【インタビュー】ロイヤル・ハント、「日本のみんなが楽しんでくれて良かった」

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ロイヤル・ハントが7年ぶりとなる来日公演を果たした。前回の2018年以降、コンセプトアルバムである『Dystopia』(2020年)、『Dystopia Part II』(2022年)をリリースしていたが、アルバムリリース時の来日公演は叶わず、今回急遽の嬉しい知らせとなった。



ロイヤル・ハントはメロディックでクラシカルなエッセンスと様式美な流れを持ち、1990年代に大ブレイク、未だ日本でも根強い人気を博している。今回の緊急来日ではセットリストの予測も難しく、またメンバーはキーボードのアンドレ・アンダーセン、ヨナス・ラーセン(G)、アンドレアス・パスマーク(B)に加えて、過去メンバーでもあったシンガーにマーク・ボールズとアラン・ソーレンセン(Dr)を迎えたスペシャルラインナップでのステージとなった。











オープニングSEの「アヴェ・マリア」からスタートした前半は、彼らの代表的なアルバム『Paradox』の再現で少々重たくも荘厳なムードで得意な世界観を見せた。後半には新旧織り交ぜた曲も披露し、バンドの看板シンガーであるDC・クーパーが不在にも関わらず大盛況で幕を閉じた。結局のところ、アンドレ・アンダーセン(Key)の楽曲の素晴らしさがこのバンドの魅力なのだから。そのアンドレが東京、大阪と2公演を終えて、単独インタビューに応えてくれた。



──お元気そうで何よりです。7年ぶりの日本はいかがですか?

アンドレ:パンデミックとか色々あったから、だいぶ時間がかかってしまったけど、やっと戻ってこれて嬉しいよ。

──ライブも素晴らしかったです。5台のキーボードが狭そうでしたけど(笑)。

アンドレ:ありがとう。それは重要なことだよ、あれが入るだけで(笑)。ステージはとても楽しかったよ。

──マーク・ボールズもアランも絶好調でしたが、DC(クーパー/Vo)とアンドレアス(ヨハンソン/ Dr)不在についてお伺いしてもいいですか?

アンドレ:DCは実は去年、右足を骨折したんだ。ギブスをつけてライブをやった事もあったんだけど、その後で血栓が出来てしまって、長時間のフライトについて医者からは薦められないと言われてね。それで今回は来れなかったんだ。で、「代わりは誰だ?」となった際に、マークは元メンバーだしバンドの事を理解しているからね。当然、曲も知ってるし、彼はいつも準備万端で臨んで素晴らしい仕事をしてくれるからね。アンドレアはテレビの仕事が前から決まっていて、その契約が動かせなかった。だからドラムはいつものアランにお願いしたよ、『Paradox』も実際叩いていたメンバーだし。

──今回の来日のタイミングではセットリストの予想ができなかったんですが、『Paradox』再現になったのは、アランも含めての総合的な判断だったのですかね?

アンドレ:そうなんだ。あと日本より先に決まっていたデンマークの<Epic Festival>に出たんだけど、そのフェスの主催者側が『Paradox』の再現を希望していたから、それに向けて準備をしていたんだ。その後に正式に日本公演が決まって、フェスの直後だったし、全く違うセットリストを組む事も難しくて。しかもメンバーが2人も不在だったし、そのままやる事になったんだよ。

──<Epic Festival>では『Paradox』の再現が後半で、日本とは逆でしたよね。

アンドレ:行ってたの?なんで知ってるの?さてはスパイを送り込んだな(笑)? フェスでは『Paradox』の再現は事前に告知されていたから、わざと焦らして前半に違う曲をいくつか演って、期待していたお客さんが「あれ?演んないの?」って少し不安気になってるところに、「これが最後の曲だよ、じゃあね」って言ったら、「嘘だろ?」って会場がどよめいて(笑)。そこから一気に再現を演ったんだよ。

──あなたらしいです(笑)。いつか『Dystopia』の再現は考えていませんか?

アンドレ:うん、これは前からずっと話してはいるんだ。いくつか問題があって、まずはとてもお金がかかる。出演者が多くて色々な役割がある。レコード会社にそれをやる準備があるのかどうかがひとつ。元々、パート1とパート2の全てを演るつもりで作っているんだけど、出演者のスケジュールもだよね。DC、マーク、ヘンリック(ブロックマン)、マッツ・レヴィン…彼らをライブで集める事の難しさだよ。だから実現するかどうかは現時点ではわからないな。









──そのアルバム『Dystopia』についてもお聞かせ下さい。パート1とパート2で、ロイヤル・ハントの集大成的な傑作に思います、ご自身ではいかがですか?

アンドレ:ありがとう。構想はもう何年も前、2005年か2006年頃からあって、レイ・ブラッドベリの小説「華氏451度」を題材にしたものをやりたいとずっと思っていたんだよ。頭にはミュージカルのような壮大なイメージがあったけど、なかなか実現しなくて普通のアルバムを作ったりしていた。ある時、ストックホルムでメンバーに「まだあのアイデアがあるんだけど」と話したら、ベースのアンドレアスが「みんなでまずはこの小説を読んでみようよ」って、彼が全員分の本を買ってみんなに配って、そこから更に話を進めたんだよ。題材的にもロイヤル・ハントにぴったりだしね。それでやっと実現したんだよ。ファンの反響も良かったんだけど、タイミング的に2020年でパンデミックが始まり、曲数も多かったから2枚に分けることにして、とりあえず1枚作ってツアーに出てみて、そこから2枚目を作るつもりだった。それもパンデミックでツアーもできなくて、すぐ2枚目に着手する事になったんだ。

── 映画やミュージカルのサウンドトラックのようでもありますよね。

アンドレ:うん、そうでしょ?作家の友人がいてね。彼は常に自分の書いた本を読みながらそれに合う音楽が欲しいって言っていてね。もちろん彼は「華氏451度」も読んでいたから、このアルバムを聴いて、まさにサウンドトラックだと言っていたよ。小説のプロからもそう言って貰えて嬉しかったよ。

──アートワークもパート1で炎が燃えていて、パート2で鎮火しているのもいいですよね。

アンドレ:これ、実際にレイ・ブラッドベリの小説に使われた表紙なんだよ。どこかの博物館にもあるんじゃないかな?『Dystopia』ってタイトルもこの本の説明に書いてあったからいいなと思ってね。でも俺たちがなかなか実現しなかった間にメガデスがこのタイトルのアルバムを作ってたよね(笑)。先を越されたよ。

──メガデスにありましたね(笑)。そして参加ゲストがそれぞれのキャラクターを演じているということでしょうか?

アンドレ:うん、そうだ。色々な人の事を考えてそうしたんだけど。居ても良さそうな人で唯一居なかったのがジョン・ウエストなんだよね。役を割り振っていたんだけど、そこまでたくさんの役があるわけでもなかったし、残ってた役にジョンが合ったわけでもなくて、無理矢理作って当てはめるのも気が引けたんだよね。彼も忙しそうだったのもあって、まぁいいかと。ヘンリックが参加したのはファンは喜んだみたいだよね。





──『Cast in Stone』ではアナログ機材にこだわったと仰っていましたが、『Dystopia』もそうでしょうか?

アンドレ:結果的にそうなったね。オリジナルのアイディアが最終的なものになるとも限らなくて、各メンバーのプレイや使った機材とかにもよるし、作業工程やマスタリングでも変わるよね。ロイヤル・ハントは、2つのバージョンを作るんだよ。ひとつはデジタル、もうひとつはテープのアナログバージョン。デジタルよりアナログの方が良かった場合はテープからCDにする事もあるから、予測できないんだけど今回はそうなったね。

──メンバーによっても意見は様々ですか?

アンドレ:『Cast in Stone』は、DCは自分の声がダークで嫌だって言うし、ヨナスはギターがヘヴィで良いっていつもこのアルバムを聴いてるんだよ。『Dystopia』は、ヨナスはパート1が好きだし、DCはパート2が好きなんだよね。

──テーマがそうなんですが、遂に「BURN」という曲がロイヤル・ハントにも。

アンドレ:ディープ・パープルへのトリビュートかな?(笑)。パープルの「BURN」はもちろん大好きだから、そんなタイトルの曲を作ってはいけないと思っていたんだけどさ。小説にそこら中にこのワードが出てくるんで、もう逃れられなくて(笑)。この曲をmp3にしてメンバーに送った時、「タイトルは?」と聞かれて「BURNだよ」って言ったら「ウソだろ?」って(笑)。

──ディープ・パープルはまだ新作も出そうですが、近年はベテランバンドのフェアウェルツアーが増えてきました。ロイヤル・ハントはまだまだやれますよね?

アンドレ:車椅子でもやれるかな?(笑)ディープ・パープルのライブは一年前にも観たよ。スティーブ・モーズが大好きだけど、新しいギタリストのサイモン・マクブライドもバンドに馴染んでいて良かった。これまでも何度もパープルを観ているし、大好きなバンドだし、2010年には一緒にツアーもできたよ。その時もすでに彼らは歳を取っていたのに、ステージを走り回っていて凄いなと思った。ロジャー・グローヴァーとも話す機会があって、彼はとても深い事を言っていた。僕らの『Paradox』アルバムがリリースされた頃は、みんながまだCDを買ってくれていた時代で、今はストーミングが主流だよね。そんな中でも、たまたまわりと最近なんだけど『LOUD WIRE』(アメリカのオンラインメディア)に「最も重要なプログレアルバム10選」みたいのがあって。そこにロイヤル・ハントはいたんだけど、やっぱり『Paradox』なんだよ。それ以降もたくさんアルバムをリリースしているのに、いつも『Paradox』になってしまう。パープルもたくさんのアルバムをリリースしてきたけど、みんな『Machine Head』ばかり言うじゃない?ロジャー・グローヴァーは、「僕らはその一枚でもあるからいい」と言っていたんだ。だから今も演れるってね。それを今、なるほどねと思っているよ。

──おそらく『Paradox』も誰かの人生を変えてしまった作品なわけですよね。

アンドレ:『Machine Head』と『Paradox』を比較するのはおこがましいのだけど、ドリーム・シアターの『Images and Words』やクイーンズライクの『Operation: Mindcrime』と並んで自分たちの『Paradox』があったのはとても光栄だし、それだけみんなが評価してくれているってことだよね。今はAIでもそれなりの曲ができてしまうけれど、それだけではない職人的なものを大事にしてやっていきたいよ。

──これからも楽しみにしています。

アンドレ:日本のみんなが楽しんでくれて良かったよ。今後の予定もあって、9月くらいにライブ音源やアコースティック音源を集めたものにいくつかの新曲を加えた企画ものをリリースする予定だよ。来年はニューアルバムを作る予定もあるし、日本でも主要な高層ビルに大きな宣伝の看板が出るはずだよ(笑)。

取材・文◎Sweeet Rock / Aki
写真◎Yuki Kuroyanagi


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