“終わりのない青春”を選んだイエローモンキーが、ツアー最終日に示したもの。

ポスト
バンド内に変革を起こさせるべく、
外部プロデューサーとのコラボレイトを続けたイエローモンキー。
“SPRING TOUR”は、そうした挑戦の成果を体現するメンバーと
それを確認するオーディエンスとが
真正面に向き合うツアーとなった。

模索するNEXT。続行する変革。

THE YELLOW MONKEY are
吉井和哉/Vo.G
菊地英昭/G
廣瀬洋一/B
菊地英二/Dr

GUEST MUSICIANS are
三国義貴/Key
黒葛野敦司/Sax
青柳誠/Sax
長谷川真奈/Cho
ROBBIE DANZIE/Cho

 スガ・シカオの楽曲を聴いてピンと来たという吉井和哉が、そのプロデューサー:森俊之と共同プロデュースをおこなったのが、
THE YELLOW MONKEYの最新シングル「SHOCK HEARTS」である。ここ3枚のシングルがいずれも外部プロデューサーとコラボレイトした音源だったので、今回の“SPRING TOUR”は新しい試みがバンドにどれだけ肉体記憶化されたか、あるいはその過程が何処まで進んだのか? を計る重要なツアーになるだろうと思っていた。


 これまでメンバー4人とキーボードの三国義貴でステージをおこなってきたイエローモンキーだが、今回は2人のホーン、そして2人の女性コーラスをプラスしてツアー最終日である横浜アリーナのステージに登場。
オープニング楽曲は「楽園」であった。3曲目にはまだ正式タイトルがついていない新曲を披露。ロック・オーディナリィな部分に若干パンキッシュなテイストが掛け合わせられているところが、今のイエローモンキーの求めるある種の性急さかもしれない。新曲の熱量に引っ張られるように続く「I Love You Baby」と「VERMILION HANDS」は、疾走感を増していく。ステージから張り出したセンター部分で吉井がギターを持って歌った「SECOND CRY」は、イエローモンキーの真骨頂であるオリエンタルかつサイケデリックな楽曲世界が濃厚に根を張って放たれていた。しかし、この世界に飽き足らないのが現在の彼らなのであろう。

「バンドも結成10年を迎えて、以前は“10年なんて楽勝楽勝”と思っていたんだけど、意外に大変なんだって気が付いた」とMCした吉井は、1万2000人のオーディエンスに真正面から向き合っていたのではないか? 吉井がもっともディープな頃に書いた詞を持つ「HEART BREAK」、イントロでパーカッションの音を含んだシーケンスを走らせる「聖なる海とサンシャイン」、前述の「SHOCK HEARTS」、そして“僕らと皆さんのテーマになる曲”と言った「バラ色の日々」と、いわゆるチャレンジシリーズに属する曲を「SPARK」や「ROCK STAR」などに挟み込む形でプレイした中盤から後半は、イエローモンキーの“模索するNEXT”を如実に物語っていたと思う。
 昨年の3月、長いツアーの終わりにリリースしたシングル「SO YOUNG」の時から何となく察知していたことだが、現在のイエローモンキーは、染み出してくる激情とバンド内向上心をまとめ上げていくだけではない新たなフォーミュラ(型)を探しているのだ。

終わりのない青春
それを選んで絶望の波にのまれても
ひたすら泳いでたどりつけば
また何か覚えるだろう

こう歌う「SO YOUNG」の歌詞は、現在の彼らを見事に言い当てている。青春は放って置けば自然消滅するものであるから、終わりのない青春を選んだ段階から絶え間ない試行が必要になってくるのだ。
 アンコールの「SUCK OF LIFE」では“大親友キス”を交わしたロビンとエマ。おそらくは、こうしたバンド共同体アトモスフィアを付帯させながら変革を続行させていくのが彼らの理想だろう。次のライヴと音源はどんなものになるだろうか?


00/05/15●佐伯明


この記事をポスト

この記事の関連情報