【インタビュー】バラエティ豊かなGLAY最新アルバム『Back To The Pops』発売。HISASHIが語る“変わることの楽しみ”

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◾︎TERUには自分が歌うことで“ちゃんとGLAYの楽曲にする”という覚悟と自信がある

──今回のアルバムでの難題は何でしたか?

HISASHI:大体全部かな(笑)。もうね、皆に「whodunit-GLAY × JAY(ENHYPEN) -」のデモ第1弾を聴いてほしいですよ。俺が泣きながらセッションデータを築き上げたことが分かると思う(笑)。でも、TAKUROと俺との中だけの共通言語ってあって。やりたいことがすぐ分かるんですよ。“ああ、分かる分かる! やりたいことはこれだろ?”みたいなね。

──1曲目「Romance Rose」はHISASHIさんにとって分かりやすい曲だったそうですね。ZI:KILLとレベッカのイメージがあったとか。

HISASHI:そう。だから「Romance Rose」で言うとね、必然的にギターが減ったんですよ。1980年代は洋楽にしてもギターはメタル寄りじゃなかったし、MTVの中で鳴っていた楽曲もギターの地位が低かったなと思うんですけど、でも僕はそれも好きなんです。ギターはあんまり詰め詰めじゃなくて、シンセとドラムが大事だったりする。「Romance Rose」でTAKUROはそういうことが言いたいのかなって思ったし、そう受け取って作りましたね。

──ギターのディレイのかけ方にもZI:KILLの質感がありますね。あと、ドラムには微妙にもたれた感じがあって、あれはレベッカのドラマーの小田原豊さん風味が確実に出ていると思います。

HISASHI:まさに1980年代のMADONNAの影響を受けたレベッカですよね。そうなると、やっぱりキックの音も決まってくるんですよ。まぁ、これも本当に悪ふざけで作った感じです(笑)。“好き好き! こういう曲!” みたいな。

──1980年代半ばから1990年代前半にかけての日本のバンドの感じ。今これをやるバンドは案外ないです。

HISASHI:そうね……BUMP OF CHICKENフォロワーはこんなに多いのに、何故かZI:KILLフォロワーはいない(笑)。

──だから、「Romance Rose」は、もしZI:KILLが1994年に解散せずに天下を獲っていたら……という世界線上にあった楽曲という見方が出来るかもしれない。

HISASHI:誰もが“日本にメタルは根付かない”って思っていたところでX JAPANが樹立したものってすげぇことだと俺は思うんですよ。やっぱり熱って大事なんだと思う。ZI:KILLにも絶対にそれはあっただろうし。

──あと、7曲目「BRIGHTEN UP」のシンセの感じにも、ものすごく1980年代を感じました。

HISASHI:まさにそこです! これだけは死守しましたね(笑)。これは特にイントロがなくて──いや、正確に言うと、ギターのイントロはあったんだけど、俺はこの曲を1曲目にしたいと思っていて、イメージはもう完全にUP-BEATだったね。だから、結局は佐久間(正英)さんなんですよ。



──なるほど。ZI:KILLもUP-BEATも佐久間正英さんがプロデュースされてましたからね。

HISASHI:自分でもすごい佐久間さんの影響を受けてると改めて思ったし、そういうのがここに出てきたんですね。あのシンセは実はストリングスで、“エイティーズ・ストリングス”っていうちょっとローファイな音源なんですよ。それがまた時代感が出てる! あれは当時、皆が使いたがっていた音だよね。

──あのポコポコした感じは当時を過ごしてきた者には懐かしさを感じさせます。今作はそういったものが随所で聴けて楽しいですよ。あと、The Beatles味もちょこちょこ隠れてますよね? これまでもGLAYのアルバムにはThe Beatles味を感じることがありましたけど、ここまで如実なのはなかったことだと思います。

HISASHI:それは致し方ないでしょうね(笑)。俺はThe Beatlesをほとんど聴いてこなかったんだけど、他のメンバーはみんな聴いてると思うし。俺が知らない故に“この変なコーラス、やばくない?”って思ったものがThe Beatlesのオマージュだったりしたし。


──アルバムのラスト「Back Home With Mrs.Snowman」はストレートにThe Beatlesサウンドだなと思いますし、11曲目「その恋は綺麗な形をしていない」と13曲目「シャルロ」で出て来る♪ドレミファソラシドはやはりオマージュを感じざるを得ないですよ。X JAPAN、ZI:KILL、レベッカ、UP-BEATといった日本のロックからThe Beatlesまでホントいろんな要素が取り込まれたアルバムだと思います。

HISASHI:さっき“TAKUROがメンバーに難題をふっかける”って言ったけど、それはTAKUROがアレンジに関してすごくメンバーを信用しているというか、期待しているところがあるからだし、それ以外のところで逆にTAKUROの個性は強いんですよね。(TAKUROの中に)“そこだけは残さないといけない”というものがあるというか。

──“The Beatles味”以外では、3曲目「シェア」のサビ前のカッティングギターがそうでしょうね。

HISASHI:そうだね。あれはプロデューサーの亀田(誠治)さんとTAKUROとの盛り上がりはでかかったですね。



──TAKUROさんのこだわりが強い部分はそのまま残し、それ以外はメンバーに丸投げする。丸投げされたメンバーにとっては難題なものもあるけれど、そこをしっかりと埋めて楽曲を完成させるという、そんな感じなんですね。

HISASHI:それもあるし、好き嫌いもあるのかもしれない(笑)。

──好き嫌い?

HISASHI:うん。多分作った側にも好き嫌いがあるんじゃないかな? 思い入れというかね。やっぱり思い入れのある曲への愛着は強いんですよ。だからこそ “これはアレンジによってどうなるか分からないから、とりあえずメンバーに投げてみよう”みたいなこともあって。

──6曲目「海峡の街にて」や9曲目「Beautiful like you」は、原曲は以前からあったもので今回ようやく形になったそうですね。

HISASHI:そうね。「海峡の街にて」はツアーで随分前に披露してましたからね。……今改めて見るとすげぇタイトルだな(笑)。この曲には、GLAYの4人の共通認識として“思い出すとあの低い空がある”という感じがあるんじゃないかな。

──とても印象的な循環メロディーに分厚いギターが重なる様子からは、“単にいいメロディーだけを聴かせるわけではない”というロックバンドのプライドといったものが感じられてカッコいいです。

HISASHI:“どこまでやっていいんだろうな?”とか“さすがにこれは邪魔じゃないかな?”みたいなことは何となく分かってきたな、俺も(笑)。「海峡の街にて」のギターは重くていいし厚くていい、とかね。



──つまり、『Back To The Pops』はそうしたメンバー間のバランスが上手く取れたアルバムと言うことも出来るんでしょうか?

HISASHI:でも、やっぱりそれがそういう風に客観的に聴けないのよ(苦笑)。

──そうですか(笑)。でも、HISASHI楽曲はGLAYの中でも少し異質な印象はあって、それこそ古くは『rare collectives vol.2』でHISASHI DISCとして1枚にまとめられたことがありましたよね。けれども、今作を聴く限りもはやそういう分け方も必要なくなった感じがしませんか?

HISASHI:ああ、「会心ノ一撃」なんてほとんど打ち込みですから、違和感あって当然なはずなんですけどね。その辺は……まだ録りたてみたいな感じだから、俺はよく分からない(苦笑)。

──この流れで、HISASHIさん作曲の「会心ノ一撃」についても伺いましょう。最初に聴いた時、個人的には“これはアニメにハマるのかな?”と少し懐疑的だったんですけど、アニメのオープニングを見るとピッタリで。サビ前の溜めはスーパーロボットものに合っているというか、でかいビームが出る感じがあります(笑)。

HISASHI:ははは(笑)。アニメーションオープニングマジックっていうのがあるんですよね。アニソンに対する認識みたいなのものは、DNAレベルで俺の中にあると思うし。



──頭からサビ終わりまで1分30秒というテレビサイズはお見事です。アニメ『グレンダイザーU』のオープニング曲であるということも、かなり意識されたんですか?

HISASHI:(アニメのスタッフと)オンラインミーティングした時には全ての方向性が見えたんですよ。頭の中で“BPMはこのくらいで”とか“歌詞の世界観はこんな感じで”とかね。わりと自分の得意分野だったので。

──やや悲壮感のある『グレンダイザーU』の物語にも、独特の情緒感がありながらキャッチーなHISASHIさんが作るメロディーが合っているとも思いますし、とても収まりがいいですよ。

HISASHI:まさに俺が大好きで、自分の永遠のテーマでもある“繰り返す歴史”とか、そういうものがすごく『グレンダイザーU』と合いそうだなと自分も思いましたね。エッジーな部分にしても、今回も(アレンジは)YOW-ROWくんと一緒にやってるんですが、この曲の“90年代の電子音楽バンド”みたいなところって、それまでジャジーだったロックに急にクリックやグリッドっていう言葉が出てきて、縦のビートが合い出してきた頃のもので、僕はそれを現体験してるし、YOW-ROWくんと一緒にやるとそういう縦のビートが出るんだなって自分でも思ったな。

──YOW-ROWさんとほぼ打ち込みで作り上げた楽曲だとは言っても、しっかりGLAYのサウンドになっているのは、ベタなことを言うようですが、歌い手がTERUさんだからという部分も大きいんでしょうか?

HISASHI:なるほど、そういうことか! ……確かにそれはそうだね。TERUの器が大きいんだよね。

──今回のようなバラエティ豊かなアルバムだからこそ、TERUさんはどんなタイプも器用に歌うことが出来るボーカリストであることが分かります。

HISASHI:そうだね。そこが一番GLAYを導いているところなんじゃないかな? TERUには自分が歌うことで“ちゃんとGLAYの楽曲にする”という覚悟と自信があるから。

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