【インタビュー】ACIDMAN、大木伸夫が語る『Loop』再現「すでに爆発していた。20年前にこういう作品を残せていた自分が誇らしい」
ACIDMANのメジャー2ndアルバム『Loop』(2003年発表)が8月9日、最新リマスタリングが施されたアナログレコードとして数量限定リリースされる。同アルバムの再現ツアー<ACIDMAN 2nd ALBUM Loop再現 TOUR “re:Loop”>は6月16日より開幕。激しい初期衝動も、結成25周年を迎えた現在も変わらぬ本質も、その両面を兼ね備えた『Loop』は傑作との呼び声高く、同アルバムを主軸に据えた再現ツアー<re:Loop>が全国を熱い輪に包んでいる。
◆ACIDMAN 画像 / 動画
過去アルバムをアナログ盤リリースは、ACIDMANとしては『創』に続いて2作目。オリジナル版のマスタリング担当者が、当時のアナログマスターテープからリマスターしたというドラマも味わい深く、「ストリーミング音源やCD音源ではカットされてしまう高域と低域が出ているから、すごく肉厚になりました」という大木自身の発言はサウンド面でのアップデートを感じさせる。
2022年11月開催の自身主催フェス<ACIDMAN presents「SAITAMA ROCK FESTIVAL “SAI” 2022」>で25周年の祝祭を盛大なものにしながら、アニバーサリーイヤーはまだまだ続く。大木を迎えたインタビューでは、<“SAI” 2022>を振り返り、アナログ盤『Loop』と再現ツアー<re:Loop>についてじっくりと話を訊いた。
◆ ◆ ◆
■いろんな人たちの人生を背負っている
■そう思うと非常に泣けてきました
──2ndアルバム『Loop』リリースから20年を経て、8月に最新リマスタリング音源でアナログ盤がリリースされることに加え、6月からは『Loop』を引っさげての再現ツアー<ACIDMAN 2nd ALBUM Loop再現 TOUR “re:Loop”>がスタートします。まずは改めて、2022年11月の<ACIDMAN presents「SAITAMA ROCK FESTIVAL “SAI” 2022」>から振り返りたいと思いますが、結成25周年、メジャーデビュー20周年というアニバーサリーイヤーにふさわしい、非常に充実感と満足感の高いフェスになりましたね。手応えはどうでしたか?
大木:まず無事に成功してよかったですし、事故や大きなトラブルなく終わったことがなによりで。その報告を聞いてほっと一息つけましたね。
──出演バンドはもちろんお客さんのムードもとてもよくて。この日を楽しみにしてたテンションを会場でも感じました。
大木:<“SAI” 2022>からもう半年以上経っているんですけど、未だに自分がやったこととは思えないくらい、“こんなフェスをよくやれたな”と思っていて。いずれ映像作品をリリースすることになると思うんですけど、そのための映像編集を、この間行ったんですね。“この人のバイタリティすごいな。俺にはできないな”と思いながら観られるほど、本当に自分が出ていることに違和感があるくらいで(笑)。
──「出ている」どころか、主催ですから(笑)。
大木:ははは。今、“これをやれ”って言われても“ちょっと無理だな”って思うくらい、すごくエネルギーを使いました。実際、そのエネルギーがちゃんと集結して、しっかりと結果として出たフェスになって本当によかったと思います。
──フェスの演出も凝っていましたね。会場内はもちろんですが、駅から会場のさいたまスーパーアリーナまでの動線も、いろんな装飾やイベントがあって、お祭りとして盛り上げていたのにもワクワクさせられました。
大木:そうですね。毎年開催しているフェスではないし、僕らはフェス屋さんではないので、基本的にはおもてなしの感覚があるんですよね。もちろん僕らの周年を祝ってもらうという体ではあるし、ビジネスの要素も多少はあるんですけど、僕らとしては逆に皆さんをもてなしたかったんです。“お客さんにとっても出演者にとっても、みんなの居心地いい空間を作る”ということに集中して。フェスってライブを観るだけじゃないと思うんですよ。その空間であったり、そこで食べるご飯であったり、時間軸の演出だったり──夕暮れ時に点けるライトが、提灯だったらいい雰囲気だろうなとか。そういうものも全部含めて、1日トータルのエンターテイメントがフェスだと思うので、その辺は一番時間をかけたかもしれないです。
──各出演バンドの個性が溢れるような映像演出にもこだわりを感じました。フェスとしての一体感がありつつ、それぞれのワンマンステージのような雰囲気も演出されたり。
大木:ステージ背後に大型LEDを設置することができたので、それによって映像演出にもこだわることができましたね。そのさらに後ろには、<SAI>モチーフの大きな垂れ幕があったんですけど、あれは開催2週間くらい前に僕が、「やっぱり作りたい」って言い出したもので(笑)。
──垂れ幕をバックに全出演者で記念撮影したシーンとか、感動ものでした。
大木:楽屋裏にもこだわりがあって。アーティストエリアの床に人工芝を敷いたんですけど、その原体験って僕らのデビュー当時の、<ROCK IN JAPAN>のアーティストエリアの芝生スペースだったんですよ。芝生の上で先輩や後輩とか、いろんな人と出会うことができた。そういう場所だったので、“フェスといえば芝生だ”って(笑)。ただ、さいたまスーパーアリーナは屋内ですから、「人工芝を入れてくれ」って急遽提案したんですけど、すぐスタッフさんが対応してくれてね。<“SAI” 2022>を観に来てくれた鹿野(淳/<VIVA LA ROCK>プロデューサー)さんが、「これを<VIVA LA ROCK>のアーティストエリアでも使わせてくれ」って言うので、そのまま差し上げて。そうしたら、今年の<VIVA LA ROCK>で人工芝が敷かれてたんですよね。そういうつながりもいいなって思いましたね。
──お客さんはもちろん、アーティストサイドにも<SAI>ならではの空間を味わってほしいという演出が、そこかしこにありました。
大木:一番は出演してくれるアーティストのことを考えていたかもしれないですね、語弊のある言い方かもしれませんけど。まずアーティストが満足してくれないと、お客さんを感動させるようなステージができないと思うので。だから、まずアーティストが当日会場で食べるご飯を決めて、お土産を決めて、ギャラを決めて(笑)という感じでしたね。
──では改めて、<“SAI” 2022>のラインナップはどのように決めていきましたか?
大木:基本的には、僕たちが好きなバンドを全部呼びたかったんです。音楽がカッコいいのはもちろんだけど、人となりも知ってるような共に過ごしてきた仲間たちだったり、自分が衝撃を受けた方だったり、「すごくファンです」って言ってくれる後輩バンドだったり、そういうところから決めていきました。先輩たち…特に僕が好きなMr.Childrenは、きっと誰もが憧れたバンドだろうし、“バンドマンだったら全員がCDを持ってるんじゃない?”ってくらいみんなが通ってるレジェンドで。ダメ元というか断られて当たり前だと思いつつも、人生一度だし、せっかくの機会なので声をかけてみたところ、OKをいただいたという感じだったんです。
──桜井さんはステージ上で「バンドマンに愛され続けているバンド、ACIDMANに声を掛けてもらえて、このイベントにラインナップしてもらえ、そしてみなさんにこうして会えて本当にうれしいです」とおっしゃってましたが、ACIDMANとMr.Childrenとはこれまでも交流があったんですか?
大木:<ap bank Fes>に出演させてもらったときにお会いしたりですね。
──小林武史さんは大木さんのことを気に入っていらっしゃいますし。
大木:小林さんにはいろいろなプロジェクトで声をかけていただきました。そういうこともあって、桜井さんも僕らのことをウォッチしてくれてたんじゃないかとも思うんですけどね。
──<SAI>開催は5年ぶり2回目となりましたが、今回これだけのことをやりきって、“また次もやりたいな”っていう気持ちになりませんか?
大木:もちろんやりたいんですけど、とにかく不安が強いんですよ(笑)。最高だったのはフェスの2日間とか、終わってからの数日だけで、それ以外の準備段階の2年間はずっと不安…僕は不安症だから(笑)。あの感覚をもう味わいたくないなって(笑)。それは最初の<SAI>もそうだったんですけど、最初の<SAI>から5年経って、コロナ禍もあり、やっぱりやりたくなってくるんですよね。今のところは、またすぐにやりたいとは思わないんですけど、もしラッキーなことに僕らが5年後、まだ生き残っていればまたやりたいという気持ちはあります。
──お客さんも共にACIDMANの周年を祝えるいいフェスだと思います。
大木:さっきも言ったように、今<“SAI” 2022>の映像編集をしているんですけど、何十人何百人というお客さんからお祝いのコメントをいただいていて。そのひと言ひと言を観ながらずっと泣いてました。ACIDMANの音楽がその人の人生に寄り添っているんだなと。「20年前から好きです、生まれた子に彩(さい)という名前をつけました」とか「ACIDMANがきっかけで結婚しました」とか、そういう方々がたくさんいるんですね。これまでもそういうお手紙をいただいたり。本当に嬉しいことで、その光景を映像として観ると、やっぱり泣けてきて泣けてきて。“バンドがこの人たちの一部になれているんだ”と思うと、身が引き締まるし、すごいことをやってるんだなって改めて思います。ひとりでやっているわけでもACIDMANというバンドだけでもない、いろんな人たちの人生を背負っているんだなと思うと、非常に泣けてきました。
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