【インタビュー】G-FREAK FACTORY、茂木洋晃が語る4年ぶりアルバム『HAZE』の激動「良くねえ時代だけど、おもしれえ時代じゃないか」

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■旋律だけでメンバーのテンションが上がって
■曲がどんどん仕上がっていく。焦りました(笑)


──作曲の前段階から音楽制作ソフトと楽しく戯れたことで、音楽に関する視野も広がっていったんですか?

茂木:広がったかどうか分からない。もしかしたら、すごく狭くなっているかもしれない。でも、それはそれで良くて。“今、これが一番いいよな”ってものがあるから。それは変わっていくんだけど、自分も変化しながら時代の中にいる一人の人間として表現する、そういうことが一番やりたいことだなっていう。時代が変わればリリックも変わるし、変わらなきゃいけないし。コロナ禍に書いたシングル「Dandy Lion」と今も同じ気持ちかといったら、もう違うからね。あの頃の嘆きだったり、想いとは。

──録り下ろしの新曲は、“これから開けていくんだ。お前が持っている力は凄いから”という、ネガティヴも突きながら、すごくポジティヴさに溢れた歌が多いと思ったんです。

茂木:そうなんですよ。“明けたんだ” “アルバム出すぞ” “なりふり構わず行こうぜ”って。でも、“そうにもいかねえな”みたいなところもあったり。すごくいろんな感情が入り混じっているんでね。まだ実際に整理できていない想いも、そのままリリックになっていると思う。AIとかテクノロジーがどんどん進化していく中で、ヒューマンな部分やバイオロジーの部分での葛藤もすごくあります。バンドやライブが、この先、大げさなものになるかもしれないし。けど、でかい音で生演奏で、自分たちの考えた曲をプレイして、それを分かち合っていく。そんな普通だったものを、もっと価値あるものにしていきたい…こんなの考えなかったもんね、コロナ禍の前は(苦笑)。


──状況と共に、そういった心境の変化は、茂木さんだけじゃなく、メンバーも同じだったんですか?

茂木:俺は、メンバーとというより一般の人とすごく話すようになりましたよ。一般の人とすごく壁を作ってた時期もあったから。でもね、弾き語りって、“お前ら、来たんだろ!”とか、風を切ってやるとカッコ悪いんですよ。カッコつけきれないんです、弾き語りは。“いやいや、お前らと一緒だよ” “演奏、間違っちゃったよ、ごめんな。でも楽しいか”みたいな感じがいい。そこで、今まで凝り固まっていたものがほぐれて、いろいろ見えましたよ。あとスポーツ選手とか、特別な道に行ってるやつと話したこともモチベーションになったし。一般市民と話すだけでもモチベーションになる。以前は、バンドマンとお客さんみたいなラインをいかに引くかってことをやりすぎていて、今思えばもったいなかった。

──閉ざしていた扉が茂木さんの中にあったとしたら、今は開けっぴろげ? そうなると、『HAZE』の仕上がりが示すように、音楽的にこれだけ豊かになると?

茂木:いや、まだ足りないですよ。もっと豊かになるはずです。もちろん根底にはレゲエやパンクロックがあるので、なにをやってもそこに寄っていくんだろうなって。でもジャンルとかにカテゴライズしたものにはめ込んでいくことに、全然喜びも感じないし。あるならブッ壊していきたい。

──原田季征(G)さんの音作りも音使いも、これまで以上にバリエーション豊かで、いろんなものを見てきた人生なんだなと痛感したんですよ。

茂木:見なくていいものまでね(笑)。

──そっちの人生じゃなくて、音楽人生(笑)。

茂木:各々であると思うんです。原田で言ったら、いろんなギタリストとのコミュニケーションもあったと思うし。っていうか、あいつ音の話しかしねえもん。いろんなフェスに出演しても、そこでギタリストを捕まえて、「あの音、どうやってるの?」みたいな。音のオタクです。素晴らしい。



──Leoさんが2023年に正式加入したのは、「バンドにとってすごく刺激になっている」とシングル「RED EYE BLUES」のBARKS取材で語っていました。Leoさんの加入がひとつの引き金になって、音楽的な広がりに?

茂木:Leoもいい意味で超生意気なやつで、曲のアレンジに関して「こっちのほうがいいと思いますよ」って堂々と言ってくるんですよ。「いや、これでやってきたんだから、言うこと聞けよ」みたいな上から目線もこっちにはなくてね。年齢差はあるけど、全然フラットでやれているから。いいねって思うことは、お互いに柔軟にどんどんやればいい。ただね、さっきも言ったけど、俺が音楽制作ソフトで5時間ぐらい掛けて作ったものを、Leoは15分ぐらいでポンポンって直しちゃうんだよ(笑)。

──まあ、そうでしょうね(笑)。茂木さんが作ったデモ音源のやり取りを、メンバーとは頻繁にしたんですか?

茂木:頻繁にやりましたね。やっぱり、制作ソフトに関してはLeoが一番長けてます。ものすごい武器だと思います。あいつはもうひとつインストのバンドをやっていて、そっちでは「ほぼLogic Proでやってる」と言ってたんで。たまたま俺とLeoが同じソフト使っているわけだけど、俺なんて、Leoの100分の1も使えてないんじゃないかな(笑)。

──Leoさんとだけじゃなく、ギターの原田さんやベースの吉橋さんともデモ音源をやり取りし合ったんですか?

茂木:まず俺が、弾き語りデータか、オケのオーディオファイルとボーカルラインが入ったデモデータをパラで送って。それに一人ずつフレーズや演奏を乗っけたものが、俺のところに返ってくるわけです。

──アルバム『HAZE』のために制作された新曲もその手順で?

茂木:新曲を7曲書くには、どれだけ効率良く回すかが重要で。俺が基本となるデモをメンバーに投げるってのを、7回やるわけじゃないですか。で、みんなから返ってきたものに対して、今度は俺はリリックを書く作業に入るわけです。だけど、これもさっき話したように、“これまで書き溜めたリリックが一切ダメだ”となって。だから、7曲分を同時に考えて、順番に書いていくっていうのが今回だった。


──冒頭でも「すごく難産で、時間との闘いだった」とおっしゃってました。

茂木:正直、リリックは余裕だと思ってたんです、最初は。これだけいろいろ経験したから、なにを書いても大丈夫だなと。ところが、すげー大変だった。今のマインドが、書き溜めていたものとは明らかに違っているし。どんなリリックが乗るか分からないのに、旋律だけでメンバーのテンションが上がって、楽曲がどんどん仕上がっていくんですよ。で、“ヤベー、リリックが全然ねえ”みたいな(笑)。すごい焦りがありましたね。

──でも時間がない中で集中力を高めると、覚醒される感じってありませんか?

茂木:今年のゴールデンウィーク中は、ホテルにパソコンとヘッドフォンとギター、画用紙を持ち込んで。それだけを相手にして。

──自ら缶詰状態にしていたんですか(笑)? 追い込みましたね。

茂木:だけど、その状態でやり続けていると全く浮かばなくなる。コンビニにちょっと行った瞬間に、“あっ、これだ!”ってひらめくこともあって。だから、考え続けてなければ降ってこないけど、あまりに集中し過ぎても全然ダメ。“この音符に乗る4文字が決まらない”とかで、2日間ぐらい悩んじゃうから。あまりにも歌詞が書けなくて、東京から群馬に戻るとき、YouTubeで「歌詞の書き方」みたいなのも見ちゃってね。その動画が言うには、「皆さんが聴いている世の中の曲の9割9分は、曲先です」と。「メロディーが先、後から詞が乗る曲です」と。“だったらこの順番で良かったのか”と思いながらも、G-FREAK FACTORYには詞先の曲もあるんですよ。

──その曲とは?

茂木:「ダディ・ダーリン」と「EVEN」、「島生民」が詞先の曲です。


──ライブのキラーチューンじゃないですか、その3曲は(笑)。

茂木:ていうことは、詞先のほうがいいって場合もあるじゃんと(笑)。

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