【舞台裏インタビュー】<山人音楽祭2024>TOSHI-LOW、「いい歌を歌うのなんか大前提」

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TOSHI-LOW名義による出演枠は高木ブーの代打を含めて2ステージだが、それ以外にもLOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS PLUSやG-FREAK FACOTRYのステージも加わるなど、<山人音楽祭2024>で特別な存在感を示していたのがTOSHI-LOW (BRAHMAN / OAU / the LOW-ATUS)だ。

G-FREAK FACTORYの茂木とのユニット“ライブゾーン”では型にはまることなく、その瞬間の空気を取り込みながらG-FREAKやOAUの曲に加え、「この2人でやるから」とジミー・クリフの「Pressure Drop」、秀逸なのセレクトでハッとさせられたヘドバとダビデの「ナオミの夢」といったカバーも披露し、鈴なりになっていた妙義ステージの観客を魅了しっぱなし。

そして、アキレス腱断裂のため残念ながら出演キャンセルとなった高木ブーの穴を埋めるべく、ひとりで立った赤城ステージでは、The Birthdayの「愛でぬりつぶせ」やソウル・フラワー・ユニオン / HEATWAVEの「満月の夕」といった曲たちをメッセージとリンクさせながら届けつつ、クライマックスでは四星球とG-FREAK FACOTRYのメンバーと共に「いい湯だな」を盛大に鳴らす圧巻の内容。その多面的で芯を食う視点を持つTOSHI-LOWに、本日の感触や<山人音楽祭>への期待について話を聞いた。

   ◆   ◆   ◆

──本日は2ステージ、お疲れさまでした。まずはライブゾーンとして妙義ステージに出演されました。ライブゾーンとしてステージに立たれるのは?

TOSHI-LOW:何回かあるけど、これは偶発的に生まれたユニットなのよ。

──6年前にFMぐんまの番組で名付けられたそうですね。

TOSHI-LOW:そう、だからそんなに意味があるものではない(笑)。ただ、そういうもののほうが後で意味を帯びてきたりもするから。そういうことなのかなとは思う。

──お客さんの期待感も高く、妙義ステージは多くの観客が駆けつけてました。

TOSHI-LOW:どうなんだろう(笑) 。でも変な話、ボーカルが2人いて、その人たちとカラオケに行ったって、めちゃくちゃ面白いじゃん、そういう感覚。オレらもやってて面白いし。音楽的にどうこうとか、そういうつもりもあんまりない。そんなに責任感を持ってやってるものでもないからさ(笑)。好き勝手にやってる面白さを、より面白くするというか。決まり切ったものを観に来るような、かっちりとしたエンターテインメントではないからね。今、世の中が全部そういう風になってるじゃん。

──そういった風潮はありますよね。

TOSHI-LOW:できるだけ最大公約数的なセットリストを決めて、間違えないようにやって、CDと同じような音を聴かせてっていうのとは真逆の、歌の原点。酔っ払ってギターがあったら歌っちゃった、みたいなことでいいと思う。

──TOSHI-LOWさんがG-FREAK FACOTRYの「ダディ・ダーリン」をおひとりで歌い始めて、茂木さんが入ってきそうになるけど、そこを制止して、という流れを何回も繰り返してましたよね(笑)。

TOSHI-LOW:ほぼ茂木は入ってなかったからね(笑)。でも、いいの。後で自分で歌うんだから。

──でも、この2人だからこその選曲もありました。

TOSHI-LOW:男性ボーカル2人だけど、帯域が全然違うんで。そういう面白さができる曲だったらいいな、って。

──「ナオミの夢」は素晴らしいセレクトだったと思います。

TOSHI-LOW:オレが子どものときですら、もう懐かしの曲で。変な曲だなと思ってたんだけど、大人になって聴いてみるとよくできてるんだよね。'70年代の歌謡曲って精巧にできてる。今の小難しいシティポップみたいなコード感ではなく、血が通う生活感みたいにできてる(笑)。凄いよね、やっぱり。

──若い観客にとっては、新しい入口にもなるんじゃないか、と。

TOSHI-LOW:そんな使命感はないけどね。

──結果的に、ということですか。

TOSHI-LOW:1時間とか2時間っていう長いステージになってくれば、もっともっと面白さも出てくると思うし、そういうこともやってみたいかな。


▲ライブゾーン -TOSHI-LOW&茂木洋晃-@妙義STAGE

──そして、高木ブーさんの代役として、TOSHI-LOWさんおひとりで赤城ステージにも出演されました。

TOSHI-LOW:そもそも、ブーが出るからオレも呼ばれてるんだけどね(笑)。

──高木ブーさんの代役となったら、雷様と同じ種族(=鬼)のTOSHI-LOWさんがふさわしいという。いい歌を聴かせてもらいつつ、終盤にはひっくり返すドリフ的な面白味もありました。

TOSHI-LOW:いい歌を歌うのなんか、そんなのオレたち大前提じゃん。大事なことはその場に懸命かどうか。上手い下手ってことではなくてね。代役だったら代役として、その役目を果たす。完全にただの穴埋めになっても意味がないと思うから。

──急遽の代打ですから、演出的なところを考える時間はなかったですよね。

TOSHI-LOW:30分前に5分話し合っただけ(笑)。

──TOSHI-LOWさんの中でイメージがあったんですか?

TOSHI-LOW:いや、四星球の(北島)康雄も絵が書けるんで、話を聞きつつ。「康雄がそうしたいんだったら、オレがキッカケをちゃんとやるから、そこでドラマを作ってこう」って。突然カットインでわちゃわちゃ入ってきちゃうのはよくあるけど、それだと物語がないし。歌が紡いでいく物語みたいにしていかないと、音楽フェスでやる意味がない。劇場で面白おかしくやればいいだけの話になっちゃうから。

──今回のステージでも、それぞれのお話から曲へ、しっかりした流れがありました。

TOSHI-LOW:バンドと違って、弾き語りだからね。弾き語りというのは、語る部分があるからこそ。バンドなら1曲1曲に対して説明はできないだろうけど、弾き語りだったら曲の背景だったり、1対1でお話をしてるような感じでやれる。歌なんて全部一緒じゃんって思う人もいるんだろうけど、バンドでやるのとひとりでやるのは全然違う。ましてや、違う人が歌えばもっと違うし。それこそ、もうその人が歌えない歌もあるわけだけど、歌が残ってくということが生きてた証明。ただ単に命が終わったからすべてが終わるんじゃなくて、命が終わった後も引き継がれる物語があるというのが、続いていって欲しいなと思う。だから、結構そういう歌も歌わせてもらってるかな。


▲TOSHI-LOW@赤城STAGE

──アーティストが主催するフェスだからこそ、できたステージなんだろうなとも感じたんです。

TOSHI-LOW:アーティストがやってるフェスなのに、アーティストが真ん中で考えられなくなるようだったら、やめたほうがいいと思う。客寄せパンダとしてその人が乗っかって、後は制作の人たちが全部決めるみたいなのは意味がない。ライブを作るのなら、その人たちが真ん中にいないなんて、つまらないだけ。

──血が通ってる感じもしました。

TOSHI-LOW:血を通わせられるかどうかっていうのは、G-FREAK FACTORY次第だと思う。今年、血が通ってたかどうかは、アイツらに聞いてあげたらいい。“もっとこうできたんじゃないか”があると思うし。アーティストがやってるフェスって、それがないと終わっちゃう部分もある。企業がやってるフェスは客が入れば万々歳でしょ?

──ビジネス的観点から始まっているものはそうですよね。

TOSHI-LOW:でも、それだとオレたちはそこの駒になっちゃうから。はっきりと言えば、使い捨て。人気があったから呼ばれたけど、人気がないから呼ばれない。そういうものになっちゃうわけじゃない?

──はい。

TOSHI-LOW:もちろん自分たちを駒として使いながらやらないといけないから、どっかで凄く矛盾してきたり、嫌な部分もあるはずなんだよ。大好きなバンドだけど、デカいところでやったらスカスカになっちゃうだろうなとか。でも良いライブみてもらいたい、そういうことをどう切り盛りしていくか、それを考えてこそ、バンドがやるフェスだと思う。


──TOSHI-LOWさんから見た<山人音楽祭>はどういうフェスですか?

TOSHI-LOW:いや、まだまだじゃない(笑)?

──まだまだいろんなことができるんじゃないか、っていう期待があるんですね。

TOSHI-LOW:群馬らしさをどう出していくかってことと、他のフェスではあり得ないことをどうやっていくか。要は似たようなフェスの群馬版をやっても意味がないから。メンツだって“これ、何とかっていうフェスと一緒じゃん”ってなっちゃったらダメだしね。ただやっぱり、ある程度大きいところを埋められるバンドって日本に何千もはいないんで。そもそも規模感を含めこの場所でいいんだろうかとか。群馬って広いでしょ? もっともっと違う場所があるのかもしれないし。もちろん、今回はこれで楽しい部分もあるけど、“これで最高峰なの?”って問われたら、“G-FREAKならまだできるでしょ”ってオレは期待してる。

取材・文◎ヤコウリュウジ
写真◎野村雄治
ライブ写真◎HayachiN

<山人音楽祭2024>

日程:2023年9月21日(土) 、9月22日(日・祝)
開場・開演:開場 9:30 / 開演 11:00 (終演 20:00予定)
会場:日本トーターグリーンドーム前橋(群馬県前橋市岩神町1丁目2-1)

出演者
【9月21日(土)】
アイカワヒトミ / 打首獄門同好会 / Age Factory / ENTH / おとぼけビ〜バ〜 / ザ・クロマニヨンズ / 佐藤タイジ / サンボマスター / G-FREAK FACTORY / SIX LOUNGE / 上州弾語組合 / Dragon Ash / HAWAIIAN6 / FOMARE / プッシュプルポット / The BONEZ / MAN WITH A MISSION / MOROHA / ゆってぃ&バリ3TV (※五十音順)

【9月22日(日祝)】
KUZIRA / G-FREAK FACTORY / SHADOWS / SHANK / 上州弾語組合 / 四星球 / SCAFULL KING / 高木ブー / DJダイノジ / TETORA / 10-FEET / NakamuraEmi / HUSKING BEE / バックドロップシンデレラ / ハルカミライ / THE FOREVER YOUNG / ザ・ボヤキングス / ライブゾーン(TOSHI-LOW&茂木洋晃) / LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS PLUS / ROTTENGRAFFTY (※五十音順)

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