【音楽と映画の密接な関係 2001 GW Special!】『ザ・メキシカン』

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音楽と映像の密接な関係――。

ケンカした恋人たちは、メキシコとアメリカでバラバラに行動するけど、いつも相手は心の中にいる。
そんな気持ちは近いようで遠くて……。
世界一美しいといわれる銃“メキシカン”は、素敵な伝説とともにみんなの運命を変えていく……。

天下のジュリア・ロバーツ&ブラピの、情けなくってお馬鹿なカップル!


『ザ・メキシカン』
オリジナル・サウンドトラック

「ザ・メキシカン」オリジナル・サウンドトラック

UCCL-1010 2,625(tax in)
2001年4月21日発売






『ザ・メキシカン』
(2001年アメリカ)

2001年4月21日より、全国東宝洋画系劇場にて公開!

●監督/ゴア・ヴァービンスキー
●脚本/J.H.ワイマン
●製作/ローレンス・ベンダー、ジョン・バルデッチ
●出演/ブラッド・ピット、ジュリア・ロバーツ、ジェームズ・ガンドルフィーニ、ほか
●配給/ギャガ・ヒューマックス

上映時間/123分

Special Thanx to www.the-mexican.net
ブラッド・ピットとジュリア・ロバーツ、豪華2大スター夢の初共演! とくればハリウッドが総力挙げての超大作かと思いきや、これがインディーズの匂いプンプンの、何とも大ざっぱでユニークな作品。

なにしろ2人とも全然カッコよくもキレイでもなく、それどころか、とっても情けなくってお馬鹿なカップルなのだ。しかも、冒頭のシーンで派手にケンカ別れしてしまうから、実質2人の共演シーンは全体の1/4ほど。それでもやっぱりこの2人でなくてはと思わせる、この2人ならではのケミストリーを存分に味わうことができる。

ブラッド・ピットが演じるのは、ドジで気弱な運び屋ジェリー。運び屋といっても大したことはない、組織にこき使われる下っ端のチンピラだ。ジュリア・ロバーツ演じる恋人サマンサに、今度こそ足を洗えと言われても、ドジばかり踏んでなかなか組織に借りを返せない。

そんなジェリーに最後の仕事として命じられたのが、メキシコへ行って世界一美しいといわれるアンティークの拳銃“メキシカン”を受け取ってくること。「仕事を受けるか、殺されるか」の二者択一を迫られたジェリーは、やむなくメキシコへ旅立つが、いつまでも組織と手を切れない彼に愛想をつかしたサマンサは、成功を夢見て1人ラスベガスに出発する。


▲ ハリウッドの2大スターが競演! 映画『エリン・ブロコビッチ』で最優秀女優賞を獲得したジュリア・ロバーツとブラッド・ピットが演じる愛の行方も必見。ブラピは37歳には見えないゾ!
この後はさながらロード・ムーヴィー。ヨレヨレのシャツとボサボサの頭で、埃っぽいメキシコの田舎をさまようジェリーと、ミントグリーンのニュービートル(フォルクスワーゲン)を駆ってラスベガスを目指すサマンサが、シリアスありコミカルありの様々な事件に遭遇しつつ、再会を果たすまでが交互に描かれる。

もともと銃を受け取るだけの簡単な仕事のはずが、ツキに見放され、次々にトラブルに見舞われ、途方に暮れるダメ男ジェリー。ポンコツのレンタカーや、歯を剥き出しにしてうなる犬、まるで言うことを聞かないロバ、英語の通じない村人たちなど、本筋には関係ないところで、彼を困らせる細かい仕掛けの1つ1つが楽しい。

クールなタフガイ好みのアメリカ女性の間では、この映画のブラピはイマイチ受けがよくないらしいが、そもそも“濡れた子犬”系(笑)の、母性本能をくすぐるタイプとして人気がある日本では、こんなブラピこそ◎。どんなに情けなくても汚くても、はにかんだ笑みと無垢な瞳に、「カ、ワ、イ、イ!」が連発されること請けあいだ。

もちろん、先ごろ晴れてオスカー女優となったジュリアも魅力全開。マシンガンのように早口でまくし立て、化粧っけのない顔をクシャクシャにして泣き、あの大きな口を目いっぱい開けて屈託なく笑う。美人でも何でもないのに、誰もが思わず惹きつけられる活き活きとした表情と自然体の演技。チープで個性的なファッションも含め、やはり女の子たちの話題を呼びそうだ。


▲ 伝説の銃“メキシカン”を運ぶだけなのに、度重なる事件とドジに、ハマっていくジェリー(ブラッド・ピット)。登場人物すべてが憎めないヤツばかりだ。
さらに、この映画でなくてはならない存在といえるが、TVドラマ『ソプラノズ』でエミー賞やゴールデングローブ賞などを総なめしたジェイムズ・ガンドルフィーニ。サマンサを人質に取る殺し屋という設定だが、そんな表の顔の下にシャイでセンシティヴな内面をあわせ持ち、彼女に本物の愛を気づかせようとする。人間味あふれる重要で興味深い役柄なだけに、その結末には納得できないものもあったりするのだが…。

監督は『マウス・ハント』のゴア・ヴァービンスキー、というより少し前のバドワイザーのあのカエルのCM(「バド・ワイ・ザー」と鳴くユーモラスなやつ)を手掛けた人といった方がわかりやすいか。そのコミカルなエッセンスが今作にもあちこちにじみ出ていて、シリアスな状況にもかかわらず思わず笑ってしまうシーンも多い。

ただ、そうした細部の面白さはともかく、作品全体の流れとしては今ひとつテンポが悪く、2時間強はやや長すぎる気も。とにかく俳優陣の魅力で押し切ってしまったという感は否めない。(が、何はともあれブラピを見てるだけで幸せならいいじゃん!ってか?)

なおブラッドとジュリアは現在製作中の『Ocean's Eleven』で再び共演。『エリン・ブロコヴィッチ』でジュリアをオスカー女優に仕立て、『トラフィック』で自らもアカデミー監督賞を獲得したスティーヴン・ソダーバーグの新作とあって、こちらも完成が楽しみだ。

文●原 令美/e-fields

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