【インタビュー】グラビティ、“止まない雨”はないけれどまた必ず雨は降るから──次は「ちゃんと傘を差せる?」

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9月25日にZepp Hanedaにて<6 ANNIVERSARY TOUR NecRomance -REVIVE->ツアーファイナル公演を開催したグラビティ。盛況に終わった本公演のあとには、すでに新ツアーの情報も公開されている。

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そんなグラビティは、9月に14thシングル「終わっちゃんちゃん!」をリリース。Zepp Haneda公演でも披露されたこちらの楽曲は、グラビティが伝えたいメッセージが込められた楽曲だった。そしてそれは、きっと次の作品、次のツアーにも共通して届けられていくものなのだろう。

ツアーも終了し、新たなフェーズへ向かうグラビティをこれから追いかけていくためにも、ぜひこの「終わっちゃんちゃん!」に込められたメンバーの想いを知っておいてほしい。(本インタビューは9月下旬、ツアーファイナル前に実施)

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■笑ってる瞬間より、泣いてるときの方が財産だと思う

──7月にリリースされた前作「キュートアディクション」のときは、アーティスト写真のビジュアルありきで制作を進めたとおっしゃっていましたよね。今回の「終わっちゃんちゃん!」は、何を起点に作られたんでしょう?

六(Vo):今後、僕らが見せていきたい自分たちの姿や方向性を示していきたい、という気持ちですね。今回のツアー中、メンバー同士で「この先の自分たちはどうなっていきたいか?」ということを向き合って話す機会が多かったんです。具体的に言うと、何で売れたいのか? 何を大事にしたいか? どういう音楽をやっていきたいのか? 自分たちが売れたときにどういう姿でありたいか?とか。

──バンドの本質的なところについて、追求していくようになったということですね。

六:はい。前回の「キュートアディクション」も魅せ方が表裏一体なだけで、今回も自分たちの像をイメージしました。僕らは客観的に観ると“推し”系のイメージが強いと思っているので、その系統の曲のみを出すのがバズる近道ではあるんですけど、それだと“推し”系の曲以外で需要がなくなっちゃうじゃないですか。いわゆる“カッコいい”曲に見向きもされなくなるし、ライブの熱さなんかも求められなくなる。例えるなら、ゴールデンボンバーがミスチルみたいな曲をやったとして、ファンは喜ぶかもしれないけど一般的には「え、私「女々しくて」が聴きたかったのに!」ってなるじゃないですか。

──なるほど、わかりやすい。

六:そういう意味で言うと、やっぱり僕らはバンド的なカッコよさが好きで音楽を始めた人間なんで、あくまでもそこも見てもらえるバンドでいたいなと思ってます。前回と思ってる事が少し変わるように、芯は変わらずともこの先、またバンドを進める度に考えも変わっていくだろうから“推し”系の曲もメインで出していく事もあるだろうけど、今は自分たちが思う“カッコいい”を詰め込んでる姿を見せたかった。僕らが憧れた、2010年代を席巻したヴィジュアル系……vistlipとかRoyzとかViViDといったバンドが表現していたエッセンスに近いサウンドだね。

▲六(Vo)

──そうして生まれた「終わっちゃんちゃん!」というインパクトのあるタイトルは、最初から決まっていたんですか?

六:決まってなかったです。デモ段階ではいつも適当に仮タイトルをつけていて、これは「牙」っていうタイトルでした。もう全然関係ない(笑)。

──いや、これだけギターが主張している曲なら「牙」もわからなくないですよ。

myu(G):実は、そこは僕の提案もあるんです。デモを聴いたときに「これからグラビティを引っ張っていく曲になるかもしれない」っていう予感がして、おまけにツアーファイナル(9月25日・Zepp Haneda)も近かったからそこで弾いている姿を想像したのと、この曲を出すにあたっての意図としては2人が絡むツインのギターソロがぴったりだなと!そこから小節伸ばしてもいいんじゃね?って、六とのやり取りからこの長さに気づいたらなってました(笑)。

杏(G):僕は、昔からギターが主張してる音楽に憧れていた人間なんで、全然オッケーでしたね! ソロは僕がスタートなんですけど、ライブでmyuと2人で前に出るとお客さんがワーッ!と湧いて「ああ、バンドだなぁ」と実感するんですよ。いつものドロップBのチューニングでは弾けない曲なので、演奏する前には絶対カポをつけるから、カポが登場したら「あ、次は「終わっちゃんちゃん!」なんだ!」と思ってほしいです。

六:みんな全然気づかないでしょ(笑)。

myu:カポは小さすぎて気づかない! ただ、この曲で俺はギター自体を替えるから、俺がギターを背負い出したら「あ、来るな!」ってわかるみたいですよ。




──リズム隊は、六さんのデモを聴いた段階で、どんな印象を持たれました?

リクト(B):コード進行とかイントロの感じが王道というか、自分的に結構アニソンっぽいなと。なので、イントロでオクターブ奏法を入れてたり、ベースラインもそれっぽくなってます。

社長(Dr):アニソンチックというか、本当に聴きやすい歌モノで明るいイメージの曲なんですよね。ドラム的には主張しすぎず、ボーカルだったり曲の雰囲気をブチ壊さない程度におかずを入れるという方針は、最近ずっと変わらないところです。この曲の場合は、疾走感あるノリを崩さないようにビートを打ち込んでいて、あとは作曲者の意図と生身のドラムを、いかにすり合わせるか?というところですね。

六:僕、かっこよさを求めすぎてたまに、つい腕が5本ぐらいないと叩けないフレーズとか打ち込んじゃうんですよ。それを腕2本でいけるように社長の手癖に合わせて直してもらいます!




──そんな“カッコいい”曲に加え、歌詞はいつも以上にメッセージ性に富んでません?

六:いや、そんな気負ってないですよ。いつも通り、そのとき自分が言いたいことをポップに落とし込んでいるだけで。今回だと……よく「止まない雨はない」って言うじゃないですか。確かに止まない雨はないかもしれないけど、また必ず雨は降りますよね。そうなったときに、また雨に打たれるだけなのか? それとも今度こそ、ちゃんと傘を差せるのか?ってことです。世の中には辛いこと、しんどいことってたくさんありますけど、それをどうにか払い除けられたあとって、人間、そのときの苦しみを忘れがちなんですよね。

──まさに“喉元過ぎれば熱さ忘れる”というやつですね。

六:でも、それじゃダメなんです。例えばコロナ禍でも、音楽業界やエンタメ業界って、かなりのダメージを食らったじゃないですか。今はだいぶ緩和されてきたけれど、またああいう状況になったらどうしよう? そのとき僕らはどういう風に立ち回れるかな?とか、今でも考えるんですよ。だから笑ってる瞬間より、泣いてるときの方が財産だと僕は思うんです。

▲杏(G)

──一度苦しみを味わったのなら、次に同じ目に遭わないように、ちゃんと準備をしようということですね。また雨が降ったときのために傘を用意しようと。

六:そう。一回泣いたなら、次に同じようなことが起きたとき、どう立ち回るか?を考えることが大事で、次こそは傘差そうぜ!ってことです。ただ、傘を差すのは“あなた”であって俺たちじゃないから、しっかり伝えたい。でも、堅苦しく書いても説教みたいになって伝わらないから、話し言葉でわかりやすく、可愛くポップに書いているんです。特に僕、Aメロにポップなことを持ってくるのが好きで。

杏:今回もAメロから“おわったー”って、いろんな“終わった”シチュエーションを並べてるから、始まりから掴みはオッケー!って感じがしますよね。

──MVでも歌詞通りの“終わった”シチュエーションを、それぞれに演じられていたのが楽しかったです。

六:そもそも僕、MVの絵面も想定しながら歌詞を書くんですよ。遅刻してヤバい!みたいな絵を撮りたいなとか、何か落としちゃった、割っちゃったっていう絵面なら簡単だなとか。

社長:六って昔から万人に当てはまるようなことを書いてくれるから、すごく共感を生めるんですよね。誰しも「終わった!」って思う瞬間ってあるじゃないですか。でも、そのまま終わっちゃったらダメだよねってことを伝えていて、さらに“チャンチャンチャン”の後に“ス”を付ければ“チャンス”になるとか、六らしい言葉遊びも全開になってる。

リクト:“イッカンノオワリは2巻の始まり”とかも「すげぇ!」って思いましたね。常に歌詞のことを考えてメモってるって六から聞いて、純粋に尊敬しました。

六:思いついたときに「どっかで使ってやろう」と目論んでいて、今回、書きたい内容がなんとなく決まってメモを見返したときに、これは合いそうだなと(笑)。

myu:そういう遊び心もありつつ“誰にも救えないあの過去さえも 僕に出会えたきっかけに変えてさ”っていうCメロは、ファンの子たちにはグッとくるんじゃないかな。いろいろあったけど、今こうやってグラビティに会えて楽しいから、あれはあれで良かったのかもしれないよね?って。落ちサビという泣けるゾーンで、こういう言葉がピックアップされているのが俺は好きです。



──“雨止んでもまた降るから”傘を差そうというメッセージは、MVの映像でも表現されていて、上手いなと感心しました。

六:バーン!とぶちまけられた水を、傘を差して防ぐシーンですよね。あれ、実は1回目で爆濡れしたんですよ。

杏:もう、僕と六はめちゃくちゃ濡れましたね! ちょっと許せなかったレベル。

六:距離が近くて、傘で防げなくて。僕はみんなを守ろうとしたんですけど……守れなかったですね。

myu:俺は杏に隠れて助かりました(笑)。あと、撮影日が超晴れていて! おまけに太陽が目の前にあったから、みんなシレッとカッコつけてるように見えるけど、全員ちょっと眩しがってます。特に落ちサビの六のアップは、眩しいからなのか眉間に皺が寄ってますね。

六:いや、感傷に浸ってると言って!

myu:あと風も強かったんで、俺はフードを被った衣装なのにフード取れちゃってますし、全員前髪とかもなびきまくってて! それでも一生懸命カッコつけようと頑張ってるんで、そのへん、一人ひとりの顔をよく見てみてください。

▲myu(G)

──全体的に見れば“カッコいい”絵面に仕上がっているのに(笑)。ちなみにカップリングは2曲とも歌詞に“グラビティ”というワードが入っていますが、これは何らかの意志の表れなんでしょうか?

六:いや、偶然ですね。B-TYPE収録の「ABUSOLUTE.共鳴-α-」は2020年にリリースした曲のリレコーディングで、本来はファンの声がないと成り立たない曲なんですよ。それがコロナ禍に入って声出しができなくなってしまったので、コロナ禍が明けたタイミングで改めて進化させたバージョンを発表したという流れですね。声出し解禁ライブの頭に合わせて仕上げて、たまたまリリースが今になったという感じ。「盤グルマッチング」(A-TYPE収録)のほうは、完全なる新曲ですけど。

──こちらのタイトルの由来はホスト用語だそうですね。

六:店ぐるみでお客を囲い込む“店グル”っていう言葉からですね。今は“推し”っていう用語が一般化して、誰か一人だけ選んで好きになるのを良しとする風潮がありますけど、やっぱりバンドはバンド丸ごと好きになってもらいたいんですよ。だから、僕らもバンドぐるみでファンを捉えようとしているし、そこは“店グル”っていう言葉とリンクするなと思ったんです。で、“マッチング”のほうは……僕らとファンの人たちって、実はあんまり似てないんですよ。



──そうなんですか?

六:例えば、ファンの中には「死にたい」とか言いだす子もいますけど、僕はやりたいことが多すぎて「死にたい」という感情が全然わからない。でも、まったく感性が違うからこそ惹かれあったり、グラビティを好きでいてくれたりするのかなぁとも思うんですね。わからないぶん、せめて寄り添ってあげようとはしているし、余計なことで背中は押さないようにはしてます。

──コール&レスポンスもありますし、ライブでは盛り上がりそうな曲ですよね。

六:音源でメンバーが“俺!”って叫んでいる箇所は、ライブではお客さんのターンになるので、マイクもフロアに向けてます。ただ、まだガッツリ馴染んでいない感もあるので、みんなが自信を持ってコールできるようになるのは、もうちょっと先になるんじゃないかな。

myu:この曲は近々MVも出るんで、ツアーファイナルのZepp Hanedaではノリも良くなるんじゃないかと思ってます。

▲リクト(B)

──それを聞いて安心しました。9月25日のツアーファイナルも間近ですから。(インタビューは9月22日)

myu:前回のZeppワンマン(4月3日・Zepp DiverCity)のときは、初のZeppということで気張っていたというか。「カッコつけなきゃ!」みたいな意識が強すぎて、グラビティのイメージとはズレた硬さを出してしまった気がするんですね。なので、今回は「これがグラビティだよね!」って感じてもらえるライブになるんじゃないかなと。

リクト:もちろん会場が大きいからできることも増えるでしょうけど、芯の部分では普段通りのグラビティらしさというか、柔らかい感じ、親しみやすい感じを出せるんじゃないかなと思ってます。

社長:ドラム台もあるんで、いつも以上にしっかり見てもらえるだろうし、自分の成長と今までに培ってきたものを全部出したいですね。なので楽しみな気持ちと……でも、やっぱり緊張もあります。ファイナルが上手くいけばツアー自体が上手くいったことになるんだなって、最近ファイナルの重要性に気づいたので。

杏:逆に、僕は全然緊張してないんですよ。前回のZeppのときに「ギターが歪みすぎ」と言われて、ツアー中にギターの音作りを変えたから、それがどう聴こえるか?っていうのが気になってるくらい。

──ツアーファイナルですから、当然、次なる展開の発表もあるのでは?

六:「52Hzの星空」という曲を持って、11月からツアーを回ります。僕ら、いつもツアーが終わって3日後ぐらいから次のツアーを始めたりしてたんですけど、メンバーと話していて「やっぱり準備する時間は大切だよね」ってことになったんですよね。今までは焦りが大きくて、止まってる時間があるのが怖かったんですよ。とにかく動き続けるのが大事!って信じてきて、実際それが功を奏したこともあったんですけど、やっぱりライブやりすぎだよなとは感じていたし、照明、音響も含めてチームでしっかり打ち合わせて、ちゃんとクオリティの高い状態に持って行きたい。それを次のツアーから、ようやく実現させられるんじゃないかと思います。

▲社長(Dr)

──9月末にツアーが終了して1ヶ月ちょっとで次のツアーというのも十分早いですが、3日後に比べたら画期的な変化ですよね。

六:そこに到達するまでに、6年ぐらいかかっちゃいましたけどね(笑)。とはいえ、東名阪のハロウィンツアーもありますし、そこでも新曲を用意してたりするんで、まだまだグラビティは止まらないですよ。

取材・文◎清水素子

ライブ情報

<TOUR FINAL 52Hzの流星群>
■会場
Zepp Divercity

■時間
OPEN 17:00 / START 18:00

■チケット
1階Sチケット:¥8,800
1階Aチケット:¥3,300
2階1列目VIPチケット:¥6,600
2階Bチケット:¥3,300
1階Cチケット:¥0

■出演
グラビティ

■チケット発売日
後日公開

初のLVE DVD『電撃スクリーンショット2023.04.03 Zepp DiverCity Tokyo』

■品番
GRD-001

■収録タイトル(全20曲収録予定)
1.ORIGINATEに帰す
11.たとえ夢を叶えるを選べなくても
2.スパイラル・スパイダー
12.決別BADHEART
3.電撃衝撃ライトニング
13.アソビタイ病
4.PARADISE
14.x?4%0
5.決意ゼロヒャクMAX!!
15.D for U
6.WE ARE THE 兄弟〜吉田の逆襲〜16.死にたくなってたあんな夜に
7.UNDER5
17.わんわんパンチ+
8.キュンキュン警報
18.Your war.
9.意味不明3連発
19.CLEAR DAMAGE
10.憧れの炎
20.人生カワタニエン

■販売価格
¥5,500(税込)

<52Hz 冬のパズルツアー>

2023年
11/4 郡山CLUB#9
11/5 仙台MACANA
11/11 新潟GOLDEN PIGS RED STAGE
11/18熊本B-9 V2
11/19福岡Be-1
11/21高松DIME
11/26代官山UNIT
12/2 札幌SPiCE
12/3 札幌SPiCE
12/9 広島SECOND CRUTCH
12/10 岡山IMAGE
12/16 金沢vanvan V4
12/17 岐阜CLUB ROOTS

[前売り / 当日]
3300円 3800円

[OPEN / START]
17:00 17:30

・TOUR FINAL
52Hzの流星群
2023年
3/21 Zepp Divercity (TOKYO)

指定席
1階Sチケ 8800
1階Aチケ 3300
2階1列目 VIPチケ 6600
2階Bチケ 3300
1階Cチケ 0

[OPEN / START]
17:00 18:00

<クリスマスONEMANTOUR>

2023年
12/19 SHIBUYA CLUB QUATTRO
12/22 NAGOYA CLUB QUATTRO
12/23 UMEDA CLUB QUATTRO

[前売り / 当日]
3300円 0円

[OPEN / START]
16:45 17:30

<2days ONEMAN TOUR 強火お祈りツアー -Pray4->

2024年
1/13 福岡DRUM SON
1/14 福岡DRUM Be-1
1/20 OSKAKA MSUE
1/21 OSKAKA MSUE
1/27 仙台MACANA
1/28 仙台MACANA
2/3 ell.FITS ALL
2/4 Electric Lady Land

[前売り / 当日]
3300円 3800円

[OPEN / START]
17:00 17:30

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