【インタビュー】ACIDMAN、ドラマ『ゴールデンカムイ』を締め括る新曲が呼ぶ奇跡「あの日流した君の涙は、いつか美しい未来へ」

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■メンバーもいまだに宇宙のことは好きでもない(笑)
■でも僕と20年付き合って肌で感じて、それが演奏に


──たしかに、“真っ白に降り積もる雪の中で 真っ直ぐな眼の君に出会ったんだ”という一節は、『ゴールデンカムイ』のストーリーをイメージさせます。その後の2番Aメロ〜Bメロのメロディやアレンジが1番とは異なりますが、コード進行自体は1番と一緒ですよね?

大木:そうです、一緒ですね。

──ACIDMANは曲の構成自体をガラッと変えてくることがありますが、そこをあえてコード進行は変えずに曲はシンプルなまま、メロディとフレーズで変化をもたらしたところがさすがだなと。

大木:このメロディ自体は最初に作ったときからあったもので。自分のアレンジ手法として特に新しいものではないんです。イメージとしてはたゆたうというか、どんどん上昇していくみたいな感じでしたね。コード進行を変えることで作る楽曲世界の変化のさせ方が、時と場合によっては、小手先に見えちゃうときがあるんです。そうではなくて、この曲は特にもっと“自然な流れ”みたいなものを意識していて。

──ギミックや、あえてフックを作るようなものではなく。

大木:僕らアーティストって圧倒的な“自然”に立ち向かっているんです。究極のアーティストって、自然を表現しようとするものだと思うんです。彫刻家もそうだけど、いかに自然に見えるか。いかに意図がなく、無意識で、プリミティヴな。そういうものを描こうとしていると思うんです。言葉にもなるべく嘘がなくて、自然で、川の流れのように、時には激流にもなって…そこに人工物が入り込むと、急に違和感が出てくるんですよね。昔の僕はあえてその人工物で、違和感のある水の流れを楽しんでいたんだけど、やっぱり自然の美しさに圧倒されているから。そういうものを表現として、これからも描いていきたいなとは思っています。


──ストリングスなどの華やかな彩りは効いていますが、バンドのアンサンブル自体は今回はかなりシンプルになっていますね。「sonet」のバンドアンサンブルはどういったところを意識しましたか?

大木:おっしゃるとおり、すごくシンプルにしています。いつもメンバーとアレンジを一緒にするんですけど、今言ったように、ここ数年は変なアレンジはしないようにしてて。心の奥底にギミック的なアレンジへの欲望があるならやるべきなんですけど、“アレンジしなきゃ”っていう発想でやってしまうと、シンプルな、作り立てのものには勝てないということが、経験上明白なので。そこに余計なことをしてしまうと、本来の美しさがただ削られるだけ。エゴになってしまう。それよりももっと、情感豊かに演奏するということのほうが、僕はこの数年は好きなんですよね。

──歌詞の内容もより分かりやすく、ということでしたが、ご自身の中でより整頓されてきたこと、見えてきたことも反映されていますか?

大木:そうですね。もちろん今も勉強中だし探求中であるけれど、自分の世界観みたいなものが、非常に言語化しやすくなっていますね。年を重ねていることもあると思うんですけど、言語化することが昔ほど難しくなくなってきた。感覚的なものを、言葉に落とし込むことがよりスムーズにできるのかな。だから言葉も柔らかく、変化球を出そうとすればいくらでもできるし、その武器はあるんですけどね。でもそこは感じ取ってもらいながら、丁寧に伝えるということを意識的にやっています。

──普遍的な強さを感じます。

大木:最初の頃はギョッとしてもらいたかったり、刺激的なもののほうが興味はあったと思うんですけど、やっぱりもっと分かりやすい作品でありたいっていうのは思っていて。老若男女に受けたいっていう思いはめちゃくちゃ強いので。昔から言ってるんですけど、僕は『星の王子さま』のような作品を作りたいんですよね。シンプルで柔らかなストーリーの裏側に、ちゃんと作者であるサン・デグジュペリの超哲学的な思考があることがわかるような。そういう作品でありたいなというのは、いまだに変わらない目標ですね。


──「sonet」のMVの話も伺いたいのですが、まずあの幻想的な美しいロケーションはどこなんですか?

大木:『ゴールデンカムイ』の撮影現場です。

──北海道ですね。

大木:映画とドラマ第1話と最終話を撮っている久保茂昭監督にMVを撮っていただけたんですけど、「せっかくなら『ゴールデンカムイ』の撮影スポットで撮りましょう」と提案をいただいて。すごく壮大なスケールの作品が撮れたなと思いますね。出演してくれた俳優が北海道在住のyuraさんという方で、何名かの候補から僕が選ばせてもらいました。まだ無名ではありますけど、すごくいい目をしているんです。ダンスも、足場が悪い水の中で裸足で踊ってくれて、引き込まれる魅力がある。このMVを機にyuraさんのこともどんどん知ってほしいなと、期待してます。

──シングル初回限定盤には、2024年8月に開催された<ACIDMAN LIVE TOUR “ゴールデンセットリスト” at LINE CUBE SHIBUYA>から「輝けるもの」、通常盤には同ライブから「銀河の街」「ワンダーランド」のライブ音源が収録されます。実際、会場でライブを観ていて「銀河の街」はショーの中での感動的なシーンでもあったので、蘇るものがありました。このライブ音源はどのような選曲ですか?

大木:当日のライブのクオリティがすごく良かったんですよね。「銀河の街」ってちゃんとライブで表現できたという自負があまりなくて。でも、ずっと自分の中でのテーマ曲っていうくらい好きなんです。俺だけが好きなのかもしれない説がずっとありながら(笑)、でもやっぱりやり続けたいから、たまにやるようにしていたんですね。今回はクオリティも含めて、めちゃくちゃ良いと思っていて。


──これまでとの違いはどこにあるんでしょう。

大木:これ、どうしてかというと、多分メンバーがやっと理解した気がするんです、「銀河の街」って曲を(笑)。リズム隊が変わると曲ってガラッと変わる。生まれ変わるくらい良くなるんですけど、それが今回出てきたんですよね。

──そういう感触を得たとは素晴らしい。

大木:宇宙のことって最初はとっつきにくくて、みんな苦手かもしれないし、そういう人は毛嫌いしちゃうし、メンバーもそうだと思うんです。メンバーもいまだに宇宙のことは好きでもないですから(笑)。

──ははははは!

大木:「僕たちは、はるか数億年前から宇宙を転々として銀河の旅を続けてきたんだ」って言われても、「何言ってんの?」っていう。メンバーもそういう感覚だと思うんですよ。でも僕と20年付き合っていて、“本当にそうかもしれない”っていうことを肌で感じてくれていて。それでやっと演奏に、いい意味での力が込めることができたなと思いましたね。「ワンダーランド」もクオリティが良かったんです。自分で作っておきながら、改めて“いい曲だな”と思っていて。僕は元々、自分自身の曲への評価が低いので。インタビューではもちろん「いい曲だ」って言いますけど、自分で“いや最高だな”って酔いしれるタイプではないから。あまりやらない曲たちがどんどん増えてきちゃうんですよね。


──<ゴールデンセットリスト>のツアーは、歌詞やタイトルに“金”や金にまつわるものが入った曲を中心にしたセットリストでした。どんな感じになるのかと思いきや、結果的にACIDMANの濃い部分が出たようなツアーになりましたね。

大木:これも『ゴールデンカムイ』の主題歌がなければ思いつかなかったライブテーマでもあるので、『ゴールデンカムイ』様様ですね。おかげで改めてやることができた曲も多かったです。

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