メジャー・レーベル、アンダーグラウンド・サウンド

ポスト
LAUNCH JAPAN: Discover Music - Read

メジャー・レーベル、アンダーグラウンド・サウンド

 

 

たった1年でなんという違いだろう。

Jurassic 5は2000年のthe Word Of Mouth tourに参加して、ヒップホップ本流の“俺にマイクを回せ”式ライヴを全国で披露している。その点は'99年と同じ、そして共通点はそれだけである。

たとえば'99年には、彼らは正式な契約を結んでなかったため、自費でツアーに参加していた。「15人乗りのバスに18人乗ってたよ」とMarc 7は言う。しかし、今回J5がツアーで訪れる先々では、メジャーレーベルInterscopeからのデビュー作がすでに話題になっているのである。『Quality Control』は、温かくてソウルのあるトラック、そして4人のMCによる自由で深い歌詞が高い評価を受けている。熱しやすいタイプの人々は、東海岸の連中が中心になっている最近の流行から“ヒップホップを救える”のはJ5だ、とさえ言っている。要するに今年のツアーでは、メンバーは顔にだれかの足が乗ってくる心配もなく安眠しているのである。

今回はバス2台だ。専属スタッフもツアーマネージャーもいる。ずいぶん領地が広がったもんだ」と、ツアー先のヴァーモント州でMarc 7は笑った。「去年のツアーは、このための我慢だったんだ。次のツアーはもっとよくなる。神様はそのつもりらしい

トップに立つのは、まだ大変かもしれない。このツアーには、彼らと同じく西海岸出身で、思想的な深みがあり、メジャーレーベルの後ろ盾があるDilated Peoplesが出演していて、チケットはソールドアウトが連続している。しかし、J5のメンバーは試練に慣れている。今年も1つ克服したばかりだ。The Warped Tourが終わりに近づいた8月、バスが事故に遭ってChali 2NAの頭蓋骨にヒビが入ったのだが、現在は全員健康である。

それにMarc 7の場合、個人的な試練もあった。東海岸で彼を生んだ母は、事情があって子供の面倒を見られなくなった。そこで彼は、ハーレムからブロンクス、ニュージャージーを転々としながら2人の祖母に育てられた。「どっちの家でも可愛がられた」ものの、ティーンエージャーになった頃には、彼の言葉によると「全然勉強しない頭の悪いやんちゃ者」になっていた。そこで彼は西海岸の父のもとへ送られた。「この父親っていうのが乱暴だったんだ。しょうがないから、マジメになったよ

彼が更正する手立てになったのが、ヒップホップだった。彼はChali 2NA、DJ Cut Chemistとともにthe Unity Committeeというグループを結成した。彼らは、ロサンジェルスにある“グッドライフ”というフリースタイル・クラブによく出演していた。そこで彼らは、Rebels Of Rhythmという対バンにいたMC AkilとMC Zaakirに出会う。その後、Cut ChemistがRebels Of Rhythmとレコーディングを行なったとき、「Cut Chemistが、この曲に俺のところのメンバーをかぶせたらどうか」提案した、とMarc 7は当時を振り返る。こうして完成したのが、J5最初のシングル“Unified Revolution”だった。'97年に自主制作したこのEPは海外で火がついた。するとまもなくInterscopeから電話があったという。J5はその後DJ Nu-Markを加えて今日に至っている。

ファンはハイレべルにも存在した。Fiona AppleRage Against The Machineは、それぞれツアーの前座にJ5を起用した。しかし、自分たちのファンでない観客の前でライヴを続けるうち、彼らは1つの疑問にとらわれた。自分たちは、No Limit社のCDやJay-ZのCDを買うようなマーケットでやっていけるのだろうか、と。ヒップホップ界で派手なセールスを追求する潮流に対抗しながら活動していくことに関して、Marc 7はある哲学を持っている。「そもそも音楽っていうのは、ぐるぐる回るものなんだ。KRS-1みたいな難しいラップを聞いてたら、そのうちN.W.A.が聞きたくなるんだ。1つのことばっかりだと飽きちゃうからね。だから、だれにでも順番が来るんだよ」

そして“Contact”のような自信作が生まれた今、J5は自分たちのハイプに見合ってセールス面でも飛躍するだろうと、Marc 7は考えている。「俺たちに足りないのは、チャンスだけなんだ。みんなの前に出してくれりゃいいんだよ。俺たちをDef Jam tourに出してみろよ。いいかい、みんなの前に連れてってくれ、そしたら後の仕事は完璧にやってみせる」と彼は明言する。「俺たちにはまだ、そこまでのチャンスが来てないんだ。でも、もうすぐ来そうだよ。そしたら、ほかにだれが出演してようが、俺たちが光ってみせる」

 

この記事をポスト

この記事の関連情報