた方は英国の音楽シーンで特別な存在になれたのでしょうね。 KELLY: そうだね、英国のバンドの多くはレコード会社と契約すればすぐにロックスターだと自動的に考えているようだ。ステージに立つだけで自分たちが世界一かっこいいと考えて、実際にチケットを買ってショウにやってきた人たちを楽しませることを忘れているような連中がいっぱいいるよ。僕らはそんな態度をとったことはないね。自分たちが育ってきた道を歩んできただけさ。 ――米国で大ブレークを果たす英国バンドがそれほど多くないのは、アメリカのほうがメディア指向が弱いことも一因だと思いますか? KELLY: 英国のバンドの多くが自己満足で終わっているのと、彼らが怠け者だってことが原因だと思うな。連中はツアーをしたがらないし、母国で成功しているかぎり新たな領域を開拓しようとは思わないのさ。成功したいと考える英国のバンドの多くはロンドンのクラブに出演できるし、それだけで充分なんだ。ミュージシャンになりたいか有名人になりたいかのどちらかだろうけど、中にはミュージシャンになりたいという以前に有名人になりたい連中もいるんだよ。有名人の生活は悪くないし、パーティに出かけて楽しむのもいいけど、そこから抜け出せなかったら、くだらない愚か者に成り下がってしまう。まず第一にミュージシャンであるべきだと思うよ。 セレブの暮らしもほどほどなら素晴らしいけど、ロックスターでいながら2年間のオフを取ってクラブや何かに通うという生活は不可能だ。もしやるとしても、その間に同時に曲作りができないといけないよね。Oasisはそれをうまくやっている。その点に関しては称賛すべきバンドのひとつだろう。 だって彼らは、どんなにくだらないことからでもストーリーを引きだせるからね。それでバックに鳴らす音楽があれば、一丁上がりというわけさ。彼らも長い道のりを歩んできたんだよな。最初の2枚のアルバムでメディアの関心を一気に引きつけて、それから優れたアルバムを2枚作った。その後はちょっと落ち着いてしまったね。でも優れた作品さえ作れれば戻ってくるだろう。それができればの話だけど。 ――英国ではあなた方は最もビッグなバンドのひとつですが、米国ではまだまだ無名の存在です。こちらに来て誰もあなたを知らないことや、1万人の会場ではなくてクラブで演奏しなければならないことに苛立ちますか。それとも顔を知られていないのは新鮮ですか? KELLY: その両方だね。知られていると、バーに出かければみんなに見つめられて、“ちぇっ、何てこったい”と思ってしまう。でもバーに行って誰にも見つめられなかったら、“どうして誰も気付かないんだ?”と考えてしまうんだ。でも下積みの前座バンドとして、自分たちが知られていない土地を開拓していくのは楽しいよ。だって僕らはそうやって他のバンドを蹴落としていくのが好きだったからね。働き甲斐があるっていうもんだよ。だけどフェスティバルで演奏しようが200人のクラブだろうが、会場がソールドアウトになっているかぎりはいい気分さ。 ――英国のバンドがアメリカでブレークするのは極めて難しい時代になっていますが、Stereophonicsにチャンスはあると思いますか? KELLY: そうだね、『Performance & Cocktails』が出たときには、常にみんながアメリカで成功するだろうと言ってくれた。僕らは英国のアーティストと同じくらい(それ以上とは言わないまでも)アメリカのアーティストに影響を受けているからってね。でも、作品をプッシュしてくれる適切なスタッフがいなければ、ブレイクなんて望むべくもないよ。それにラジオでBlack CrowesのようなバンドがはじかれてBlink 182みたいなのがかかっている状況では、音楽ビジネスで何か非常に間違ったことが起きていると思わざるを得ないね! だから僕たちのスタッフの責任なのか、アメリカで起こっている状況に問題があるのかはわからないよ。正直なところ、これまでの2枚のアルバムが無駄に終わったことにはがっかりしてるさ。だって米国で売れてもいいくらい出来の良い作品だったと思うからね。でも、とにかくやり続けるしかないんだよ。 By Lyndsey Parker/LAUNCH.com | |