【インタビュー】Blue Vintage、最新EP『GREEN』は自然体を前面に出した1枚「いろんな面を見せられるのが強み」
■J-POPが好きな人にしっかり届けようと思った
──リード曲の「Blue Summer」で、ミュージックビデオを作っていますけど。あのMV、きちんと映像作品として仕上がっているというか、曲をブレイクしてドラマだけのシーンがあったり、面白かったです。なかなかああいうことは、音楽のMVではやらないと思うので。
J.Speaks:MVの脚本が、木下半太さん(小説家、映画監督、俳優としても活動)という方で、ただミュージックビデオを作るだけじゃなくて、半太さんがクリエイトして何かを生み出す中で、彼が一番強さを発揮する部分はどこか?とか、いろいろすり合わせていくと、演技のシーンだったり、そういったパートが足されることになって。うちらにとっては初めてのことだったんですけど。
Taiga:そこの部分は完全にお任せしました。
J.Speaks:今回、自分たちは出ないんで、映画ができるのを待っているような、ワクワクしかなかったですね。映像に関してはすごく満足してます。
──そもそも「Blue Summer」は、歌詞がドラマの脚本的というか、思い出の夏の恋の物語になっていて。こういう歌詞って、Blue Vintageには今まであまりなかった気が。
J.Speaks:以前から「いいラブソングちょうだい」みたいに、周りからずっと言われていたんですよ。それまでにも何曲か作っていたんですけど、いいラブソングとか、いいバラードって、自然に出るものが一番正解なので。1、2年かけて何曲か作ってきた中で、久々にメロディがしっくり来て、Taigaに音をつけてもらう段階でワクワク感があって、チームのみんなに聴かせたら「めちゃめちゃいいじゃん」って言われたのが「Blue Summer」です。
Taiga:同じようなテーマで、これとは違う曲もあったんですよ。J-POPが好きな人にしっかり届けようと思ったんですけど、その曲は何かの曲に似ていたので(笑)。ありきたりすぎるって一回却下になって、作り直していたら、サビのメロディが出て来て、すぐにJUNくんが「夏の歌にしよう」って、歌詞をつけてくれた。
▲Taiga
J.Speaks:もともとは、サウンドにもアイランド感がたっぷりあったんですけど、リード曲になることも意識して、「もっと深みのある世界観にしたいね」と。歌詞も、ただの夏の失恋ソングで終わらせちゃ駄目だなと思って、どこに深みを加えよう?って考えた時に…僕たちBlue Vintageは、海が見えるイメージの音楽を作っていて、季節感を大事にしているんですけど、空と海は青じゃないですか。そして、アザも青色で表現するじゃないですか。
Taiga:青アザとか。
J.Speaks:その三つをかけてるんです。
──ああ、そうか、それで歌詞に「蒼い空と海と心は君でアザだらけ」というフレーズが出てくる。青繋がりで。今わかりました。
J.Speaks:この理由を言ったあとに、「あ、それで“Blue Summer”なんだ」と言う時の、みんなの顔が狙い通りというか(笑)。ただそこらへんにあるラブソングではない深みを作れたので、満足してます。
──狙いにハマっちゃいましたね。そうか!って思いました。失恋の痛みが、青アザのように心に残って、だんだん薄れてく感じとか。その比喩は今まで、J-POPでは聞いたことない気がします。
Taiga:アザという言葉はすごく耳に入ってくるから、引っかかりも含めて。
J.Speaks:最初は普通に「Last Summer」とか「Lost Summer」とか、パッと見たらかっこいいんですけど、深みがないなって考えてる時に、青い空と海とアザで「Blue Summer」が一番ハマりました。それと初の試みで、歌詞は基本的に自分が書いたんですけど、Jazzin’parkの栗原暁さん(Satoru Kurihara)に相談して、自分の視点では見えない景色とか、一緒に考えてもらって作りました。
──サウンド的にはクールなR&Bっぽさとロックバラードっぽいエモさがあって、メロディはJ-POPで、歌詞には詩的な深みがあって。Blue Vintageの新しい名刺代わりの1曲になると思います。さらに、EPの1曲目「Little Ocean」のように、従来のBlue VintageらしいヒップホップとR&B色強めの洋楽サーフミュージック、みたいな曲もしっかりあって。こっちもすごくかっこいい。
J.Speaks:「Blue Summer」ができるまでは、「Little Ocean」を推し曲にしようと思っていたんですよ。そこで「Blue Summer」ができて、リードはこれで行こうということになって、「Little Ocean」はどうしよう?という時に、やっぱりEPの顔になる役割だろうということで、1曲目にしました。
──「Little Ocean」も歌詞が深いんですよね。言葉の響きが心地よくて、夏で、海で、心も体も解放しようというイメージを歌いつつ、精神的なメッセージもしっかり入っていて。いい曲です。
J.Speaks:恐縮です(笑)。
──「Little Ocean」って、心の中にある海という、一つの比喩ですよね。
J.Speaks:そうです。6月2日に東京・LIQUIDROOMでワンマンライブをやった時のタイトルが「Little Ocean」で、ワンマンで新曲を披露したいねということを考えている時に…Blue Vintageに対して、スカッとするようなアッパーな楽曲とか、リゾート地で聴くようなミュージックというイメージを持たれがちなんですけど、海といってもいろんな海があって、浅瀬でポチャポチャ遊ぶ海もあれば、光も届かない深海もあるんですね。しかも海にはいろんな層があって、ミドル層には回遊魚がいっぱいいるとか、いろんな種類の海が、人間の社会と同じだなと思った時に、「これは面白いな」と。
──ああー、そういう発想が。
J.Speaks:Blue Vintageのチームも、たとえば自分がニモ(アニメ映画『ファインディング・ニモ』の主人公)だったとして、亀がいて、ウツボがいて、いろんな仲間がいるなと思って(笑)。そういうフィルターで社会を見ると面白いなと思って、それを歌にしたのが「Little Ocean」ですね。
──今どきの言い方だと、多様性ですね。いろんな人間が、そこでしか生きられない、いろんな層で生きている。
J.Speaks:そう。たとえばヤドカリが深海で生きようとしても無理なわけで、それぞれみんな適材適所があって。あと、人間社会って空気を読み合うけど、空気は読むものじゃない、吸うものだと。少しユーモアを交えて、こういうメッセージを乗せたら面白いかなと思って、作ってみました。
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