【音楽と映画の密接な関係】featuring 梅林茂「優秀な作曲家」≠「優秀な映画音楽家」

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「優秀な作曲家」≠「優秀な映画音楽家」

映画音楽…一言でそういえども、映像にとって音楽が果たす役割は計り知れないことは、賢明な諸氏なら重々承知のことだろう。
しかしながら、映像と常にシンクロして進む音楽というのは、音楽単体で存在する作品とは、明らかに異とするポイントがある。
音楽作り、作曲…いわゆるミュージシャン/アーティストが生み出す音楽と、映画音楽作曲家による音楽とは、本質的な違いがあるようだ。

梅林茂…日本はもとより、広くアジアの映画に於いても映画音楽の作家として活躍するミュージシャンである。
そんな彼が語る、映画音楽とは、いかなるものであろうか。

『インディ・ジョーンズ』なんて、音楽消して観たらハリソン・フォードは眠い!?

映画「花様年華」より

「Yumeji's Theme-夢二のテーマ-」

ポリスター PSCR-5941
¥1,000(tax in)

1Yumeji's Theme-夢二のテーマ-
2Je Suis Une Fleure-一輪の花-
3Yumeji's Theme-夢二のテーマ-(Harmonica Versiojn)

▲映画「花様年華」で流れる「夢二のテーマ」は、
梅林氏が手がけた音楽のひとつ。彼自身の持論により、“シングルカット”されている。


梅林茂作品集

『MUSIC FOR FILMS & OTHERS』

ポリスター PSCR-5942~3
CD2枚組 ¥3,000(tax in)
DISC1 トラック1~21
DISC2 トラック22~42

1「それから」メイン・テーマ-映画「それから」より
2Prologue-映画「それから」より
3模様-映画「それから」より
4Epilogue 1~告白-映画「それから」より
5情景-映画「それから」より
6Yumeji-Main Theme-映画「夢二」より
7On the Lake-映画「夢二」より
8Tomoyo-映画「夢二」より
9Yumeji's Theme-夢二のテーマ--映画「夢二」より
10陽明門-通産省制作支援事業「日光東照宮 美の構造」より
11Theme for Zampona-映画「南京の基督」より
12The Christ of Nanjing-Ending Title-映画「南京の基督」未発表テイクより
13Hide&Seek-Dance Version--映画「南京の基督」より
14Homepage-ラジオドラマ「ホームページ」より
15La noche de Castilla-カステーリィアの夜--ラジオドラマ「消えたドロテア」より
16Opening Title-FUYAJO-映画「不夜城」より
17Lure-映画「不夜城」より
18Nights on Nathan Road-映画「香港パラダイス」より
19Theme for FUCHUNG-映画「不夜城」より
20Vojando Solo-映画「BOXER JOE」未発表テイクより
21The Same Old Feeling-映画「ベル*エポック」より
22赤いショール-テレビドキュメンタリー「中国女人国」より
23いちご同盟-映画「いちご同盟」より
24友よ、静かに瞑れ-映画「友よ、静かに瞑れ」より
25「香港パラダイス」メイン・テーマ-映画「香港パラダイス」より
26「居酒屋ゆうれい」メイン・テーマ-映画「居酒屋ゆうれい」より
27「N45°」のテーマ-映画「J Movie Wars ルーキーバトルN45°」より
28メイン・テーマ~ふたりっ子-テレビドラマ「ふたりっ子」より
29Far out at the Galaxy-映画「病は気から 病院へ行こう2」より
30「紳士同盟」Main Title-映画「紳士同盟」より
31油断大敵-映画「紳士同盟」より
32All Fools Day-映画「紳士同盟」より
33Soul Man/End Title-映画「J Movie Wars よい子と遊ぼう」より
34Jazz Master-映画「トカレフ」未発表テイクより
35Take This Waltz-映画「不夜城」より
36Cry for Shadow-映画「2000 A.D」より
37School Zone-テレビドラマ「この指とまれ」より
38La Gitana~Quena-テレビドラマ「愛の流星」より
39As Time Goes By-映画「友よ、静かに瞑れ」より
40Mother's Life-テレビドキュメンタリー「サハリン大紀行」より
41Strange Piano-映画「トカレフ」より
42Starry Eyed-映画「トカレフ」より


梅林氏からコメントが届きました!


【特集】
音楽と映像の密接な関係
――まずは、梅林さんが映画音楽を手掛けるようになったきっかけを教えてください。

梅林茂:
ぼくはEXというバンドをやっていたんですけど、その時に、亡くなった松田優作さんの『インテリア』というアルバムに参加したことがあったんです。その時に松田さんに気に入ってもらって、そのあとのライヴも一緒にやるようになったんです。それが縁になって、いろいろな映画関係の方とも知り合うようになって、松田さんの推薦で、崔洋一さんが監督したテレビ・ムーヴィーの音楽をやるようになったのが最初です。

――バンドで音楽をやるのと、映像に音楽を付けるのって、作り方の方法論が全然違うじゃないですか。それでも映画音楽をずっと続けてきた、その魅力って、なんですか?

梅林:
個人的には、もの作りがすごく好きなんです。それで、ものを作っていく上で、例えば自然の風景なんかを見て、そこから音楽を感じることもあるんだけど、ぼくはその逆で、その風景に音楽を当てはめてみるとどうなるだろうかとか、そういう発想が強いんですね。作家的な意識が強いんでしょうね。映画音楽家と、ロックの作曲家の大きな違いは、映画音楽はその音楽に取り込む要素がたくさんなきゃいけない。例えばポール・マッカートニーは優秀な作曲家だけど、彼が優秀な映画音楽家になれるかどうかというのは別なんですね。そこがおもしろいんです。

――映画音楽って、すべてのジャンルに精通していないとできないし、音楽的引き出しがたくさんないとできないですよね。

梅林:
たしかにそうですね。ジャズだったり、ロックだったり、エスニックものだったり。だからぼくも、音楽をジャンル分けして聴かないです。個人的な好みは激しいんですけど、なんでも貪欲に聴きますね。でもそれらは、音楽表現の道具にすぎないんですね。大事なのは、その先に作家性があるかどうかなんです。ビートルズの音楽って、いろいろな要素が入っているけど、それを全部含めてビートルズの音楽なんですね。映画音楽もそれと同じで、いろいろな音楽を使って、しかもそれがちゃんと自分の音楽になっていて、さらにその音楽が映画の中でもっと広がるかどうか、なんですね。だから映画音楽の怖いところは、音楽だけで聴いていいものでも、映像と一緒になるとその映像のクオリティを下げちゃう危険性もあるんです。映像と一緒になって初めて100になるようにしないといけない。でもそこにいろいろな可能性があって、おもしろいですね。

――一般の人って、映画を観ていても、その音楽を意識して聴いている人ってあまりいないと思うんですけど、やっぱり音楽って、すごく重要ですよね。

梅林:
素晴らしい映画というのは、実は音楽がなくても観られるんですね。ただそれと同時に、音楽が入ることによって、映像がもっと映えることもあるんです。『インディ・ジョーンズ』なんて、音楽消して観たら、ハリソン・フォードがいかに眠いか、ということがよくわかる(笑)。あれは音楽が無くてはならない映画なんです。昔のウェスタンとか、『バットマン』とかもそうですよね。また、音楽が映像を包み込むことによって、映像がさらに豊かになることもあるんです。素晴らしい映像に、もうひとつ感性の鋭いものをつけることによって、映画の力が倍になる、ということがありますね。

――今回、これまでの作品を『Music for Films & Others』というアルバムにまとめてリリースされましたけど、このアルバムを制作したいきさつは?

梅林:
これまで20年近く映画音楽をやってきて、作品がたくさんたまってきたんですね。その中には、例えばテレビ番組で1回オンエアされただけの作品なんかもあるんです。でもその中にも、自分でも手応えのあった作品があるんですね。だからそういったものを、何かの形で作品にしたいと思っていたんです。そうしたらたまたまレコード会社の方から声をかけていただいて、それで発表することになりました。

――今回のアルバムは、単に曲を並べただけではなくて、ひとつのアルバムとして成立するように編集・構成されていますね。

梅林:
映画音楽作品集といっても、ひとつの音楽作品だし、CDを聴いてくれる人の中には、その映画を観ていない人もいるだろうし、そういう人にとっては、この曲はどの映画で使われましたとかいう情報は、かえって邪魔になる可能性があるんですね。だから今この音楽を、いちばん心地よく聴ける内容にしたいなと考えたんです。だから、評判が良かった映画のメイン・テーマが入っていなかったり、こんな曲あったの、というような曲が入ったりしています(笑)。聴いてくれる人が、自分の空間の中で、自分の想像で楽しんでもらえたら、すごくありがたいですね。

――梅林さんは、“映画音楽こそ、シングル・カットされるべきだ”という持論をお持ちだそうですが。

梅林:
昔の映画音楽って、ポップスと同じようにチャートに入っていたじゃないですか。「モア」にしても、「エデンの東」にしても。そしてその曲を聴くとその映画を思い出すということがありますよね。でも最近は映画のサウンドトラックはいっぱい出ているけど、映画のメイン・テーマとして、単体の曲で聴けるものって、実は少ないんですね。主題歌がそれに置き換わってる。でもそれは営業的な側面もあったりして、映画音楽のシングル的なものではないですよね。でもインストゥルメンタルとして聴けるメイン・テーマが、単体の楽曲として成立していれば、音楽としても残っていくと思うんです。最近の映画音楽って、内側の人間の気持ち良さだけで作っていて、音楽自体が一人歩きするということがないですよね。だからシングル志向に戻していって、インストゥルメンタル1曲だけでも聴ける力があるものにしていかないといけないと思いますね。

――梅林さんが、これからやりたいことって、なんですか?

梅林:
これからも映画音楽はずっとやっていきたいですけど、そろそろ音楽家としてのソロ・アルバムも作りたいですね。バンドで音楽をやって。
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