ダンスミュージックを完全ロック化した男達

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 '96年夏、イギリス中のスピーカーというスピーカーから鳴り響いていたのは、Apollo Four Fortyの「Ain't Talkin' 'Bout Dub」であった。 Van Halenの「Ain't Talkin 'Bout Love」を大幅にサンプリングしたこの曲が、決定的な大ヒットをもたらしたおかげで、彼らの2ndアルバム『Electro Glide In Blue』の他の曲も、イギリスのテレビ局、特にSky Sportsという番組から同様の扱いを受け、それが結果的にこのアルバム全体の成功へとつながった。

だが、Apollo Four Forty…Howard Grayと弟のTrevor Gray、それに3人目のメンバーのNoko…が最初に活躍の場を見出したのは、リミックスの世界においてであった。

事実、『Electro Glide In Blue』がイギリスで爆発的人気を博していた頃、Apollo Four FortyはStealth Sonic Orchestraという名前で、Manic Street Preachers の大出世作『Everything Must Go』のリミックスを手がけている最中で、他にも数多くのアーティスト(Puff DaddyEMFU2Deep ForestINXSRozallaなど)が、自分たちの曲に新たな生命を吹き込むべく、この3人組に白羽の矢を立てていたのである。

このグループを結成した当初から、僕らはテクノアルバムを作りたいと思っていた。そして、それを聴いた周囲の反応がものすごく良くて、すぐに他のアーティストからリミックスの依頼が来るようになったんだ。で、まあやってみようかってことになってね
とHoward Grayは語る。

最初の何年かは天にも昇る気分だったよ。Apolloのサウンド、つまり僕らの美的価値観を確立する絶好のチャンスが次々と与えられたわけだからね。でも、ひとしきりリミックスを経験した今は、もう毎週のように他の人の作品を手伝うことに興味がなくなってしまった。もっと自分たち自身のものをやりたいんだ

Liverpool出身の3人がApollo Four Fortyを結成し、自身のレーベル、Stealth Sonic Recordingsから2枚のアルバムをリリースしたのは、10年前のことであった。
その後、3rdアルバム『Millenium Fever』(新しいファンたちの間では、これが“デビュー作”として知られているが)によって、3人は一躍メジャーレーベルへの階段を駆け上るのである。

『Millenium Fever』が“テクノハウスダンス”アルバム、『Electro Glide In Blue』が3人のジャジー/ブルージーな一面を開拓した作品であるとすると、昨年リリースされた最新作 『Gettin' High On Your Own Supply』は、まさしくApollo Four Forty流パーティロックアルバムだと言えるだろう。

最高にキレの良いサンプリングで、最高に印象的な曲を作り上げるというその超人的な才能をフルに活用し、彼らはこのアルバムから「Stop The Rock」「Cold Rock The Mic」という2つの大ヒットシングルを放っている。

生身のミュージシャン(2人のドラマー=1人はデジタル、1人はアコースティック・ドラム)や煽動的なヴォーカリスト(かつてGaye Bikers On Acid やPigfaceに在籍していたMary Mary)、DJ、そしてライヴ録音によるダブミックス(テープやシーケンサー、DATなどを用いていない)を採り入れたApollo Four Fortyのショウは、平均的なデジタルミュージックのコンサートと比べると非常に風変わりである。

こうした編成で長期間ツアーを行なった3人は、その時のラインナップをそのまま『Gettin' High On Your Own Supply』のレコーディングに参加させることを決めた。

前のアルバムは様々なゲストシンガーを起用しながら何もかも3人でやったけど、今回は、本当にバンドとしてのアイデンティティが確立できたと思う。もうずいぶん長いこと、このメンバーでプレイしてきたからね」とHowardは語る。「この作品は、実際ツアーで一緒だった8人で作り上げたものなんだ。それは素晴らしい体験だったし、多分アルバムを聴けば、その時のヴァイブを感じてもらえると思うよ

by Lily Moayeri 

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