【インタビュー】グラビティ、僕らが好きだったヴィジュアル系らしさを大事にした13thシングル「キュートアディクション」
グラビティが13thシングル「キュートアディクション」をリリースした。
◆「キュートアディクション」MV
グラビティといえば、ヴィジュアル系シーンの中でも“キャッチー”で“楽しい”イメージが強いバンドだ。YouTubeでバラエティ企画も配信し、いまどきのバンドらしい柔軟性も持ち合わせている。
そんな彼らが放つ最新シングル「キュートアディクション」は、これまでのイメージカラすると、ちょっと毛色の違ったものだった。前回3月に発売された12thシングル「ORIGINATE」に寄せて行ったインタビューと合わせて読んでいただければ、彼が目指しているバンド像への理解が深まるかもしれない。
◆ ◆ ◆
▪️華やかで明るくてカッコいい、2010年代のヴィジュアル系っぽさ
──キャッチーでアグレッシブな「キュートアディクション」ですが、どういった経緯でこの曲がシングルに決まったんでしょう?
六(Vo):実は、今回は写真先行なんですよ。「こういう衣装、アーティスト写真で行きたい」というのが先に決まっていたんです。具体的に言うと、全身赤で、周りに目と鼻とか顔のパーツを印刷して張り巡らせたい……って。それに合わせて後から作ったのが「キュートアディクション」なんです。
──つまり、そのヴィジュアルで伝えたいメッセージやテーマが、既に決まっていたということ?
六:決まってました。ちょっとストーカーっぽかったりSMみたいな感じにしたくて。それというのも、表現したかったのが“歪んだ恋”だったんです。そもそも恋って、矛盾を孕んでいるものだと思うんです。人それぞれの形、表現の仕方があって、普通であるべきじゃないんですよ。だって恋愛感情って、そのまま素直にさらけ出したら“気持ち悪い”ものじゃないですか。
──普通に生活している中では、持ち得ない感情ではありますよね。
六:だからこそ、あえてさらけ出すのが“愛”だし、矛盾していて当たり前だと思うんですよ。例えば「キュートアディクション」の歌詞でも、最初のAメロでは“守りたい”って歌っているのに、最後のサビでは“蹴り飛ばしたい”に変わってる。好きすぎて苦しくて、いっそ相手がいなければ何も苦しまないのに……と嘆いたり、でも、相手がいるから幸せな気持ちにもなれたり。そういうのも一種の矛盾ですよね。ストーカーだって相手がいなければ、そうならずに済むんですから。
──いわゆる「俺をこんな風にしてしまうお前が悪い」ってやつですね。身勝手極まりない言い分ではありますが、そういった楽曲テーマについて、楽器隊の皆さんは共感できました?
杏(G):僕は共感できなかったですね。やっぱり女性は自分より弱いものだから、大切にするべきであって“傷つけたい”とか思ったことない。
六:まるで俺はDVする奴、みたいに聞こえない(笑)?
杏:違うんですよ、六さん! ただ自分は共感できなかったって話で(笑)。
リクト(B):自分も感情がドロドロになるまで人を想ったことがなくて、好きだからこそ距離が欲しいタイプなんです。それはメンバーに対しても同じで、一定ラインを超えないでくれ!みたいな。
myu(G):僕も結構ドライなんですよね。あんまり恋愛に対してのめり込むこともないですし、矛盾を感じたりもしない。そこまで気持ちが盛り上がることが、人生を通しても少ないんです。でも、今ってSNSとかで、そういう感情を露わにするのが割と普通じゃないですか。むしろ“あえて言う”みたいな。なので、現代人には刺さるんじゃないかなと思いました。
──ヴィジュアル系を好きなリスナーも、ディープな感情を抱きやすい傾向があるので、そういう意味では刺さりやすいのかもしれません。
リクト:そうですね。「こんなふうに思う人が多いんだろうな」っていうのは、肌で感じているところではあります。
社長(Dr):それに矛盾だとか二面性って、恋愛に限らず生きていたら絶対に出てくるものですよね。以前はこう考えていたけど今は違うとか、本音と建前とかって誰しもあるものだろうし。人間という生き物が、そもそも二面性を持っているものなんじゃないかなって。
──人間の感情って複雑で、単純に一つの感情では割り切れないものですからね。ちなみに「キュートアディクション」というタイトルは、何を意味しているんでしょう?
六:直訳すると“可愛いもの中毒”ですね。自分が可愛いと思っている人に対しての中毒みたいな。前に誰かとの会話の中で“キュートアグレッション”っていう言葉を聞いて、メチャクチャ気に入ったんですよ。ちょうどタイトルを考えていた時期だったんで、ちょっと毒々しくてポップで曲を聴きたくなるワードだなと。でも“キュートアグレッション”は、“可愛すぎてギュッ!としたくなる”みたいな意味なんで、ちょっと違うんですよね。じゃあ、のめり込んでいる感じを表現するとしたら「キュートアディクション」かなと。
──その上で、楽曲自体はどんな曲にしようと?
六:僕らの活動はライブがメインなんで、ライブで楽しい曲、ライブで映える曲というのは大前提でした。自分たちなりのオリジナリティとしてワチャワチャ感も大事にしていて、今回だったらBメロの掛け合いですね。ちょうどお客さんが声を出せるようになったところで、やっとコール&レスポンスもできるから、ライブでやるとメッチャ映えるんですよ! 音源がまだない状態なのに、このBメロはみんな即覚えてやってくれましたね。
──しかもコールするのが“嬉しい”“楽しい”というワードですもんね。
六:そういうポジティヴな言葉をライブ中に大声で叫ぶのって、ファンの子からしたら絶対に楽しいと思うんです。それを聞けるコッチも嬉しいし、でも、実はココにも二面性が隠されているんですよ。まず、僕が歌う“嬉しい?”“楽しい?”っていう問いかけは恋人に対する純粋な質問でもあり、「本当にそう思ってる?」という疑いでもあって、そういった駆け引きって恋愛にはつきものじゃないですか。その後の“嬉しい!”“楽しい!”という女性側の返答は強制的な意味合いにも捉えられるわけで、単なるコミカルな掛け合いではないんですよね。そういうギミックを利かせた曲って、過去の曲にも多いんです。Aメロで“くくくくっついちゃった!”っていう可愛いフレーズが入ってる「スパイラル・スパイダー」とか、メッチャ台詞を喋ってる「ギラギラ卍系」とか。あと、曲作りの上で大事にしたのは、ヴィジュアル系らしさですね。
──“ヴィジュアル系らしさ”って、具体的に言うと?
六:華やかで明るくてカッコいい、2010年代のヴィジュアル系っぽさです。そういう曲が最近少ない気がするんですよ。流行りに合わせて落ち着き始めているというか、「俺らはヴィジュアル系じゃない音楽もやれるんだぜ!」みたいなアピールというか、なんか大人になっちゃった感じがするんですね。でも、僕らが好きだったヴィジュアル系が好きな人も絶対いるはずだから、それを今風に進化させた楽曲を作りたかったんです。例えばラスサビではなく最初のサビで転調させてみたり、あとはギターのカッコよさもこだわりました。
myu:デモの段階でギターはある程度打ち込まれてたんで、それを元にちょっとずつ動かしていきました。六は結構シンセみたいなギターを打ち込んでくるタイプなんで、ちょっとギタリストっぽくないんですよね。でも、それが良かったりもするんで、取捨選択しながらやっていった感じです。
杏:とりあえず難しかったですね! 今までやった曲の中で、一番覚えるのに時間かかったんじゃないかなってくらい。覚えるというか、指が全然追いつかないんですよ! でも、いっぱい練習して既にライブでもやっているので、もう大丈夫です(笑)。
社長:ドラムに関しては、僕、いつも曲の雰囲気無視で詰め込みがちなんですけど、やりすぎると飽和してしまうので、なるべく曲を壊さないように心がけました。
リクト:ベースはエモーショナルな部分と静かになるところのメリハリに注意して、曲中の抑揚をつけていきました。例えば2番のAメロは結構ムーディーだけど、サビの転調からはフレーズがメッチャ動くんで、そこからは曲を盛り上げられるように意識したり。
六:ヴィジュアル系に染みついているリズムやフレーズ、雰囲気の曲なんで、みんなライブでもすぐにノッてきてくれましたね。
myu:あと、ラウド系だったりバンドやギターの音が好きな人にも、聴きごたえがあるんじゃないかと思います。
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