MAD3のEDDIE、GUTAR WOLFのTORUらによるパンク史の名曲のカヴァー集!
MAD3のEDDIE(Vo&G)がHONG KONG KNIFEのJOE(G&Vo)に話を持ちかけ、 ドラムはGUITAR WOLFのTORU(Dr)しかいないと始まったKING ROCKER。 昨'99年10月に発売された『REAL KOOL KATS』は ロックンロール(以下R&R)創世記の名曲をカヴァーし、各方面に注目を与えた。 そして今年2000年、公約通りの第2期70'sパンクを始めるにあたって、 新たにRETRO GRESSIONのKUBO(G)がベーシストとして参加。 11月2日に発売されたKING ROCKERの 2ndアルバム『WHO KILLED LEGEND』に収められた12曲は R&Rの奇跡、パンク史上かかせない名曲揃いとなっている。 これは、TORUが語るところの「全部正解。俺等が感じたパンクなんでね」。 いみじくも21世紀直前、デジタル化が進むこの時代に、EDDIEは 「R&Rは不滅です。人間が演ってるものなんでね」と語った。 そう、このアルバムで刮目せよ! そして感じてくれ! (※JOEは都合により取材には欠席) |
KING ROCKER 2nd ALBUM 『WHO KILLED THE LEGEND』 2000.11.2発売 LFCS-1031 2,200(tax in) | ――11月2日に2枚目がリリースされました。今回はいよいよ第2期としてのコンセプト、"'70sパンク"ということですが。 EDDIE:ルーツを紹介しようと思ってね、ティーンエイジャーのキッズ達にね。今、パンクという言葉は溢れているけど、パンクが生まれたころの'70s パンクを、という感じですね。 ――ルーツという言葉は最近よく耳にしますが。 EDDIE:ルーツを吸収して一度壊して組み立てるみたいな、それはロックの歴史をみても皆やってきたものではあるんだけど、今一度ね。もう20世紀も終わっちゃうんで21世紀はよりガツンとカッコいいものを作って欲しかったんで、そういう期待も入れてね。 ――それは、今世紀中に間に合わせたかったということですか。 EDDIE:そうですね、まあ、偶然と言いますか。この時期出せて良かったかな。 ――流れを見ていると、偶然というより必然とも思えませんか? EDDIE:うん、自分の中では必然。ただメンバーのことやタイミングを考えるとやっぱり、これもR&Rの奇跡だよね。あんまり計算はしていないんで、自然にやっているんでね。 ――なるほど。では、KUBOさんの参加のきっかけを聞かせて下さい。 KUBO:僕のバックグラウンドにはパンクはあるんですが、普段やってるのはロカビリーで、ベースは初めてだったんです(バンドRETRO GRESSIONではギター担当)。以前からKING ROCKER好きっていうのはあったんですけど、前回のライヴの時にフロントアクトをやらせてもらって、そこで話が出ました。ぜひ演りたいなって思ったし、ルーツはもちろんなんですけど、演ることは初めてなんで刺激的だったし、プラスになりました。 EDDIE:そうは言ってくれてるけど、普段ギャロッピン・ギター(筆者註:ロカビリースタイルのギターの演奏法)弾いている奴にベース弾かせるのは酷だなって思ったんだけど…。でも、本人も演りながら言ってたんだけど、そういうパンクのコード進行、仕組みっていうものを改めて知ることが出来たと。それは彼のバンドにも活かすことが出来るだろうし、結果的に良かったなってのはありますね。 KUBO:ある方面では事件だったよ。俺がベースを弾くなんて。 ――では、今回4人編成という発想はどこから出たのでしょうか。 EDDIE:Johnny ThundersのThe Heartbreakerのように、JOEと俺でツインヴォーカルも取り、ツインリード(ギター)も弾くというのがやりたかった。2人のフロントマンがいるというスタイル。それを俺はより完成されたR&Rスタイルだなって思って。 ――R&Rとパンクとの違いについては、どう考えてるのでしょうか。 EDDIE:厳密にいえば違うところはありますよ。パンクは'70年代のR&Rルネッサンスって言うか、原点回帰だったんですよ。R&Rが'50年代に生まれて、プログレとかアートな方向に流れていったときにパンクが現われて、キッズ達の手に帰ったというか、そういう現象があった。パンクの中にもいろんな音楽性はありますよ、当時、パンクって呼び方されたけど、確実にR&Rの一部なんだよ。だから俺的にはあまり分けたくないかな。よりR&Rが強調されたって言うか、あのムーブメントが起こらなければ間違った方向に行っていたよ。 KUBO:俺たちもバンドやってなかったかもしれないな。 EDDIE:最近のロックの歴史を見るときに、遡るという聴き方をしなくなっちゃった。そのきっかけになれば良いなとは思いましたね。 ――TORUさんはその点をどう思っていますか。 TORU:俺は演奏とか歴史とかの前に、30歳になってこのKUBO君っていうカッコいい奴に会えたことのほうが大事件です。全然畑も違うところにいるんだけど、リスペクト出来るし。そこから人間的に広がっていくわけで、そっちの方が大きいんだ。 EDDIE:俺たちの人生なんては狙って生きてるわけじゃないんですから。自然に…、うーん、俺たちねえ、何が宝かなっていったら友達なんですね。音楽やってなかったらこの歳になって新たな出会いってないし。でもいくつになっても友達って出来るし。例えば普通に働いてたら同郷の奴とか、同じ学校の仲間で繋がってたりするでしょ。俺たちはR&Rというより自由なところで繋がってるでしょ。深い友情もあるし、それは一生の付き合いになるしね。 ――ライヴの話もお聞きしたいのですが、前回は年頭に演ったきりとのことですけど、今回は? EDDIE:来年演ろうと思ってます。…演りたい。でもスケジュールが大変なんですよ。 ――レパートリーも広げるんでしょうね。 EDDIE:これに入れたくても入れられない曲もありましたし。でもみんなのやりたい曲やったら5枚組ぐらいになっちゃうからね(笑)。 ――そんな中で今作のアルバムの選曲基準はどこにあったんでしょうか。 EDDIE:素直に、ガキの頃聴いて刺激を受けたものですよ。自分の中のルーツでもあるので。選曲はほとんど俺とJOEです。実はあんまりTHE CLASHはやったことなかったんですよ。今回KUBO君が入ってやってみようかって。で、THE CLASHの素晴らしさが分かったという新たな発見もあったし。でも結構基本ですね。パンク好きなら王道中の王道です。あえて王道をやったというのはキッズに紹介するためにどうしてもね。 ――ジョニー・サンダースが3曲入っていますね、これは…。 EDDIE:特に俺とJOEが一番尊敬する人物だから。それにこういう機会でもないともう演らないだろうと。でも昔散々やって改めてもう一回演ってみて、素晴らしさは再認識出来たね。それに昔UKパンクを聴いててもジョニー・サンダースがいたから皆ルーツに帰れた。狭いパンクの中で大きなR&Rを持ってる人だからという尊敬に値する人だからね。 ――僕の予想として、CDの演奏はもうちょっと荒々しいものになると思っていたんです。 EDDIE:俺たちはジュークボックス・バンドだからね。曲の良さ、素晴らしさを大事にした。もっと勢いは出せたんだけど、忠実っていうか、かっちりプレイしましたね。もちろんこれを聴いて原曲を聴いて欲しいってのはあります。だからそれぞれのバンドでカヴァーすれば違うものになるんだろうけど、ルーツを紹介するとなると自然にこういう音になって、それはそれで気に入って満足しているんだけどね。 ――それは、このバンドの使命ともとれますよね。 EDDIE:それは俺の思想でこじつけかもしれない。俺はいつもそんなこと考えているんでね。この4人は素直にR&Rのプレイを楽しんだだけですよ。楽しく良いロックンロールをプレイしただけっていう。 ――さて、今後も続くであろうアイデアにも興味あるんですけど。 EDDIE:実はKING ROCKERは来年ライヴを演って終わりです。やるべきことはやっちゃったんで。もしやるとしたら、次はスウィンギン・ロンドンって言うか、いわゆる60'sのブリティッシュ・インベンションに行くんだけど、メンバーにモッズ・ファッションさせるわけにいかないなっていうか(笑)。ティーンエイジャーに対して基本的なR&Rはやってしまったんでね。これからは皆、自分のバンドを頑張って欲しいから、次はソロでやろうと思ってる。もうキッズのことを考えるという発想じゃなくて、俺のルーツ…、パブロック、ブルースなんかを演ろうかなと。 ――そうですね。それをバンドでやると主旨もぼやけてくるでしょうし。 EDDIE:長くやれば惰性になるから、一番いい時期に辞めようって作りながら思ってました。それに俺が言ってることだってそれぞれのバンドで演ってるわけだし。 ――またこの4人が演ることもあるでしょうし。 EDDIE:それはありえますからね。 取材・文●中島儀幸 |