【インタビュー】G-FREAK FACTORY、茂木洋晃が語る4年ぶりアルバム『HAZE』の激動「良くねえ時代だけど、おもしれえ時代じゃないか」
G-FREAK FACTORYが9月4日、前アルバム『VINTAGE』から4年ぶり、通算7作目となるフルアルバム『HAZE』をリリースする。霧や霞を意味する“HAZE”を冠したアルバムには、結成25周年を迎えた2022年リリースのシングル「Dandy Lion」、ドラマーLeoの正式加入後の初シングル「RED EYE BLUES」を含む、全12曲が収録された。
◆G-FREAK FACTORY 画像 / 動画
「バンドとして個人として、この時代に鳴るパンクロックやレゲエ、ブルース、フォークなどの持つ生活背景を描写するアルバムを記したくて、この制作がスタートした」とは茂木洋晃(Vo)の言葉だ。前アルバムからの4年間には、様々な変化があった。beforeコロナ、コロナ禍、afterコロナ。価値観や生き方、コミュニケーションに至るまで、社会も個人も激動を迎え、今もまだその最中にいるのかもしれない。『HAZE』は移り変わる時代を捉え、この瞬間をパッケージした、今にしか生まれないアルバムだ。
そのサウンドは圧倒的なスケール感も、性急なツービートも、ダブやレゲエも、芳醇な香り漂うジャズも、すべてが際立つミクスチャーロック。楽曲制作方法の改変はバンドサウンドを新たなフェーズへ導いたようだ。BARKSは茂木洋晃にアルバム『HAZE』に込めた思い、同アルバムを掲げて開催される<“HAZE” TOUR 2024-2025>、そして間近に迫った自身主宰<山人音楽祭2024>についてじっくりと話を訊いた。
▲アルバム『HAZE』
◆ ◆ ◆
■コロナ前に書き止めた歌詞の欠片たちは
■今回の曲作りには一切通用しなかった
──新作『HAZE』は、フルアルバムとしては7作目、ミニアルバムを含めると9作目になります。
茂木:そんなにいきました!?
──ええ。G-FREAK FACTORYは結成27年目ですからね。やっぱり染みるんです、歌詞も曲も。
茂木:ほんとですか(笑)。
──歌詞に投影させた想い、そこから汲み取るべきメッセージなどが、曲を聴くたび強く感じて、間違いなく染みるんです。一過性の言葉や歌詞、曲ではないところが、G-FREAK FACTORYの魅力なんですよ。コロナ禍という長きにわたって沈黙せざるを得ない期間もあって、その時期に茂木さんはバンドとは別に弾き語りのユニットを始めたり、安中ヘルメットプロジェクトという子供たちの防災意識を高める活動などもスタートさせたりしていました。そういったいろんな経験をする中で、G-FREAK FACTORYの曲や歌詞にしたい事柄や気持ちなども湧き上がりやすかったですか?
茂木:いや。コロナ禍の前に書き止めておいた欠片たちは、今回の曲作りには一切、通用しなかったんで。コロナ禍という期間で、完全にリセットされたじゃないですか、価値観もなにもかも、いろんな意味で。だから“これを今、言ってもしょうがない。答えがもう出たし”という事柄がすごく多くなっていて。コロナ禍以前から書いていた自分の中のピースたちは、全部捨てましたね。新しいマインドで曲や歌詞を書いていこうと。だからすごく難産で、時間との闘いでしたね。
──フルアルバムを作ろうと思ったのは、いつぐらいのタイミングだったんですか?
茂木:去年12月ぐらい。
──最近なんですね。去年12月といえば、ROTTENGRAFFTY主催<響都超特急2023>があったじゃないですか?
茂木:ですね。あのときに、アルバム制作の話があったかないか、ぐらいでした。<響都超特急2023>のときはまだ、コロナ禍にかぶってたと思うんだよな。でも、beforeコロナとコロナ禍とafterコロナで、圧倒的になにかが違うじゃないですか。世間も、自分のマインドも、周りの人たちのマインドも。とにかく変わっていくスピードが、ベラボウに前と比べて早くなって。
──そういった変化の早さに戸惑うことも?
茂木:戸惑いというか、俺は“コロナ禍を空白にしたくないっ”て気持ちが強くて。コロナ禍から明けたとき、どうやったら自分がいい意味でフレッシュでいられるのかなって。それを毎日考えながらコロナ禍を過ごしていたつもりだったけど、それ以上に変化のスピードが早かったですね。
──昨年末にアルバムを作ろうと決めて、その後の半年間ぐらいで実際に完成まで漕ぎつけて。先ほどは「難産だった」と言いましたが、モチベーションを高める材料や事柄がそれだけいっぱいあったんですか?
茂木:モチベーションで言ったら、昔から一貫しているんですよ。ローカルでバンドを続けていることに対しての、コンプレックスから生まれるプライド。そこはずっと変わってないんです。ただ今回、そこにもうひとつ加わったモチベーションが、新しい世界に入っていったということ。フルアルバムを出していなかった4年間と、その前の4年間を比較すると、比べものにならないぐらい今回の4年は激動だったと思う。4年前のマインドとは、下手したら正反対のものが芽生えたりとか。生きていて、こんなに変わることってあるんだなと。
──なるほど。
茂木:例えばコロナ禍になって、ライブのありがたみとかも変わったし、ライブを開催できた時点で、ある意味、半分勝ちだったり。そういう価値観は4年前の自分にはなかったんで。それにコロナ禍の期間に3つ歳を取ってしまったと。そこは誰しも同じなんだけど、さっきも言ったように俺はその空白を埋めたくてしょうがなかった。しかも、ただ埋めるんじゃなくて、beforeコロナよりいいものになっていないと意味がないんで。そこに関しては、もう必死です(笑)。だからモチベーションというより、必死さですね。
──必死さが軸の中心にあったと。だからでしょうか、『HAZE』は曲が進むたびに新しさや新鮮さをすごく感じたんです。これほどまでに曲のバリエーションが広がってるのに、全然濃度は薄まっていない。しかも曲ごとに練り上げてある。すごいアルバムを作ったなと思ったんですよ。
茂木:アルバムという単位が、この時代にふさわしいのかどうかも、もはや分からない状況じゃないですか。サブスクで曲が切り売りされたりだとか。だけどアルバムという塊としての表現をしたいし、これからも続いていってほしいし。時代とのせめぎ合いなんだと思う。
──この時代にアルバムを出す意味というのを、ものすごく考えに考えたうえで、それでもアルバムを作るんだっていう向き合い方だったんですか?
茂木:それはあります。コロナで喰らって、こんな激動の時代に音楽をやって、ものが書けたり、声を出せたりする立場にいるってことが、すっごく幸せに感じる。大概の人は、思っていることを殺してしまって、無きものとすることに慣れていくのかもしれないけど。自分らは、不格好でもいいから次世代へのヒントみたいなものを残したり、誤解でも勘違いでもいいからちょっとプラスになってほしいなって気持ちがあるんです。
──曲を作る段階で、弾き語りの活動をしている経験が活きることもありましたか?
茂木:弾き語りをすることで、ステージでの度胸みたいなのが、ちょっとだけ育ったと思うんですよ(笑)。
──G-FREAK FACTORYでこれだけステージに立っているのに?
茂木:いやいや(笑)、どれだけメンバーに助けられていたかってのも分かったから。先々週、盛岡で60分のステージを一人でやったんですよ(<祝開店10周年企画 出張すいれんトゥナイト!>7月26日@盛岡 CLUBCHANGE WAVE)。恐ろしいぐらいの持ち時間(笑)。対バンの中で俺が一番の弾き語り初心者でね。“ここでひるんだら負けだな”と思ってやったんですよ。やらないと、やっぱり血にも肉にならない。あと弾き語りの活動をスタートさせてから、ギターをアンビエンスで録って、DTMソフトにそれを入れて、エフェクターを掛けたりしてイジっていくという、それまで自分ではやったことないことを始めたりとか。“こんなことまでできるのか!”って。そこがおもしろくて、逆に作曲が進まなくなっちゃって(笑)。
──音楽制作ソフトの進化に、今さら驚いたっていう(笑)? ジャングルから出てきた小野田少尉ばりの驚き方してるじゃないですか。
茂木:いや、本当に(笑)。小野田さんのように、「こんなに時代は進化してたのか」って。
──ちなみに、ソフトはなにを使っているんですか?
茂木:Logic Proです。2019年に出したシングル「FLARE/Fire」のとき、初めてLogic Proを手に入れたんです。きっかけは、10-FEETのTAKUMAから「いいから、これを使え」と半ば強制的に勧められたこと。使い方なんて全然分からなかったから、FaceTimeでビデオ通話しながら、「違う! そこじゃない!!」ってTAKUMA先生に教わりながらで(笑)。なんと、そこから実は俺の技術は1ミリも進んでない。
──これを読んだら、TAKUMA先生も大ショックです(笑)。
茂木:ははは。俺が作るのはデモまでだから、それでもいいかなと思ってたんですよ。でも、もうちょっと突っ込んで作り込めたら、曲の核がしっかりしたデモをメンバーに渡せるかなって。ディレイとかも、チャンネルを分けてこだまを小さくして、「こんなニュアンスのディレイなんだよね」って、デモをメンバーに渡すじゃないですか。そうするとLeo(Dr)が「まだ、そんなレベルなんですか?」って。あいつは秒でそれくらいのことをやっちゃうから(笑)。まだまだ勉強できることがあるってのは楽しいですよね。
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