【インタビュー】HADESの紗良、2ndソロアルバム『ROCK ON!!!』に幾多の顔「実は多重人格なのかも」
初音源となったミニアルバム『BRINGS』をリリースしたばかりのガールズバンドHADESは現在、ライブの動員数も上昇中。そのボーカルを務めているのが紗良だ。HADES結成以前からソロシンガーとしての経歴を持つ彼女は、舞台『魔界』出演女優としても活躍している。各方面で多忙を極めるなか、紗良のソロ2作目『ROCK ON!!!』が6月23日にリリースされた。
◆紗良 動画 / 画像19点
多彩な顔を持つ紗良を映し出すがごとく、様々な側面を打ち出したアルバムが『ROCK ON!!!』だ。ロックを軸にカラフルに仕上がった各楽曲、歌詞やストーリーに合った声色や歌い分けなど、HADESでの紗良とはまた違った魅力も。HADESでのミニアルバムのリリースツアーが一段落し、ソロツアーを間近に控えた紗良にアルバムについて語ってもらった。
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■ソロ名義ではあるけど
■バンド感とライブの熱量を重視
──HADESにとって初音源でもあるミニアルバム『BRINGS』を今年4月に発表して、それに合わせて行ったツアーが一段落したところです。HADESを取り巻く状況やバンド内のムードなど、いろいろ変化も起こっていますか?
紗良:『BRINGS』は、とりあえず早く作ろうって感じで制作したわけじゃなくて、ライブで育んできた楽曲を、しっかり音源という形にしようってことだったんですよ。結果、自分たちにとっても『BRINGS』は自信作になったし、お客さんから「ようやく出してくれたか」という声をめちゃくちゃもらったんです。ツアーは大阪、名古屋、東京だったんですけど、応援してくれるみんなに直接会えたのは良かったです。それにメンバー4人のバンド感もさらに高くなって、この先の話なども具体的に踏み込んでできるようになっています。
──もともとAZAZELというバンドに、ソロシンガーでもある紗良さんが何度かゲスト参加したことがきっかけで、約1年数ヵ月前にHADESが結成されました。バンドの正式ボーカリストになって、マインドも変わりました?
紗良:最初はAZAZEL時代の曲がライブで演奏する曲の中心になっていて、空也(G)もyuri(B)もMayo(Dr)もAZAZELで何年も活動してきたバックボーンがあるんです。3人のグルーブがすでに出来上がっていて、そこに私が乗っかる状態から始まったのがHADESだったわけで。そこから1年以上経って、今では、AZAZEL時代の曲も私のものにできてきたなと思っていて。私の形にようやくハマり出したのを感じています。歌い方やアプローチ、みんなとの呼吸の合わせ方とか、すごく考えて、ライブのたびにいろいろ挑戦もしているんですね。ステージングも、私が変わることで、みんなのライブパフォーマンスも変わってきたことを感じるんですよ。そういったコミュニケーションも、ライブの本数を重ねるごとに取れてきて。でも、決まり事みたいになってしまうと面白味もないので、いつもMC内容も決めていないんですけど、敢えてメンバーとも事前打ち合わせをしないで、自由な感じでステージにブッ込んでいくというか(笑)。
──当初は他のメンバーに対して、どこか遠慮も働いていたけど、今では自分のバンドと言えるようになった心境ですか?
紗良:そうですね。今ではHADESのフロントマンとしての責任感も強く抱いているし、フロアの空気感をどれだけまず自分で掴んで、メンバーと共有して、みんなのことも動かせるっていうか。そういうふうに考えられる脳もできてきたかなと思います。
──紗良さんは前からソロシンガーとしても活動していますが、バンドにちゃんと加わったのはどれぐらいぶりなんですか?
紗良:4年ぶりですね。でも前にやっていたバンドというのも、プロジェクトみたいな感じで生まれたものなんです。当時所属していた事務所の企画で、各所から集められたメンバーによって組んだバンド形態のプロジェクトだったので。だからHADESを結成して、バンドってこういうものなんだなって、私自身も実感しています。
──ソロシンガーの在り方と、バンドのシンガーの在り方は、全然違いますか?
紗良:違いますね。ソロでは、全部の道筋なども自分で決めていって、自分が主としていないとっていう心持ちなんです。バンドは、自分の責任感も必要なんだけど、ここはメンバーに頼っていいよねとか、ここはみんなで考えていこうとか。頼れる部分もあるし、みんなからも頼られる存在でいなきゃいけない。物事の進め方や人の意見を聞くとか、そういった視点もソロとバンドでは全然違うなって思います。
──ソロとして2019年に初のソロアルバム『This is 紗良』を発表しています。当時、どんな自分をアピールしようと考えて作ったんですか?
紗良:自分自身がそれまでに作ってきた音楽を、どうにかして世に出したい、もっと知ってもらいたいという承認欲求みたいなところもあったりして。ストレートな思いをぶつけた作品でした。これが私の全てなんだ、という思いで『This is 紗良』というタイトルも付けたんです。当時はライブのバンドメンバーも、あまり固定ではなくて、いろいろな方とやっていたんですよ。本当にソロシンガーというスタイルでした。だからアルバムも、バンド形態でライブをやることを前提で作っていなかったんですよ。
──今回のソロ2作目『ROCK ON!!!』では、ソロでありながらバンド形態です。いつぐらいから作ることを考え始めたんですか?
紗良:去年の秋、ライブ会場限定でシングルをリリースしたんです。そのときには他にも5~6曲作っていたし、ソロのバンドメンバーもある程度、固定されてきたんです。ギターがZakk“善明”Myldeさん、ベースがKoichiroさん、ドラムがThunderさんで、シングルもその3人で作ったんですよ。このメンバーだったら、もっといい作品もできるし、新曲を作ってどんどんやっていこうぜって流れにもなり、昨年末ぐらいからアルバム制作に入りました。今回はソロ名義ではあるけど、バンドサウンドを重視して、ライブでの熱量を音源でも表現できるように作っていきましたね。
──作曲は具体的にどういうやり方を?
紗良:作りたい曲のイメージがあって、私がパソコンを使って全パートのだいたいのコード進行や構成を作って、バンドのメンバーに聴いてもらって、意見をフィードバックしてもらって完成形にするパターン。あとギターの善明さんが、こういう曲をやってみたら楽しいと思うんだって、1コーラスを持ってきてくれて、みんなでコード進行などを考えながら、私が歌メロと歌詞を付けるパターンもあったし。あとジャムセッションをいきなりリハーサルで始めて、その場で歌メロを付けていって曲に膨らませたこともありました。
──歌詞は紗良さんが全て書いていますが、歌詞やキーワードがきっかけになって曲に結びつくパターンもありました?
紗良:私が先に構成やコード進行を考えた曲は、メロディラインや歌詞の世界観もふんわりとざっくりとは決めて持っていったりはしています。でも基本的には曲を聴いたときのインスピレーションで歌詞を書くタイプなので。
▲舞台『魔界』より
──それでひとつ気になることがあるんです。紗良さんは舞台『魔界』でも活躍しています。『魔界』で紗良さんが演じるのは魔界新撰組の原田左之助という男性で、舞台では曲も歌っています。しかもストーリーに合わせて作曲家が作ったものを歌っていますよね。舞台との共通性もソロアルバムから感じたんです。歌詞には“僕”というワードもけっこう出てきて、いわゆる自分の全てをストレートにさらけ出すソロ作品とも違うなと。
紗良:私はそこまで意識はしていなかったんですけど、言われて思い返すと、歌詞を書くときはストーリー重視で、ひとつの物語を書くようなイメージがあって。その物語に自分がいたりするときもあるんですけど、第三者のような人物像を立てて、そこからの視点で客観的に書くようなこともしている曲もあって。
──7曲目「Deity」がそうですよね。弱気だけど、神様にお願いしながら頑張る僕が、歌詞の中にいて。
紗良:そうですね。だから曲によって自分自身のキャラクターがけっこう変わっています。そのキャラクターごとに歌い方も変えてますね。
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